流産は、妊婦の方だけでなくパートナーや家族にとっても悲しい出来事です。しかし悲しみを乗り越えて、次の妊娠へ向けて準備を進める方も数多くいらっしゃいます。
流産後の妊娠には、さまざまな不安がつきまとうことと思いますが、タイミングさえ間違えなければ次の妊娠はそう遠くなることはないでしょう。流産後に妊娠を望むのなら、ひとつひとつのステップをゆっくりと進めていくことが大切です。それぞれ詳しくご紹介していきましょう。
流産の原因
流産を経験した妊婦にとって、何故流産してしまったのか原因が気になるのではないでしょうか。自分の身体や行いが悪かったと反省しすぎてしまう方もいらっしゃいますが、実は流産はたくさんの妊婦が体験するものでもあるのです。
流産の主な原因は、染色体に異常があったり、細胞分裂がうまくいかなかったりすることから発生します。これは、どの卵子と精子が結びつくかによるものなので、妊婦の身体そのものに原因があるわけではないのです。
流産と年齢の関係
流産は、年齢によって確率が上がることをご存知でしょうか。これは、女性の卵子が35歳を超えると老化し始めるため、不完全な卵子が排卵されにくくなってしまうためです。
妊娠したとしても卵子そのものの力が弱いことから、細胞分裂できずに流産してしまいます。これは女性だけに限らず男性の精子においても年齢は関係してくるので、夫婦ふたりの問題だと捉えましょう。
流産後の気持ち
妊娠が発覚したときは、生命の神秘や好きな人の子供を授かったという喜びに包まれ、たくさんの人にも祝福されることでしょう。
しかし次の健診に行った時に、心拍が確認されない、細胞分裂が進んでいないということもあります。妊婦にとっては突然授かった命を奪われた気持ちになり、大きなショックを受けることになるでしょう。中には、流産がきっかけでうつになってしまう方もいます。
妊娠を強く望んでいる夫婦ほど、流産による精神的なショックは大きくなりますので、しばらくはリラックスして過ごせる環境づくりを大切にしましょう。
気持ちの準備が出来るまで待ちましょう
女性の身体と精神はホルモンで繋がっていて、分泌量の増減で簡単に左右されると言っても過言ではありません。反対も同様で、流産してしまってショックだったり自分を責めたりする日々が続くと、身体もマイナスへ働いて生理不順になったり妊娠しにくくなる事もあります。
そんな時は自分の気持ちが落ち着くまで、生理が再開したとしても妊娠活動はストップしましょう。今回の事に自分の中で決着が付いて、次の妊娠に向けて気持ちが固まるまで焦る必要はありません。もちろんその事はパートナーにも相談して、自分の意見を理解してもらうようにしましょう。
流産後は妊娠しやすい理由
「流産後は妊娠しやすい」と言われていますが、その理由は何でしょうか。流産は妊娠初期に起きる確率が最も多いのですが、その場合は受精卵の異常によるもので母体が原因ではありません。要するに母体は妊娠を維持できる準備がちゃんと整っているのです。
また、流産をすれば胎児や付属物を子宮から綺麗に取り除くのですが、一度ゼロの状態に戻した事になるので着床しやすい、というのがもう1つの理由です。
ただ流産後、次の生理周期に妊娠してもその場合は子宮の働きが元に戻っていない為、再び流産してしまう可能性が高いのですが、多くの方が一年以内に再び妊娠しているので、焦らずにその時機を待ちましょう。
原因によって妊娠しにくいケース
流産後は妊娠しやすいと述べましたが、残念ながら流産の原因によっては再妊娠が難しいケースもあります。その最たるものは子宮外妊娠で、卵管に着床してしまった場合は卵管切除の手術を行い自然流産させる治療法しかありません。
卵管を切除するという事は排卵が半分に減る事ですから、妊娠率が下がります。また子宮外妊娠は再発しやすいので、左右の卵管を切除しなければならないケースも少なくありません。
妊娠しにくい子宮の形
流産後に妊娠活動を再開しても、すぐにまた流産をしてしまう場合、卵子や精子に染色体異常があるか、子宮そのものの形が着床しにくいということが考えられるでしょう。子宮の形は人それぞれ微妙に違うため、着床しやすい子宮とそうでない子宮があるのです。
ただ、着床しにくいというだけで赤ちゃんができないというわけではありませんし、染色体異常が確認されたからといって受精できないということでもありません。適切な治療を受ければ、健康な赤ちゃんを授かることができますので、医師とともに治療を行っていきましょう。
感染症が原因の流産は検査を
妊娠中は免疫力が低下するので、通常ならば問題のない常在菌に感染する事が多いです。感染症の代表的なものといえばクラミジアやインフルエンザ・トキソプラズマ等のウイルスがあり、それが原因で卵膜を構成する絨毛膜と羊膜に炎症を起こす絨毛膜羊膜炎になると、流産や早産の可能性が非常に高くなります。
流産後、子宮内にまだ感染菌が残っている場合は、再度妊娠したとしてもまた流産してしまう確率が高いので、妊娠活動を始める前にはクラミジア検査や膣内の細菌培養を行い、適切な治療を受ける必要があります。特にクラミジアは性交で感染するので、パートナーも一緒に検査・治療を受けましょう。
妊娠活動の開始時期
流産後は、赤ちゃんを失った悲しさから、辛い気持ちを抱えたまま過ごすことが多くなるでしょう。辛い気持ちを乗り越えるためにも、赤ちゃんを失った悲しみは、赤ちゃんを授かることで取り戻していきましょう。
しかし、流産後の妊娠活動はいつからスタートして良いものなのでしょうか。流産した経緯や時期、手術の範囲によってタイミングが異なりますので、具体的に見ていきましょう。
流産後の妊娠活動への気持ち
流産後の妊娠活動を生理周期2~3回程見送るのは、単に子宮内を綺麗な状態にするためだけではありません。流産は夫婦にとって、とてもショッキングなことなので、気持ちの整理を付かせるためにも、時間を置く必要があるからです。
気持ちの整理がつかないままでは、お互いの気持ちがズレたままになってしまうため、夫婦仲に距離が生まれてしまう可能性もあります。お互いに抱えた傷を回復し合うことができてから、改めて妊娠活動を再開するタイミングを話し合っていくようにしましょう。
妊娠しやすい環境づくり
流産後の妊娠活動は、次の妊娠を強く望めば望むほど、心の負担になることがあります。早く授かりたいという気持ちがいつの間にかお互いにとってプレッシャーとなるからです。
赤ちゃんを授かりたいという気持ちはお互いにあるものの、うまくいかないストレスがどんどんと蓄積してしまうこともあるでしょう。実際に、不妊治療を行う多くの夫婦が、妊娠活動そのものに疲労感を覚える時期が出てきます。夫婦ふたりの気持ちがすれ違ってしまうと、妊娠する確率はさらに下がってしまうため、時にはリフレッシュするようにしましょう。
流産後いつから妊娠できるの
流産後の妊娠活動の開始時期は、生理周期から判断していきます。通常の処置で済んだ流産なら、生理周期を1回見送ったあと、妊娠活動を開始してかまいません。
生理周期を1回分見送る理由としては、流産した時の処置で子宮内に残った微量の細胞や組織を、生理で体外へと排出する必要があるからです。生理周期を1回分経ないまま次の妊娠活動を開始して、妊娠してしまうと、残った細胞や組織が胎児の発育に影響してくる可能性があります。
そうなると再び流産する危険性が高まってしまうため、生理周期1回分でクリーンな状態になるのを待つ必要があるのです。病院によっては、生理周期を2~3回見送ったほうがより確実という見方をするところもありますので、医師の判断に従うようにしましょう。
ホルモンバランスを整える生活習慣
質の良い卵子を周期に沿って排卵し、受精後も妊娠状態を維持していく為にはホルモン分泌バランスが大事です。エストロゲンが適切量分泌されていなければ卵巣や卵子の働きや性能が鈍くなり、プロゲステロンが不足すればせっかく着床してもその状態を保てず体外へ排出されてしまいます。
妊娠しやすく、また妊娠状態を維持できる体調にするには、ホルモンバランスを整えるのを最優先に考えましょう。大豆製品やサプリを服用するよりも、まずは規則正しい生活にし過度な食事制限は避けて、ストレスは溜めないようにするのが一番効果的です。自分の生活ぶりを見直して、改善すべき部分は今日から直していきましょう。
平均体温を高めて妊娠をサポート
ホルモンバランスを整えるのにもう1つ大事なポイントは、平均体温を上げて身体を冷やさない事です。冷房の効いた部屋での1日仕事や、過度なダイエットや冷たいものの摂りすぎは、筋肉量の少ない女性の身体をあっという間に冷やしてしまいます。
こんな環境にいて、頭痛や肩こり・生理痛の酷さに悩まされている女性も多いはず。体温はプロゲステロン分泌と大きな関係があって、体温が低ければプロゲステロン分泌量は減少します。
また、血行が鈍くなるので胎児に酸素や栄養が届かなくなり、流産や早産に直結します。赤ちゃんを望むのなら、運動を習慣したり体を温める食材を摂って平均体温を維持しましょう。体温が上がれば、妊娠だけでなく冷えや自律神経失調症の改善やダイエットにも効果的です。
反復性流産・習慣性流産とは
残念な事に次の妊娠が出来たとしても、再び流産してしまう方がいます。流産2回繰り返すのを反復性流産と言いますが、この原因は受精卵にあるので、3回目には妊娠する方も多いです。
しかし流産を3回以上繰り返すと習慣性流産となります。この場合は受精卵ではなく父母のどちらかに染色体異常や免疫系異常が原因である可能性が高い為、検査を受ける必要があります。
習慣性流産に対する研究は進んでいますが未だ不明な点も多いので、自分は習慣性流産ではないかと思い当たった時は、なるべく大きな病院で検査を受けると治療もスムーズです。
繰り返す流産
流産後に妊娠すると、再び流産してしまうのではと不安になることと思います。一度流産を経験しているほとんどの夫婦が抱く感情ですが、あまり気にしすぎると気持ちが不安定になってしまうので、前向きに考えるようにしましょう。ただ、中には流産を繰り返してしまう夫婦の方もいらっしゃいます。
2回目の流産の確率は低いといえど、その確率の中に入る可能性もあるのです。流産の原因は、たまたま染色体異常や細胞分裂の不具合が重なったということですが、何度も流産を繰り返してしまうという場合は、一度細胞レベルで卵子と精子の検査を受けたほうが良いかもしれません。
リフレッシュの大切さ
流産後に不妊治療を受けながら妊娠活動をしている夫婦は、時に大きなプレッシャーにストレスを感じ始めることがあります。定期的にリフレッシュすることも大切ですので、夫婦でデートに出かけたり、ちょっと遠くへ旅行に出かけてみたりするのも良いでしょう。
また、一定期間妊娠活動をストップさせることもひとつの方法です。間隔を開けることで、純粋にお互いを求めたくなるでしょう。
実際に、お休み期間中や、不妊治療を辞めたとたん、授かるケースもあります。この場合、ストレスが大きなブレーキになっていたと考えられるでしょう。
旦那様、パートナーの気持ちも考えて
カップルの間の嬉しい出来事なだけに、流産してしまった時はパートナーもつらい思いをしています。周囲には見せないかもしれませんが、妊娠した喜びやつわりなどの辛さを一番近くで見てきただけに、自分は何も出来なかったと密かに落ち込んでいる方も少なくないのです。
流産後はなるべく早く妊娠して赤ちゃんが欲しいというカップルや、少し二人でのんびりしてお互いの時間を充実させてから再度妊娠に取り組みたいと考えるカップルなど、次の妊娠に対してのスタンスは人それぞれです。
1人だけ先走っても諍いの原因になりかねませんから、次の妊娠に向けて二人でよく話し合ってください。
ここまでのまとめ
流産後の妊娠について幅広くご紹介しました。妊娠活動の開始は、お互いに話し合って決めるのが一番です。何より大切なのは夫婦ふたりの気持ちですので、二人で協力し合いながら授かるその日を待ちましょう。