中絶(人工妊娠中絶)について知っておきたいこと

中絶(人工妊娠中絶)について知っておきたいこと 流産

人工妊娠中絶とは妊娠を人工的に終了させる手術を指します。なんらかの事情により、妊娠を継続していけない場合、同意書を提出して手術を受けることになります。

人工妊娠中絶には行うことの許されている期間があり、日本の場合妊娠21週6日目までがその期間に当たります。これ以降は中絶手術を行うことが出来ませんので、なんらかの理由により手術を受けることを考えている方は、この点に十分注意しなければなりません。

人工妊娠中絶を選択する理由はさまざまですが、手術を受けると決断する前には、手術費用や方法、手術の流れやリスクなどについて、あらかじめしっかり把握しておくことが重要です。

人工妊娠中絶に関して知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。人工妊娠中絶を受ける時期や方法などについて詳しく知っておくと、中絶の後遺症やリスクを必要最小限に留めることが出来ます。

人工妊娠中絶とは?

人工妊娠中絶とは?

人工妊娠中絶の定義とは、おなかの胎児が母体以外の場所では生存できない時期に、胎児を人工的な方法により、子宮から排出させる手術を指します。

人工妊娠手術が適用できるかどうかは、母体保護法に定められた条件を満たしているかどうかによります。

人工妊娠中絶が可能な期間とは?

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母体法に定められている人工妊娠中絶の期間は、妊娠21週目6日目まで、これ以降は母胎に生命の危険があり医学的な処置として行われる以外には、妊娠状態を人工的に中断させることは認められていません。

人工妊娠中絶に関する詳しい条件や決まりはすべて母体保護法によって定められており、指定された医師しか手術を行えないことになっています。

人工妊娠中絶が適用される場合とは?

人工妊娠中絶が適用される場合とは?

母体保護法で定められているとおり、人工妊娠中絶は望めば誰もが受けられるというわけではありません。人工妊娠中絶が適用されるのは、そのまま妊娠を継続していくと、母体に健康上の害が及ぶ、あるいは経済上の理由により、著しく害が及ぶ場合と規定されています。

身体上、および経済的な理由により、妊娠を継続することが困難な場合、またそのまま出産まで至った場合、生活保護を受けざるを得ないほど、家計の維持が困難になるなどの事情がある場合、妊娠が発覚した時点ですでに経済的に困窮状態にあるなどの場合に、人工妊娠中絶が適用されます。

もう一つは暴行や強迫行為の被害にあった場合などで、この場合も人工妊娠中絶が適用されます。

同意書の提出が求められる

同意書の提出が求められる

人工妊娠中絶を受けるには、本人および配偶者(あるいはパートナー)による同意書を提出しなければなりません。手術を受ける本人が未成年の場合、あるいはパートナーが未成年でも同意書があれば手術を受けることが可能です。

人工妊娠中絶の手術方法と費用は

人工妊娠中絶の方法は行う時期により異なります。妊娠12週以前の妊娠初期の場合には掻爬あるいは吸引で、それ以降は人工的に陣痛を起こし、子宮を広げる形で手術が行われます。

費用に関しては病院によって若干の差がありますので、手術の説明を受ける際に必ず確認しておきましょう。通常、妊娠初期の手術で約10万円前後、それ以降の手術の場合はもっと高額になります。妊娠12週目以降の中絶費用は妊娠週が多くなるほど高額になります。

妊娠12週目までの手術方法

妊娠12週目までの手術方法

妊娠初期の段階での中絶方法は掻爬あるいは吸引法により行われます。掻爬法も吸引法も痛みを感じないよう、麻酔をかけて行われます。吸引法は比較的新しい方法で、以前には妊娠初期の中絶というと掻爬法がほとんどでしたが、現在では吸引法による手術も多く行われています。

安全性に関してはどちらの方法でもあまり変わりないといわれています。手術を受けるに先立って、疑問なことがあれば医師に尋ねて解決しておくようにしましょう。麻酔をかけて行われますので、手術前の注意事項をきちんと守るようにしなければなりません。

妊娠12週目までの中絶手術の費用

妊娠12週目までの中絶手術の費用

流産後の処置と異なり、人工妊娠中絶手術には健康保険が適用されません。中絶手術の費用は全額自己負担になります。手術費用は10万円弱から15万円程度、他に産婦人科での初診料もかかりますので、もう少し余計に用意しておかなければなりません。

12週以降21週目までの中絶方法

12週以降21週目までの中絶方法

12週を超えてからの中絶は人工的に陣痛を起こし、分娩を引き起こす形で行われます。妊娠初期の中絶手術に比べると、体にかかる負担も経済的な負担も大きくなります。

妊娠初期の場合、日帰り入院で済むことが大半ですが、中期の中絶手術の場合、術後の経過によっては2、3日から一週間程度の入院が必要になることもあります。手術前には血液凝固検査や尿検査などの検査を受けることも必要です。

妊娠中期の中絶手術の費用

妊娠中期の中絶手術の費用

初期の中絶が10万円程度で済むのに対し、中期に入ってからの中絶手術の費用は、週数が進むごとにかさんできます。

ちなみに妊娠13週から15週で30万円程度、16週以降になるとさらに高額になり、40万以上の費用がかかることもあります。

出産育児一時金について

出産育児一時金について

85日間、すなわち妊娠四ヵ月を経過してからの早産や死産、そして妊娠中絶に対しては、出産育児一時金が付与されますが、この場合人工妊娠中絶とは、医師が医学的な見地から、母体の安全のために行うものをさします。

出産育児一時金の支給を受けるには、死産届けなどの提出が必要になります。ただし、経済的な理由により人工妊娠中絶を行った場合には一時金は支給されません。

先天性遺伝子異常などで中絶の場合

遺伝子出生前診断を行う場合

人工妊娠中絶が認められるのは妊娠21週6日目までになります。昨今高齢出産が急増しており、これに伴い、胎児の出生前診断の件数も増加しています。

ダウン症などの先天性遺伝子異常の診断を受ける方で、結果次第により中絶を考えている場合、人工妊娠中絶を受けるにはタイムリミットがあることを念頭に置いておかなければなりません。

出生前診断を行うと決めたら、出来るだけ早急に手続きを済ませておくようにしなければ、時間的な余裕を得ることが出来ません。どの出生診断を行うかによっても、検査を受ける期間や診断が出るまでにかかる時間がそれぞれ異なりますので、出生前診断を考えている方は出来るだけ早めに申込みを行うようにしましょう。
詳しく:出生前診断について知っておきたいこと

人工妊娠中絶の身体へのリスク

人工妊娠中絶手術が原因で命に関わる重大な状況に陥ることは稀ですが、手術である以上リスクが皆無というわけではありません。いかなる理由で手術を受けるにしろ、どのようなリスクがあるのか、きちんと把握しておくことが必要です。

初期中絶の身体へのリスクとは?

初期中絶の身体へのリスクとは?

妊娠12週以前に行われる手術の場合、掻爬法あるいは吸引法になります。12週以降の中期手術と異なり、手術前に子宮頸管を広げる等の処置は必要ありませんので、母体にかかる負担はそれほどありません。

リスクとして挙げられるのは子宮内の内容物が残ってしまうこと、子宮内感染、子宮に孔があいてしまう子宮穿孔など。他にも麻酔をかけて行われるため、麻酔に対する耐性のない方やアレルギーのある方の場合、麻酔に関連するトラブルが発生する可能性もわずかながらあります。

中期中絶の身体へのリスクとは?

中期中絶の身体へのリスクとは?

12週目以降の中絶はまず子宮頸管を広げるという手術前処置から始められます。陣痛を起こし分娩と変わらない形で行われますので、初期中絶よりも時間がかかり、母体にかかる負担も大きくなります。

リスクとして挙げられるのは、子宮頸管へのダメージ、陣痛の際の子宮破裂、そして中絶後の子宮の収縮不全により大量出血が起こることなど。初期中絶同様、子宮内感染のリスクも見逃せません。

中期中絶の場合、術後の経過についても慎重に見守る必要があります。感染症を防ぐためには、処方された薬をきちんと服用し、体に負担をかけることは決してしないようにしましょう。

人工妊娠中絶による心的後遺症

感染症などの身体的な後遺症に加え、人工妊娠中絶後は心的なストレスを感じる方も多くいます。心的外傷後ストレス障害の一つといわれる「中絶後後遺症」は、中絶を行ってしまったという罪悪感から引き起こされるもので、中絶を行った人のうち、約2割から3割の人が経験するといわれています。

中絶後後遺症に陥る原因

中絶後後遺症に陥る原因

せっかく授かった命を自ら絶ってしまったという罪悪感、パートナーの方の理解不足、体調が戻らないことへの不安、不妊症になるのではないかという危惧など、すべてのことがあいまって、中絶後の女性は非常に大きなストレスを感じてしまいます。

中絶後後遺症の症状

中絶後後遺症の症状

心的外傷後ストレス障害同様、中絶後後遺症も一人一人症状の出方は異なります。気分の落ち込み、鬱状態、食欲減退、イライラ、集中力や行動力の欠如、赤ちゃんを正視できないなどの症状が典型的です。症状のひどい方になると引き込みや自殺願望といった深刻な状態も見られることもあります。

中絶後後遺症に襲われたら

中絶後後遺症に襲われたら

中絶後は体も心も傷ついた状態にあります。誰かに相談したいけれども、心の中は罪悪感や嫌悪感でいっぱいで、中絶のことを口に出すのも辛い。中絶後後遺症に陥るとこのように中絶や赤ちゃんといった話題に触れることすら出来なくなります。

女性と男性では妊娠や中絶に関する考え方も異なり、普段は頼りになるパートナーの方も肝心なときに適切なアドバイスやサポートを出来ないこともあります。

中絶後気分が落ち込み、日常生活に支障をきたすようであれば、一人で悩まず、カウンセリングを受けたり、信頼できる人に話し相手になってもらうようにしましょう。一人で悩んでいても、症状は悪化するばかりです。否定的なことばかり考えず、前向きな考え方が出来るように、少しずつ自分の心を癒していくようにしましょう。

中絶後の過ごし方

中絶後の過ごし方

中絶後は医師の指示どおりに処方薬を飲み、感染症などを起こさないように注意しなければなりません。また術後に出血が止まらなかったり、高熱が出た場合、おなかに痛みを感じる場合、中絶後生理不順が続くようになった、こんな場合は必ず産婦人科で診察を受けるようにしましょう。

中絶すると不妊症になりやすい?

中絶すると不妊症になりやすい?

中絶は不妊症の原因になるのでしょうか。中絶をすると不妊症になりやすいといわれるのは、感染症などにより卵管炎や子宮内癒着が起こり、これにより着床できないことがあるからです。他にも中絶手術の際に子宮壁などが傷ついてしまい、子宮内膜の厚さが十分でなくなるという症状が見られることもあります。

これらはあくまでも可能性ですので、中絶手術を受けたからといって必ずしも不妊症になるとは限りません。反対に中絶後は妊娠しやすいといわれることもあります。ただし施設の整っていないクリニックでの中絶や中絶を何度も繰り返すことは、不妊症のリスクを高めてしまいます。

望まない妊娠を繰り返さないようにする

望まない妊娠を繰り返さないようにする

繰り返し中絶を行っていると、不妊症のリスクを高めてしまいます。今回は残念ながら中絶を選択したとしても、次回以降望まない妊娠を繰り返さないよう、パートナーの方とも相談し、確実な避妊を行うようにしましょう。

中絶を行うことにより身体的な負担はもちろんのこと、精神的な苦痛やストレスを経験してしまい、これがトラウマになり性行為や妊娠に関して否定的な感情を持ってしまうこともあります。

不妊症の治療は早めに

不妊症の治療は早めに

妊娠を望んでいる方は卵管閉塞などが起こっていないかどうか、早めに検査を受けるようにしましょう。赤ちゃんを待ち望んでいるけれどもなかなか妊娠しない、もしかして過去の中絶手術が原因かも?と不安な気持ちをくよくよ抱えているだけでは問題は解決しません。

不妊症の治療は早期に始めたほうがよいといわれています。卵管閉塞が疑われるようであれば、子宮卵管の造影検査を受けるようにしましょう。卵管造影検査以外にも、腹腔鏡検査や通気検査など各種の検査を行うことで、妊娠できない原因や治療法が確定されます。

まとめ

人工妊娠中絶の件数は年間約30万件ともいわれ、少子化といわれる中で中絶の件数はいまだ多いのが現実です。やむを得ない理由で中絶に至った場合でも、中絶は女性の心に重い傷を残してしまうことがあります。

とくに中期に入ってからの中絶手術は、初期中絶よりも体にかかる負担が多く、リスクも若干高まります。妊娠の継続を望まない場合は、出来るだけ早く中絶手術を受けるようにしましょう。

また度重なる中絶はその後の妊娠に支障を来すこともあります。望まない妊娠をしないよう、十分に配慮していく必要があるといえるでしょう。

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