妊婦の尿たんぱくについて知っておきたいこと

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妊娠すると尿蛋白(尿たんぱく)が出やすくなるといわれています。妊娠中の妊婦定期健診では血圧検査、体重測定、浮腫の有無などに加えて、毎回尿検査が行われます。

尿検査でチェックされるのは尿たんぱくや尿糖の数値。尿検査でたんぱくがプラスと出ると、特別な注意が必要になってきます。尿たんぱくは疲れやストレス、激しい運動など、生理的な原因によっても生じることもありますが、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の兆候の可能性もあります。

定期健診で一度陽性が出たからといって、それだけで不安に思う必要はありませんが、おなかの赤ちゃんと自分の体の安全のため、妊婦さんの尿たんぱくについての情報をご紹介します。

尿たんぱくとは?

尿たんぱくとは?

尿たんぱくとは尿にたんぱくがある状態を指します。腎臓が正常に機能している場合には、体内の血液は腎臓で濾過され、たんぱくが尿の中に出てくることはほとんどありません。腎臓はたんぱく質やその他の栄養素を体内にとどめ、余分や水分や老廃物を尿として排出します。

尿たんぱくがプラスになるのは、腎臓や尿道になんらかのトラブルが起きているせいかも知れません。ただし、腎臓や高血圧といった病気以外にも、疲れやストレスによっても、一時的に尿にたんぱくが出る場合もあります。

尿たんぱくの原因とは?

尿たんぱくの原因とは?

尿にたんぱくが出る主な原因は腎臓の機能低下にあります。しかし尿たんぱくは腎臓だけでなく、膀胱や尿管、その他の臓器の障害や感染症などによって生じることもあります。つまり尿にたんぱくが出ているからといって、そのすべてが腎臓に問題があるとは限らないということ。

尿たんぱくには大きく分けて、二つの原因があります。ひとつは腎臓に異常がある尿たんぱく、そしてもうひとつは生理的な尿たんぱくで、これは臓器に異常があるのではなく、なんらかの原因により一時的に尿たんぱくが出る状態を指します。

生理的尿たんぱくとは?

生理的尿たんぱくとは?

生理的尿たんぱくの原因はいろいろありますが、主なものを挙げると、ストレス、過剰なたんぱく質の摂取、激しい運動、発熱、月経前など。腎臓の機能には異常がないにも関わらず、体に一時的な負荷がかかることにより、尿たんぱくがプラスと出てしまいます。

病的尿たんぱくとは?

病的尿たんぱくとは?

病的尿たんぱくとは腎臓の機能障害や膀胱炎など、なんらかの疾病により生じるもので、どの部分に問題があるかによって三種類に区別されています。

腎臓よりも手前の臓器の機能に問題があるものは腎前性尿たんぱく、腎臓よりも下の部分の感染症などによるものは、腎後性尿たんぱくと呼ばれています。そして腎臓自体に問題があるものは、腎性尿たんぱくと呼ばれます。

腎後性尿たんぱくの場合、膀胱炎や尿路感染症もその原因のひとつ。尿たんぱくの主原因は腎臓の機能低下にありますが、その他の病気の可能性も高いので、尿たんぱくでプラスと出たら、医師の判断を仰ぎ、それから治療方針を決めていくことになります。

妊娠中に尿たんぱくが多い理由とは?

妊娠中に尿たんぱくが多い理由とは?

妊婦さんの定期健診では毎回尿検査が行われます。妊娠中は普段よりも腎臓に負荷がかかりやすい状態にあるため、定期的に尿検査を行い、異常がないかどうかチェックする必要があります。

妊娠中の腎臓のはたらきですが、母体に循環する血液量は増え、また腎臓の糸球体のろ過率も妊娠前に比べると増加します。普段よりも腎臓に対する負荷がかかりやすい上、運動不足やストレスが加わることにより、腎臓の働きが弱まってしまう。妊婦さんに尿たんぱくが出やすいのは、このことに原因があると考えられています。

妊娠初期から中期にかけては、生理的(機能的)尿たんぱくが出やすい状態に、そして妊娠後期に入ると、妊娠高血圧症候群の症状として生じることもありますので注意が必要です。

妊娠高血圧症候群とは?

妊娠高血圧症候群とは?

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中になってはじめてあらわれる高血圧の症状を指します。以前には妊娠中毒症と呼ばれていました。

妊娠たんぱく尿と妊娠高血圧症候群の違いは、妊娠たんぱく尿が高血圧を伴わないのに対し、妊娠高血圧症候群は、高血圧、尿たんぱく、浮腫(むくみ)の三つが生じることにあります。

妊娠高血圧症候群のリスクとは?

妊娠高血圧症候群のリスクとは?

妊娠高血圧症候群は軽症の場合、頭痛、めまい、倦怠感といった症状が典型的ですが、自覚症状が出ないこともあります。症状が進行していくと、血圧がさらに上がり、尿たんぱくが出るようになっていきます。

妊娠高血圧症候群が重度になると、子癇と呼ばれる痙攣や、分娩前に胎盤が子宮壁から剥がれ落ちてしまう常位胎盤早期剥離といったリスクが生じます。

高血圧や腎臓機能が著しく悪化すると、母体および胎児の安全に対する重大なリスクを引き起こすこともありますので、妊娠高血圧症候群と診断されたら、医師の指示にしたがって治療に専念することが重要です。

胎児に対するリスクとしては、胎児発育不全や胎児機能不全、母体に対するリスクとしては、血液の凝固障害や臓器がダメージを受ける多臓器不全があります。※参考1

妊婦の尿たんぱくの兆候とは?

妊婦の尿たんぱくの兆候とは?

尿たんぱくは定期健診の際に行われる尿検査でチェックされますが、検査のときだけでなく、妊娠中は常日ごろから自分の体調や体の様子に注意を払う必要があります。

尿の状態についても同様で、普段と異なることが見られたら、定期健診の際に医師に相談するようにしましょう。

妊娠中 尿の異常について

妊娠中 尿の異常について

妊娠中は多かれ少なかれ、頻尿の症状がみられます。妊娠中期から後期にかけては、大きくなった子宮に膀胱が圧迫されることで、トイレが近くになります。

尿漏れも起きやすいことも特徴。頻尿や尿漏れ、排尿時の痛みの症状が重症な場合には、膀胱炎、腎盂炎、尿道炎などの病気も疑われます。

腎盂炎や尿道炎にかかっても、軽度の尿たんぱくが出ることがありますので、これに関しても注意が必要です。頻尿や排尿時の痛みなどに加えて、尿が泡だっている、ひどく濁っている、血尿がみられる場合には、念のため病院で診察を受けたほうが安心です。

尿たんぱくのプラスマイナスとは?

尿たんぱくのプラスマイナスとは?

妊婦定期健診の尿検査の結果、たんぱくがプラスマイナス(+-)といわれ、戸惑ってしまう妊婦さんも多いようです。尿たんぱくの結果は陽性(プラス+)、陰性(マイナス-)、擬陽性(プラスマイナス+-)とあらわされます。

擬陽性(プラスマイナス)の場合は、ほとんどの場合一過性のもので、再検査を行うとマイナスが出ることがほとんどですので、あまり心配する必要はありません。

前述のように、激しい運動をしたあとや長時間立ち仕事をした場合にも、尿たんぱくが擬陽性と出る場合があります。妊婦定期健診で一回擬陽性が出た程度であれば、とくに問題ないと判断されることが多く、陽性とは区別して考えられます。

尿たんぱくプラスの数値

尿たんぱくが陽性と出た場合、尿中のたんぱくの量に応じて、1+、2+、3+、4+とあらわされます。

1+がもっともたんぱくの量が少なく、数字が大きくなるにつれてたんぱくの量が増えていきます。擬陽性や軽度の陽性と出た場合、医師の指示にしたがって、尿たんぱくの数値が改善されるよう、食事や生活習慣を整えることが必要です。

尿たんぱくの数値が大きい場合は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の可能性もありますので、さらに精密な検査が求められます。

尿たんぱくがプラスのときの対処方法は

尿たんぱくがプラスのときの対処方法は

妊娠中に尿たんぱくが陽性と出た場合の対処法について挙げていきましょう。すでに述べたとおり、妊婦さんは腎臓に負荷がかかりやすい状態にあり、普段よりも尿たんぱくが出やすくなっています。またつわりなどにより体調が悪く、生理的な尿たんぱくも起こりやすい時期。妊婦さんの尿たんぱくは決して珍しいものではありません。

妊娠中の定期健診の際に、尿たんぱくが+-、あるいは1+と出たとしても、それだけで不安に駆られる必要はありません。運動後やストレスを感じたとき、体調が悪いとき、月経前など、生理的な要因により、尿たんぱくがプラスになることもあります。

定期健診で尿たんぱくが陽性と出た場合でも、一時的なものに過ぎず、時間がたつと再びマイナスになることもあります。

健診の結果、もっと精密な検査が必要であれば、医師からその旨指示がありますので、医師の判断に従うようにしましょう。早急に治療が必要な状態でなくても、一度でも尿たんぱくがプラスと出た方は、食事の内容や取り方、生活習慣などを今一度見直すことが大切です。

尿検査もう一つの検査項目は 尿糖

尿検査には尿たんぱく以外に、大事な検査項目があります。それは尿糖で、これもまたプラスの場合は妊娠糖尿病発症の可能性が高くなります。血液内の糖は腎臓でろ過された後再吸収されますが、糖の量が多いと腎臓が処理しきれずに尿内に出てきてしまう状態を尿糖といいます。

これもまた尿糖が出たから即妊娠糖尿病というわけではなく、食事後30分から1時間の間に尿検査をした場合、元々再吸収機能が低下している場合や疲れが溜まり腎臓の機能が弱って糖を処理できない場合などにも、尿糖値が高くなります。

糖が出たと聞くとドキッとしてしまうかもしれませんが、プラスが続かなければ大丈夫といわれていますし、また生活に無理が無いかを見直すチャンスかもしれませんので、不安にならず医師の指導に従ってください。

妊娠中の尿たんぱくの改善や予防方法

妊娠高血圧症候群のような深刻な状況に至ってはいないとしても、定期健診で尿たんぱくが陽性と出たら、毎日の食事の内容や生活習慣を見直す必要があります。尿たんぱくの改善や予防に有効な対処法について見ていきましょう。

塩分は極力控えめにする

塩分は極力控えめにする

妊娠中は体が養分や水分を溜め込みやすくなっています。塩分の多い食事は極力避けるようにしましょう。妊娠すると食べ物の嗜好が変わり、妊娠前にはあまり好きでなかった食べ物を好むようになったり、反対に好きだった食べ物が食べられないこともあります。

また妊娠初期のつわりがひどいときには、食べられるものを口にするしかありませんが、この際も塩分の濃いものや味付けの濃い食べ物は出来るだけ控えるようにしましょう。

糖分も控えめにする

糖分も控えめにする

塩分や辛いものだけでなく、甘い食べ物も腎臓に余計な負担をかけてしまいます。塩分だけでなく、糖分の多いもの、油っこいもの、カロリーの高すぎるものなども避けるようにしましょう。

スナック菓子やスイーツを食べる際には、甘さ控えめのものを選ぶようにすると、胃腸や腎臓に負担をかけずに済みます。

食事は抜かないようにする

食事は抜かないようにする

妊娠中は体重管理を厳重に行わなければなりませんが、体重増加が気になるあまり、食事を抜いてしまい、その反動でついついおやつやデザートを食べてしまう方もいるようです。

しかしこれはカロリー摂取を抑えるという点では逆効果。ストレスや反動で甘いものを食べ過ぎないようにするには、食事の回数は抜かずに、必須栄養素を盛り込んだ食事を規則的に取るようにしましょう。

水分補給をたっぷり行う

水分補給をたっぷり行う

食事のときだけでなく、食事と食事の間にも水分補給をたっぷり行いましょう。妊娠中に水分の摂取が不足すると、ママだけでなくおなかの赤ちゃんにも悪影響が及びます。

甘いものやこってりしたものを食べたときには、水分摂取も忘れずにたっぷり行うようにしましょう。

体重管理をきちんと行う

体重管理をきちんと行う

妊娠中の体重管理をおろそかにすると、体重が異常に増加するだけでなく、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病にかかってしまうおそれもあります。

体重増加は腎臓のはたらきに負担をかけてしまいますので、たとえ妊娠初期であっても体重管理はおろそかにせず、体重の増加を適正な範囲にとどめるようにしましょう。

適度に体を動かす

適度に体を動かす

運動不足、不規則な生活習慣、喫煙、過度の飲酒、肥満などはすべて、慢性腎臓病の引き金になるおそれがあります。

妊娠中は激しい運動は控えたほうが安心ですが、まったく体を動かさないことは体重増加や血圧の上昇にもつながります。軽いストレッチや妊婦体操などで、体をほぐし、急激な体重増加を防止しましょう。

尿たんぱくによる赤ちゃんへの悪影響とは?

尿たんぱくによる赤ちゃんへの悪影響とは?

妊娠前の血圧は適正だったにも関わらず、妊娠を機に高血圧とともに尿たんぱく・むくみの三つの症状を伴う状態は妊娠高血圧症候群と呼ばれています。高血圧症候群は母体だけでなく、おなかの赤ちゃんへのリスクも生じさせる重大な症状で、妊娠期間中をとおして治療を継続していく必要があります。

高血圧症候群が重篤すると、早産や流産のリスクが高まり、またおなかの赤ちゃんに対する悪影響としては、低体重児、胎児機能不全、胎児発育不全などが挙げられます。

尿たんぱくだけでは、妊娠高血圧症候群とは認められませんが、尿たんぱくが一度でもプラスと出たら、今までの生活習慣や食事の内容を見直すようにしましょう。

まとめ

妊婦さんの尿たんぱくについて知っておきたいポイントをご紹介しました。妊娠中は腎臓に負荷がかかりやすく、尿たんぱくがでやすく時期。尿たんぱくは腎臓のはたらきの低下以外にも、妊娠中の疲れやストレスから一時的に生じることもあります。

定期健診の尿検査でプラス(陽性)と出た場合にどのように対処すればよいのか?尿たんぱくの原因、兆候、対処法などを詳しく知り、妊娠中の尿たんぱくの改善・予防に努めましょう。症状が気になる場合は医師に相談し、指示を受けるようにしましょう。

※参考1 日本妊娠高血圧学会 ※参考2 日本産科婦人科学会 妊娠高血圧症候群

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