稽留流産(けいりゅうりゅうざん)(繋留流産)とは妊娠初期の段階で、子宮の中で赤ちゃんの心臓が止まってしまう流産のことを指します。お腹の中で赤ちゃんの心音が止まってしまうにも関わらず、進行性の流産という形で子宮の中身が出てこないため、流産したということに気付かない場合が多いのが特徴です。
稽留流産の場合、お腹の痛みや出血といった流産につきものの症状が表れないため、検診で胎児の心拍が感じ取れないという医師の診断をなかなか信じられないお母さんもたくさんいます。ついこの間の検診では胎児の成長が確認されていたのに、次の検診において稽留流産と診断されるのは、大変ショックなものです。
しかし稽留流産の場合、原因のほとんどは胎児の染色体異常や受精卵の生命力の減退にあるといわれています。稽留流産と診断されても気を落とさずに、次回以降に妊娠に備えて体調を整えておくようにしましょう。
稽留流産(けいりゅうりゅうざん)とは
稽留流産とは流産の一種類で、22週未満でお腹の胎児が子宮の中で死亡してしまった状態を指します。稽留流産はほとんどの場合、妊娠のきわめて初期の段階の12週目未満に多く起こりやすいです。
一般的な流産との違いは出血や腹痛といった兆候が見られないこと、そのために子宮の中の赤ちゃんが亡くなっていることに気付かず、産婦人科で超音波検査などにより、はじめて胎児の心音が止まっていることが確認されます。
胎児が死亡してから2週間ほどしても、出血やお腹の痛みといった流産の典型的な症状が見られないのが稽留流産のいちばんの特徴です。
稽留流産のもたらすショック状態
出血とお腹の痛みという流産の二大兆候が見られないため、流産していることにまったく気付かないお母さんも多いといわれています。
定期健診の際に、胎児の状態を検査してはじめて死亡が確認されることも多く、妊娠が発覚してまだ間もない状態での胎児の死亡に少なからぬショックを受ける妊婦さんがほとんどです。
稽留流産とつわりの関係
稽留流産は自覚症状のない流産と言われていますが、反対につわりがぴたっと止まるので分かるという説もあります。つわりは妊娠状態を維持するため黄体ホルモンや、胎盤の基となる部分から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピンというホルモンの急激な分泌量増加が原因と言われています。
これらは赤ちゃんの成長に関与していますから、赤ちゃんの成長が止まってしまえばホルモン分泌量もストップします。このような事から稽留流産になるとつわりがなくなると言われていますが、ホルモン分泌量の減りは緩やかなため、稽留流産前後もつわりが続くケースもあります。
切迫流産との違い
切迫流産と稽留流産の違いとは何でしょうか。切迫流産とは、流産を起こしかけているけれども、いまだ子宮の中の赤ちゃんの心音が確認されている状態を指します。
切迫流産の場合、医師の指示に従い安静にしていれば、そのまま妊娠を継続できる場合もあります。切迫流産の場合は、出血とお腹の痛みという兆候が見られますので、自覚症状のない稽留流産と異なり、比較的早く医師の診断を仰ぐことが可能になります。
稽留流産と子宮外妊娠
稽留流産と似たような症状に、子宮外妊娠があります。稽留流産の判断材料の1つとして、通常であれば心音が聞こえるはずの妊娠6~7週に心音が聞こえないという点が挙げられますが、子宮外妊娠も子宮以外の場所に着床しているため、同様の状態が起こります。
ただ、稽留流産は自覚症状がほとんど出ないのに対し、子宮外妊娠は下腹部痛や出血・貧血といった自覚症状が出やすいのが異なる点だと言えるでしょう。
どちらの場合も放置すれば、状態が進行して酷い下腹部痛や大出血を伴うようになりますから、早期発見のためにも病院の定期健診は必ず受けるようにしましょう。
稽留流産が起こる可能性
妊娠した女性のうち、約一割から一割五分の方が流産を経験するといわれていますので、流産は決して珍しいことではありません。稽留流産に関してもかなりの確立で起こるとされていますので、妊娠初期の段階で稽留流産と医師に告げられても、辛いですが過剰に気を落とさないようにしましょう。
切迫流産とは違い、稽留流産の場合はすでに胎児が死亡している状態ですので、これ以上妊娠を継続させることは不可能になります。
稽留流産の原因とは
妊娠初期に起こることの多い稽留流産、その原因のほとんどは胎児の側の問題にあるとされています。
胎児の問題で稽留流産
胎児の問題とは主に染色体の異常であるとされています。他にも精子及び卵子の染色体に問題があった場合や、受精が行われたあとの受精卵がなんらかの理由により、生命力を失ってしまう場合もあるとされています。
このように精子・卵子の染色体や受精卵に発生した異常の場合、これを防ぐことは不可能であり、流産は不可避的に起こってしまいます。
流産は妊娠中起こる現象ですので、たとえ稽留流産を起こしても、次の妊娠に影響はあまりないと考えられていますので、過剰に心配しないようにしましょう。ただし流産を三回以上繰り返した方は、一度精密検査を受けることをお勧めします。
お母さんの側の問題について
胎児自体に問題がある場合は、流産を防ぐことは出来ませんが、流産はお母さんの側に問題があり起こることもあります。これは妊娠した方に対するごく一般的な注意事項になりますが、妊娠したと分かったら日常の行動すべてに配慮する必要があります。
不必要に重い荷物をもったり、いきなり激しい運動を行ったりするのはなるべく控えましょう。また過労やストレスを抱えないように注意することも重要です。
流産というのは本来避けようとしてもなかなか避けられるものではありませんが、あとで後悔しないよう、妊娠したと分かったら、自分で気をつけられる部分に関しては、十分に配慮することが必要です。
習慣性流産について
妊婦さんのうち約1割から一割五分の方が経験するといわれる流産ですが、続けて三回流産を経験する場合は習慣性流産と呼ばれ、精密検査を受けたほうがよいとされています。
稽留流産の起こる時期について
稽留流産の起こる時期は妊娠初期ですが、もっとも多いのは妊娠12週未満といわれています。胎児の側に問題がある稽留流産のほとんどは妊娠12週目までに起こる場合が多いです。
妊娠第12週目以降に起きる稽留流産の場合は胎児ではなく、母体に問題があり生じることが多いようです。一般的な流産や切迫流産同様、子宮頸管無力症であったり、子宮筋腫のある場所が問題な場合、また妊婦さんが事故に遭われたり、大きな怪我をされた場合などにも発生することがあります。
他にも妊婦さん自身に持病があり、子宮や胎盤が妊娠の継続に耐え切れない場合などにも、流産が引き起こされることがあります。
胎児の状態の検査について
稽留流産はほとんどの場合、妊娠第6週や7週目といったきわめて早い時期に起こるため、胎児がまだ小さく、胎児の状態を正確に把握するために、精密な検査が行われます。具体的には超音波で胎嚢の大きさに変化があるかどうかをチェックしたり、胎児の心拍などを確認する作業が行われます。
最終的に稽留流産と診断されるまでには、産婦人科で慎重に胎嚢や胎児の状態の検査が行われます。1週間ほど日にちを置いて再度調べ、それでもなお、胎嚢の大きさに変化がない、胎児の心拍がない、胎児の成長がまったく見られない場合、稽留流産と診断されることになります。
稽留流産後の自然排出について
基本的に日本では稽留流産と診断された場合、掻爬手術(そうはしゅじゅつ)により子宮の中をきれいにすることが多いようです。しかし海外ではたとえ稽留流産で胎児の死亡が確認されていても、子宮の中身が自然に排出されるまで待つところも多いようです。
国内でも病院によっては、手術で子宮の掻爬手術を行うよりも、自然に排出されるのを待つという方針のとこもありますので、気になる方は主治医とよく相談するようにしましょう。自然排出を待つことを選んだとしても、医師との連絡は欠かさないようにしてください。
掻爬手術か、自然排出か
自然排出の多い欧米とは対照的に、日本では現在でも、流産後の処置として掻爬手術しか選択肢のない病院もあります。掻爬手術(子宮内容除去手術)は基本的に妊娠中絶手術と同じ手順で行われ、麻酔をかけて痛みを感じないようなプロセスが取られます。
自然排出と子宮内容除去手術のどちらがより良いかと言うことに関しては、それぞれのケースにより異なります。あとで悔いを残さないためにも、稽留流産と診断されたら今後の処置や治療について、主治医と十二分に相談するようにしましょう。
掻爬手術を受けたら
掻爬手術(子宮内容除去手術)はとくに他に問題がない場合、日帰りで行われ、麻酔が切れたら歩いて自宅に戻ることが出来ます。手術後数日間は出血が見られることがありますが、時間がたつと徐々に収まってきます。2、3日たっても出血の量が減らないなどの場合には、再度病院で検査してもらうようにしましょう。
子宮口が開いている状態なので、感染症にかかりやすいため、手術後しばらくは入浴は避け、シャワー入浴のみに留めておく必要があります。手術後は安静にし、性行為も次回以降の検診で医師から許可が出るまでは控えなければなりません。
子宮収縮剤の影響
稽留流産後は子宮収縮剤を処方されることが多く、大きくなっていた子宮がもとの大きさに戻るため、お腹に痛みを感じる方もいるようです。
ほとんどの場合、痛みは徐々に引いていきますが、処置後数日しても痛みが激しい場合や、出血やおりものの量が多い場合などは、一度病院で検査してもらうようにしましょう。
稽留流産にかかる費用は
妊娠・出産にかかわる事は、定期健診補助や産後の一時金などを除けば全て実費です。ですから稽留流産で手術を行う時も、実費なのではと考え悩んでしまう方もいるかもしれません。
しかし実際は、このような手術は治療行為として健康保険が適用されます。また、稽留流産手術は入院せず日帰りできる場合も多いので、そうなるとベッド代金は必要なくなります。もちろん設備の整った大学病院と個人病院では金額も大きく変わりますが、おそらく数万円~10万円台です。
それから、民間保険の手術特約で給付を受けられる事もありますから、一度自分の入っている保険を確かめてみてください。
稽留流産後の過ごし方
子宮内容除去手術後は安静を第一に考え、疲労が溜まらないように、母体を労わることが重要です。処置後は一時的に体の免疫力が落ちている場合もあります。
子宮口がまだ完全に閉じてないことも多く、感染症にかかりやすい時期ですので、滋養があり、栄養バランスの取れた食事を取るようにしましょう。
稽留流産後の生理開始について
稽留流産のあと、どの程度したら再び生理が始まるかですが、これには個人差があり、一ヶ月以内に再び生理が始まる方もいれば、一ヶ月半、二ヶ月ほどではじめての生理が来る方もいるようです。
流産後子宮の中身が完全に除去されたら、生理はまだ来なくても基礎体温を付け始めるようにしましょう。稀に感染症などにより、生理ではない不正出血が起こることもありますので、基礎体温を付けていると、生理の出血か他の理由により出血しているのか、すぐに判別しやすくなります。
次の妊娠にはどのくらいの期間を置くべきか
稽留流産後次の妊娠までは、どの程度期間を置くべきでしょうか。これに関しては、かかりつけの産婦人科医の意見を必ず求めるようにしましょう。通常は、流産後二回の生理を待ってから妊娠に臨むというのが理想的といわれています。
流産後の最初の生理はいつもと出血の量や程度に差があることが多く、流産後体の調子がまだ万全ではないことが伺えます。産婦人科医の多くが、流産後二回の生理を経てたらの妊娠を進言するのはこのためだと思われます。
ただし生理の周期や安定の仕方には個人差があり、三回目、四回目の生理が来て、はじめて生理周期が安定し、出血の量も前と同じようになる方もいますので、人と違うからといってあまり神経質にならないようにしましょう。
基礎体温が安定するのを待つ
次の妊娠を望まれる方は毎日きちんと基礎体温を測るようにしましょう。流産後はさまざまな要因により、基礎体温がやや不安定になります。しかし体調に気をつけ規則的な日常を送るうちに、基礎体温も徐々に安定してきます。
もう少し時間を置いての妊娠を考えている方は、今すぐに赤ちゃんが欲しくないという理由で、基礎体温を付けることを怠ることがあるようです。
しかし基礎体温を付けずにいると、生理周期やホルモンバランスの崩れに気付きにくくなります。妊娠を望まれている方もそうではない方も、面倒と思わずに基礎体温はきちんと付けるようにしましょう。
冷え性の改善と運動不足の解消
流産との直接的な関連があるわけではありませんが、冷え性や運動不足は体の代謝機能を低下させる原因になりかねませんので、妊娠を希望している方は日頃から体調をしっかり管理するようにし、冷え性や運動不足の改善に努めましょう。
どんなに気をつけても流産は起こる
待望の赤ちゃんを流産でなくすほど辛いものはありません。とくに理由が分からないまま流産に終わってしまうと、悲しみの持って行き場がなく、自分に辛く当たってしまう方もいるようです。
しかし流産は自分の努力や意思に関わりなく起こってしまうことがほとんどで、とくに妊娠初期の流産は胎児になんらかの異常があり、そのまま成長することが出来ないからこそ起こるもの。
なにかしら問題があったからこそ流産という形で成長が止まってしまうわけですので、ご自分を責めるのは筋違。すぐに気持ちを切り替えることは難しいかもしれませんが、極力ポジティブに考えるようにしましょう。
まとめ
稽留流産について知っておきたいポイントをご紹介しました。妊娠初期の段階で胎児の成長が止まってしまう稽留流産、他の流産との違いや流産後の処置や対応など、知っておくと役に立つ情報せすのでぜひ参考にしてください。