妊娠中は食べ物や飲み物にいろいろな制約が出てきます。コーヒーや紅茶などカフェインを含む飲み物もそのひとつで、妊娠中のカフェインの摂りすぎはNG。カフェインはコーヒーや紅茶、緑茶だけでなく、栄養ドリンクや清涼飲料水、そしてココアやチョコレートドリンクにも含まれています。
ココアは食物繊維をはじめ、カカオポリフェノール、亜鉛、カルシウム、銅、マグネシムなどを含むヘルシードリンク。健康効果に優れているだけでなく、甘いホットココアは妊娠中のイライラを解消してくれます。
いろいろな効能があるココアですが、おなかの赤ちゃんに対するカフェインの影響が気にかかります。妊婦さんはココアを飲んでもいいの?悪いの?妊婦さんがココアを飲むときの注意点とは?など、妊娠中のココアについて知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。
妊婦はココアを飲んでいいの?悪いの?
カフェインについては妊娠中は摂取量に注意すべきといわれています。カフェインというとコーヒーを連想しすが、カフェインが含まれているのはコーヒーだけではありません。紅茶に緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、清涼飲料水やココアなどにもカフェインは含まれています。
妊娠中にココアは飲んでも基本的に問題ありません。ただし適量が大切です。
また妊娠中、カフェインはどの程度摂取していいのでしょうか?また摂取量の目安を超えて飲んだ場合、どのような弊害があるのでしょうか?
妊娠中のカフェインの摂取について
妊婦さんがカフェインを摂取することにより、おなかの赤ちゃんになんらかの異常が生じる可能性については、いまだに確定的なデータは得られていません。ただし世界保健機構(WHO)をはじめ、イギリスやカナダなどの国々では、妊婦さんのカフェイン摂取についての注意勧告や摂取量の目安を定めています。
妊婦さんのカフェイン摂取量の目安とは?
妊婦さんのカフェイン摂取量の上限ですが、これは国や機関によってまちまち。ちなみにいくつか挙げてみると、まず世界保健機構(WHO)では妊婦さんのカフェイン摂取は一日コーヒー3、4杯程度。
コーヒーに含まれるカフェインの量は100mlあたり40mgから60mg程度。ちなみにコーヒー一杯を150mlとすると、コーヒー一杯に含まれるカフェインの量は60mgから90mg程度。インスタントコーヒーよりもレギュラーコーヒーのほうがカフェインの量は多くなります。
一日3、4杯飲むとすると、摂取カフェイン量は200㎎弱から350㎎程度。世界保健機構(WHO)の基準では、この程度のカフェインは問題ないということになります。
飲み物に含まれるカフェインの量について
ではコーヒー以外の飲み物についてはどうでしょうか?カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶や緑茶やエナジードリンクなどにも多く含まれます。エナジードリンクや清涼飲料水には意外にたくさんのカフェインが含まれていすので、いつも飲むドリンクに関しては成分表示を見てカフェインの量を確認しておくようにしましょう。
ココアに含まれるカフェインについて
ココアにもカフェインが含まれていますが、その量はコーヒーに比べるとかなり少なめ。製品や種類によっても差がありますが、ココア100mlに含まれるカフェインの量は10mgから20mg。少ないものと多いものの差が二倍もありますが、これは製品やタイプによって変わってきます。
ココアといっても純ココアからミルク入りの甘いココアまで、ココアドリンクの種類はいろいろ。含まれるカフェインの量も製造メーカーやタイプによって違っています。普段からお気に入りのココアがある方は、成分表示を見てカフェインの量やカロリーをきちんと確認しておくようにしましょう。
一般的にいって、ココアに含まれるカフェインの量はコーヒーの10分の一程度。カフェインの影響が不安なばかりに、妊娠中のココアを避ける必要はないといえるでしょう。一日中ココアばかり飲んでいるというのは問題ですが、気分転換や家事の合間のティータイムにココアを1、2杯飲む分には問題ありません。※参考2
妊娠中にカフェインを過剰摂取するとどうなるの?
妊娠中のカフェインの過剰摂取はおなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があるといわれていますが、どのくらいの量を摂取するとリスクが高まるのか、という点に関してはいまだ明らかにされていません。
先述のように妊婦さんのカフェイン摂取量に関しては、世界各国のさまざまな機関が指標を設けています。日本では内閣府の組織である食品安全委員会が、妊娠中のカフェイン摂取についてのファクトシートを公表しています。これによると妊娠中のカフェインの摂取は、胎児の発育を阻害するリスクがあると記載されています。
摂取量の上限については記載されていませんが、カナダやイギリスなどの欧米諸国では、妊婦さんのカフェインの摂取上限量は200~300mgに設定されています。これは世界保健機構(WHO)の指標ともほぼ一致します。ここから考えて、妊娠中のカフェインの摂取量は、一日200㎎程度を目安にしたほうが良さそうです。※参考3
妊婦さんがココアを飲む際に注意すべきこと
妊娠中のカフェイン摂取量の目安などについて詳しく見てきました。ココアの含まれるカフェインはコーヒーに比べると微量ですので、カフェインについては心配ありません。
ただし、妊娠中に砂糖がたっぷり入ったココアをたくさん飲んでしまうと、カロリーオーバーで体重管理に失敗してしまうおそれも。妊婦さんがココアを飲む際のポイントについてみていきましょう。
ココアのカロリーに注意
ココアドリンクは通常ココアパウダーに牛乳や砂糖を加えて作ります。ココアパウダー自体のカロリーは少ないもの、牛乳や砂糖のカロリーも加わりますので、飲む量に注意しなければなりません。
砂糖たっぷり、ミルクたっぷりのミルクココアを一日何倍も飲んでいると、摂取カロリーオーバーに。ココアのカロリーについてくわしく見てみましょう。
純ココアのカロリー
ココアには、純度の高い純ココアと飲みやすくするために砂糖やミルクが加えられた調整ココアがあります。純ココアのカロリーは大匙一杯分が16kcal。純ココア大匙いっぱいをお湯に溶いて飲むときのカロリーはたったこれだけ。純ココアだけならば妊婦さんが飲んでもカロリー的に問題ありません。
調整ココアのカロリーについて
純度の高い純ココアは苦味があり、甘くないので飲みにくく感じる方もいるでしょう。そのままでは飲みにくい純ココアに、砂糖や牛乳などの成分を加えたものが調整ココア。調整ココアのカロリーは純ココアに比べると高くなります。
調整ココアのカロリーはそれぞれの製品によって異なりますが、標準的なもので一杯80kcal前後になります。純ココアにしろ、調整ココアにしろ、ほとんどの場合これに牛乳や砂糖を加えてドリンクにしますので、ココアドリンクはパウダーだけでなく、加えるもののカロリーも計算しなければなりません。
牛乳のカロリーはグラス一杯130kcal。砂糖については、ティースプーンに軽く一杯(5g)で19kcal、大匙一杯(9g)で35kcalに。調整ココアに牛乳と砂糖を入れて飲む場合、カロリーは200kcal前後になります。一日一杯程度であれば問題ありませんが、量や回数に上限を設けずに飲んでしまうと、ココアドリンクだけで一日のカロリー摂取量の3分の一近くに及びます。ココアを飲む際にはカロリーに十分注意しましょう。
妊娠中の必要カロリー量について
妊娠中は妊娠前よりも摂取カロリーを増やさなければなりません。しかし同時に体重管理を適切に行うことも重要です。妊娠前よりもどの程度摂取カロリーを増やすかについて、厚生労働省の指標をあげてみましょう。これによると、妊娠中の摂取カロリー量の基準は、妊娠初期で50kcal増、妊娠中期で250kcal増, 妊娠後期には450kcal増になります。
これから考えると、妊娠したからといって妊娠初期から食事の量や回数を増やしていると、体重管理に失敗してしまいます。50kcalとはクッキー一枚分程度。調整ココア一杯よりも少ない量ですので、妊娠を機にココアやミロなどの麦芽飲料を飲み始めた、という方は、摂取カロリーがオーバーしないよう、他の飲み物や食べ物を調整するようにしましょう。※参照4
ココアの糖分でイライラ解消に?
妊娠中のイライラを甘いものを食べたり、飲んだりすることで手っ取り早くイライラやストレスを解消しようとする方もいます。妊娠中はホルモン分泌の変化により、精神的も身体的にもいろいろな変化が生じます。妊娠初期はつわりの症状、中期以降はどんどん変わっていく体型、後期には陣痛や分娩のことが気になり、ストレスを溜めてしまう妊婦さんも多いようです。
砂糖の効能について
このような妊娠特有の悩みを手っ取り早く解消してくれるのが、甘いたべものや飲み物。砂糖は体内でエンドルフィンとセロトニンという物質を分泌させます。エンドルフィンとセロトニンは精神状態を安定させ、気持ちをリラックスさせる作用があります。
生理前や生理になぜか無性に甘いものが欲しくなるのは、体が無意識に糖分を欲しがるから。妊娠中もまたホルモン分泌のバランスの変化が起こり、食欲や食べ物の嗜好に変化が起こりやすくなります。
甘いものが欲しくなるのもそのひとつ。妊娠中のイライラやストレス解消に、ココアドリンクやチョコレートドリンク、麦芽飲料などが好まれます。
ココアの糖分を控える方法とは?
ストレスやイライラ解消にココアは効果的ですが、飲む量や回数に注意せずに飲むとかえって逆効果になることもありす。いわゆる砂糖依存症がそれで、イライラするからといって、何も考えずにすぐに砂糖を摂取するのはNG。
イライラする→砂糖を含む食べ物・飲み物を摂る→一時的に満足→という負の循環を繰り返してしまい、甘いものばかり食べたくなり、自分の食欲をコントロールできなくなることも。妊娠中は高血圧にもなりやすい時期。甘いものに依存することがないよう、砂糖の摂りすぎを控える努力が必要です。
ココアの砂糖は控えめに
甘く、ほのかにほろ苦い ココアを飲むとほっとしますが、砂糖の摂りすぎには要注意。砂糖の摂りすぎが気になる方は、砂糖の代わりにオリゴ糖やはちみつを利用しましょう。
他にも黒糖、きび砂糖、メープルシロップなどもお勧め。砂糖ではなく、牛乳の普通の牛乳から低脂肪乳や豆乳に変える方法もあります。すでに砂糖の入っている調整ココアではなく、純ココアを使ってもカロリーを押さえることができます。
ココアは便秘に効く?
妊娠中はいろいろな理由により便秘になりやすいといわれています。ココアは食物繊維を豊富に含むため、便秘予防・解消に効果的です。また銅や亜鉛といったミネラルも多く含まれていますので、貧血にも効果的。妊娠中の健康管理にぜひココアを取り入れてみましょう。
ココアの効果 抗インフルエンザウイルス効果
ココアには多くの栄養が含まれていますが、その中でもカカオポリフェノールには抗インフルエンザウイルスの働きがあることが分かっています。ココアを飲まない時と比べると、ココアを毎日1杯飲むとウイルスに対抗するナチュラルキラー細胞を活性化がより上昇するという研究結果が出ています。※参照5
免疫力が低下して、インフルエンザなどの感染症にかからないよう毎日対策をしている妊婦にとっては、嬉しいニュースですね。ただし、ココアを飲んですぐ効果が出るわけではないですし、ココアは医薬品ではありませんのでご注意を・・インフルエンザが流行する前から毎日のココアを習慣にして少しでも予防するのがおススメです。
妊娠中に控えたほうがいい食べ物・飲み物について
妊娠中に控えたほうがいいといわれる食べ物や飲み物はたくさんあります。タバコやアルコールはもちろんのこと、生卵、うなぎ、生魚、レバー、カフェイン飲料、アルコール飲料など、妊娠中に控えたほうがいいとされるものは様々。
これらのたべものや飲み物がNGとされるのは、なんらかの形でおなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすリスクがあるため。たとえばレバーやうなぎに含まれるレチノール。過剰摂取するとおなかの赤ちゃんに先天性の異常が生じるリスクがあるといわれています。
アルコールやタバコに関しても同様で、妊娠中のアルコールには早産・流産や先天性異常のリスクがあり、また喫煙に関しても早産や流産をはじめ、前置胎盤、胎盤早期剥離が生じる確率が高まります。
このように食べ物や飲み物の中には、妊娠中は控えたほうがいいものや、摂取量に注意しなければならないものがあります。妊娠が発覚したら、どんな食べものや飲み物に注意しなければならないのか、早めに調べて確認しておくようにしましょう。
まとめ
妊婦さんがココアを飲むときに知っておきたいさまざまな情報をご紹介しました。妊娠中はカフェインの摂りすぎに注意すべきですが、ココアに関してはカフェインの含有量は少なく、さほど気にする必要はありません。
ただし市販のココア飲料には砂糖が多く含まれていますので、砂糖のたっぷり入ったココアを毎日何倍も飲んでいると、体重管理に失敗してしまうおそれも。妊娠中にココアを飲む際には摂取カロリーに注意し、体重増加につながらないように注意しましょう。
※参考1 日本産婦人科医会 飲酒、喫煙と先天異常
※参考2 世界保健機構 妊娠中および授乳中の健康的な食事の摂り方について
※参考3 食品安全委員会 食品中のカフェイン
※参考4 厚生労働省 妊婦・授乳婦
※参照5 ココアの抗インフルエンザウイルス効果 森永製菓ココアレポート