前置胎盤について知っておきたいこと

前置胎盤について知っておきたいこと 妊娠中

前置胎盤は妊娠の全期間をとおしてハイリスクな妊娠であるとされています。通常の胎盤の位置よりも低い位置、すなわち子宮口に近い位置にあるため、不正出血なども起こりやすく、前置胎盤と診断されたら特別な注意が必要になります。

ハイリスクといわれる前置胎盤ですが、妊娠初期に前置胎盤と診断されても、その後徐々に胎盤の位置が上がってくることもあり、妊娠中期になると前置胎盤が自然に治ることもあります。

前置胎盤が起こる確立はそれほど高くありませんが、昨今の高齢妊娠・高齢出産の流れの中でその件数は確実に増加しているといわれています。前置胎盤の原因や症状、そして対処法など幅広くご紹介していきますので、参考にしていただければと思います。

前置胎盤とは?

前置胎盤とは?

前置胎盤とはなんらかの理由により、胎盤が正常な位置よりも下方向にあり、子宮口の一部または全部を覆っている状態を指します。前置胎盤の原因や症状などについて詳しく見ていきましょう!

前置胎盤の原因とは?

着床位置

前置胎盤の発生する原因についてはいま尚研究が続けられており、確定的なことはいえませんが、子宮内膜の感染症や傷がある場合、喫煙の影響、高齢妊娠などが挙げられています。他にも、多胎妊娠や胎盤の形態に異常が認められる場合も前置胎盤の原因になることがあります。

とくに問題がない限り、受精卵は子宮口とは反対側、つまり子宮の奥(上部)に着床します。胎盤が形成されるのは、着床した部位になりますので、子宮口に近い場所に着床してしまうと、そこに胎盤が出来てしまいます。これが前置胎盤といわれるものです。

前置胎盤になりやすい人とは?

前置胎盤になりやすい人とは?

前置胎盤になりやすい人を挙げてみましょう。人工妊娠中絶手術を受けたことのある方、流産の経験のある方、帝王切開での出産をしたことのある方。さらに双子や三つ子などの多胎妊娠、高齢で妊娠された方、喫煙をされる方などは、そうでない方にくらべて前置胎盤になりやすいといわれています。

過去の妊娠において前置胎盤になったことのある方、子宮筋腫などの子宮の手術を受けたことのある方も前置胎盤になりやすいという傾向があります。初産婦さんよりも経産婦さんのほうが、前置胎盤になる確率が高いといえます。

前置胎盤が起こる理由とは?

前置胎盤が起こる理由を簡潔にまとめてみましょう。第一の理由として挙げられるのは、子宮内膜の炎症。子宮の手術や妊娠および出産により、本来受精卵が着床すべき場所である箇所に炎症や損傷が起こり、これにより着床できる部位が減少してしまい、結果として子宮下部に着床してしまう可能性が増えます。

これにより本来であれば、子宮の上部に胎盤ができるところ、子宮口に近い子宮下部に胎盤が出来てしまい、子宮口を塞いでしまいます。

喫煙に関しては、ニコチンにより血液の循環が悪くなり、これにより子宮の血流も悪化することにより、正常な位置に着床しにくいのではないか、と考えられています。

前置胎盤と低置胎盤の違い

前置胎盤と低置胎盤の違い

前置胎盤とよく似た症状に低置胎盤があります。この二つの違いは胎盤の位置にあります。低置胎盤は子宮口に近い低位置ではあるけれども、子宮口を塞いでいない状態、これに対して前置胎盤は一部あるいは全部が子宮口に接している状態を指します。

低置胎盤に関しては、前置胎盤に比べるとリスクは低いといえますが、それでも出産の際には前置胎盤同様、慎重な対応が求められます。

前置胎盤の種類について

前置胎盤は胎盤がどのように子宮口に接しているかによって三種類に分けられています。

全前置胎盤

全前置胎盤

胎盤が子宮口をすべて塞いでいるタイプで、三種類の中でもっともリスクの高い妊娠になります。胎盤が完全に子宮口を塞いでいるため、膣分娩で出産することは不可能になります。胎盤は子宮口を完全に覆い、胎盤の辺縁部分から内子宮口2センチ以上にまで及んでいます。

部分前置胎盤

部分前置胎盤

胎盤が子宮口を部分的に塞いでいる状態を指します。全前置胎盤にくらべると軽症といえますが、子宮口を部分的に塞いでいますので、胎盤の重みにより不正出血がいつ起こってもおかしくありません。

辺縁前置胎盤

辺縁前置胎盤

胎盤のはしと子宮口がぎりぎり接しているタイプをさします。胎盤は子宮口にかぶさってはいないものの、両者は互いに接した状態になっていて、三つの中ではもっとも軽症となります。

前置胎盤の症状とは?

前置胎盤の症状とは?

前置胎盤の症状ですが、初期の場合無症状なことが多く、切迫流産のようにおなかの痛みを感じるということはありません。唯一の症状は出血になりますので、おなかの痛みを伴わない出血があったら、すぐに病院に連絡するようにしましょう。

警告出血には要注意

警告出血には要注意

妊娠30週ごろから臨月にかけて、お腹の張りや前駆陣痛が頻繁に起きるようになります。通常ならば何の問題もありませんが、胎盤が子宮口を覆っていると、子宮収縮の動きが影響して胎盤が剥がれてしまうことがあります。

その状態を放置すると大出血を引き起こし、赤ちゃんも危険な状態になってしまうのですが、警告出血と呼ばれる前兆を知ることで状況悪化を防ぐことができます。

警告出血とは突然起こる膣からの少量出血ですが、後に大出血が発生する可能性があるので、前置胎盤だと診断されている方は日頃から出血の有無を意識して過ごすようにしましょう。

前置胎盤の診断

前置胎盤の診断は経膣超音波検査により行われます。前置胎盤と診断されたら、とりあえず安静にすることが重要です。

妊娠初期の前置胎盤

妊娠初期の前置胎盤 安静

妊娠初期の段階で出血やおりもの状の出血があり、検査の結果胎盤の位置が低いと診断されたら、とりあえず自宅で安静ということになります。

これは低置胎盤でも前置胎盤でも同じことで、仕事をしている方は一時的に休職を余儀なくされることもあります。主婦の方の場合も、医師の指示に従い、自宅で安静、家事や買い物も出来るだけ避けなければなりません。また出血がひどい場合や他にも何か問題が生じている場合には、入院して様子を見ます。

妊娠初期の前置胎盤はその後胎盤の位置が上に上がってくる可能性が高いので、この時点で前置胎盤と診断されても妊娠週が進んでいくと自然に治ることもあります。

妊娠中期の前置胎盤

妊娠中期の前置胎盤

妊娠初期同様、妊娠中期の段階で胎盤の位置が低いと診断されても、それはあくまでも「前置胎盤疑い」ということになり、最終的な判断は妊娠第31週から34週目まで持ち越されます。

妊娠週が進むにつれて胎盤が上に上がってくるようであれば心配ありませんが、反対に出血が起きる場合には切迫早産や切迫流産が起きる恐れもありますので、慎重に様子を見ていくことが必要になります。

妊娠後期の前置胎盤

妊娠後期の前置胎盤

妊娠第31週以降になっても胎盤の位置が上に上がらない場合、前置胎盤という診断が下され、母体と赤ちゃんの安全のために帝王切開手術による出産が選ばれます。妊娠第28週目前後から出血が見られる場合には入院が必要になります。

前置胎盤と診断されたら

前置胎盤と診断されたら

妊娠初期および中期では「前置胎盤の疑い」、31週目から34週目以降は「前置胎盤」と診断名は異なりますが、いずれにしろ胎盤の位置が通常よりも低いと診断されたら、まずは安静にして、不必要な外出や体に負担のかかることは一切控えなければなりません。

低置胎盤も前置胎盤も安静にしていなければ、流産や早産の恐れがあります。前置胎盤と診断されたら医師の指示にきちんと従うようにしましょう。

前置胎盤のリスクとは?

前置胎盤のリスクとは?

前置胎盤は高齢妊娠や不妊治療による妊娠が増える中、前置胎盤の件数は確実に増加しています。

現在のように医療が発達する以前には、前置胎盤での出産には多大なリスクが伴ない、最悪の場合母子の命にも危険が及ぶことがよくありました。

現在では超音波検査の精度や医療技術が向上し、前置胎盤の早期発見が可能になったため、母体および赤ちゃんの生命へのリスクは大幅に減少しています。しかしながら前置胎盤にはやはりリスクがあり、定期的に医師の診断を受け、適切な対処法を取らなければなりません。

早産のリスク

早産のリスク

胎盤の位置が低いまま妊娠27週、28週を超えてしまうと、30週に至らないうちに不正出血が起こり、そのまま帝王切開での早産になる可能性が非常に高いといえます。

前置胎盤による出血は痛みを伴わないため、緊急性が薄いように感じる方もいるかもしれませんが、前置胎盤の場合、出血があったにも関わらずそのまま放置しておくと、出血が止まらなくなることもあります。たとええ少量でも出血があった場合にはすぐさま病院に連絡するようにしましょう。

予定帝王切開での出産

予定帝王切開での出産

前置胎盤の場合、基本的には出産は帝王切開による計画分娩になります。胎盤が子宮口を塞いでいるため、経膣分娩での出産を行うと大量出血を起こしてしまい、母体と赤ちゃんの両方に危険が及んでしまいます。

帝王切開を行う時期は母体や赤ちゃんの様子を見ながら決定しますが、通常は出産予定日よりも前、出来れば妊娠37週目までに行うことが望ましいとされています。

癒着胎盤

癒着胎盤

前置胎盤は胎盤が子宮口を塞いでいるだけでなく、胎盤と子宮が癒着するという合併症を併発することもあります。癒着胎盤とは胎盤が子宮筋に強固に吸着している状態を指します。癒着胎盤になると、赤ちゃんを分娩したのちに胎盤が剥がれ落ちずに、その結果大出血が生じてしまいます。

癒着胎盤の原因は前置胎盤と同じようなものになります。前置胎盤のうち癒着胎盤を併発しているケースは少ないですが、医師は、前置胎盤と診断された妊婦さんに関しては、癒着胎盤の可能性もあることを念頭において計画分娩を行うことになります。

前置胎盤の帝王切開手術

前置胎盤の帝王切開手術

妊娠31週目になっても胎盤の位置がそのまま子宮口を覆っている状態であれば、「前置胎盤の疑い」ではなく「前置胎盤」との診断が確定されます。

前置胎盤では経膣分娩はほとんどの場合可能ではありませんので、必然的に帝王切開による出産が行われることになります。帝王切開を行う日にちは医師がさまざまな要素を考慮に入れた上で決定しますが、通常は妊娠37週を目安に帝王切開手術で赤ちゃんを取り出すことになります。前置胎盤の帝王切開手術のポイントについて見ていきましょう。

出産予定日よりも前に予定帝王切開を行う

出産予定日よりも前に予定帝王切開を行う

前置胎盤の場合、出産予定日を待たずにその前に帝王切開手術を行うことになります。帝王切開を行う日にちに関しては、医師がすべての要素を考慮に入れた上で決めることになります。

予定帝王切開を行う時期ですが、妊娠37週目から遅くとも38週目のはじめまでという場合がほとんどですが、子宮が収縮を始めると出血が必ず起こるため、出来れば37週目までに行うことが多いようです。

予定帝王切開よりも前に出血が起こった場合

予定帝王切開が決定されていたとしても、その前に出血が起きてしまった場合には、可能であれば入院して子宮収縮抑制剤を用いて妊娠を継続させます。これが可能でない場合には、急遽帝王切開手術を行い、赤ちゃんを取り出すことになります。

輸血用の自分の血液の確保

輸血用の自分の血液の確保

帝王切開手術を行ったとしても、出血量が多くなる恐れを捨てきれないのが前置胎盤のリスク、このため予定帝王切開を行う前に、あらかじめ自分の血液を輸血用として確保しておくことも必要になります。

確保しておく量は1リットル程度で、これは自己血貯血と呼ばれています。34週から35週目にかけて2、3回に分けて少しずつ自分の血液を採決し、貯めておく貯血法が用いられます。

貧血対策を行うこと

貧血対策を行うこと

妊娠中の女性は自分の体だけでなく、赤ちゃんの体にも酸素や栄養を供給しなければならないため、妊娠前よりもさらに貧血対策が重要になります。貧血になると血圧が下がってしまい、その結果出産の際の出血が思いのほか多くなってしまうことがあります。

これは前置胎盤であるかどうかにかかわらず、すぺての妊婦さんに共通することですが、とくに前置胎盤の方は出産の際の出血が多くなりがちなので、貧血予防を念入りに行わなければなりません。自己血貯血を行う方も同様に、十分に貧血対策を行っておくようにしましょう。

予定帝王切開の費用

予定帝王切開の費用

正常な自然分娩の場合は健康保険の適用を受けることができませんので、分娩費用は自己負担になりますが、帝王切開の場合は医療行為になりますので保険が適用されます。

帝王切開の費用に関しては保険により費用は三分の一程度の負担になりますが、手術費用や手術に関する処置代や薬代以外のものに関しては、自由診療となり全額負担ですので注意しましょう。結果として、帝王切開による出産でも通常分娩とほぼ同程度の費用がかかる場合がほとんどになります。

二人目以降も前置胎盤は繰り返すのか?

二人目以降も前置胎盤は繰り返すのか?

上の子の妊娠中前置胎盤で辛い思いをした方は、次の妊娠でも前置胎盤を繰り返すのでは、と心配になってしまうのも無理はありません。

ただ、前置胎盤になりやすい方に当てはまっても実際は前置胎盤にならずに出産したり、体調を万全にしていても前置胎盤になってしまう方もいて、一概に前置胎盤を繰り返しやすいとは言えないようです。

ただし、前回前置胎盤で帝王切開をした方は傷跡が残り、適切な場所への着床を妨げたり、第二子以降の妊娠に時間がかかり高齢となってしまった場合には、前置胎盤になりやすいタイプに複数当てはまるので、その分前置胎盤を再び起こす可能性が高くなるでしょう。

まとめ

妊娠出産においてもっともリスクの高い症状の一つ、前置胎盤について知っておきたいさまざまな情報をご紹介しました。本来胎盤は子宮口とは反対側、すなわち上のほうに出来ますが、前置胎盤は子宮口を覆う形になるため、自然分娩が不可能になります。

妊娠初期や中期の段階で前置胎盤と診断されても、その後赤ちゃんの成長とともに徐々に胎盤の位置は上に上がってくることもあります。前置胎盤と診断されても慌てず、かかりつけの医師の指示とアドバイスをきちんと守り、出産に備えましょう。

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