待望の赤ちゃんがもし「逆子」と診断されたら。逆子の出産は高いリスクを伴います。さらに出産時だけでなく、お腹の赤ちゃんが逆子だと出産前にも多少の問題が生じることがあります。
たとえば逆子の場合、赤ちゃんの体の中でもっとも動きの激しい足が子宮口近くにあり、赤ちゃんが足を動かすたびに子宮が刺激され、お腹に痛みや張りを感じたりすることもあります。このように妊婦さんにとって逆子をなおすことは、非常に重要な意味を持ちます。
逆子と診断されたときに覚えておきたいポイントや逆子の原因、種類からなおし方、出産に関する知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。
逆子とは?
逆子の正式な医学名は「骨盤位」、お母さんのお腹の中で、胎児が正常な体位と反対の位置にあることを指します。
正常な場合、赤ちゃんは頭部を子宮口に向けた姿勢を取りますが、逆子の場合はこれが逆、赤ちゃんの足、膝、臀部のいずれか、あるいはこの中の二つが子宮口に向けられた体勢を取っています。
逆子になる原因とは?
逆子になる原因に関しては、母体側に問題がある場合、胎児側に問題のある場合、そして原因がはっきりと特定できない場合があるとされています。母体側の問題としては、羊水量が過剰あるいは過小であること、子宮筋腫のある位置が悪く、胎児の動きが圧迫されている、子宮奇形などが挙げられます。
他方、胎児側の問題としては、双子や三つ子の赤ちゃんで子宮内のスペースが十分でない場合や、水頭症で頭部が大きすぎる場合、未熟児で頭の重さが十分でなく、子宮口に向きにくい場合などがあります。
逆子になりやすい人とは?
お腹の赤ちゃんが逆子になりやすいタイプとはどんな方でしょうか。すべての場合に当てはまるというわけではありませんが、お母さんが冷え性だと逆子になる可能性がやや高いといわれています。
それだけでなく冷え性は、女性の健康全般に芳しくない影響を与えますので、妊娠中の方や妊娠を希望されている方は、日頃から体の血流を良くするようにしましょう。
逆子になる確率はどのくらい?
逆子は決して珍しいことではありません。妊娠中期までは全体の約5割以上の赤ちゃんが逆子だといわれています。妊娠初期は胎児が小さく体重も少ないため、羊水の中を自由に泳いでいる状態ですが、妊娠中期の終わりに入るとだんだんと動き回るスペースが少なくなります。
中期、後期と週数が進むにつれて、赤ちゃんの頭は大きく重くなってきますので、通常の場合30週目以降になると、それまで逆子だった人も自然に治るようになります。
逆子の種類について
逆子には数種類のタイプがあり、これにより出産時のリスクの大小が変わってきます。逆子というと、頭を上に、足を下、すなわち子宮口にしている胎児のイメージが思い浮かびますが、実際にはどのような体勢を取っているのでしょうか。
逆子の種類は大きく分けて三つ、1、足が下にあるタイプ、2、膝が下にあるタイプ、3、臀部(でんぶ=おしり)が下にあるタイプになります。
それぞれのタイプをさらに細かく分けていくと、
両足が一番下にある状態で足が伸びている「全足位」
片足が下に伸びている状態「不全足位」。
両膝が曲がり下にある状態「全膝位」、
片膝が曲がりもう片方の足が立っている状態「不全膝位」
そして臀部(でんぶ=おしり)がもっとも下に位置している状態、Vの字「単殿位」
臀部(でんぶ=おしり)と両足が下にある状態「全複殿位」
臀部(でんぶ=おしり)と片足が下にある状態「不全殿位」
逆子は予防できる?
逆子は予防できるのでしょうか。逆子の原因で見たように、逆子になってしまうには母体側と胎児側の二つの原因があり、逆子になるのを予防することはまず出来ないといわれています。
多胎や子宮の奇形など、先天性のものや多胎など誰にも変えることの出来ないことに関しては仕方ありませんが、冷え性や寝方の悪さなど、生活習慣に関わるものは出来るだけ意識して気をつけるようにしましょう。冷え性が妊婦さんに良くないことは自明のこと、お腹は出来るだけ冷やさないようにしてください。
逆子になりにくい寝方とは?
逆子を完全に予防することは出来ませんが、出来るだけ逆子にならないようにするには、寝方を工夫するとよいといわれています。中期以降、お腹が大きくなってくると、仰向けで寝るのが辛くなります。
この場合は「シムスの体位」のように、体の片側を下にし、抱き枕やクッションを抱いて寝ると楽になります。
また逆子の胎動がおなかや脇腹の右側で感じられる場合には、体の左側を下にし、反対にお腹や脇腹の左側に胎動を感じる場合には、体の右側を下にして寝るようにすると、逆子がなおることがあります。
逆子になりやすい姿勢とは
逆子だといわれている方や逆子になったらどうしようと不安になっている方は、一度自分の姿勢を確認してみましょう。猫背になったり、お腹をかばうように丸くなっていませんか?実はその姿勢こそが逆子になりやすい姿勢だと言われているのです。
かがむような姿勢になると子宮が圧迫されて赤ちゃんが動くスペースが少なくなってしまい、逆子の位置になったまま戻らない事が多く、通常の姿勢だけでなくお風呂掃除などの姿勢も影響している可能性があります。
お腹が大きくなるにつれて、楽だからと前かがみの姿勢になってしまう妊婦さんも多いですが、逆子が気になるのでしたら、背筋を伸ばすストレッチをして姿勢を正す習慣を身につけましょう。
逆子と診断されたら
妊娠中期の段階で逆子と診断されてもさほど不安に思う必要はありません。妊娠中期までは胎児の動きが大きく、逆子になることもよくあります。出産前まで逆子の状態が続くという例は非常に稀なので、逆子であるということをくよくよ悩むよりも、逆子をなおす体操や寝方を工夫することを考えましょう。
逆子の胎動について
逆子の場合、胎動を感じる位置が通常とは異なります。そもそも胎動がいちばん強く感じられるのは、胎児の足の部分。胎児がお腹の中で、足を大きく蹴ったり、突き出したりという動きをすると、それが胎動として感じられるようになります。
逆子の場合、胎動を感じる場所は「頭位」の場合とは異なります。例を挙げると膀胱や肛門を強く蹴られるような感じがあったり、足の付け根や鼠径部に痛みを感じることがあります。
またお尻が下にある「殿位」の場合は足先は上を向いているため、脇腹付近やおへその下辺りに胎動を感じることもあるようです。逆子といっても足のある位置により、胎動を感じる場所は異なりますので、気になる方は胎動にもよく注意を払うようにしましょう。
逆子はなおせる?
逆子はほとんどの場合、赤ちゃんが成長し、大きくなることにより、分娩にもっとも楽な姿勢である「頭位」を取るようになります。頭は体の中でもっとも重く、他にとくに問題が無ければ、妊娠30週前後には胎児は自然にこのポジションを取るようになります。
30週目を過ぎてもなおらない場合には、逆子をなおす体操や運動を積極的に行うようにします。また寝方を変えて、赤ちゃんが動きやすいようにするなどの工夫も求められています。
逆子直しに最適な時期は
逆子を直すのに最適な時期は、妊娠28週~32週ごろと言われています。妊娠28週以前に逆子と指摘されても、赤ちゃんはまだ小さく毎日羊水の中で姿勢をころころ変えていますから、この時点で逆子を直しても再び逆子の状態に戻ってしまいます。
また、妊娠32週の赤ちゃんの体重は1500g~2200gとかなり大きくなり、これ以降更に体重も身長もどんどん成長していきます。この体重になってしまえば子宮内にスペースがなく、逆子を治すチャンスが訪れたとしても回る事が難しくなってしまいます。
妊娠32週以降でも逆子が治らないわけではなく、出産ギリギリになって治ったというケースもありますので、分娩までは諦めず逆子直しの方法を続けてください。
逆子をなおす方法
逆子をなおすにはいくつかの方法があります。妊娠30週を過ぎてもいまだに逆子がなおっていない場合は、逆子体操を行い、赤ちゃんの向き変えるよう頑張りましょう。逆子体操は簡単な動きを行うことにより、赤ちゃんの体勢が正常な状態に戻る手助けを行います。
他には医師が妊婦さんのお腹の上から手で赤ちゃんの向きを変える「外回転術」という方法もあります。この方法のメリットは成功した場合、帝王切開することなく、自然分娩で出産できるということ。
ただし母体と胎児の状態によっては、この方法を用いることが出来ない場合もありますので、医師の判断と妊婦さん本人や家族の希望次第ということになります。
逆子体操に関する注意
一般的に逆子体操は逆子をなおすのに効果があるといわれていますが、妊婦さんの体の状態によっては勧められない場合もありますので、逆子体操を行う前には必ず医師や助産婦さんと相談するようにしましょう。
また万が一体操を行っている最中に、お腹の張りを感じた場合には即刻やめ、安静にしなければなりません。
逆子体操を行う際には決して無理をしないよう、ゆったりとした気持ちで休み休み行うようにしましょう。
逆子体操のやり方
逆子体操にはいくつかのやり方があります。まずもっとも基本的なのが「胸膝位」、ひざを立てた状態で四つん這いの姿勢になり、胸の部分を床に着けるようにして、お尻は上方向に持ち上げます。
出来ればこのままの姿勢を10分から15分程度維持します。そのあとそのまま立ち上がるのではなく、体の片側を下にするシムスの体位を取り休息しましょう。
他には仰臥位と呼ばれる仰向けになる体勢があります。仰向けになり腰の下に柔らかいクッションや座布団を置き、腰を持ち上げます。この際絶対に無理しないよう、腰やお腹の調子を見ながらゆっくり行うようにします。
逆子体操の効果のほどですが、最近の研究では逆子をなおすのにあまり効果は見られないというものもあり、産婦人科によっては、逆子体操をあまり勧めないところもあります。いずれにしろ、自己判断ではなく、主治医とよく相談して行うようにしましょう。
お灸の効果あり?
お灸もまた逆子をなおすのに効果があるといわれています。効果のほどに関しては個人差があり、すべての妊婦さんに対して効果的とはいえませんが、お灸は昔から伝統療法として逆子をなおすために用いられてきたという背景があります。
逆子をなおすためにお灸を用いる際は、まずは医師の了解を取り、知識と経験のある鍼灸師のもとで行うようにしましょう。
お灸とともにツボ刺激により、逆子をなおすという方法もありますが、これも同様にツボの正確な位置を心得て行わなければ、効果は上がりません。お灸やツボ刺激を行う際には、これらの点についてよく注意するようにしてください。
外回転術について
医師が妊婦さんのお腹の上から手によって、赤ちゃんの位置を「頭位」に変える外回転術。熟練した医師により行われると、短時間でくるっと赤ちゃんの向きが頭位に変わりますが、施術の際に痛みを伴うことがあります。
またお腹の張りを防ぐため、施術を行う前には張り止めの薬が処方され、麻酔をかけて行わなれますので、入院が必要になる場合もあります。
外回転術は破水や出血などの多少のリスクを伴いますが、合併症などが起こる確率はごくわずかだといわれています。どうしても帝王切開を避けたい場合には有効な方法になりますが、母体や胎児の状況によっては施術が無理な場合もあります。どちらにしても、主治医とよく相談することが必要になります。
逆子の出産時のリスク
逆子の場合、出産時のリスクが高まり、医師の判断により帝王切開が行われることもあります。出産時のリスクが高い理由は、逆子の赤ちゃんは出産のとき、体の中で比較的小さい部分である足や膝から先に出てくるからです。
足や膝は容易に出てきたにも関わらず、体の中でもっとも大きい部分である頭部がなかなか出てこない。これにより分娩が長引き、最悪の場合胎児への酸素の供給が滞ってしまうなどの問題が発生します。
足及び膝が下にある逆子が非常にリスクが高いのに対し、臀部が下に向いた「殿位」の場合、主治医の判断次第では、頭が下にある「頭位」同様、通常分娩での出産が可能になる場合もあります。
足や膝が下にある場合、出産前にもリスクがあります。足や膝が子宮口を刺激することにより、お腹が張りやすくなり、何かの拍子に破水が起こることもあり得ます。
頭位の場合、赤ちゃんの頭が栓のはたらきをして、破水が起こっても臍帯などが出てしまうことはありません。しかし足や膝が下にある場合には、時として赤ちゃんの生存に不可欠な臍帯が出てしまい、母子ともに危険な状態に見舞われることがあります。
分娩外傷
逆子の出産にはリスクを伴います。主なリスクとして挙げられるのは分娩の際に胎児が傷ついてしまう「分娩外傷」、その他臍帯が出てしまい赤ちゃんが仮死状態に陥ったり、また分娩に時間がかかりすぎたために死産に終わってしまうこともあります。
初産の方は出来るだけ経膣分娩を希望されるかと思いますが、このようにリスクの大きい逆子の場合、ほとんどの病院では赤ちゃんと母体の安全を最優先し、帝王切開による出産を前提にしています。
帝王切開を決めるタイミング
臨月になっても逆子がなおっていない場合、帝王切開にすべきか、それとも経膣分娩になるかを判断しなければならない時期が来ます。一応の目安として36週になってもまだ逆子である場合には、母体と胎児の安全を第一に考え、帝王切開を行ったほうが良いと判断されることがほとんどです。
通常分娩が可能な場合
逆子であっても条件さえ整っていれば、普通分娩で出産することが可能な場合もあります。具体的な例としては、赤ちゃんの体位がお尻が下にある体位「単殿位」であり、且つ赤ちゃんの体重が2000グラムから3000グラムの範囲にあることなど。他にも臍帯の位置や胎児の心拍数など、普通分娩が可能かどうかの判断は個々のケースにより異なります。
あまり神経質にならないで
ほとんどの場合は妊娠第28週から32週目前後までにはなおってしまうことが多く、それほど神経質になる必要はありません。
30週前までであれば、逆子と診断されてもあまり心配せず、とりあえず楽な寝方を工夫する、運動不足にならないように注意するなどして、健康なマタニティライフを送れるよう努力しましょう。
ここまでのまとめ
逆子と診断されたときに役に立つポイントをご紹介しました。たとえ逆子と診断されても、ほとんどの場合臨月になる前に赤ちゃんが自然に自分で向きを変えるものです。
逆子と診断されても焦らずにゆったりとした気持ちで構えることが肝心。お母さんが不安な気持ちでいると、お腹の赤ちゃんにもなんとなくその気持ちが伝わってしまうもの。逆子がなおりやすい寝方や動きを取り入れ、臨月前には逆子がなおるように努力してみましょう。