妊婦がうなぎを食べるときに知っておきたいこと

妊婦がうなぎを食べるときに知っておきたいこと 妊娠中

妊娠をすると、日常生活のさまざまな場面で注意しなければならないことが増えてきます。疲れないようにする、規則的な睡眠を取る、栄養バランスの取れた食事を心がけるなど、妊娠全期間を通して、妊婦さんには規則正しい、健康的な生活を送ることが求められています。

これは食事の内容についても同様で、妊娠中は出来るだけ避けたほうがいいといわれる食べ物がいくつかあります。妊娠中に避けるべきといわれる食べ物の代表は生肉や生魚など、他にもレバーやうなぎについても、妊娠中は食べないほうがいいという話があります。

レバーやうなぎには多くの栄養素が含まれていますので、妊婦さんにとっては摂取するのが望ましいのでは?と思われますが、実際にはどうなのでしょうか?

妊娠中はうなぎを食べていいの?悪いの?という疑問やどうして妊婦さんはうなぎを食べてはいけないといわれるのか、その根拠や信憑性などに関して知っておきたいポイントをご紹介します。

妊婦はうなぎを食べてはいけない?いいの?

妊婦はうなぎを食べてはいけない?

妊娠中はうなぎを食べてはいけないといわれていますが、その理由は何でしょうか?妊娠中はおなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすおそれのある食べ物は避けなければなりません。うなぎに含まれるどの成分が赤ちゃんに悪影響を及ぼすのでしょうか?

食べてはいけないのではなく、食べ過ぎてはいけない成分がうなぎには含まれていますので注意が必要です。

うなぎの食べすぎが注意すべきの理由?

うなぎの食べすぎが注意すべきの理由?

妊婦さんはうなぎを食べないほうがいいとされる理由は、うなぎに含まれるビタミンAレチノールにあります。

妊娠初期の段階でレチノールを過剰摂取すると、胎児に先天性異常があらわれるリスクがあり、このために妊娠3ヶ月目まではとくに注意が必要とされています。上限摂取量の範囲内でしたら問題ありません。

うなぎは食べる量に注意し、食べすぎないことが大切です。

レチノールとは?

レチノールとは?

レチノールとはビタミンAを構成する成分のひとつ、ビタミンAの体内での主なはたらきは目の機能が正しくはたらくように整えること、他にも皮膚や粘膜の細胞を活性化し、免疫機能を高めるはたらきなどがあります。

体内でビタミンAが欠如すると夜盲症、肌の異常乾燥、骨・歯のトラブルなどが発生します。

レチノールを多く含む食品とは?

レチノールを多く含む食品とは?

レチノールを多く含む食品をいくつか挙げてみましょう。鶏レバー、豚レバー、あんこう肝、うなぎ(肝を含む)、ほたるいか、牛肉レバーなど。これらの食品を食べる際には摂取量に注意する必要があります。他にも量は上記の食品よりも少ないもの、バター、鶏卵、マーガリン、チーズなどにも含まれています。

レチノールの量を多く含む順に並べてみると、1、鶏レバー、2、豚レバー、3、あんこうの肝、4、うなぎの肝、5、うなぎ、6、ほたるいか、7、牛レバー、8、銀だら、9、あなご、10、鶏のはつ、となります。

緑黄色野菜のβカロチンを積極的に

緑黄色野菜のβカロチンを積極的に

レチノールは動物性のビタミンAですが、緑黄色野菜に含まれるβカロチンは体内でビタミンAと同じはたらきをします。レチノールの悪影響を防ぎながら、ビタミンAを確実に摂取したい場合には、緑黄色のβカロチンを積極的に摂取することがお勧めです。

βカロチンは体内に入った段階でビタミンAの量が不足していなければ、ビタミンAに変換することはありません。このためβカロチンには過剰摂取のリスクはありませんので、妊娠中でも安心して食べることが出来ます。

βカロチンを多く含む野菜とは、にんじん、かぼちゃ、ピーマン、ほうれん草、小松菜など。βカロチンは油で調理すると吸収率が上がるといわれています。

レチノールが赤ちゃんに及ぼす影響とは?

レチノールが赤ちゃんに及ぼす影響とは?

レチノールの過剰摂取はおなかの赤ちゃんにどんな悪影響を及ぼすのでしょうか。妊娠中、とくに最初の3ヶ月間にレチノールを過剰に摂取すると、赤ちゃんに先天性奇形障害が出る確率が増加するといわれています。

先天性奇形とは水頭症や口蓋裂症をはじめ、耳の形成異常など。レチノールを多く含む食材を食べる際には、メニューごとにどの程度のレチノールが含まれているか、きちんと把握しておくことが必要です。

ビタミンAの一日の摂取限界量とは?

ビタミンAの一日の摂取限界量とは?

妊娠中のビタミンAの一日の摂取上限量は、2700 μgRAE(レチノール活性当量) とされています。これはあくまでも上限量で、摂取推奨量は一日650-700 μgRAE程度になります。

胎児に先天性奇形などのリスクが生じるのは、この上限量をはるかに越える量を毎日繰り返し摂取した場合ですので、1日だけ上限量を超えたからといって、そのまますぐに問題が生じるわけではありません。

通常の食事ではまずこの上限量を超えることはありませんが、サプリメントを飲んでいる場合にはとくに注意が必要です。またレチノールはうなぎやレバーなどのレチノールの含有量が多い食べ物だけでなく、バターや卵の黄身、チーズなどにも含まれていますので、トータルとして上限量を越えないよう注意しましょう。

うなぎに含まれるレチノールの量とは?

うなぎに含まれるレチノールの量とは?

うなぎに含まれるレチノールの量について詳しく見ていきましょう。うなぎに含まれるレチノールの量を把握しておくと便利です。以下にうなぎに含まれるレチノール量について記載してみましたので参考にしてください。

うなぎの蒲焼100g(養殖・天然、市販の蒲焼の3分の一程度、二切れ強) 1500μgRAE

うなぎの肝4400 μgRAE

鰻丼を食べた場合のレチノール摂取量は、上記のうなぎの蒲焼100gから計算すると、約3000から3500μgRAE程度になります。

うなぎを食べる際の注意事項

うなぎを食べる際の注意事項

妊婦さんの1日の上限摂取量は2700μgRAEですので、うなぎの蒲焼を一人前食べてしまうと、それだけで1日の上限量を超えてしまいます。ただし、上限量を超えた量を一回食べたからといって、そのままおなかの赤ちゃんに問題が生じるわけではありません。

先天性の奇形などの障害のリスクが生じるのは、上限量を超えた量を毎日繰り返し摂取した場合ですので、必要以上に不安に思う必要はありません。食べたいときは、食べる量に注意し、食べすぎないようにしましょう。

うなぎパイは食べても大丈夫?

人気のお菓子「うなぎパイ」は、独特の味で人気の浜松銘菓。お土産でもらうことも多いうなぎパイですが、うなぎパイには実際に鰻の成分が含まれています。妊娠中にうなぎパイを食べる際には、よほど食べすぎなければば問題ありません。

サプリメントの摂取の注意点

サプリメントの摂取の注意点

ビタミンAのリスクのほとんどは、サプリメントを服用することで生じるものといわれています。食事を通して摂取するレチノールの量はどんなに多くても、ほとんどの場合許容範囲内に収まるとされていますが、サプリメントの場合は別です。

ビタミンAを含むサプリメントを常用している方は、妊娠していると分かった時点で服用しているサプリメントの含有栄養素や含有量をきちんと確認するようにしましょう。

自分では判断できない方は、定期健診を受けている産婦人科で医師や助産婦さんに相談し、服用しても問題ないかどうか確認するようにしてください。

ビタミンAが欠乏すると

ビタミンAが欠乏すると

レチノールに関しては過剰摂取がクローズアップされがちですが、ビタミンAの欠乏にもまた一定のリスクがあります。ビタミンAの欠乏によりあらわれる症状をいくつか挙げてみましょう。

レチノールの欠乏によるもっとも深刻な症状は夜盲症、その他にも免疫機能の低下、皮膚トラブルなどを挙げることが出来ます。

またビタミンAの欠乏はおなかの赤ちゃんの発達形成に障害をもたらす場合があるといわれています。単眼症などの症状がそれで、ビタミンAの著しい欠乏により、先天性奇形をもたらすリスクがあります。

妊娠中は継続的に食べる量に注意を

妊娠中は継続的に食べる量に注意を

妊娠初期のレチノールの過剰摂取は、おなかの赤ちゃんの先天性異常の原因になるおそれがあると述べましたが、では妊婦さんはいつからうなぎを食べても差し支えないのでしょうか?

妊娠初期は胎児に対するリスクがもっとも高い時期ですが、たとえこの時期であっても、上限量を超えない範囲であり、且つ毎日食べるというのでなければ、とくに問題はないとされています。

妊娠初期を過ぎて安定期に入ったら、量を気にすることなく、うなぎを食べてもいいと考えている方もいるかもしれませんが、これは間違い。妊娠中期に入っても、レチノールの上限量は必ず守るようにしましょう。

また妊娠初期の3ヶ月間だけでなく、妊娠前の3ヶ月に摂取することも、おなかの赤ちゃんに対してリスクがあるといわれていますので、妊活中の方は妊娠中と同じようにレチノールの摂取量の上限を守るようにしましょう。

レチノールの過剰摂取による害

レチノールの過剰摂取はたとえ妊娠中でなくても、健康に害を及ぼすおそれがあります。ビタミンAの過剰摂取には急性と慢性の二種類があり、どちらの症状も健康上の害を及ぼします。

急性・慢性ビタミンA過剰症

急性・慢性ビタミンA過剰症

急性ビタミンA過剰症により生じる症状は、意識障害、吐き気、嘔吐、めまいなどになります。慢性のビタミンA過剰症は上記の症状以外に、食欲不振、皮膚トラブル、倦怠感、だるさ、手足のしびれや痛みなどの症状を伴います。

ビタミンA過剰症の原因はサプリメントの摂取によるものがほとんど。通常、普通に食事をしている分には、ビタミンA過剰症に陥ることはないといわれています。ビタミンA過剰症の予防には、普段から栄養が偏らないよう、たくさんの食材を満遍なく摂取することが必要です。

妊娠中に食べる時に注意が必要なものとは?

うなぎ以外にも妊娠中に摂取しないほうが良い食べ物があります。うなぎ同様、これらの食べ物についても、摂取量や食べ方に十分注意しなければ、自分自身と赤ちゃんの健康を損なうおそれがあります。

カフェイン

カフェイン

カフェインの過剰摂取はおなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすおそれがあります。カフェインの飲みすぎには注意し、適切な量を守るようにしましょう。

一日2、3杯であれば差し支えないとされていますが、コーヒーだけでなく、紅茶や緑茶を一日に何杯も飲む習慣のある方は、コーヒーだけでなくカフェイン全体の摂取量が許容範囲を超えないように、十分注意しましょう。

生もの(刺身、寿司、肉)

生もの(刺身、寿司、肉)

生肉、生卵、生魚は出来るだけ控えたほうがよいとされています。生肉に関してはトキソプラズマなどの感染症にかかる恐れがあります。生魚に関しても同様で、御鮨や刺身を食べる場合には、鮮度に十分注意しましょう。

またまぐろなどの大型の魚には水銀が多く含まれている可能性があります。大型の魚は食べ過ぎないように注意する必要があります。魚を食べる際のポイントは、食べる量や鮮度に注意すること。これさえ守れば、たまに御鮨を食べる程度であれば問題ないとされています。

生卵に関しても、サルモネラ菌などによる感染のリスクがあります。どうしても食べたいときは、鮮度のよい、良質なものを選ぶようにしましょう。

生もの全般

生もの全般

生肉、生魚、生卵だけでなく、生野菜や果物を食べる際にも注意が必要です。生野菜や果物を食べる際には、きれいに汚れを洗ってから食べるようにしましょう。

鮮度の落ちたものは避け、鮮度に少しでも落ちているものは加熱調理をして食べたほうが安心です。

レバー

レバー

うなぎと並び、レチノールの含有量の多いのがレバー。とくに鶏レバーおよび豚レバーに含まれるレチノールの量は多いので、特別な注意が必要です。

ちなみに鶏レバー50gに含まれるレチノールの量は、約7000μgRAE、豚レバー50gに含まれるレチノールの量は6500μgRAE、牛レバー50gでは5500μgRAE。レバーに含まれるレチノールの量は非常に高いので、焼き鳥を食べる際には食べすぎに注意しましょう。焼き鳥一本のグラム数は30g、妊娠中はレバーは出来るだけ控えたほうが良さそうです。

うなぎの栄養は産後にこそ必要に

うなぎの栄養は産後にこそ必要に

妊娠中うなぎを避けると、産後も習慣でうなぎを避けてしまうかもしれません。しかし、うなぎは産後にこそ必要なものです。うなぎはビタミンAに加えてたんぱく質が多いため、赤ちゃんに栄養を摂られてしまった肌や髪の毛をきれいにしてくれますし、カルシウム含有量も多いので、産後もろくなってしまった歯や骨もサポートします。

また、その他のビタミン・ミネラルも多く含まれているので、産後の早い回復に役立つでしょう。またうなぎは蒲焼だけではなく、卵焼きやおにぎりの具にもできます。

新生児の頃は赤ちゃんの世話に追われて、お母さんは満足に食事をする時間も取れませんが、片手で出来る食事の中に上手くうなぎをプラスしていくと、手軽に不飽和脂肪酸やビタミン・ミネラルを取れますので、ぜひ試してみてください。

まとめ

妊婦さんはうなぎを食べてはいけない、といわれる理由について詳しく見てきました。うなぎに含まれるレチノールは、妊娠初期に過剰摂取すると、おなかの赤ちゃんに先天性奇形が生じるリスクがあることから、妊娠中はうなぎを食べてはいけないといわれています。

レチノールには摂取目安量・上限量が定められていますので、これを守ることが大切です。赤ちゃんに対するリスクが高いのは妊娠初期の時期ですので、この時期はとくに注意を払い、ビタミンAの摂取が上限を超えないようにしましょう。

ビタミンAは過剰に摂取しても、欠乏しても体に害を及ぼすおそれがあります。レチノールを含む食べ物を摂る際には、過剰にならないようにすると同時に、欠乏状態にもならないように注意することが必要です。参考:厚生労働省 妊婦の食事摂取基準 – 厚生労働省

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