会陰切開・会陰マッサージについて知っておきたいこと

会陰マッサージで知っておきたいこと 方法は?会陰切開、裂傷とは? 出産

出産予定日が近づいてくると気になるのが、会陰(えいん)切開。会陰切開と聞いただけで不安に思われる妊婦さんもいることでしょう。会陰マッサージを行うことにより、出産時の会陰切開の可能性を減らすことが出来るといわれています。

会陰切開は絶対にしたくない!と考えていても、会陰が固く、柔軟性がないと、赤ちゃんが出てくるときに会陰裂傷になってしまい、会陰切開よりもひどい結末になってしまいます。

妊婦さんなら誰でも、出来れば会陰切開は避けたいと考えますが、とくに初めての出産の場合は会陰切開を行わざるを得ないことがあります。この場合でも会陰マッサージを行っていれば、会陰が柔らかく、伸びやすい状態になっていますので、たとえ会陰切開を行ったとしても、切る部分を最小限に留めることが出来ます。

会陰切開とは?会陰マッサージを行うメリットや、やり方、行う時期などの情報を、さまざまな角度からご紹介していきたいと思います。

目次

会陰切開とは?

会陰切開とは?

会陰切開とは出産の際に医師の判断により、赤ちゃんの頭を出やすくするため、膣と肛門の間にある会陰と呼ばれる部分を切開することを指します。会陰切開を行うかどうかは、出産に立ち会う医師の考えによって異なります。

初産の妊婦さんに対しては、会陰裂傷の可能性がまったくない場合以外、十中八九行う医師もいれば、全体の一割程度にしか行わない医師もいます。会陰切開に関しては、まさに医師の考え次第ともいえますので、気になる方は早めに医師に相談するようにしましょう。

会陰切開が行われる場合とは

会陰切開が行われる場合について詳しく見ていきましょう。会陰切開が行われる割合は現在ではやや減少気味といわれていますが、それでもその可能性がまったくないわけではありません。会陰切開が行われる場合について把握しておくことが大切です。

陣痛が長引き、赤ちゃんや母体に悪影響が出る恐れがある場合

陣痛が長引き、赤ちゃんや母体に悪影響が出る恐れがある場合

微弱陣痛だったり、陣痛が長引き、母体が衰弱したり、胎児に悪影響が及ぶと判断される場合、医師の判断で会陰切開が行われることがあります。

吸引分娩あるいは鉗子分娩の場合

吸引分娩あるいは鉗子分娩の場合

吸引分娩とは子宮口が全開し、赤ちゃんの頭が見えているにも関わらず、赤ちゃんがなかなか出てこないときに用いられる方法を指します。カップ状の器具を赤ちゃんの頭につけ、吸引圧をかけることで、赤ちゃんを引きだします。この際、器具を膣に入れるため、会陰切開が必要になります。

鉗子分娩も吸引分娩同様、赤ちゃんがなかなか出てこないときに行われる方法で、カップ状ではなく、調理器具の一つトング状の器具で赤ちゃんをはさむようにして取り出します。この場合も器具を挿入するため、会陰切開が行われることになります。

会陰裂傷のおそれがある場合

会陰の伸びが悪く、そのまま分娩が進行すると、会陰裂傷の可能性がある場合も会陰切開が行われます。一般的にいうと、会陰裂傷が起きそうな場合、これを避けるために会陰切開を行う医師が多いようです。

会陰裂傷が起こる理由

会陰裂傷が起こる理由

会陰部分は通常の状態では全体が約3センチ程度で厚みもありますが、分娩の際にはこれが薄く伸びていきます。一度分娩を経験したことのある妊婦さんの場合、会陰部分の伸びが良く、会陰裂傷・会陰切開の割合も少なくなりますが、初産婦さんの場合、会陰部の伸びが十分でなく、会陰裂傷が起こりやすくなります。

また年齢が上がるにつれて、会陰の伸びが悪くなる傾向にありますので、高齢で初産を迎える方も会陰裂傷が起きやすいといわれています。

他にも分娩時間が非常に短く、会陰が急速に伸びてしまうことも会陰裂傷につながります。同様に、陣痛の際に不必要な力でいきむことも会陰裂傷を招く恐れがあります。

会陰裂傷による損傷

会陰裂傷には度合いがあり、軽度の場合は会陰の皮膚表面が傷つくだけで済みますが、さらに程度が進むと皮膚の下の筋肉に損傷が及びます。症状が重度になると肛門括約筋や直腸に対しても損傷が及び、縫合に1時間以上の時間がかかることもあります。

会陰裂傷は避けるべき?

会陰裂傷は避けるべき?

会陰裂傷が起こるよりは、会陰切開を行ったほうがよいとされる理由とは、敢えてはさみで必要な部分だけを切開したほうが、あとで縫合するときに時間がかからず、縫合部分もきれいに仕上がることにあります。

しかし最近では、会陰裂傷によるダメージが会陰切開に比べて必ずしも大きいという根拠はない、との研究結果もあり、会陰切開を行う割合は以前に比べると若干減少しているといわれています。

会陰切開を行うかどうかについては医師の考え方によって異なり、初産の妊婦さんに対してはほとんどすべての方に行う医師もいれば、吸引分娩の場合などに限って行う医師もいます。どうしても会陰切開を避けたい方は、事前にかかりつけの医師とよく相談しておくようにしましょう。

会陰切開の方法とは?

会陰切開が必要な場合などについて見てきましたが、では会陰切開は実際にはどのような方法で行われるのでしょうか。以下に詳しく見ていきましょう。

会陰切開の方法

会陰切開の方法

会陰切開は膣からお尻の方向に向かって直線で切開を行います。幅は2センチから4センチ程度、お尻の方向に向かってまっすぐに切る場合と、斜めに切る場合と二つの方法があります。

お尻のほうに向かってまっすぐに切る方法は正中切開、斜め七時、あるいは斜め五時の方向に切る方法は正中側切開と呼ばれています。もう一つは側切開法と呼ばれるもので、会陰の幅が非常に狭い方や肛門や直腸に対する損傷がひどい恐れがある場合に行われます。

麻酔の使用について

麻酔の使用について

麻酔に関しては局所麻酔を使用する場合もありますが、分娩の痛みのために麻酔なしでもあまり痛みを感じないため、そのまま麻酔なしで切開を行うことも稀にあるようです。分娩中は痛みに気をとられているため、局所麻酔をかけていることにすら気付かないこともあります。

切開後の縫合について

切開後の縫合について

切開後は縫合手術を行いますが、会陰切開の場合はきれいな直線で切開されているため、ごく短時間で縫合手術は終了します。縫合で使用される糸は、体に吸収されるタイプ吸収糸か、あとで抜糸の必要な絹糸が使用されますが、現在では体に吸収されるタイプのものが多く用いられます。

吸収糸ならば抜糸の手間も痛みもありませんので、こちらのほうが精神的な負担も身体的な負担も少なくなります。

会陰切開後の治癒

縫合に用いられた糸が吸収糸であれば、縫合後はそのまま自然に傷あとが治るのを待つことになります。抜糸をしなければならない場合、通常抜糸は退院前に行われることが多いようです。また吸収糸を使用した縫合の場合でも、縫合部分につれや違和感を感じる場合には、抜糸をしてもらうと楽になります。

切開しないために、会陰マッサージとは?

会陰マッサージとは妊婦さんが出産に備えて、会陰部分を柔らかくするために行うマッサージを指します。会陰マッサージの目的は会陰切開の可能性を減らすこと。他にも会陰を柔らかくし、伸張性を与えることにより、分娩を円滑に行う手助けになります。

会陰マッサージを始める時期とは?

会陰マッサージを始める時期とは?

会陰マッサージを行う時期ですが、妊娠第34週目以降に始めることが勧められています。ただし妊娠中に切迫流産を起こした方や、ちょっとしたことでおなかが張りやすい方、おなかに違和感を感じる方、以前に流産や早産を経験したことがある方は、自己判断でマッサージを始めずに、医師や助産婦さんと相談してから始めるようにしましょう。

また母親教室などで会陰マッサージのやり方を教えてくれる場合もありますので、会陰マッサージの方法などについて分からないことがあれば、妊娠中期頃から助産婦さんに詳しく教えてもらうようにしましょう。

オーガニックオイルで会陰マッサージ

会陰マッサージに使用するオイルは?

会陰マッサージの方法について具体的に見ていきましょう。会陰マッサージとは会陰の部分を清潔な指でマッサージすることを指しますが、この際肌に優しいオイルを用いるとデリケートな膣や肛門の周囲に傷をつける心配がありません。

会陰マッサージに使用するオイルは?

会陰マッサージで用いるオイルですが、基本的には好きなものを利用して構いません。膣周辺のデリケートゾーンに用いますので、出来るだけ肌への負担の少ない、良質の天然オイルを用いるようにしましょう。

会陰マッサージに人気のオイルとは?

会陰マッサージに人気のオイルとは?

会陰マッサージが一般的に普及するにつれて、会陰マッサージに使用するオイルについてもさまざまなタイプのものが簡単に手に入るようになってきました。会陰マッサージによく利用されるのは、ココナッツオイルやカレンドュラオイル、ホホバオイルをはじめとする天然のハーブオイル。他にもアーモンドオイル、セサミオイル、グレープシードオイル、バージンオリーブオイル、馬油などが人気です。

会陰マッサージ専用オイルやベビーオイルを使用する

会陰マッサージ専用オイルやベビーオイルを使用する

上に挙げたオーガニックオイルの他に、会陰マッサージ専用に開発されたオイルも販売されていますので、こちらを利用しても便利です。会陰マッサージ専用オイルは便利ですが、必ずしもこれだけにこだわる必要はありません。自分の皮膚に合ったものを選ぶことがもっとも重要です。

赤ちゃんのデリケートな皮膚にあわせて作られたベビーオイルを用いるのも便利です。肌に優しいベビーオイルならば、膣周辺や会陰部分の皮膚に対しても刺激が少なく、べたつき感もあまりありません。出産後の赤ちゃんのケアにも使えますので、一挙両得です。

会陰マッサージのやり方

会陰マッサージのやり方にはいくつか方法があります。まずは実際に指を使い、会陰をマッサージする方法について見ていきましょう。

U字を書くようにマッサージする方法

会陰マッサージU字を書くようにマッサージする方法

会陰を膣から肛門のほうに向かって、U字状にマッサージします。手指にオイルをなじませ、優しい力でそっとマッサージします。マッサージを行う時間は数分程度、これを週に2回、あるいは3回程度繰り返します。マッサージをする際に、膣や肛門に指が触れないよう、注意しましょう。

円を書くようにマッサージする

会陰マッサージ 円を書くようにマッサージする

今度は会陰部分に円を書くように、くるくるとマッサージしましょう。U字を書くマッサージと連続して行うようにしてください。

コットンを利用する方法

会陰マッサージ

指で会陰をマッサージすることが躊躇われるようでしたら、オイルをコットンにしみこませ、これを会陰に当てる方法がお勧めです。おりものシートをしておくと、オイルが下着につくことを防ぐことが出来ます。就寝前にコットンを会陰にあて、そのまま一晩つけておくと、会陰部分が柔らかくなります。

会陰マッサージをしたあと、オイルをそのままふき取らずにおりものシートをしておくと、さらに効果はアップ。マッサージに加えて、オイル湿布の効果を手軽に得ることが出来ます。指で会陰に触れることに抵抗を感じる方には、このオイル湿布をお勧めします。

また、膣ピチュの方法としてコットンをオイルをしみこませ、膣内に浅く挿入し、おりものシートをして30分ぐらいで取り出します。挿入することが抵抗がある場合には上記のコットンをあてる方法がよいでしょう。

分娩を楽にする運動も取り入れる

分娩を楽にする運動も取り入れる

妊娠後期に入ると、ますます大きくなるおなかを抱えて、外出するのも億劫に感じられます。おなかに負担のかかることや、体力を無駄に消耗することは控えなければなりませんが、まったく体を動かさずにいると、分娩の際に困難を伴うことがあります。

激しい運動は絶対に避けるべきですが、体を軽く動かす、ケーゲルの体操のような股関節を鍛える運動や、簡単なマタニティヨガ、妊婦体操などを積極的に行い、体や股関節に柔軟性を与えるようにしましょう。会陰マッサージに加えて、体操を行うことにより、骨盤を緩め、分娩しやすい体に整えていくことが出来ます。

ここまでのまとめ

妊娠後期に入り、出産予定日が近づいてくると、陣痛や分娩時の痛み、会陰切開や会陰裂傷などが気になるようになります。会陰切開や会陰裂傷について聞き、不安な思いを抱いている妊婦さんも大勢いるでしょう。

やむを得ない事態が発生した場合には仕方ありませんが、できれば会陰切開、会陰裂傷は避けたいもの。出産予定日が近づいてきたら、会陰マッサージを行い、会陰を柔らかく、伸びやすい状態に整えていきましょう。

会陰マッサージはとくに難しいことを行うわけではありません。肌に優しいオイルを用いて、会陰を優しく指でマッサージするか、オイルを含ませたコットンを当てておくだけで、固く、伸びの悪い会陰を出産に適した状態に近づけることが出来ます。会陰マッサージのメリットや方法について詳しく知り、ぜひ実践するようにしましょう。

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