臨月に足の付け根が痛いときに知っておきたいこと

臨月に足の付け根が痛いときに知っておきたいこと 症状 原因 兆候 対処方法 など 妊娠後期

臨月に入り出産予定日が近づいてくると、足の付け根が痛く歩くのも大変という悩みが出てきます。出産予定日までもうあと少し、我慢しなければいけないのは分かっているけれど、立っているのも辛い。この痛みをなんとか少しでも和らげてほしい、とイライラしてしまう妊婦も多いようです。

妊娠後期~臨月の足の付け根の原因から症状のいろいろ、足の付け根の痛みの緩和に効果的な方法など、臨月に足の付け根が痛いときに知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。

妊婦の足の付け根の痛み

妊婦さんの足の付け根の痛み

妊婦の足の付け根の痛みは臨月にピークを迎えますが、中には妊娠初期から足の付け根に痛みを感じる方もいます。妊婦が足の付け根に痛みを感じる原因はいくつかあり、妊娠時期によって痛みの程度や頻度は異なります。

足の付け根とは鼠径部を指します。恥骨を中心に左右の太ももと股関節のつながる部分全体で、妊娠中は痛みだけでなく、しびれや違和感、圧迫感を感じることが多くなります。

股関節は足の動きのすべてを司る重要なパーツで、私たちが足を自由に動かせるのは股関節のはたらきのおかげと言えます。妊娠中はいろいろな理由により、足の付け根に痛みを感じやすくなっています。

臨月の足の付け根の痛みのいろいろ

臨月の足の付け根の痛みのいろいろ

足の付け根の痛みの感じ方は妊婦ひとりひとり違っていて、軽い痛み、違和感、つっている感じ、しびれる感じ、だるさ、圧迫感といった表現であらわされます。

多少の痛みは感じるけれども、歩くことや家事の支障にはならない方や、違和感や軽い痛み程度で済む方もいますが、立っていることすら難しいほどの激しい痛みを一日に何度も感じる方もいます。寝ている最中にも足の付け根が痛く、寝方を変えても痛みがおさまらないことも。このように臨月の足の付け根の痛みの感じ方や度合いは実にさまざまです。

痛みを感じる場所に関しても同様で、足の付け根全体ではなく、右側あるいは左側と片側だけに痛みを感じる場合もあります。また臨月には足の付け根の痛みだけでなく、腰痛や背中の痛みもひどくなる傾向が顕著です。臨月は足の付け根の痛み、腰痛、背中の痛みとの戦い。

寝方や座り方を工夫しながら出産の兆候があらわれるのを待ちます。どんな座り方や寝方をしても痛みが激しく、歩くのも難しいようであれば、産婦人科医に相談して指示を仰ぐようにしましょう。

臨月の足の付け根の原因とは?

妊娠初期から足の付け根に痛みを感じることはありますが、臨月に感じる痛みはもっとも激しく、中には痛みのために睡眠すら満足に取れない妊婦もいます。臨月に足の痛みを感じる原因について詳しく知っておきましょう。

リラキシンの分泌によるもの

リラキシンの分泌によるもの

臨月の足の付け根の原因のひとつは、リラキシンと呼ばれるホルモンにあります。リラキシンのはたらきは妊娠の維持と出産の準備。具体的なはたらきとは、恥骨結合などの骨盤の関節を緩めることで、これにより赤ちゃんが子宮の中で成長しやすい環境がつくられます。

リラキシンの分泌と足の付け根の痛みと関係

リラキシンの分泌は妊娠3ヶ月ごろからはじまり、出産後2、3日目まで続きます。妊娠初期の足の付け根や腰の痛みは、このリラキシンの分泌の影響と考えられます。リラキシンの分泌は妊娠中をとおして行われますが、妊娠後期に入ると出産に備えて分泌が増加。リラキシンは子宮弛緩因子とも呼ばれ、出産がスムーズに行われるのに絶対欠かせないホルモン。

リラキシンは骨盤の関節を緩めますが、これに伴って子宮周りの靭帯も緩みます。これにより赤ちゃんが産道をスムーズに通れるようになります。

靭帯とは筋肉と筋肉をしっかり固定するもので、ここが緩んでしまうと骨盤の安定感が失われることに。体は骨盤の歪みをなおそうと筋肉や腱を緊張させますので、これが原因で足の付け根に痛みが生じます。

大きくなった子宮の重み

大きくなった子宮の重み

臨月に入るとおなかの赤ちゃんの体重はいよいよ重くなり、2500g以上になります。赤ちゃんの重みはそのまま骨盤に負荷としてかかり、恥骨や足の付け根に痛みを感じます。リラキシンのはたらきによって、骨盤の関節が緩んでいるため、子宮の重みを支えることが出来ずに恥骨や足の付け根の痛みが強くなります。

赤ちゃんの頭が下がってくること

出産予定日が近づいてくると、赤ちゃんの頭は徐々に子宮口のほうに向かって下がってきます。赤ちゃんが下に下がってくるにつれて、恥骨付近への圧迫はさらに強まり、足の付け根の痛みも増していきます。

足の付け根の痛みは出産の兆候?

足の付け根の痛みは出産の兆候?

出産の兆候にはいろいろな症状が挙げられますが、足の付け根の痛みもその中のひとつ。いよいよ陣痛が始まる前兆として捉えたほうがいい場合もあります。

出産の前兆は、おしるし、破水、陣痛になりますが、腰痛、吐き気、下痢あるいは便秘、おなかのふくらみが下に下がる、胎動の数が減る、おなかの張りや痛み、頻尿なども、陣痛の前兆として生じます。

どんな症状がどんなタイミングであらわれるかは、妊婦一人一人違いますので、足の付け根の痛みが我慢できないほど激しく、それと同時にその他の陣痛の前兆もみられる場合には、念のため病院に連絡して指示を仰ぐようにしましょう。

臨月の足の付け根の痛みの対処法とは?

臨月の足の付け根の痛みの対処法とは?

以上見てきたように、臨月の足の付け根の痛みは妊娠・出産に伴って生じるもので、これを前もって予防することはできません。やむを得ないこととはいえ、歩くのも辛い痛みを我慢するのは並大抵のことではありません。臨月の足の付け根の痛みを多少なりとも緩和してくれる方法について知っておく必要があります。

骨盤ベルトを使用する

骨盤ベルトを使用する

妊婦用の骨盤ベルトの特徴は、恥骨結合、仙腸関節、大転子の腰周りの三つのポイントをしっかりと支える設計に基づいて作られていること。骨盤ベルトは妊娠中だけでなく、出産後も使用できますので、産前・産後グッズとして用意しておくと便利です。

ただし骨盤ベルトに関しては、選び方や付け方など注意しなければならないポイントがたくさんあります。医師の判断次第ではつけないほうがいい、と指導されることもありますので、骨盤ベルトや腹帯をつけたい場合には、かかりつけの産婦人科医や助産婦に前もって必ず相談するようにしましょう。おなかを締め付けるようなベルトや腹帯はNGです。

寝方を工夫する

寝方を工夫する

妊婦が楽に寝られる寝方といえばシムスの体位。シムスの体位とは体の左側を下にして、横向きに寝る寝方で、左足はまっすぐに伸ばし、右足はひざから曲げクッションや抱き枕を抱きかかえるようにすると楽な姿勢が取れます。

まずは基本のシムスの体位を覚え、実践してみましょう。その上で自分がもっとも楽に感じる体勢を取るようにします。手を置く位置や上半身の傾け方など、いろいろと工夫を重ね、自分にとってもっとも楽なポジションを見つけることがポイント。

臨月の妊婦の場合は、背中に枕やクッションを置き、上半身を少し高くキープしたほうが楽になる場合があります。足の付け根だけでなく、腰やおなか全体の重みを分散してくれるポジションを見つけましょう。

仰向け寝は避けたほうがいいのか?

仰向け寝は避けたほうがいいのか?

妊娠中、とくに妊娠後期に入ると仰向けではなく、体の片側を下にした横向きの寝方が楽になります。妊娠後期になるとおなかが大きくせり出してきますので、仰向けで寝ると重みを感じてしまい、寝つきが悪くなります。

安眠できないというだけでなく、仰向け寝にはリスクもあります。仰向けに寝ると、脊椎の右側にある下大静脈を圧迫してしまい、仰臥位低血圧症行群という症状が生じることがあります。

心臓に戻っていく血液を運ぶ静脈を大きくなった子宮が圧迫するため、心臓に戻っていく血液量が減り、このため心拍出量が減り低血圧になる、これが仰臥位低血圧症行群です。

股関節のストレッチや運動

股関節のストレッチや運動

臨月の足の付け根の痛みや腰痛を完全に予防することはできませんが、股関節や恥骨の痛みを少しでも和らげるためには、股関節や骨盤底筋のストレッチや運動が効果的。母親教室などで教えてくれる安産体操なども取り入れるようにしましょう。

臨月にストレッチや運動を行う際の注意点は、まず絶対に無理をしないこと。少しでもおなかに張りや痛みを感じる場合には運動を行わないようにします。また行っている最中におなかや腰に張りや違和感を感じた場合も同様で、即座に運動を中止します。

ポイントはあくまでも自分のペースで、無理をしない範囲でゆっくり行うこと。臨月になってから始めるのではなく、妊娠初期から少しずつ股関節を柔らかくしていくこともポイントです。体力に自信のない方や体の関節の硬い方は、腰痛や足の付け根の痛み対策としてだけでなく、安産のためにもストレッチや妊婦体操を覚えて実践するようにしましょう。

適度に体を動かす

適度に体を動かす

臨月に入ったからといって、自宅でじっと動かずに座っていると体重が増え過ぎてしまい、おなかの重みは足の付け根や腰に重く押しかかってきます。臨月に関わらず妊娠中はおなかの赤ちゃんと母体にリスクをもたらすような運動は厳禁ですが、まったく外出しないのも問題です。臨月におなかの赤ちゃんの体重が増え過ぎてしまうのは、そのまま難産につながります。

医師から絶対安静の指示が出ている場合、おなかに張りや痛みを感じる場合には、運動を行うことは控えますが、特に問題ないようであれば散歩や家事などで体を動かすようにしましょう。

腰まわりを温める

腰まわりを温める

妊娠中は体にむくみが生じやすくなっています。血行不良により腰やおなか周りが冷えると、痛みもより強く感じられます。体のむくみや冷え性を改善するためには、体を冷やさないことも大切。とくにおなかや腰まわりを冷やさないよう十分に注意しましょう。

おしりまで痛みが広がっている場合

おしりまで痛みが広がっている場合

足の付け根や腰だけでなく、おしりにまで痛みが広がっている場合は、坐骨神経痛の可能性もあります。坐骨神経とは腰から足に向かってのびている神経で、妊婦はおなかの重みを腰で支えるため、坐骨神経痛にかかりやすいといわれています。

坐骨神経痛の痛みは最初は腰痛から始まることが多く、その後太もも、おしり、すね、ふくらはぎ、足全体へと次々に痛みが広がっていきます。足の付け根に加えて、足先、太もも、おしりまで痛む場合は、早めに診察を受け、診断を下してもらうようにしましょう。

出産後も足の付け根の痛みが続く場合

出産後も足の付け根の痛みが続く場合

足の付け根の痛みが出産後も続く場合があります。出産により骨盤と子宮まわりの靭帯がゆるんでしまいますが、これは出産後すぐには元に戻りません。骨盤まわりの関節を緩めるはたらきのあるリラキシンは、出産後2、3日で分泌が終わりますが、リラキシンがもたらす影響は出産後しばらく続きます。

ほとんどの場合、出産後しばらくすると足の付け根の痛みは和らいできますが、出産後は赤ちゃんのお世話もあり、再び腰に負担がかかりがち。抱っこや授乳、寝かせつけなどで腰や骨盤にかかる負担は決して少なくありません。

産後の運動

産褥運動とは?

足の付け根の痛みや腰痛の緩和には、妊娠中同様適度なストレッチや運動が効果的です。産後の運動は、出産1ヵ月後の健診で診察を受けてから始めるようにしましょう。妊娠中に妊婦体操や安産体操があるのと同様、出産後の女性の体の回復のために考案された産褥体操があります。

産褥運動とは?

産褥運動の目的は、出産で弛緩した骨盤底筋や腹筋の筋肉をもとの状態に戻すこと、子宮復古、血流促進など。いつから行えるかは出産後の体の状態によりますので、運動を行いたい方は前もって医師に相談してからにしましょう。産褥運動はその名前のとおり、産褥期と呼ばれる出産後6週間から8週間まで続けるようにします。

気になる時や辛い時は無理せず病院へ

気になる時や辛い時は無理せず病院へ

足の付け根の痛みは、出産したら痛みも治まるからと我慢してしまう妊婦もいらっしゃるかもしれません。しかし、産後すぐに妊娠前の体調に戻れるわけではなく、また産後のホルモン分泌の変化もあり、体調回復には時間がかかります。

その間赤ちゃんを抱っこして症状が悪化してしまう可能性も十分考えられます。ただ我慢ではなく、痛みが辛い時は無理せず病院を受診してください。その際の受診先は、やはりかかりつけの産婦人科がベスト。妊婦のこれまでの体調を把握していますので的確な判断ができますし、妊娠中でも服用して問題ない薬を処方してくれます。

患部に腫れがある場合は病院へ

足の付け根が痛いだけでなく、なんだか腫れてきたように感じたら、早めに診察を受けましょう。この時期の足の付け根の腫れは、鼠径ヘルニアや子宮円じん帯静脈瘤などが考えられます。

ヘルニアは本来あるべき所にある内臓が穴から飛び出てしまう状態ですが、妊娠中大きくなった子宮に臓器が圧迫され、鼠径部から出てしまうのが鼠径ヘルニアです。

また、子宮とつながっている円じん帯と呼ばれる部分が大きくなった子宮に押されて瘤のようになってしまうのが円じん帯静脈瘤です。この静脈瘤は出産後自然に治りますが、ヘルニアの場合は悪化する可能性があるため手術が必要です。急激な痛みを伴わない場合は、産後に手術を行います。
※参照 日本ヘルニア学会 鼠径ヘルニア診療ガイドライン
※参照 東邦大学医療センター大森病院

まとめ

臨月の足の付け根の痛みについて、その原因から対処法など知っておきたいさまざまな情報ををご紹介しました。臨月に入り出産予定日が近づいてくると、妊婦の大多数は足の付け根に痛みを感じます。軽い痛みであればさほど気になりませんが、歩くのも辛いほどの激痛を我慢するのは容易なことではありません。

臨月の足の付け根の痛みは、出産が近づいているというしるし。痛みを感じるのは体が出産に向けてどんどん準備を進めているため。足の付け根の痛みを緩和してくれるストレッチや運動を行い、正期産での安産を目指しましょう。

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