切迫早産について知っておきたいこと

切迫早産について知っておきたいこと 流産

流産の危機も過ぎた安定期に入り、赤ちゃんがこれから育っていく時期に入ります。お母さんの方もつわりが終わって、余裕をもって妊娠を楽しめる時期です。

しかし普通の人とは体調が違うのですから、安定期に入ったと言っても出産するまでは油断が出来ない状態が続きます。特にこの時期に気をつけなければならないのは、切迫早産です。

切迫早産について知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。

切迫早産とは

切迫早産とは

切迫早産とはもう一歩で早産になってしまう状態を指していて、中にはそのまま早産へと移ってしまう妊婦もいますが、早すぎる出産は赤ちゃんの成長を阻害したり、出産時に大量出血の原因になったり双方にとって苦しいものになりえるのです。

ただ、早産の危険性を良く知る医療機関ではしっかりと切迫早産の対策が採られているので、過剰に怖がる必要はありません。そこで、切迫早産について知っておきたいことをいくつかご紹介します。

切迫早産になる確率

切迫早産になる確率

妊娠すると切迫早産という言葉があちこちで聞かれ始めるので、そんなに切迫早産になる人が多いのかと不安を感じてしまう妊婦さんも少なくないでしょう。では実際のところ、どれくらいの割合で切迫早産になるのでしょうか。

切迫早産の確率は妊娠している女性全体の15%程度と言われていて、そのほとんどが回復しますがその内5%ほどの妊婦はそのまま早産してしまいます。

ただ、30年前と比べると早産の割合が上昇しているのが特徴で、更に1人目の出産が早産だった場合は2人目・3人目も切迫早産や早産の可能性が平均よりも高くなると言われているので、これから更に切迫早産や早産になる確率が増えるかもしれません。

切迫早産と呼ばれるのはいつごろ

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切迫早産と呼ばれるのはいつごろ

切迫早産も切迫流産も、何らかの原因で胎児が子宮から排出されてしまう一歩手前の状態を指しますが、その違いは発生した時の妊娠週数にあり、22週未満は切迫流産と呼ばれ、22週以上~37週未満は切迫早産と呼ばれます。

この妊娠22週目は、胎児が母体の外で生存できるかどうかの境目として重要な時期です。

切迫早産と呼ばれるのはいつごろ2

妊娠22週の赤ちゃんは体重が400~500gで身長は30cm弱ととても小さく、昔は助ける手立てがありませんでした。しかし医療技術が進んだ現在では、新生児医療の発展により22~23週の赤ちゃんでも半分以上、25週では8割以上が助かるようになっています。

しかし、発育が遅かったり障害を残す可能性も通常出産に比べれば高いので、なるべく切迫早産を避けるに越したことはありません。

切迫早産の原因

切迫早産の原因

安定期に入って妊娠中に普段と同じような運動や家事をしようと思ったら、お腹が張って立っていられないくらいの痛みを感じた事ありませんか。いくら調子が元に戻って日常生活を送れるようになったとしても、妊娠中は普通の人とは体調が違うのですから無理は厳禁です。

切迫早産の原因として、妊娠高血圧症候群、前置胎盤、様々な感染症、子宮頸管無力症、子宮筋腫、子宮過敏症、子宮奇形、羊水過多、羊水過小、多胎妊娠、慢性疾患 高齢出産、若年出産、体重増加、ホルモンのバランス、性交渉、疲労、ストレス、喫煙、アルコール、などが考えられます。

疲労やストレス

疲労やストレス

妊娠中はホルモン分泌量が多い分、ちょっとした疲労やストレスでバランスが崩れ免疫力が低下してしまい、感染症や妊娠高血圧・糖尿病に罹りやすくなります。

膣内の雑菌が子宮まで進行したり、赤ちゃんに栄養を送るための血液の質が悪くなれば、赤ちゃんを育てられる環境ではないと身体が判断して切迫早産になってしまうのです。

子宮頸管無力症

切迫早産の原因-子宮頸管

他には子宮と膣をつなぐ子宮頸管が短いと、赤ちゃんの重さに耐えられなくなり頸管が開いて破水し早産となるケースもあります。

子宮頸管が短いほど切迫早産や早産になりやすいので、安定期の定期健診で子宮頸管の長さを計り対策を講じる産婦人科も多いです。

パートナーとの性交渉

パートナーとの性交渉

妊娠中は胎児を守るためにお母さんの免疫力が低下するので、普段なら気にも留めない雑菌が膣内に侵入し炎症を起こしやすくなります。

炎症の原因となる雑菌はたいてい膣周辺にいる常在菌なのですが、時として精子に付随する雑菌が原因となる場合も。妊娠中だから避妊をしなくて良いと考えて性交するカップルも多いですが、精子頭部には染色体以外に様々な雑菌が混ざっているため、性交すれば簡単に子宮口近くまでその雑菌が届いてしまいます。

子宮頸管から更に内部に侵入して卵膜にまで炎症が広がると、子宮が収縮して切迫早産に直結する事も珍しくありません。性交をする際は、お互いに清潔を保ちコンドームを使用するように心がけましょう。

甲状腺機能と切迫早産の関係

甲状腺機能と切迫早産の関係

妊娠中は新陳代謝が活発になりますが、それには新陳代謝の働きを促す甲状腺ホルモンが大きく関係しています。

この甲状腺ホルモンは胎児の発育を促すためにも重要なホルモンなのですが、分泌量が多すぎたり少なすぎると、妊娠しづらかったり妊娠できても早産・流産になりやすいという研究結果があります。

甲状腺機能異常の自覚があって妊娠前から治療を行っていれば問題がないのですが、自覚がなくコントロールが出来ていない方が切迫早産の治療を行うと、症状が悪化して最悪の場合は緊急分娩となるケースが考えられます。

それは、切迫早産の治療には子宮収縮抑制効果のあるウテメリン投与が一般的ですが、亢進症の方に投与すると症状が悪化する恐れがあるから。妊娠が発覚した時点ですぐ医師に相談するのが大事です。

こんな症状・兆候が表れたら切迫早産かも

こんな症状・兆候が表れたら切迫早産かも

お腹の張りや下腹部痛は身体が冷えたり疲れたりした時に、多くの妊婦に起こるものです。しかしそれはあくまで一時的なものですが、切迫早産の場合は出産と同じような経緯をたどっているのが特徴です。

お腹の張りは安静にしていても治まらずに更に間隔がせまくなり、子宮が収縮し始めるために起こる下腹部痛や腰痛がだんだん酷くなってくるようならば、切迫早産の可能性があります。また、出血する場合もありますが、これは子宮の収縮で赤ちゃんを包んでいる卵膜が子宮内でずれて出血を起こす「おしるし」と全く同じです。

切迫早産の症状には卵膜が破れて破水してしまう事もありますが、この場合は外気に触れたため子宮内に雑菌が入りやすくなってしまうので、早産になってしまう事がほとんどです。

ただし、普段と同じようなお腹の張りだと思っていたら切迫早産だった、なんて自覚症状の無い人もいるので、普段から十分体調には良く気をつけておく必要があります。

切迫早産の治療法

切迫早産の治療はまず安静にする事で、それだけで経過が良くなる妊婦もかなり多いです。しかし、子宮口が開いているなど出産状況が進んでしまっている場合は、入院して治療を行います。

投薬治療

投薬治療

安静と併せて行う投薬治療には、感染症を防ぐ抗生剤や筋肉を弛緩させて子宮の収縮を抑える子宮弛緩剤、妊娠状態を継続させて赤ちゃんの成長を勧めるための黄体ホルモン、子宮収縮抑制作用がある硫酸マグネシウムなど、妊婦の状態によって使い分けられますが、子宮弛緩剤は出産後に子宮の戻りが悪くなる副作用があるので、その点を考慮して黄体ホルモンを投与する病院が多いです。

また、元々子宮頸管の力が弱く切迫早産になりやすい子宮頸管無力症の場合は、頸管を縫いとめる子宮頸管縫縮手術を行います。

自宅安静の目安は?

自宅安静の目安は?

切迫早産の診断を受けると、その程度によって入院安静か自宅安静を提案されます。ただ、自宅安静と言われた場合にどこまでが安静の目安なのか分かりません。

自宅安静もいろいろレベルがありますが、一応トイレや食事以外は寝たままで入浴は出来ないレベルが一般的な目安です。上の子どもがいる場合は寝ていられないかもしれませんが、自分が動くたびにお腹の赤ちゃんは苦しい思いをしているのだと考えて、まずは自分の体調が安定する事だけを考えましょう。

自宅安静をしながら薬を服用して、医師からOKの判断が出れば段階的に仕事が出来るようになりますが、反対に容態が改善しない・悪化した場合は入院安静に切り替えて体調を管理する事になります。

切迫早産の入院期間は?

切迫早産の入院期間は?

切迫早産の状況が深刻であったり安静に出来ない家庭環境ならば、入院治療を勧められます。お金もかかるし入院中は暇だし長く入院したくない、と考えている人も多いでしょう。

切迫早産で入院した場合は、基本的には出産まで入院だと考えましょう。目安は入院した週数から正産期に入る37週までか、子宮内で低体重ラインの2500gに育つまでです。でも大抵は大事をとって最後まで入院させるパターンが多いです。

特に1人目を早産で出産した人が2人目を妊娠している場合は、切迫早産になる可能性が普通の人の2倍になり入院を強く勧められる事があります。ただ中には早く退院できる場合もあって、それは体調が回復した場合と子宮頸管縫縮手術をして、切迫早産の可能性がないと医者が判断した場合に限ります。

入院で落ちてしまった体力の回復は?

入院で落ちてしまった体力の回復は?

自宅安静にしろ入院安静にしろ、切迫早産を防ぐには動かないのが一番です。ただ、寝てばかりいて筋肉が落ちてしまうため、回復したり退院すると自分の体力のなさに驚く方も大変多いです。

分娩時や産後の大変さを考えると早く体力を戻さないと、なんて考える方もいますが、そこで無理をしてしまえば状態が逆戻りしてしまう事も考えられますので、まずは医師に相談しながら少しずつ動ける範囲を広げて、慎重に体力回復を図るのが重要です。

医師から運動OKの指示があれば、スクワットや短時間の軽いウォーキングから始めてみてはいかがですか。

37週目前には退院させられる?

37週目前には退院させられる?

切迫早産で入院安静になった場合は健康保険が適用できますので、1日の入院にかかる費用に対して3割負担の支払いですみます。

しかし、37週0日以降になると正産期となり生まれた赤ちゃんは早産ではなくなるため、病院では37週目前になると入院中の妊婦を相談の上、退院させるケースがあります。

これ以降はいつ生まれても問題ないという事と、そのまま入院すると保険が効かなくなり妊婦側にとって大きな負担となると言うのが理由です。保険適用範囲は病院に確認してみてください。

妊婦の方にしてみれば今まで絶対安静だったのに急に退院となって、不安に思う方もいるかもしれません。しかしこれからはいつ出産しても問題ない時期なので、いつ陣痛が来ても良いように入院準備をしておきましょう。

切迫早産後は出産が早まる?

切迫早産後は出産が早まる?

切迫早産と診断を受けた場合は様々な方法で早産に進むのを抑えます。妊娠週数が早い時期に早産になるほど、赤ちゃんが生まれてしまえば障害や後遺症が残る可能性が高くなるため、赤ちゃんが生まれても問題ない大きさになるまで子宮の中に留めておくのがその理由です。

しかし正産期に入ればもういつ生まれても問題ないため、病院は点滴や投薬を終了し妊婦を退院させます。入院中は点滴や薬でお腹の張りをおさえていたため、それが無くなれば一気に陣痛・分娩へと進む事も容易に考えられますね。

確かに切迫早産で入院していた方は、退院してから前駆陣痛や強いお腹の張りを頻繁に感じる事が多いのだとか。退院後はいつ産まれてもおかしくないのだと心得ておくと、いざとなった時にパニックになりません。

切迫早産を予防するには

切迫早産は日常生活のちょっとしたポイントで予防できます。

清潔にすること

清潔にすること

お母さんの免疫力の低下に加えて、新陳代謝が活発になるため雑菌が繁殖しやすい状態になりやすいのが感染症にかかる原因で、引いては切迫早産の原因へとつながっていきます。

ですから、夏はもちろん冬でも毎日入浴して身体を清潔に保つのが、切迫早産を予防する最大のポイントと言えるのではないでしょうか。

また妊娠中はおりものが増えますが、これには膣内を酸性に保ち膣内に侵入した雑菌を殺す役割を持っているので、あまり神経質になる必要はなく、おりものシートを使用したり通気性の良い下着や服に替えるなどの対策で十分です。

また、中でもカンジダ菌は出産時に母子感染で新生児に重篤な障害を残す可能性が高いので、出産前までにしっかり治療しましょう。

冷えを無くすこと

冷えを無くす事

一番大事なのが冷えを無くす事。身体が冷えれば血行が鈍くなりますが、その影響を一番受けやすいのが子宮で、筋肉が収縮したり子宮内膜が固くなって赤ちゃんにとって快適な環境が作れなくなり、切迫早産の可能性が高くなるのです。

暑いからといって薄着をしたり冷たいものを摂るのは、赤ちゃんにとっては良くありません。妊娠中は体温が高くなりますから他の人よりもつらいかもしれませんが、お母さんの行動で赤ちゃんが苦しい思いをするのならば、我慢できますよね?

軽い運動をすること

軽い運動

もう1つの予防法は運動をする事で、血行を良くして冷えを改善し子宮内の環境を快適に保ち、お母さんの体重増加や妊娠高血圧症候群を抑えるなど、1つで山ほどのメリットがあるんです。こんなにメリットがあるなら、運動しないと損な気持ちになります。

無理をしては切迫早産に繋がる恐れもあるので、適度なウォーキングやマタニティヨガなど身体に負担をかけすぎずにある程度続けられる運動を試してみましょう。

ここまでのまとめ

お母さんだけでなくお腹の赤ちゃんも苦しい思いをする切迫早産は、なるべく避けたいです。幸いな事に生活習慣をちょっと変えるだけで切迫早産が防げ、他にも様々なメリットをもたらしてくれます。

切迫早産は妊娠中だけでなく出産後も双方に影響を与えてしまうので、出産後スムーズに育児を開始したいのならば、ぜひ予防のポイントを生活に取り入れてみてください。

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