流産のほとんどは妊娠初期におこる初期流産ですが、安定期に入ったからといって流産がまったく起こらないわけではありません。妊娠12週目から21週目までの流産は後期流産と呼ばれています。
後期流産の兆候・原因・注意点・対処法や初期流産との違いなど、後期流産について知っておきたい情報をご紹介します。
後期流産とは?時期は?いつからいつまで
流産には早期流産と後期流産があります。早期流産とは妊娠初期の前半にあたる妊娠12週以前におこる流産をさします。これに対して後期流産とは、妊娠12週以降22週以前におこる流産のことで、妊娠初期の後半から妊娠中期の前半までの時期にあたります。
流産の起こる確率について
流産がおこる確率は、病院で臨床的に妊娠と認められた件数全体の約15%にのぼります。このうち妊娠12週以内におこる初期流産は、流産全体の約8割を占めますので、後期流産がおこる確率は妊娠全体の約2割になります。流産と年齢との関係でいうと、妊婦さんの年齢が高くなるにしたがって、流産のおこる確率も高くなります。※参照1
流産の種類について
流産は初期流産にしろ、後期流産にしろ、進行具合や症状によってさまざまな種類に分けられています。流産の種類についてひとつずつ詳しくみていきましょう。※参照1
稽留流産
稽留流産とはすでに流産が始まったものの、流産の徴候であるおなかの痛みや出血がないまま、子宮内で胎児の死亡が確認された状態を指します。流産の典型的な徴候がみられないため、妊婦さん本人には自覚症状がみられません。
稽留流産のほとんどは妊娠12週以前におこりますが、中には妊娠12週以降におこることもあります。稽留流産であると確実に診断されたら、子宮内容除去手術を行うか、あるいは経過観察をし、自然に排出されるのを待ちます。
進行流産
進行流産とは出血が始まり、流産が進行している状態を指します。進行流産は流産の進み具合によって、以下の二つに区分されます。
完全流産
胎児および子宮の内容物が完全に子宮の外に出てしまった状態をいいます。
不全流産
おなかの痛みや出血が続いているものの、子宮内容物の一部が子宮にまだ留まっている状態を指します。子宮内容物を除去する手術が必要になることもあります。
切迫流産
切迫流産とは流産しかかっているものの、胎児は子宮に留まっていて、妊娠の継続が可能な状態をさします。切迫流産の治療はそれぞれの状態によって異なり、即刻入院が必要な場合もあれば、自宅で安静を指示されることもあります。切迫流産と診断されたら、医師の指示にしたがい、安静にすることが必要です。
習慣流産
習慣流産とは流産が三回続いておこる状態をさします。流産は決してめずらしいものでなく、誰にでもおこりうることです。
しかし三回続いて流産になる可能性は非常に低く、子宮奇形や子宮頚管無力症などの問題を抱えている可能性が高くなります。習慣流産の場合、次回の妊娠に備えて、問題を特定するために血液検査やその他の精密検査を受ける必要があります。
後期流産の原因とは?
初期流産の原因の大半は胎児側にあるとされますが、後期流産の場合、これとは反対に母体の側に原因がある確率が高くなります。後期流産の原因について、胎児側と母体側に分けて詳しく見てみましょう。
胎児側の原因について
胎児側の原因として挙げられるのは、染色体異常やそれ以外の発生異常(奇形や先天異常など)。胎児側に原因がある流産のほとんどは、妊娠12週目までにおこりますが、稀に後期流産として生じることもあります。胎児側に原因がある流産は予防することができず、いわば自然淘汰的に流産につながると考えられています。
母体側の原因について
初期流産と異なり、後期流産では母体側に原因があるケースが増加します。母体側の原因はさまざま。そのうち主なものを以下に挙げてみましょう。
子宮頚管無力症
子宮頚管無力症とは、子宮の収縮がおこらないにもかかわらず、妊娠中期に子宮口が開いてくる症状を指します。体質的に子宮頚管が短い、あるいは子宮奇形がある、子宮内容物除去手術の際に子宮頚管が広がったなど、子宮頚管の強度が弱い場合に起こると考えられています。
また前回の妊娠において子宮頚管無力症になった場合、次回以降の妊娠でも再び子宮頚管無力症になる可能性が高いため、妊娠初期から慎重に妊娠の経過を見守ることになります。
子宮奇形
先天的に子宮の形状が普通の状態と異なることを子宮奇形と呼びます。子宮奇形にはいろいろなタイプがあり、すべての場合において流産につながるわけではありませんが、奇形の状態や種類によっては、流産や早産がおこりやすくなります。
子宮筋腫
子宮筋腫もまた後期流産の原因のひとつです。子宮筋腫がある状態での妊娠は、子宮筋腫合併妊娠と呼ばれています。子宮奇形同様、子宮筋腫があるからといって必ずしも流産がおこるとは限りませんが、筋腫の位置や大きさによっては、流産や早産だけでなく、常位胎盤剥離、胎児発育不全、前期破水といった問題が生じる可能性が高まります。
多胎妊娠
双子や三つ子の赤ちゃんを妊娠している場合も、単胎にくらべるといろいろなリスクが増大します。多胎妊娠のリスクをいくつか挙げると、流産、早産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などで、妊娠が分かった時点から経過を見守っていく必要があります。
絨毛羊膜炎などの感染症
絨毛羊膜炎や細菌性膣症など、細菌による感染症も後期流産をひきおこす原因のひとつです。絨毛性羊膜炎とは羊膜や絨毛膜に炎症が起こる症状をさします。
細菌性膣炎はホルモンバランスの崩れや免疫力の低下により、膣内の自浄作用が低下し、膣内に複数の細菌が繁殖した状態をさします。細菌の増殖は、絨毛性羊膜炎や子宮頚管炎につながることもあり、流産や早産の原因となります。妊娠中は免疫力が低下しているため、感染症にかかりやすい状態ですので、安定期に入ったからといって油断せず、体調管理や栄養摂取に十分に配慮することが大切です。
疲労やストレスなど
体力的に消耗した状態が続く、精神的なストレスが大きい、強い不安や悩みを抱えているなど、妊婦さんが精神的・身体的に疲労していることも流産の原因のひとつになります。
後期流産の兆候
後期流産の兆候を知っておくと、兆候がみられたときにすぐに病院に連絡することができます。後期流産の兆候についてひとつずつみていきましょう。
おなかの張りと痛み
妊娠中のおなかの張りには、心配ないものと注意が必要なものがあります。下痢や便秘によっておこる張り、子宮が大きくなることによる感じる張りは、しばらく安静にしているとおさまりますので心配いりません。おなかに張りや痛みを感じたら、まずは安静にします。座るか、横になるかして静かに休みましょう。しばらく安静にしても張りや痛みがおさまらず、かえって強くなるときは、切迫流産の可能性も否定できません。
おなかの張りや痛みが規則的に強くなる、出血をともなう、痛みが激しい、痛みが長く続く、頻繁に張りがおこるなど、普段とは異なる張りや痛みを感じたら、すぐに病院に連絡しましょう。
出血
出血も流産の兆候のひとつです。出血があった場合には、色や量などを確認した上で病院に連絡し、医師の指示を仰ぐようにしましょう。出血とともにおなかの張りや痛みがある場合は、流産が進行している可能性があります。おなかの張りと同様に、出血があった場合の対処法は、すぐさま安静にすること。出血の量が多く、止まらないときはすぐに病院に連絡しなければなりません。
おりものの異常
おりものの量が異常に増える、色やにおいが普段と違うときは、細菌に感染している可能性があります。感染は流産の原因のひとつですので、おりものに異常が生じたときは早めに病院で診察してもらいましょう。
後期流産の予防について
後期流産の原因はさまざまであり、予防できるものもあれば、予防できないものもあります。子宮頚管無力症や感染症など、後期流産につながる症状が最初から分かっている場合は、適切な治療を行うことができます。多胎妊娠の場合も同様で、妊娠が判明したときから妊娠の経過を慎重に見守ります。
妊婦さん自身ができることは、体力を落とさないようにすること、ストレスや疲労を解消すること、食事内容に気を配ることなど。妊娠中は免疫力が少し落ちていますので、無理をすると体調を崩してしまいます。健康なマタニティライフを送るためにも、栄養に偏りのない食事と規則正しく生活習慣を心がけましょう。
後期流産の処置について
残念ながら後期流産になったときの処置についてみていきましょう。後期流産がおこった場合、どのような処置や治療が必要なのでしょうか?
子宮内容物除去手術
完全流産で子宮の中のものがすべて出てしまった場合は別ですが、子宮内容物が一部残っている場合や稽留流産の場合は、次回の妊娠に備えて子宮内容物を掻爬する手術が必要になります。
次回以降の妊娠に備えて
後期流産がおこり、その原因がはっきり分かった場合には、次回の妊娠のタイミングなどについて、専門医に必ず相談しましょう。後期流産の場合は子宮もかなり大きくなっていますので、元の大きさに戻るまでに時間がかかります。流産のあとは無理せず、体をゆっくり休めることを最優先させましょう。
まとめ
後期流産について知っておきたい情報を幅広くご紹介しました。流産は妊娠初期におこる初期流産が大半を占めますが、妊娠12週目以降にも流産はおこります。
後期流産の中には予防できないものもありますが、いざというときに適切な対応ができるよう、普段から流産に関する知識を養っておくことが重要です。後期流産に関する正しい知識を持つことは、不安感や疑問の解消に役立ちます。
※参照1 日本産科婦人科学会 流産・切迫流産