排卵誘発剤について知っておきたいこと

排卵誘発剤について知っておきたいこと 妊娠前

赤ちゃんが欲しいと思っている夫婦にとって、なかなか妊娠が成立しないのはもどかしいことです。自然に妊娠ができない期間が長いと、不妊治療を考える方もいらっしゃるでしょう。

不妊治療において、まず浮かびやすいのが排卵誘発剤など薬を使用した治療方法です。これから不妊治療を開始しようと考えている方にとって、どのような作用があるのか、またどんな副作用が発生するのか、気になるところではないでしょうか。

そこで、不妊治療において排卵誘発剤がもたらす効果や副作用など、情報を幅広くご紹介していきましょう。

不妊とは?

不妊とは?

自然に妊娠ができない状態が続くと、不妊治療を検討し始めるようになります。では、不妊とはいったいどのような状態のことを言うのでしょうか。

不妊とは、健康な身体を持つカップルが、定期的に避妊をしない性行為を続けているにもかかわらず、1年以上妊娠に至らない状態のことを言います。通常なら、妊娠する確率は1年で約80%、2年で約90%の確率で妊娠するとされています。

不妊に悩んでいるカップルは現代では珍しくなくなってきています。妊娠は、生活習慣や年齢などさまざまな条件により成立しないこともあるため、早い段階で妊娠を望むなら、不妊治療を開始した方が良いと言えるでしょう。

妊娠するとは?

妊娠するとは?

不妊について学んだところで、妊娠についても簡単にご説明しておきましょう。妊娠が成立するということは、単に卵子と精子が受精したということではありません。妊娠が成立するためには、いくつものステップを進んで行く必要があります。

妊娠とは、卵巣から排卵された卵子が卵管部分で精子と出会って受精し、受精卵となって細胞分裂により分裂しながら子宮に進み、子宮内膜に着床して安定した状態のことを言います。

卵管ではなく子宮で卵子と精子が出会っても妊娠は成立しませんし、受精卵になっても子宮内膜に着床しなければ妊娠は成立しません。どれかひとつでもうまくいかなければ、妊娠は成立しないことから、妊娠は奇跡に近い出来事でもあるのです。

不妊治療について

妊娠を望んでいるにもかかわらず、1年以上妊娠しない場合は、早めに不妊治療を開始するようにしましょう。不妊治療と言っても、最初から排卵誘発剤を使用して行うわけではありません。一般的に、不妊治療の初めはタイミング法が実践されます。

タイミング法とは

タイミング法とは

タイミング法とは、排卵日を予測してその数日前~直前に性行為を行うことで、妊娠の確率を上げる方法です。生理周期や体温から予測し、排卵日を決めてそのタイミングで性行為を行います。

ただ、生理周期や排卵日は体調や環境の変化などで簡単に変化しやすいため、生理不順が起きやすい場合は成立しにくくなります。

タイミング法のデメリット

タイミング法のデメリット

不妊治療としてまずタイミング法が行われますが、妊娠へのプレッシャーから排卵日が定まらずなかなかうまくいかないことも多々あります。

また、夫側にとっても精神的に負担となるため、性行為そのものが成立しないことも出てくるでしょう。

排卵日はこの日と限定され、義務のように性行為が行われてしまうことで、カップルの関係性が徐々にギクシャクしてくることもあるようです。

排卵誘発法について

排卵誘発法について

不妊治療では、まずタイミング法が行われることが一般的です。しかし、なかなかタイミングが合わない状態が続くと、次の方法へと進んで行くようになります。それが、排卵誘発法です。

排卵誘発法は、排卵誘発剤を用いた不妊治療のことで、妊娠の確率を上げることができると期待されています。排卵誘発剤は、本来は排卵が起きていない人に使用されるものですが、正常に排卵されている人に使用しても効果があるため、不妊治療としても使用されています。

排卵誘発剤と排卵促進剤の違いは

不妊治療の中で、排卵誘発剤と間違えられやすいのが、排卵促進剤です。名前が似ているため同じような作用のものと思いやすいですが、全く異なります。

排卵誘発剤について

排卵誘発剤は、卵巣で成熟する卵胞の数を増やしてくれるもので、なおかつ質の良い卵子に育てるために使われます。排卵を促す作用もありますが、どちらかというと品質の良い卵を育てるために使われるお薬です。

排卵促進剤について

排卵促進剤は、その名の通り排卵を促進するためのお薬です。排卵促進剤を注射で体内に投入すると、36時間~40時間後に排卵が引き起こされるため、より確実に妊娠の確率を上げることができます。

卵子の品質の良さが妊娠ポイント

卵子の品質の良さが妊娠ポイント

不妊治療として、タイミング法の次に排卵誘発法が行われるのは、質の良い卵子が妊娠には欠かせないからです。妊娠は健康な卵子と精子が結びついて成立するものですが、卵子の状態が悪いと高い確率で妊娠が成立しにくくなります。

卵子は、赤ちゃんから体内にあるもので最初から数が決められています。初潮が始まって排卵が起きるようになり、閉経まで排卵は続いていきますが、年月を重ねるにつれて卵子は老化していってしまいます。そのため、40代以降は一気に妊娠する確率が下がるようになってしまいます。

また、20代であっても健康な卵子が育たなければ妊娠は成立することはできません。品質の良い卵子を成熟させ、排卵させるからこそ妊娠は成立しやすいので、排卵誘発剤が必要になるのです。

排卵誘発剤は飲み薬か注射か

不妊治療として排卵誘発剤を使用する場合、飲み薬か注射のどちらかを選択することになります。それぞれ効果の現れ方が異なりますので、ご説明しておきましょう。

排卵誘発剤 飲み薬の場合

排卵誘発剤 飲み薬の場合

排卵誘発剤の飲み薬は、脳に働きかけて質の良い卵子を育てられるよう促します。脳の視床下部に卵胞が育っていないと錯覚させることで、「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)」の分泌を促します。性腺刺激ホルモン放出ホルモンにより卵巣が指令を受けて卵胞を育てようと働き始めるため、質の良い成熟した卵子が完成しやすくなります。

排卵誘発剤の注射に比べると効果は緩やかですが、その分副作用も少ないため、初めて排卵誘発剤を使用する方にはオススメと言えるでしょう。

飲み薬のメリット

排卵誘発剤の飲み薬を選ぶメリットは、効き目が穏やかであること、通院する必要がないこと、多胎妊娠率が低いということ、副作用が少ないということが挙げられます。

飲み薬のデメリット

排卵誘発剤の飲み薬を選ぶデメリットは、頭痛が起きやすい、目がかすむことがある、吐き気をもよおす、頸管粘液が減って精子がたどり着きにくくなる、子宮内膜が薄くなって受精卵が着床しにくくなるということが挙げられます。

排卵誘発剤 飲み薬の種類

排卵誘発剤を使用する場合、効果がソフトな飲み薬からスタートするのがオススメです。飲み薬には大きく分けて2つの種類がありますのでご紹介しておきましょう。

クロミフェン製剤系

クロミフェン製剤系の排卵誘発剤は、不妊治療でも最もポピュラーに使用されています。どの産婦人科でも初めに処方されることが多いため、気軽に服用することができます。クロミフェン製剤系の排卵誘発剤として、よく使用されるのがクロミッドですが、その他にもセロフェンや、フェミロンといった飲み薬があります。

シクロフェニル製剤系

シクロフェニル製剤系は、クロミフェン製剤系の飲み薬を試してみたものの、頸管粘液が減ってしまう副作用が強く出てしまった場合に処方されることが多いです。クロミフェン製剤系と比べると、低刺激と言われています。シクロフェニル製剤系としよく使用されるのは、セキソビットという飲み薬です。

排卵誘発剤 注射の場合

排卵誘発剤 注射の場合

排卵誘発剤の注射は、卵巣に直接働きかけることにより、質の良い卵子を育てていきます。肩やお尻など筋肉に直接注射するため、脳からの指令を経由せずにダイレクトに卵巣に働きかけるため、効果は強力になりますが、その分副作用も強く出てしまいます。そのため、順番としては排卵誘発剤の飲み薬を試して、それでも効果のない方は注射にチャレンジしてみると良いでしょう。

注射のメリット

排卵誘発剤の注射を選ぶメリットは、排卵の確実性が増すということが挙げられます。卵巣に直接働きかけることができるので、確実に卵子を育てて排卵まで進めることができるでしょう。

注射のデメリット

排卵誘発剤の注射を選ぶデメリットは、嘔吐しやすい、注射により筋肉痛が起きやすい、刺激が強すぎて卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起きやすい、多胎妊娠率が高くなりやすい、ということが挙げられるでしょう。

排卵誘発剤 注射の種類

排卵誘発剤の飲み薬では効果が現れない場合、注射に切り替えて不妊治療を継続していきます。注射にも2つの種類がありますのでご紹介しておきましょう。

hMG注射

hMG注射は、FSHとLHという両方のホルモンが含まれています。生理が始まってから数回に分けて注射を行い、卵胞を成長させていきます。hMG注射単体で使用されるだけでなく、クロミッドなどクロミフェン製剤系の飲み薬と併用して補助の役割を担うこともあります。

hCG注射

hCG注射は、排卵を促す作用のある注射です。そのため、クロミッドなどクロミフェン製剤系の飲み薬や、注射のhMG製剤と併用されることが多いです。卵胞を成長させた後に、黄体ホルモンに似た働きをもつhCG注射を行うことで、排卵を促し妊娠の確率を上げることができます。

気になる費用について

気になる費用について

不妊治療で排卵誘発剤を使用したいけれど、保険が効かなくて高くつくのではと心配になっている方も多いでしょう。実は、排卵誘発剤は保険が適用されるため、思った以上に安くチャレンジすることができます。

排卵誘発剤としてまず処方される飲み薬のクロミッドは、保険の適用により自己負担は約500円で抑えることができます。注射の場合は、1回につき約400円~1500円が相場で、これに注射手技料などが上乗せされます。

経過を見ながら飲み薬や注射を行うため、不妊治療が続くとそれなりに費用はかさんでいきますが、手の届かない治療ではないことは確かだと言えるでしょう。

排卵誘発剤のリスク 多胎妊娠

排卵誘発剤のリスク 多胎妊娠

排卵誘発剤を使うと多胎妊娠しやすくなるのは確かで、リスクの1つに挙げられます.錠剤タイプより注射タイプの排卵誘発剤の方が多胎妊娠しやすくなります。

なぜこのような違いが出るかというと、錠剤タイプは効き目が緩やかであるのに対して、注射タイプは直接卵巣に作用するため、複数の卵子が刺激を受けて1回の排卵数が多くなってしまうのが原因です。

多胎妊娠は単胎妊娠よりも妊婦さんの負担が大きいため、多胎妊娠の可能性を不安に思う方は排卵誘発剤を使う前に医師とよく相談してください。

不妊治療はマイペースに進めよう

不妊治療はマイペースに進めよう

不妊治療を開始して、排卵誘発剤を使用し始めると、妊娠の確率が上がると期待が大きくなります。しかしあまりに期待しすぎると、何度かうまくいかなかったときに落胆してしまいやすいので注意しましょう。

排卵誘発剤は、質の良い卵子を育てて排卵するサポートをしてくれますが、100%妊娠を約束したものではないからです。あくまで、妊娠のサポートをしてくれるお薬だということを理解し、マイペースを大切にしながら治療を続けるようにしましょう。

パートナーと一緒に治療を受けよう

不妊の原因は女性によるものだと考えられやすいですが、実は男性にも原因があることがあります。精子の発育や量に問題があると妊娠しにくくなるため、パートナーと一緒に不妊治療を受けるようにしてください。

実際に検査をしてみると、女性ではなく男性側に治療の必要があるケースもよくあります。赤ちゃんを授かることは2人にとっての問題なので、ひとりの問題だけにせず一緒に治療に取り組んで行くようにしましょう。

確率を上げる為に生活習慣を改善

確率を上げる為に生活習慣を改善

不妊治療では、タイミング法や排卵誘発法で妊娠する確率を上げることができます。しかし、基本となる生活習慣が乱れていては、せっかく不妊治療を行っていても効果を上げることはできません。

喫煙や飲酒の習慣があると、妊娠の確率は下がりやすいのでカップルで一緒に減らしていくようにしましょう。外食だけでなく自炊をしてヘルシーな食生活を心掛けることも大切です。

また、ストレスが溜まっていると自律神経やホルモンバランスが崩れやすくなります。働きすぎや考えすぎにならないよう、適度にリフレッシュするようにしましょう。

まとめ

排卵誘発剤について詳しくご紹介しました。排卵誘発剤のメリットやデメリット、特徴をよく知っておくことで、安心して治療に使用することができるでしょう。

不妊治療は長く続く場合もあります。辛いと感じたら、いったんお休みしてリフレッシュすることも大切です。旅行を楽しんだり、美味しいものを食べに行ったりするうちに、お互いの気持ちがほぐれて妊娠しやすくなるケースもあります。

赤ちゃんという目的だけに縛られず、お互いの気持ちを大切にしながら不妊治療を続けていくことを大切にしてください。

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