妊娠10ヶ月に入って、とうとう出産まで指折り数える時期になりました。この時期は妊娠10ヶ月というよりも臨月と言ったほうが馴染みがありますが、最近はその他に正産期(せいさんき)や正期産(せいきさん)という言葉を耳にします。
臨月と同じでは?と思ってしまいますが、実際はどうやら違うようです。そこで、正産期は一体いつからいつまでなのか、臨月とどう違うのか、正産期は何に気をつけて過ごすべきなのか、気になることを詳しくご紹介していきます。
正産期・正期産・臨月・周産期の違い
妊娠・出産にまつわる用語はたくさんありますが、その中でもどれも同じような意味に思えるのが正産期・正期産・臨月・周産期の4つです。
出産にいたる前後の期間と出産を指しますが、実は微妙に異なっていてそれぞれ使う意味合いも変わります。そこでこの4つの違いを詳しく見ていきましょう。
正産期とは
正産期とは妊娠37週0日~41週6日までの期間を指し、赤ちゃんにとって最も出産に適した時期です。妊娠35~36週にかけて多くの赤ちゃんの皮下脂肪が増え、また肺が成熟して出産後スムーズに呼吸ができるようになります。
臨月に入れば一応赤ちゃんが生まれても大丈夫となっていますが、赤ちゃんの発育には個人差がありますから、生まれても発育に問題ないと確実性がもてるのが妊娠37週なのです。
正期産とは
正産期と言葉がほぼ一緒ですが、正期産は正産期である妊娠37週0日~41週6日の間に出産することを指します。
単胎妊娠の場合は全出産の9割がこの時期に起こりますが、多胎妊娠の場合は正期産の出産が5割を切ります。多胎妊娠で正期産の割合が少ないのは、高齢妊娠・出産が増えていることに加えて不妊治療の結果多胎妊娠が増加しているのが理由です。
そのため、妊娠後期から管理入院を行い場合によっては早く出産してNICUで経過を見る傾向にあり、それが正期産の減少につながります。
臨月とは
妊娠中最も聞かれるのがこの臨月という言葉ですが、臨月は妊娠10ヶ月目で妊娠36週0日から39週6日までを指します。
臨月に入るといつ出産してもOKだと思ってしまいがちですが、実際は臨月に入った最初の1週間以内に出産した場合は正産期には当てはまらず早産という扱いになります。また41週6日を過ぎて出産した場合は過期産となります。
周産期とは
周産期とは妊娠22週から生後7日未満の時期を指します。この時期は早産や合併症・分娩時のトラブルなどお母さんと赤ちゃんの命に関わる事態が発生することが多いため、産科と小児科を併せたケアを行う周産期医療を行う医療機関の設立や認定を促進しています。
こういった周産期医療機関と提携を結んでいる個人病院も多く、万が一トラブルが起きた際にはそちらへ転院するよう勧めることがあります。
正産期の体調の変化
正産期に入ると、お母さんと赤ちゃんの体はそれぞれ出産に向けて準備をはじめます。赤ちゃんが骨盤に頭を収めるように移動する赤ちゃんの動き以外にも、分娩がスムーズに進むようにお母さん側も少しずつ体調が変化していきます。
そう考えると、その変化が分娩開始の予兆と考えても良いかもしれません。一度じっくりと体を観察して、今までと違っている部分をチェックしてみましょう。
胃のトラブルが緩和し食欲増加も
正産期は赤ちゃんが下へ移動して頭が骨盤に収まるため、子宮も下がって胃の圧迫が無くなります。正産期に入ると胸焼けや胃もたれが軽減して、食欲がわいてきたりスッキリ感じる妊婦さんも多いです。
しかし、食欲がわいてきたからといって思うままに食べてしまえば、今までの体重コントロールが無駄になってしまいますね。授乳中は甘いものや刺激物を避けたほうが良いので、そう考えると今のうちに辛いものや甘いものを食べたいという気持ちも分かりますが、体重増加に響かない程度に抑えるよう気をつけましょう。
おりものの状態は?
妊娠中期には気にならなかったおりものが、再び増えるようになります。正産期に入ってからのおりものには、赤ちゃんが産道を通り抜ける際の潤滑油のような働きをするとても大事な役割があります。
この時おりものが白くなったり茶色くなることも多いですが、ボロボロした形状であったり悪臭がするようでなければ問題ありません。おりものが気になっておりものシートをつけている妊婦さんもいますが、その場合はこまめに替えるようにして雑菌が繁殖しないように注意しましょう。
卵膜栓とは
この時期ゼリー状の塊のおりものが沢山出てびっくりする方も多いですが、これは卵膜栓と呼ばれるものです。子宮頸管は赤ちゃんが正産期前に出てきてしまわないように、頸管粘液でふたをしています。
子宮口がだんだん開いてくるとこの粘液が外へ排出されるので、おりものの塊はおしるしと同じように出産が近づいている兆候の一つといわれています。
おしるしのある場合とない場合
この時期おりものに出血が混ざることがありますが、トラブルではなくいよいよ出産へのカウントダウンが近づいていることを意味します。
この出血はおしるしと呼ばれ卵膜が剥がれて出血するものですが、おしるしが無いまま陣痛が始まることも多いので、かならずしもおしるしが認められるわけではありません。
また、おしるしから陣痛開始間出にかかる時間も個人差があり、おしるし後すぐに陣痛が始まったという方もいれば1週間前からずっと出血があったという方もいらっしゃるので、おしるしがあったから即出産につながるというわけではなさそうです。
前駆陣痛が頻繁に感じる方も
正産期に入ると、いよいよ体は出産への準備を始めますが、その中で妊婦さんにわかりやすいのが前駆陣痛です。前駆陣痛は不規則な子宮収縮で強い痛みをもたらすこともあるため、陣痛が来た?と勘違いしてしまう妊婦さんも多いです。
前駆陣痛と陣痛の大きな違いはやはり収縮の起きる間隔で、陣痛ならば段々と間隔が短く痛みも強くなりますが、前駆陣痛は起こる感覚が一定でなく次第に治まっていくのが特徴です。
横になって安静にしていればそのうちに治まりますが、痛みが激しくなったりお腹がカチンカチンに硬くなっている・胎動が少なくなってきた等の症状が見られる時は、何らかのトラブルが発生している可能性がありますから、病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
正産期の検診内容は
正産期に入ると検診回数や内容が変わってきます。最も変わるのは検診回数で、妊娠7ヶ月~9ヶ月にかけて2週間に1回の検診だったのが、妊娠36週からは1週間に1回の検診に変わります。
妊婦さんの体が出産に向かってどのように変化していくかを詳細にチェックするためですが、大きなお腹で毎週通うのは大変かもしれません。
ただ、子宮口の開きや赤ちゃんの動きは1週間で大きく変化することもありますから、出産までは頑張って通いましょう。
内診
妊娠初期に行った内診を、正期産に入ると再び行います。この時期の内診は子宮口がどれくらい開いているのか、赤ちゃんがどれくらい下がってきているのかをチェックするもので、超音波検査では分かりづらい部分を触診で確認します。
内診の刺激で出血する方もいますが、すぐ止まるようならば問題ありません。また、出産予定日が近づいても子宮口が全く開いていない時などには、子宮内壁から卵膜を指で剥がす卵膜剥離を行って陣痛を促進させる方法をとる病院もあります。
この卵膜剥離は強い痛みを伴うと言われていますが、痛みは個人差がありますし全ての妊婦さんが卵膜剥離を行うわけではないので安心してください。
ノンストレステスト(NST)
赤ちゃんの発育が正常な時は、正産期に入ってからノンストレステストを行います。赤ちゃんが陣痛や分娩に耐えられるかどうかをチェックするもので、お腹にセンサーをつけて赤ちゃんの心拍数とお母さんのお腹の張りをそれぞれモニターします。
このノンストレステストは1回につき数千円の料金が発生するので、妊婦健診助成金などの行政サービスを上手く活用しましょう。
GBS検査
妊娠後期から正産期の初めにB型溶血性連鎖球菌を検査します。この菌は常在菌の一つで性器付近に存在していますが、GBS抗体を持っていないお母さんがGBS陽性となった場合、経膣分娩を行うと赤ちゃんに母子感染して肺炎・敗血症・髄膜炎など重篤な症状を発症することがあります。
綿棒で性器や肛門をこすって検体を培養して検査を行いますが、もし陽性と判断された場合は、陣痛が始まった時から抗生物質を点滴投与しながら分娩時に赤ちゃんへの感染を防ぎます。帝王切開ならば感染の確率は低くなりますが、担当医とよく話し合って出産方法を検討しましょう。
陽性だったとしても妊娠中は治療を行わない病院も多いので、ストレスを溜めずしっかり睡眠をとって免疫力を低下させないように気を配るのが大事です。
正産期に気をつけることとは
正産期に入るともうすぐ出産だから、と気が緩んでしまいがちです。しかし、この時期にどう過ごすかで順調な出産に繋げられるかどうかがかかっているといっても過言ではありませんから、ぜひとも気を引き締めて最後の妊娠時期を過ごしたいものです。そこで、正産期に気をつけたいことをいくつかご紹介します。
適度な運動、体を動かす
お腹が大きくなって、運動が出来ない方も多いでしょう。しかし出産は体力を消耗しますから、自分の出来る範囲で毎日体を動かして、少しでも体力をこれ以上落とさないように気をつけましょう。
ウォーキングが出来なくても、家の中でストレッチやスクワットが出来れば十分ですし、家事をいつもより丁寧に行うのでも十分に効果があります。
体力がなくて陣痛が長引けばその分赤ちゃんも苦しい思いをしますから、赤ちゃんに負担をかけないためにも今のうちに運動をしておきましょう。
体重増加、食事には注意を
出産まであと少しだからと、つい食べ過ぎてしまう妊婦さんも非常に多いです。出産まで残り少ないと言ってもまだ妊娠中ですから、体は脂肪を溜めやすいことに変わりはありません。
ここで体重がぐっと増えれば産道に脂肪がついて難産になったり、最後の最後で妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を発症する可能性も出てきます。
この時期赤ちゃんの体重が急激に増えることはありませんので、食べ過ぎた分は全てお母さんにつくと考えて無事出産を終えるまでは体重増加に気をつけましょう。
不安や忙しさからくるストレスに注意
正産期に入って子宮口が中々開かない・赤ちゃんが下りていないなどと指摘されると「ちゃんと産めるのだろうか」と不安になって仕方がないです。
それ以外にも里帰りの準備だったり、入院中や産後の準備やご主人の食事の用意などしなければならないことが沢山あって、この時期は意外とストレスが溜まりやすくなっています。
ストレスはお母さんだけでなく赤ちゃんにとっても悪影響を与えますから、上手く息抜きしながら少しずつ準備をしていってストレスを溜めすぎないようにしましょう。
正産期に入ったらチェックすべきこと
出産まで後少しとなったこの時期は、出産だけでなく産後のことについても考えておく必要があります。
産後はお母さんの体が回復するまで時間がかかりますし、赤ちゃんの世話で時間が取れませんから、入院中や産後の手続きはご両親かご主人が行うことになります。その時になって慌てないように、きちんと話し合って必要なことを確認しておきましょう。
さまざまな手続きの確認
出生後14日以内に出生届を出さなければなりませんが、それ以外にも赤ちゃんとお母さんの手続きがいくつかあります。赤ちゃんの場合は児童手当と乳幼児医療助成・健康保険の手続きを行うと一定年齢になるまで手当てや補助が受けられますが、届出期限がありますので注意してください。
それからお母さんの場合は出産育児一時金、妊娠中も働いていた方は出産手当金・育児休業手当金、出産時に帝王切開や陣痛促進剤を使った方は高額医療など、もらえる手当金がありますので、病院や会社で確認しておくと良いでしょう。
内祝いの準備も
産後1・2ヶ月はバタバタしますので、なるべくなら産後のことでも正産期の時間のある時にしてしまった方が、後で忙しくならずにすみます。出生届や控除の届出など赤ちゃんに関する事はきちんと準備が出来ても、ついうっかり忘れがちなのが内祝いの準備です。産後はいろんな方がお祝いしてくれますが、それに対するお返しが内祝いです。
前もって内祝いを贈るリストを作っておいたり、内祝いの品を決めるのは時間が無いとできませんから、ぜひ今の時期にしておきたいもの。本来は身内のお祝い事として贈り物をする意味ですから、お返しだけでなく自分の気持ちとして渡したい方などもリストアップしておくと良いです。
二人の時間は今のうちに
赤ちゃんが生まれると世話でかかりっきりになって、夫婦二人の時間はしばらく取れなくなります。ですから、ぜひ今のうちに二人の時間を作りましょう。
いつ陣痛が起きてもおかしくないですから、近場での旅行や長時間外出しないことなどの条件がつきますが、ショッピングや散歩などその中で二人で楽しめることを見つけてみてはいかがでしょうか。妊娠中の思い出として赤ちゃんが大きくなった時にぜひ話してみるのも良いですね。
正産期を過ぎたらどうする?
正産期は妊娠37週0日~41週6日で、42週0日からは過産期となります。出産予定日から2週間過ぎても正期産になりますので、出産予定日を過ぎても心配しないでください。
しかし過産期に入ると胎盤機能低下・羊水減少・巨大児・胎便吸引症候群などのリスクが発生するため、妊婦さんの体調を確認しながら家族と話し合い誘発分娩を行う病院が多いです。
なるべく誘発分娩をしないで産みたいと思っている方も多いですが、胎盤機能が低下すれば赤ちゃんに酸素が届かなくなり危険な状態となってしまうので、担当医とよく話し合って決めるようにしてください。
まとめ
正産期は臨月とは異なり、赤ちゃんが生まれてきても問題ない時期を指します。出産へのカウントダウンが始まっていますから、入院中の準備や産後の手続きなどは今のうちに確認しておくようにしましょう。
もうすぐ産まれるとなるとあれこれ心配になってしまいますが、自然なタイミングで赤ちゃんは産まれてきます。あまり考えすぎないようにして赤ちゃんに会える日を楽しみにして過ごしましょう。