誰かが亡くなるのは本当に突然です。すぐ駆けつけられるように、職場に喪服や黒のネクタイを用意している方も多いでしょう。妊娠中の女性なら、葬式に参列すべきかどうか迷います。
妊婦は葬式に参列すべきでないと考えている人もいまだに多く、自分の体調を考えればためらってしまいます。しかし親しい人の顔を最後に見てお別れしたい、と言う気持ちも分からないではありません。
葬式と言うのは亡くなった方を弔うためで粛々と行われますから、マナーがきちんとしていなければ悪目立ちしてしまいます。どうしても葬式に参加したければ、先方に迷惑がかからないように自分の体調を管理してスケジュールを組んで、当日周りに気を使わせてしまうような事は避けなければなりません。
母親になる立場の人間として、わきまえた行動をとりたいものです。そこで妊娠中の葬式について、知っておきたいことをいくつかご紹介します。
妊婦は葬式に参列・出てはいけないのか?
昔から「妊婦は葬式に参列してはいけない。出てはいけない」というのが常識のようになっていて、いまだに妊娠中の葬式への参列・出席を反対された人も多いと思います。
病原菌が母体に侵入リスク
葬式は死者を弔う行事であって、これから生まれてくる赤ちゃんがお腹にいる女性とは正反対を意味し、穢れの場所にあるべきではないと考えられていました。これは、昔は亡くなった人から疫病が発生する事が多かった事から出来た風習なのでしょう。
特にこれから生まれる赤ちゃんは弱いため、疫病となる原因の病原菌が母体に侵入する可能性が高かったのも原因だと考えられています。他に、お母さんが嘆き悲しむとお腹の赤ちゃんに良い影響を与えないから、と考えられていたのも理由なのではないでしょうか。
お手伝いでの体の負担
葬式はその家族が忙しい分周りがお手伝いをする事がほとんど。特に関係が近い女性は手伝いをするのが当たり前のようになっていますが、妊娠初期でお腹が目立たなかったとしても妊婦に色々な仕事をさせるわけには行きません。
でも周りが忙しく動いているのに自分だけが休むわけにはいかないと、手伝ってしまう妊婦さんもいるでしょうから、それならば行かない方が良いと周りが止めていたのを、間違って伝わってしまったパターンもあります。
葬式参列・出席は自分の体調と相談
とにかく最優先で考えるのは、自分の体調です。臨月に近かったりお腹の張りが頻繁にあるような妊婦が、葬式に参加するのは避けた方が良いのは分かります。
葬式といっても通夜・告別式・荼毘に分かれていて、開始時間や終了までにかかる時間もそれぞれ異なり、身内なら全てに参加しなければなりませんが、知人の葬式なら通夜か告別式のどちらかに参加すればよい、となっています。
身内の場合は妊婦である事を考えてくれますが、知人・友人の場合は自分で決めないといけません。無理に参加して先方に気を使わせてしまわないように、スケジュールと自分の体調をよく考慮してから参列・出席もしくは欠席を決めましょう。
また自分は調子が良いと思っても、産婦人科医はそうは思っていないケースもあります。葬式に参列・出席して体調が崩れる事も考えられますので、以前の定期健診で妊娠高血圧症候群やお腹の張りを指摘されていた人は、参列・出席を決める前に担当の主治医に相談するのが良いかもしれません。
妊娠初期の葬式参列・出席
妊娠初期のお葬式に参列・出席する際に、気になるのがつわりです。つわりで長時間座っていられないようならば、お葬式は欠席しましょう。通夜や告別式は1・2時間程度ですが、つわりが強い方にとっては我慢するのが難しい時間なのではないでしょうか。
また、つわり中はにおいにも敏感になりますから、お線香の強い香りで気持ち悪くなってしまう方もいるでしょう。自分は匂いつわりだと自覚している方は、ちょっと考えた方が良いかもしれません。またお葬式後の食事は、妊娠中だと告げて断りましょう。無理に食べてつわりが酷くなってしまえば、相手側に余計な気を使わせてしまいます。
妊娠後期の葬式参列・出席
まずはかかりつけの医師に、葬式参列・出席が可能かどうかを伺いましょう。妊娠後期はいつ出産してもおかしくない時期なので、体調に問題なくても妊娠週数を見てノーという医師もいます。
参列・出席する場合、妊娠後期は大きくなったお腹で足元が見えなくなるので、足元に十分注意しましょう。火葬場には玉砂利を引いている所も多いので、ちょっと足を踏み外せば転倒してしまう可能性が高くなります。
靴はフラットかローヒールで足のサイズにフィットするものを選びますが、やはりお葬式なので黒でもエナメルや革製は避けた方が良いでしょう。また疲れやすい時期ですから、ご挨拶のみで帰るというやり方もあります。妊娠中なのは一目でわかりますから、相手側も十分理解してくれます。
妊婦の葬式と迷信
妊婦が葬式で鏡をお腹の前に持つ?
妊婦が葬式に参列・出席する時は、お腹の前に鏡を持つという迷信を知っていますか。
鏡は神道では、その神社に祀られている神の依り代として神社の本殿や拝殿に祀られ、悪い気を反射しお願い事をしに参拝しにきた人の心を映し出すと言います。葬式でお腹の前に鏡を持つのは、赤ちゃんに寄ってきた死者の霊を鏡で跳ね返す、という赤ちゃんを守る意味があるのです。
鏡を持つのは、通夜や告別式ではなく火葬場にいる時に限定される事が多いのは、遺体が煙とともに空へ上っていく時に赤ちゃんを連れて行かれないようにするため、とも言われています。
妊婦は骨あげはしない?
また焼き場で骨を拾ってはいけないとも言われるのですが、新しい生命を穢れには近寄らせないという意図が見えます。どちらも気にしなければ良いだけなのですが、鏡を持っていなかったからと周りの年配の参列・出席者に怒られてしまうのならば、格好だけでもしたほうが事を荒立てずにすみます。
火葬場 あざのある子が産まれる?
妊娠中にまつわる迷信は様々ありますが、「葬式や火葬場に妊婦がいるとあざのある赤ちゃんが産まれる」などは人の生死に関わるために、昔から根強く信じられています。
火事を見た時にも、あざのある赤ちゃんが産まれると言われていますね。葬式では悲しみで、火事ではショックで感情が昂ってしまい妊婦の体調には良くないという考えが、このような迷信となって現れたのでしょう。
また火事の場合は人が集まるため、周りとぶつかってあざが出来てしまうというのも理由の一つかもしれません。どちらにしろ信憑性はまったくないので、この点について不安に思う必要はありません。
どんな服装で葬儀参列・出席すべき?
妊婦でも葬式に参列・出席する服装は、ブラックフォーマルがベスト。
今はマタニティ用のブラックフォーマルも種類が豊富で、妊娠中から産後・お宮参り・入園式・入学式まで長く使える、細く見えると従来のマタニティ礼服とは全く違ったデザインなのがポイントです。出産後は体型が元に戻るまで時間がかかるので、全体がプリーツでバスト下をリボンで結ぶような、腰周りに余裕のあるデザインはどのシチュエーションにもぴったりです。
しかし、中にはブラックフォーマルなんて関係ない、10ヶ月しかないからそのお金は赤ちゃんに使いたいと考える人もいるでしょう。そういう場合は、事情があるのですから黒色の服でも問題ありません。
お腹が窮屈になるほどのぴったりサイズのスーツなどは避けて、お腹周りの調節がしやすいフリーサイズのワンピースやカーディガンなどが便利ですね。また手持ちの服ではサイズが合わない、わざわざ買いたくは無い、そんな時はマタニティレンタルもあるので上手に活用してください。
参列・出席する時は必ず誰かと一緒に
お葬式に参列・出席する事が決まったら、必ず両親やパートナー・兄弟など必ず誰かと一緒に参列・出席するよう調節しましょう。いくら安定期や定期健診で何も問題がなかったとしても、普段とはまったく違う行動を取りますから突然体調を崩す事もありえるからです。
お葬式が自分の家から近い喪家自宅で行われるのならば早々疲れる事もありませんが、車で何時間もかかる場所だったり斎場が山の上にあり交通手段が限られている場合などはあれこれ気を使ってしまうため、式が始まる前から疲れてしまう事もあります。
式の最中は気が張っていても終わった途端にガクッと来る事もありますから、そんな時のためにもサポート役をお願いしておきましょう。
葬儀は冷え対策もしっかり
通夜が行われるのは夜ですし、昔の告別式などは自宅で行われていましたが、現在は葬祭会館を借りて行われる事が多いので、その場所にいること自体が妊婦の大敵である冷えにつながりやすいです。
特に葬祭会館は華美を避けたシンプルなインテリアが多い分外気温や室温がダイレクトに体に響いてきます。それぞれかかる時間は30分~2時間程度ですが、座っている時は足元から冷えて立てば結構あちこち動きますので、思っているよりも体への負担は大きいと考えてよいでしょう。
身内の葬式では火葬場まで一緒に行きますが、屋外にあるので特に身体が冷えやすくなってしまうので、参列・出席する前から遺族には事情を説明しておき、ちょっとでも疲れたりお腹が張ってきたと思うようであれば、すぐ休むような心がけが必要です。
参列・出席後の体調に注意
お葬式に参列・出席している最中は故人に思いを馳せたり何かと立ち動くため、自分の体調は後回しになってしまいます。そうすると帰りの車中や家で疲れがどっと出てしまい、強いお腹の張りに苦しむ事にもなりかねません。
妊娠前とは違ってお母さんの身体のシステムは全て赤ちゃん優先に出来上がっているので、妊娠中はどの時期であっても無理をすればすぐ疲れやすく体調を崩しやすい事を覚えておきましょう。
斎場へ行く時は車を使って休憩時間を多く取るようにしたり、またお腹が大きくなってきていれば日帰りせずに1泊してから帰るなど、お葬式に参加する以上の負担をかけないようにすべきです。
葬儀参列・出席以外の方法もある事を忘れずに
担当の産婦人科医から、赤ちゃんの成長ぶりやお母さんの体調を見て、葬式の参加にあまり良い顔をされない場合はどうしたらよいでしょう。医者はお母さんと赤ちゃんの万が一を考慮するので、ちょっとでも数値がオーバーすれば少しの遠出でもノーと言うはずです。
ちょっとのオーバーでもドクターストップがかかる可能性があるのですから、妊娠高血圧症候群やお腹の張りが頻繁にある妊婦は押して知るべし、です。医者の反対があったにも関わらず強行して葬式先で調子を崩してしまえば、忙しい先方に迷惑をかけてしまいお悔やみどころではありません。
自分と親しい人物が亡くなって、葬式に参列・出席したいけど距離や時間の関係でどうしても無理な場合は、弔電を送ったり先方が落ち着いた頃に焼香しに行く、葬式には夫や親など代理を葬式に参列・出席させるなど様々なやり方があります。葬式後の方が、遺族も落ち着いて故人との思い出を語れる時間を持てるかもしれません。
ここまでのまとめ
妊婦の葬式への参列・出席は、こまごました事を確認しないといけません。最後に一目顔を見たいと言う気持ちも分からないではないですが、体調が悪いのを押してまで参列・出席するのではなく、遺族側にも迷惑がかからないように、自分がどんな行動を取れば先方に気を使わせる事なくすむのかを考えるのが大事なのかもしれません。