食べ物がおいしすぎて体重増加を気にしながらもつい食べてしまう妊婦さんも多いことでしょう。妊娠中に意識して食べたい野菜や果物がたくさん出てきますから、あれもこれもと手が伸びてしまいます。
しかし秋の食べ物には、妊娠中に注意しなければならないものもあります。昔からよく言われているのが柿で、妊婦さんは柿を食べないようにと戒められていました。しかし柿にはたくさんの栄養が含まれていますし、大好物と言う方も多いです。
好きなのに理由も分からず食べてはダメと言われると、イライラしてしまうでしょう。そこで、柿は妊娠中に食べてよいのかダメなのか、食べる場合はどれくらい食べてよいのか、気になることを詳しくご紹介していきます。
妊娠中に柿を食べてもいいの?ダメなの?
昔は妊娠中の柿はダメと言われていましたが、現在は柿の栄養分が妊婦さんにとって良いと判明していて、デメリットよりもメリットが上回っています。
ただ、もちろんデメリットと言われる部分は残っているので、一度に沢山食べないようにする、または1日に食べる量を決めるなどちょっとした注意が必要です。
妊娠中に柿を食べることのデメリット
柿は妊婦さんに必要な栄養が多く含まれているので妊娠中は食べてOKですが、だからと言って1日に何個も食べてしまうと悪影響の出る可能性があります。
妊娠中に柿を食べることのデメリットは、一体どのようなものがあるのでしょうか。
体を冷やす可能性
水分と果糖を多く含んでいるため、どの果物もある程度の解熱作用を持っています。その中でも特に秋に収穫を迎える柿や梨は妊娠中に食べるべきではないと言われていますが、それは果物自体の働き以外に季節の変化も加わるためです。
秋は急に気温が下がり夏の疲れが出やすい時期ですし、妊娠中はホルモンバランスが急変するため体温が下がりやすくなっています。
このように秋は体温が下がりやすい条件がそろっているため、柿の解熱作用が大きく働いて妊婦さんに作用するのだと考えられています。
貧血になる可能性
柿の渋の元になっているのがタンニンで、渋柿だけでなく甘柿にも含まれています。緑茶やコーヒーにも含まれるタンニンは、ポリフェノールの一種で血液をサラサラにする効果があり妊娠高血圧症候群に効果的ですが、鉄の吸収を阻害するというデメリットがあります。
貧血に悩む妊婦さんにとっては避けるべき食品になるかもしれませんが、柿は栄養価が高いため他の果物で補うのは中々大変です。食後のデザートではなく間食として食べたり、摂取量を少なくする・鉄剤を多く飲むなどして工夫すれば、貧血を悪化させることなく柿の栄養を得られるでしょう。
便秘になる可能性
おばあちゃんの知恵として、タンニンは下痢止めの作用があることをご存知の方も多いでしょう。タンニンには整腸作用がありますが、下痢止めの効果があるということは摂取しすぎれば便秘になってしまう可能性が高くなると言うことです。
便秘にはいくつか種類がありますが、妊娠中は腸のぜん動運動が弱まる弛緩性便秘になる傾向にあります。タンニンは腸の動きを抑えて下痢をとめる働きをしますから、妊娠中の便秘はタンニンを取りすぎると更に悪化してしまうのです。
妊娠中を通してずっと便秘に悩まされる方も多いですから、便秘が酷い時は柿を避けたほうが良いかもしれません。
体重増加や妊娠糖尿病の可能性
柿に含まれる炭水化物は食物繊維を引くと約13gで、ブドウやさくらんぼと同程度です。果物類の中では糖分が多く含まれているため、食べ過ぎると妊娠糖尿病につながる恐れが出てきます。
果物はお菓子よりもカロリーが低いため妊娠中のおやつにはピッタリですが、そもそも妊娠中は血糖値が上がりやすい状態になっているため、果物でも果糖が多いものを大量に食べるとお菓子を食べた時と同じように血糖値はあがってしまいます。
妊娠中は体重が増えるのが当たり前でちょっと食べ過ぎれば確実に体重に反映されますから、果物だから大丈夫と安心してはいけないのです。 参照:文部科学省 食品成分データベース
[噂]柿を食べると流産する?
柿を食べると体を冷やす以外にも、柿を食べると流産すると脅された方もいらっしゃるかもしれません。妊娠を知らずに柿を沢山食べたタイミングで流産が起きると、やはり柿が原因なのではと思ってしまいます。
しかし、流産の原因は染色体異常がほとんどですから、妊娠後に食べたものが原因で流産することはありえません。昔はこういった体のシステムの研究が進んでいなかったため、何か原因を作りそのせいだとすることで流産のショックを乗り越えてきたのではないかと考えられます。
妊娠中に柿を食べることのメリット
体を冷やして妊婦に良くないと避けられてきた柿ですが、実は妊娠中のトラブル解決につながる栄養素が沢山含まれている優れものの果物です。
妊娠中に起きるこまごまとしたトラブルも、柿で一気に解決できるかもしれません。どのような栄養が含まれていて、どのような効果があるのかを見ていきましょう。
ビタミンで免疫力が上がる
妊娠すると、自分ではない異物を体内で育てるために免疫力が低下します。赤ちゃんがお母さんの免疫細胞に攻撃されずすくすく育つ反面、お母さんは風邪を引きやすくなったりカンジダなどの感染症にかかりやすくなります。
免疫力を高める栄養はビタミンA・C・Eですが、実は100gあたり70mgと柿はビタミンCの含有量が果物の中でもトップクラスです。妊娠中に必要なビタミンCは一日110mgなので、大き目の柿を一個食べるだけで必要なビタミンCが摂取できます。
また、妊娠中にビタミンCが不足すると赤ちゃんの脳の発達に影響するという研究結果がありますので、その点でも柿は妊娠中におススメの果物と言えるでしょう。 参照:日本人の食事摂取基準
葉酸を多く含む
葉酸は赤ちゃんの先天性異常を防ぐ大切なビタミンですが、名前のイメージから葉物野菜のみに含まれると思われがちです。
ですが、実際は肉・魚・豆・果物など多くの食材に含まれています。柿は葉酸が多く含まれる果物の一つで、大きな柿1個で約40μgの葉酸が含まれます。妊娠中の一日に必要な葉酸摂取量は400μgなので、おやつを柿に変えるだけで楽に摂取量が増やせます。
葉酸は、妊娠中はもちろん非妊娠時にも摂取が推奨され、妊娠には必須の栄養素とされているため、妊活中の方や二人目が欲しいと望んでいる方はぜひ柿を食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。参照:国立保健医療科学院 葉酸の多い果物
妊娠中の肌トラブルを軽減
妊娠中はホルモンバランスの変化が原因で、ニキビが出来たり乾燥したりと肌トラブルが起きやすくなります。免疫力が低下していることもあって肌トラブルが悪化しがちなのですが、柿には肌を強くするビタミンAが多く含まれています。
柿以上にビタミンAを持つ果物はみかんやメロン・プルーンなどがありますが、秋に手軽に食べられる果物としてはやはり柿が一番です。また、タンニンはメラニン生成を抑える働きがあるので、妊娠中に起こりがちなシミや黒ずみを軽減してくれるでしょう。
妊娠中の柿のビタミンAは大丈夫?
ビタミンAを妊娠初期に摂取しすぎると、赤ちゃんの奇形につながる可能性があると言われていますね。柿にもビタミンAが多く含まれていますから、その点を心配する方がいらっしゃるかもしれません。
実はビタミンAはレチノールという動物性のものとβカロチンという植物性の2種類に分かれますが、妊娠初期の過剰摂取で問題になるのはレチノールの方です。レチノールは体内に蓄積されますが、βカロチンはビタミンAの元となる成分で必要な分のみビタミンAに変換されるため、βカロチンを沢山とってもビタミンAの過剰摂取とはなりません。
ただ、ビタミンAの耐用上限量はレチノール活性当量で一日2,700μgとなっているので、この値を超えないように注意してください。
むくみに効果的
柿には100g中170mgのカリウムが含まれています。バナナに比べると少ないのですが、それでも妊娠中に悩まされるむくみには大きな効果があります。
その他にも、カリウムが不足するとイライラしたり疲れやすくなる・足がつると言った症状が起きるようになります。妊娠中はただでさえ感情が不安定になりやすいですから、カリウムをきちんと取って悪化することは避けたいですね。 参照:グリコ
低カロリー
柿の100gあたりのカロリーは60Kcalと低カロリーなので、体重が増加しやすい妊娠中の大きな味方となってくれます。
一般的なクッキーのカロリーが1枚約40Kcalですから、2枚食べると柿のカロリーを大幅に超えてしまいますし、何よりお腹に溜まらないのでドンドン食べてしまい、あっという間にカロリーオーバーになる可能性があります。その点柿は適度な水分が含まれているため、1個食べれば満腹感が出て余分なカロリー摂取を抑えられます。
柿は1日どれくらい食べていいの?
妊娠中でなくとも、一つの食品を大量に食べ続けることは体に良くありません。柿は低カロリーですが糖分が比較的高いので、1日1個くらいがちょうど良いでしょう。
ビタミンCを沢山とろうと一度に柿を沢山食べても、過剰なビタミンCは尿で排泄されてしまいますし、タンニン摂取量が増えて便秘になる可能性が高くなります。
また、体が冷えてしまいお腹の張りにつながることもありますので、一度に沢山食べるよりは毎日1個を継続して食べる方が柿の効果をしっかり得られるでしょう。
柿の加工食品は食べてもいいの?
柿は葉やへたに至るまで栄養がたくさん含まれているので、実・葉・へた・皮を使ったレシピや加工品も実に多いです。旬でなくても柿を食べたいからと、このような加工食品を好む方もいらっしゃるでしょう。
しかし、過剰な体重増加や妊娠糖尿病などが気になる妊娠中は、加工食品に柿の栄養が含まれているのかどうか気になります。そこで代表的な柿の加工食品の栄養をチェックしてみましょう。
柿の葉茶
美肌効果があるとして昔から有名な柿の葉茶ですが、それは柿に含まれているビタミンCよりも更に多くビタミンCを含有しているためです。
また、このビタミンCはプロビタミンと言われ加熱しても壊れないビタミンCなので、確実に体内に吸収されるのが特徴です。ノンカフェインのため妊娠中でも飲めるお茶ですが、やはり気になるのはタンニンです。
1日1杯程度にとどめたり便秘中は避けること、それから70度くらいのお湯でゆっくり淹れるとタンニンを抑えることができます。 参照:奈良県公式ホームページ
干し柿は?
柿を干すと水分が減るため、生柿のように体を冷やすことはありません。また、水分が無くなった分だけ食物繊維が増え、βカロチンも果物内でトップの含有量へと変化します。
これだけ見ると生柿よりも栄養価が高いと思われますが、干し柿はカロリーが高く糖質も多いのが妊娠中はデメリットとなります。
干し柿のカロリーは100g中276Kcalですから生柿の4倍以上になりますし、食物繊維を引いた炭水化物量は50gを超えます。干し柿は簡単に2個3個と食べられるので、気がついたらカロリーオーバーなんてことになりかねません。 参照:文部科学省 日本食品標準成分表2015
柿の加熱食品
柿は加熱すると、シトルリンという血行促進やむくみに効果のあるアミノ酸が出てきます。むくみが気になる妊婦さんは生柿ではなく、スライスしてオーブンで焼いた柿などを食べると効果的です。
また、柔らかくなった柿を煮て柿ジャムを作る方も多いですが、ビタミンCを多く取れる代わりに砂糖やハチミツを加えるのでカロリーや糖分には注意が必要です。
産後も積極的に食べよう
柿は妊娠中だけでなく、産後や授乳中にもおススメの果物です。産後は赤ちゃんの世話に追われて自分のケアまで気が回らず疲れきってしまうお母さんも多いですが、疲労回復には高含有の柿のビタミンCやビタミンAが効果的です。
切ったらすぐに口に入れられるので、座って食事が出来ないくらい忙しいという時でも大丈夫。また、加熱した柿はシトルリン以外にGABAというリラックス効果のある成分が出てきますので、産後のイライラした気持ちを和らげてくれるでしょう。
離乳食を開始する時期になれば初期から柿が使えますので、赤ちゃんの風邪予防としても有効活用できますね。
お父さんにも効果的
お父さんにも柿がおススメです。柿に二日酔いを早く治す働きがあるのは昔から知られていますが、それは二日酔いの元となるアセトアルデヒドという物質に柿のタンニンが結びついて早く体外に排出されるためです。
柿を飲酒前に食べれば悪酔いの予防になりますので、飲み会がある時には柿を用意しておくと良いでしょう。柿の旬が過ぎてしまった時は、干し柿でもOKです。お酒が好きな家庭には常備しておきたいですね。 参照:日本酒造組合中央会
まとめ
柿は体を冷やすため妊娠中は避けるべきと昔から言われてきましたが、お母さんやお腹の赤ちゃんに必要な栄養がたくさん含まれていることが分かってきたため、一概にダメとは言い切れなくなっています。
もちろん食べ過ぎれば体が冷えたり便秘・貧血が悪化・カロリーが高いなどデメリットがありますが、1日1個くらいなら悪影響を受けることは少ないでしょう。また、妊娠中だけでなく産後の疲労回復やアルコール分解作用・離乳食など、お父さんや赤ちゃんにもメリットがありますから、ぜひ旬には家族で柿を楽しみたいです。