妊娠中はつわりや体重の増加・体の痛みなど、切れ目無く様々なトラブルが起こります。その中でも一番目に付きやすくどうにかしたいと悩むのが、ニキビやかゆみ・肌のザラザラなどの肌荒れではないでしょうか。
実は「皮膚は内臓の鏡」といわれるほど、肌の状態と内臓の状態は関係が深いのです。特に妊娠中は、お腹の赤ちゃんを成長させるためにホルモン分泌や体のシステムが変化しますから、肌もその影響を受けていつも以上にアンバランスな状態になります。
また、妊娠中の肌荒れは時期によって原因が変わるので、せっかくケアをしても効果が出ない可能性もあるでしょう。そこで、妊娠時期ごとの肌荒れの原因や、その対処法をご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
妊娠時期で変わる肌荒れの原因
妊娠中ずっと肌荒れに悩まされているけど、あれこれ試してみても効果が一向に出ず悩んでいる方も多いですね。妊娠中は次々と体に変化が起こるように、実は肌荒れの原因も変化しているのです。
そこで妊娠初期・中期・後期、それから妊娠中を通して起こる肌荒れの原因を時期ごとに分けてチェックしていきましょう。そうすれば自分の状態から効果的な改善方法を見つけられるでしょう。
妊娠中を通して 便秘が原因の肌荒れ
妊娠初期はホルモンの変化で、妊娠中期~後期は子宮が大きくなって腸を圧迫することで、これまで便秘をしたことがない方でも便秘になりやすいのです。
そのうち出るとのんびり考えていると便秘が悪化するだけでなく、その内に老廃物が腸内から出るガスや有害物質が血液中に溶け出して体を回り、皮膚の細胞に影響を及ぼしてニキビが出来るようになります。肌荒れ以外にも、便秘はお腹が張ったり口臭の原因にもなりますから、早めに対策しましょう。
妊娠中を通して 免疫力の低下が原因の肌荒れ
プロゲステロンには免疫力を下げる作用があるので、プロゲステロン分泌量が増加する妊娠中はずっと免疫力が低下していることになります。
妊娠中に風邪や感染症にかかりやすいのはこれが原因なのですが、皮膚のバリア機能や傷の自然治癒力なども低下してしまうので、肌荒れや傷からの炎症が起きやすくなるのです。妊娠中は女性ホルモンの分泌量が非常に多いので、いつもどおりのスキンケアでは肌の乾燥を抑えられず肌荒れにつながります。
妊娠中を通して 睡眠不足が原因の肌荒れ
つわりやお腹の重さ・ストレスが原因で夜中に起きたり、起きても十分寝た感じがせず朝から疲れてしまうなどと、妊娠中ずっと寝不足な方もいらっしゃるでしょう。
睡眠中に分泌される成長ホルモンは低下した免疫力をカバーするために必要なのですが、寝不足が続くと成長ホルモンの分泌が抑えられるため免疫力が更に低下してしまい、肌荒れにつながるのです。
成長ホルモンと睡眠の関係
「成長ホルモンは午後10時から夜中2時の間に最も分泌が盛んになる」という説は現在誤解であることが分かっています。最近の研究では、就寝時間に関係なく寝はじめからの3時間のノンレム睡眠時に最も多く分泌されるという結果が発表されています。
妊婦さんは寝ていてもすぐ目が覚めてしまい、眠りが浅いレム睡眠状態を繰り返すことになるため、成長ホルモンがきちんと分泌されず肌荒れにつながるのです。こう見ると、妊娠中は睡眠時間の長さよりも、睡眠の質がより大事なのが分かりますね。夜しっかり眠れない時は、長めの昼寝でフォローするのも良いかもしれません。
病気の可能性も 妊娠性痒疹(ようしん)
肌が乾燥してかゆくなることも多いですが、痒みがひどく蕁麻疹のようなものが現れた場合は妊娠性痒疹を疑いましょう。妊娠中は代謝があがり汗をかくことで肌が敏感になったり、毛細血管が開いて刺激を受けやすくなることが原因と言われていますが、はっきりしたことは分かっていません。
痒みで搔き壊してしまうと肌に傷が残ってしまいますし、寝不足になることも考えられますので、生活に影響が出来るほどのかゆみがある場合は病院を受診しましょう。
病院では赤ちゃんに影響の無い痒み止めや保湿クリームを処方してくれますが、それ以外にも痒い部分を冷やしたり、体が温めるお風呂は控えるなど毎日の生活でも注意しましょう。
妊娠初期の肌荒れ 妊娠2ヶ月~4ヶ月
妊娠初期の肌荒れ ホルモン変化が原因
妊娠初期はプロゲステロンが急激に増える時期です。生理前に肌荒れが起きやすいのはプロゲステロンの増加によるものですが、妊娠すると生理前よりも更に分泌量が増えるので、多くの妊婦さんに肌荒れが発生します。
つわりの辛さに加えて、肌がザラザラしたりかゆみが出たりと一番辛い時期なので、無理せず病院で肌荒れの薬を処方してもらいましょう。
妊娠初期の肌荒れ つわりが原因
つわりには個人差がありますが、食べ物の匂いがダメで食欲がなくなってしまう方も多く、飲む水の量が減ってしまう方もいらっしゃいます。そうすると必然的に栄養と水分が不足して、肌荒れの原因となります。
この場合はつわりが軽くなるまで肌荒れが続きますが、喉越しの良い水分が多いものを食べるなどして少しでも栄養・水分補給できるように工夫してみましょう。
妊娠中期、安定期の肌荒れ 妊娠5ヶ月~7ヶ月
妊娠中期の肌荒れ 食欲増加と栄養不足が原因
安定期に入ると肌荒れがいったん落ち着くこともありますが、つわりが終わって食欲が増加する時期なので、甘いものや脂っこいものを沢山食べ過ぎて肌荒れが復活してしまうことがあります。
また、お母さんから栄養をもらって赤ちゃんが本格的に成長する時期ですから、食事の仕方や内容によってはお母さんに栄養が回らずに栄養不足に陥る可能性があり、そうなれば肌に栄養が届かず新陳代謝が遅れて肌荒れにつながります。
妊娠中期の肌荒れ 男性ホルモンの低下が原因
安定期に入ればプロゲステロンの分泌量が減りますが、その代わりにエストロゲンがプロゲステロン以上に分泌されるようになります。
体は様々なホルモンが複雑に作用しあっていますが、2つの女性ホルモンの増加によって相対的に男性ホルモンが低下し、男性ホルモンの皮脂分泌作用も低下して皮膚の乾燥につながります。
妊娠後期 臨月の肌荒れ 妊娠8ヶ月~10ヶ月
妊娠後期の肌荒れ ストレスが原因
出産に近づくと、ちゃんと産めるのだろうか、赤ちゃんに問題が無いだろうか、とつい心配になってしまいますね。あまり悩みすぎればストレスとなり、肌荒れの原因となります。
ストレスが溜まると自律神経の交感神経が優位になり、筋肉の緊張を引き起こして血流を鈍らせます。このような状態が続けば肌に必要な栄養が届かずに老化してしまい、肌荒れが発生するのです。
妊娠後期の肌荒れ 食欲低下が原因
妊娠後期は子宮の大きさが最大になり、胃を下から押し上げるような状態になっています。胃が圧迫されれば消化機能が鈍り、食べると気持ち悪くなってしまうので食欲が落ちてしまう方が増える時期です。
この症状を「後期つわり」と呼ぶくらいですから、つわりと同じく栄養不足となり肌荒れの原因となります。妊娠初期とは異なり、赤ちゃんに栄養を回すようになっているので、つわりの時期よりも肌荒れが悪化する可能性があります。
妊娠中の肌荒れ対策 対処方法
肌荒れ対策は、内側と外側から一緒にケアしていくのが大事です。食事だけ気をつけていても乾燥による肌荒れは防げませんし、スキンケアだけ念入りに行っても、肌をケアする栄養分が無ければ効果は出ないでしょう。
妊娠中は体質が変わってしまうので、今までの方法をまるっきり変える必要が出てくるかも知れませんが、色々試して自分の肌に合った方法を見つけていきましょう。
食事内容をチェック
妊婦さんの食事は赤ちゃんの成長に直結しますから、妊娠中の食事指導が厳しいのも仕方がありません。それ以上に、お母さんの妊娠中のトラブルを回避するためにも毎日の食事はとても大事です。
糖分や油脂の過剰摂取は血液の流れを鈍らせて肌のターンオーバーが乱れてしまったり、皮脂の詰まりを促して肌荒れにつながります。
また、辛いものは血行促進効果があっても体質が変わる妊娠中は刺激が強く内臓に負担をかけてしまう恐れがあり、それが肌荒れの原因となります。これらはあまり食べ過ぎないように注意して、毎日のメニューを考えていきましょう。
体重管理でダイエットのやりすぎに注意
妊娠中は赤ちゃんの成長やお母さんのエネルギーのためにある程度太るのは当たり前ですが、体重が増えすぎてしまったり自分の体型が気になると、中には妊娠中にもかかわらずダイエットをしてしまう方がいらっしゃいます。
体重を減らそうと食事を控えると、栄養不足や水分不足につながって肌荒れを引き起こしてしまいます。肌荒れが悪化してから食べるようにしても、栄養はお母さんではなく赤ちゃんに優先的に送られますから、改善の効果が見られず悪化し続ける可能性もあります。
また赤ちゃんにとっては栄養が入って来ず、低体重児となってしまう恐れがありますから、太りすぎたとしても絶対食事制限はせずに、運動やカロリーを抑えたメニューなどで対応するようにしましょう。
肌荒れに効果的な栄養分は
肌荒れ因子に負けないためにも、食事で肌の機能を高める栄養分をしっかり摂るよう意識しましょう。まずは皮膚を形成する成分であるたんぱく質が重要で、不足すると肌が栄養不足となって老化してしまいます。
ただ、肉は脂肪が多くカロリーも高いので、魚や植物性たんぱく質を選びましょう。また、たんぱく質の働きを助けるにはビタミンC、皮膚の健康を保つためにはビタミンB群が必要不可欠です。
また酸素を運ぶ赤血球を増やすための鉄や亜鉛なども関わってくるので、上手く組み合わせて栄養バランスの良い食事になるようにしましょう。
顔のスキンケア
妊娠するとこれまでの肌質とは変わり肌が敏感になるので、妊娠前から使っている化粧水が合わなくなってしまう妊婦さんも多いです。まずは現在の状態に合ったスキンケア用品を探しましょう。
無添加のものやオーガニック製品なら妊娠中でも使えそうに思えますが、実際はそれでも合わない方が多いので、いきなりつけるよりパッチテストで確認した方が安心です。もしどれもダメな場合は、馬油やワセリンなど赤ちゃんでも使えるものを試してみてはいかがでしょうか。
頭皮のケアも忘れずに
妊娠中のスキンケアで忘れがちなのが頭皮と髪のケアです。妊娠して敏感肌になったということは、もちろん頭皮も変化しているはずなので、これまで使っていたシャンプーやリンス・コンディショナーが合わなくなって、フケや頭皮のかゆみの原因となる可能性があります。
スキンケアアイテムと同じように、なるべく刺激の少ないシャンプーやリンスを選ぶようにしましょう。
妊娠中の体のスキンケア
妊娠中は顔だけでなく、体もニキビが多く出来たり乾燥して痒くなったりと、全身に肌荒れが起きやすいのが特徴です。顔と同じように保湿を欠かさないようにしましょう。
背中やつま先など届きにくい部分はパートナーにお願いしてくださいね。また、熱いお湯での入浴は皮膚の乾燥を促進させるので、入る前に温度をチェックして適温かどうかを確認しましょう。
乾燥は妊娠線の原因になる場合も
妊娠中期から後期にかけてお腹が大きくなると、妊娠線が出来てしまう!と慌ててケアをする妊婦さんも多いのではないでしょうか。
妊娠線は、お腹の伸びに皮膚内の真皮にあるコラーゲンなどがついていけずに切れてしまい白い線となって残る症状で、お腹だけでなく胸や太ももにも出来ることがあります。
実は妊娠線は日ごろから保湿を行い、皮膚に柔軟性を持たせることで軽減させることが可能です。反対に言えば肌が乾燥していると妊娠線が増えてしまうということなのです。
[噂]肌荒れと赤ちゃんの性別の関係
肌荒れが酷いと男の子が生まれる、という話を聞いたことがありませんか。どうやら赤ちゃんの生殖器が作られる妊娠初期に分泌されるホルモンの違いが、この話の根拠となっているようです。
女の子ならエストロゲンが多く分泌され、男の子ならアンドロゲンという男性ホルモンが多量に分泌されますが、男性ホルモンは皮脂分泌が多くニキビや肌荒れの原因となるため、肌荒れが酷い妊婦さんの赤ちゃんは男の子という説が出来たのです。
反対に女の子だと妊娠中の肌荒れが少ないと言われています。もう少し待てばエコーで確認できますし信憑性は全くありませんから、話題の一つとして考えて、もしその話が自分に向けられたとしても気にせず流すのが一番です。
肌荒れが酷いときは病院へ
かゆみや肌荒れが悪化してしまった時や、色々対策をとっても効果が出ないという時は、そのまま悩み続けるよりも病院を受診した方が効率的です。
ただ、一般の治療ではステロイドが含まれた薬を使うので、まずは自分の現在の状態が良く分かっている、かかりつけの産婦人科で相談しましょう。多くの妊婦さんが肌荒れに悩みますから、病院でもしっかりその対応をしてくれるでしょう。
もし、専門科の治療を受けた方が良い時は産婦人科から紹介状を出してくれますので、どちらにしても的確な治療が受けられます。
まとめ
妊娠中はホルモン変化や免疫力の低下で、肌荒れが起きやすくなります。肌の乾燥を放置すると妊娠線が増えてしまいますから、妊娠中は普段よりも一層力を入れてスキンケアをするように意識しましょう。
ただし、肌荒れの原因は妊娠時期で異なることが多いので、原因を良く見極めてそれに合った対策を採るのがポイントです。睡眠・食事・ストレスなど、肌荒れにつながる要素が沢山ありますので、生活習慣を見直してトータルに肌荒れを改善していきたいです。