逆流性食道炎という症状についてご存知ですか?逆流性という名前から分かるとおり、逆流性食道炎とは胃酸や胃の中で消化されかけた食べ物が再び食道に入ってきて、これにより食道に炎症が起こる症状を指します。
逆流性食道炎になりやすい人として挙げられているのは、脂肪分の多い食べ物が好きな方、タンパク質の摂取が多い方、高齢者、肥満体型の方など。妊婦さんもまた逆流性食道炎にかかりやすいといわれています。
逆流性食道炎にかかると胸焼けや胃痛が起こりますが、妊婦さんの場合はこれにつわりの症状も加わり、非常に不快な思いをします。吐き気や嘔吐はつわりの症状の一つですが、逆流性食道炎の場合も吐き気や嘔吐を催すことがあります。
つわりだと思っていたら実は逆流性食道炎にかかっていた、というケースもよく見受けられます。逆流性食道炎の原因や症状、治療法など知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。
逆流性食道炎とは?
逆流性食道炎とは読んで字のごとく、胃の中の食べ物や胃酸が食道に逆流してきて、そこで炎症を起こす症状を指します。胃酸や胃の中の食べ物は酸性度が強く、それが食道に留まってしまうと当然食道がダメージを受けてしまいます。
胃の粘膜は酸性に対する抵抗力が高く、胃酸の分泌が増えたとしても、胃の機能自体が損なわれることはありませんが、食道は酸性に対する抵抗力が低いため、酸性度の高い胃酸などに触れるとたやすく傷ついてしまいます。
逆流性食道炎の原因とは?
逆流性食道炎の原因は、食道と胃の間にある「下部食道括約筋」という筋肉のはたらきが弱まることにあります。この下部食道括約筋は食道と胃の中間にあるくぼみにあって、胃の内容物が食道に逆流しないように機能しています。
下部食道括約筋のはたらき
下部食道括約筋は、食道をゆるめたり、締めたりすることにより、食道を通る食べ物が胃の中に落ち込んでいくようにはたらきます。いったん胃の中に入った食べ物が再び食道に逆流してこないよう、食べ物を飲み込んでいるとき以外には、下部食道括約筋はぎゅっと閉まった状態になっています。
逆流性食道炎の症状とは?
逆流性食道炎の症状を挙げていきましょう。もっともよく見られる症状が胸焼けやげっぷ。胸や胃が痛いと感じることもあれば、喉がつかえている感じと表現する人もいます。
喉の痛み・苦味・かすれなどの他にも、咳や喘息に似た症状が発生することもあります。中には耳に違和感を感じたり、軽い痛みを覚えることもあるようです。
逆流性食道炎の症状はさまざま
これは稀なケースですが、症状が進み重症になると食道・喉からの出血も伴います。このように胸焼けから喘息まで、逆流性食道炎の症状は多岐にわたります。症状が多岐にわたるため、逆流性食道炎は診断が難しく病気といわれ、診断の遅れはそのまま治療の遅れにつながります。
逆流性食道炎の症状は、一見すると妊娠初期のつわりの症状のように見えますので、両者を区別するためには注意深く症状を観察しなければなりません。
逆流性食道炎の起こるメカニズムとは?
通常は食べ物を飲み込むとき以外は、胃の中身が食道に上がってこないよう、下部食道括約筋が閉まった状態になっています。ではどのような原因によって、胃酸が食道側に逆流してくるのでしょうか。これにはいくつかの理由が考えられます。
胃酸の分泌が増える
胃に負担のかかる食べ物を摂り続けていると、消化に時間がかかりすぎてしまい、胃酸の分泌が増加してしまいます。刺激物、カフェイン、香辛料、甘いもの、酢、炭酸飲料などの摂取量に気をつけましょう。
量や回数がほどほどであれば問題ありませんが、食べる量や回数が度を越えてしまうと、胃酸の分泌が多くなりすぎてしまいます。
加齢による機能の低下
体の他の機能同様、下部食道括約筋の機能も加齢とともに低下していきます。
腹圧が上がる
ウエストを締め付けていると、胃の中身が食道に逆流することがあります。腰をかがめた姿勢を長時間取ったり、日常的に重い荷物を持つこともよくないとされています。
おなかが出ている肥満体型の方や妊婦さんもまた腹圧が上がりやすいタイプ。腹圧が上がるせいで、胃内圧も上がってしまい、逆流しやすくなります。
妊婦が逆流性食道炎にかかりやすい理由
妊娠中は免疫力も低下していることもあり、そのせいで体の機能は普段よりも落ちています。妊娠とともに増加する黄体ホルモンは子宮の収縮を防ぎますが、同時に胃腸のはたらきを弱めてしまいます。
さらに妊娠初期のつわりにより、吐き気や嘔吐が頻繁に起こることも、食道に炎症が起きる原因になってしまいます。ストレスもまた胃腸の機能低下の原因の一つ。妊娠中のイライラやストレスを溜め込んでいると、胃酸過多・過少など、胃腸のトラブルに発展してしまいます。このように妊婦さんには、逆流性食道炎にかかりやすい条件が揃っています。
単なるつわりの症状だと思って我慢していたのに、妊娠中期に入ってもいつまでたっても止まらない、こんな場合は逆流性食道炎が疑われます。
妊婦の逆流性食道炎
以上に挙げた逆流性食道炎に関する基礎的な知識から分かるように、妊婦さんもまた逆流性食道炎にかかりやすいタイプに入っています。
妊婦さんがもっとも逆流性食道炎にかかりやすいのは、子宮が大きくなってくる妊娠中期以降。子宮が胃を押し上げることで、胸やけやげっぷが出やすなります。
妊婦が逆流性食道炎にかかる時期とは?
妊婦さんが逆流性食道炎にかかりやすいのは妊娠中期以降。妊娠初期のつわりが一段落し、妊娠週が進むにつれておなかが大きくなり、胃が圧迫されやすくなります。妊娠中期から後期にかけておなかが大きくなった妊婦さんは、食事の仕方や内容、食事後の過ごし方などを工夫する必要があります。
ただし妊娠初期や妊娠超初期から逆流性食道炎にかかる方もいます。どんな方が要注意かというと、妊娠前から胃炎や胃腸の具合の悪かった方。このような症状に心当たりのある方は。妊娠初期から食べるものに注意するようにしましょう。
逆流性食道炎?つわり?
さきほどから見てきたように逆流性食道炎の症状は、妊娠初期のつわりの症状に酷似していますので、どちらなのかはっきり見極めることが難しい場合もあります。
妊娠中期に入っても胸やけやげっぷ、喉の違和感などの症状がいつまでもだらだらと続くようであれば、逆流性食道炎が疑われます。また妊娠初期・妊娠超初期の段階でも症状が激しく、食事も満足に出来ないようであれば、かかりつけの産婦人科で相談するようにしましょう。
逆流性食道炎の検査
逆流性食道炎にかかっているかどうかは、症状を聞いたり、問診表に記入された内容から、ほとんどの場合診断できます。内視鏡による検査は、内診や自覚症状の聞き取りからはどうしても判断できない場合や、綿密な検査が必要な場合にのみ行われます。
つわりによる逆流性食道炎
妊娠初期のつわりにより激しい嘔吐がたびたび繰り返されると、逆流性食道炎が生じることがあります。たびたびの嘔吐により、胃酸が食道に留まる時間が長くなり、食道や喉が荒れてしまうため、胸焼けや胃痛に加えて咳や喉の痛みといった症状に悩まされてしまいます。
つわりで吐き気がひどい方は食事の仕方や食材に注意し、出来るだけ嘔吐を少なくするように努力しましょう。妊娠初期はホルモンバランスも崩れていますので、つわりの症状の軽い方であっても、胃腸の調子は万全とはいえません。吐き気はあまり感じない方でも油断せずに、胃酸の分泌を活発にするような食べ物は出来るだけ控えましょう。
逆流性食道炎の予防・対策「食事編」
妊婦さんが逆流性食道炎にかかるのを予防するにはどのような対策が有効でしょうか。逆流性食道炎はいったんかかってしまうと再発しやすい病気といわれています。かかってしまう前に出来るだけの手段を講じておくことが大切です。ここでは食事のとり方や避けたい食べ物などに関する注意点を挙げてみました。
胃酸の分泌を増やす食べ物を避ける
胃酸の分泌が過剰になる食べ物を避けましょう。胃腸に必要以上の負担をかけないよう、辛いものや甘いもの、消化の時間のかかるもの、刺激物、カフェインや炭酸飲料、お酢やレモンなど酸っぱいものは、過度に摂取しないよう注意しましょう。
食べすぎは厳禁
胃が満腹になるまで食べていると、胃酸過多になる恐れがあります。黄体ホルモンのはたらきにより、胃腸の機能は妊娠前よりも低下しています。胃腸に過度な負担をかけないよう、満腹になるまで食べ続けるのではなく、少量ずつゆっくり食べるようにしてください。一度に食べる量を制限すると、膨満感を防ぐことが出来ます。
食べてすぐに横にならない
食事のあとすぐに横になるのは出来るだけやめましょう。食事後すぐに横になると胃酸が逆流しやすくなります。とくに妊娠中期以降は子宮も徐々に大きくなっていきますので、大きくなった子宮が胃を圧迫してしまい、げっぷや胸やけが頻繁に起こるようになります。
食事後すぐに横になると、胃への圧迫が強くなり、胃痛や吐き気となってあらわれます。食後の休息は楽な姿勢で座ったまま取るようにしましょう。
脂肪やたんぱく質の過剰摂取は控える
逆流性食道炎はもともと日本人にはあまりなじみのない病気でしたが、食生活の欧米化が進むにつれて、逆流性食道炎にかかる人の割合も増えています。
食生活が欧米化することにより、食事に占める脂肪やたんぱく質の割合が増えています。食生活の欧米化が逆流性食道炎の原因といわれるのは、過剰な脂肪分やたんぱく質が胃に負担を与えてしまうから。脂肪やたんぱく質を消化するためには、たくさんの胃酸が必要になりますので、脂肪分の多い食事をしていると、胃酸の分泌は確実に増えます。
逆流性食道炎は増えてしまった胃酸が食道に逆流するというメカニズムにより起こります。脂肪やたんぱく質は体にとって必要不可欠ですが、摂取する量が多すぎないよう注意することが大切です。
消化のよい食べ物を摂る
胃の中に出来るだけ食べ物が溜まらないように、消化吸収のよい食べ物を積極的に摂取するようにしてください。固い食べ物や消化に時間のかかる食べ物は出来るだけ控えるようにしましょう。
妊娠中は体力を消耗しやすいので、栄養価の高い食材を摂ることも必要ですが、それと同時に胃に負担をかけないことも重要です。
寝るときの姿勢は左側を下にして眠る
上にも述べましたが、就寝時の姿勢によっては逆流性食道炎の症状が悪化して眠れないなんてことも出てきます。症状を抑えて眠るためには、まず胃の形を確認しましょう。
胃は右側の上下で食道と小腸につながっていて、食道とつながっている部分は左側の一番高い位置よりも低い場所に位置しています。この形状では右側を下にして寝ると胃酸が食道に流れやすくなってしまうので、左側を下にして眠るのがおススメです。シムスの体位で足を枕に挟めば腹圧が緩むので、更に症状が抑えられるでしょう。
また、上半身を少し起こして眠るのも効果的ですが、お腹が大きくなると腰に負担がかかりやすくなりますから、様子を見ながら自分にベストな姿勢を見つけてください。 また、仰臥位低血圧症候群の予防にもなるため、左下で寝るように心がけましょう。
妊婦の逆流性食道炎への対処法
妊婦さんが逆流性食道炎にかかった場合の治療法は、出ている症状により決められます。胃の痛みや胃もたれが激しい場合には胃の薬が処方されますので、医師の処方どおりに服用するようにしましょう。
逆流性食道炎のいちばんの特徴は症状が多岐にわたること。妊娠したと分かった日から注意深く自分の体調や体の具合について気を配るようにしなければ、逆流性食道炎の兆候を見逃してしまいます。
何科で診察を受ける?
逆流性食道炎の診察は消化器内科が基本ですが、咳やのどの違和感といった症状しかない場合、逆流性食道炎とは気がつかずに、耳鼻咽喉科や内科を受診してしまうこともあります。妊婦さんの場合は定期健診に通っている産婦人科でまず相談するようにしましょう。
自己判断で市販薬を服用しないようにする
妊婦さんの場合、市販薬を自己判断で服用することは差し控えなければなりません。すでに妊娠していることが分かっている場合には、産婦人科で診察を受けることが出来ますが、問題は妊娠超初期。
妊娠超初期ではまだ妊娠しているかどうか、妊婦さん本人も気がついていないことがあります。単なる胃もたれや風邪だと勘違いして、市販薬を適当に服用することがないように十分注意してください。
妊娠前から体調を整えることも重要
逆流性食道炎は妊娠初期から出産前まで、いつでも起こる可能性があります。この点を念頭に置いた上で、妊娠に気がついたときから、生活習慣、食習慣をともに見直し、胃酸が出やすくなるような行動を控えるようにしましょう。肥満体型にならないよう、定期的に運動を行い、アルコールやタバコの摂取もほどほどにしましょう。
まとめ
最近とくに罹患する方が増えている逆流性食道炎。胃酸が食道に逆流してくることにより、食道や喉の粘膜に炎症が起き、胸焼けやげっぷなど、さまざまな症状が発生します。
妊娠中は逆流性食道炎にかかりやすい時期、逆流性食道炎の原因や対処法についての正しい知識を備えていなければ、症状の悪化を招きかねません。妊娠前から胃痛や胸焼けといった症状がある方は、胃炎ではなく逆流性食道炎にかかっているのかもしれません。気になる症状が見られたら、早めに専門医に相談するようにしましょう。