妊娠していることがわかると、いつも以上に健康や体調に気を使うようになりますよね。巷で風邪やインフルエンザなどの流行病が蔓延していると、外出を控えようと考える妊婦の方も多いのではないでしょうか。
しかし、妊娠中はこれらの病気以外にも細心の注意を払う必要のある病気があります。それが「風疹」です。
妊娠中に風疹にかかると、赤ちゃんに大きな影響を受ける可能性があることから、ニュースでも注意喚起が度々行われるようになりました。
近年、大人を中心に流行しつつある風疹は、なぜ妊娠中に感染すると良くないのか、さまざまな情報を詳しくご紹介していきましょう。
風疹とは?
風疹とは、風疹ウィルスに感染することにより発症する病気です。風疹ウィルスに感染すると、発熱、発疹、リンパ節腫脹などの症状が現れてきます。
ただ、子供のうちに発症すると、症状としてはそこまで重くありませんし、症状が出る期間も3日くらいと短いため、命に関わるような病気ではありません。熱も38℃前後とそれほど高熱ではありませんし、感染しても発熱や発疹が現れない場合もあります。
しかし、大人が風疹に感染すると症状が重症化することが多く、脳炎や髄膜炎などの合併症を引き起こす可能性があります。
また、妊婦が妊娠初期に風疹に感染することにより、胎盤を通じて赤ちゃんも感染する可能性があるため、感染を予防することが必要になっています。
妊婦の風疹ウィルスの感染ルート
風疹ウィルスは、くしゃみや咳などの飛沫感染から主に感染すると言われています。街に出かけて人混みの中に長時間いたり、満員電車に乗ったりすることで感染する確率が上がります。その他にも粘液を通じて感染するため、風疹患者が使用したタオルなどは併用しない方が良いでしょう。
また、風疹は春~夏にかけて流行しやすいため、意識して感染を予防することが大切になります。
妊娠中に風疹にかかるとどうなる?
妊娠中に風疹にかかると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染する可能性があると言われています。そのため、風疹にかからないように妊婦は特に気をつけなければなりません。
風疹の抗体がない妊婦の場合、妊娠中に風疹に感染することで赤ちゃんが「先天性風疹症候群」を引き起こす可能性があります。これにより、赤ちゃんが心臓、視覚、聴覚などを中心に、さまざまな障害を持って産まれてきてしまうようになるのです。
三大疾患の可能性
妊婦が風疹にかかると、赤ちゃんに感染して先天性風疹症候群を引き起こす可能性があります。これによりさまざまな障害を持ってしまう可能性がありますが、その中でも三大疾患と言われているのが白内障、先天性心疾患、難聴です。
これらの症状は妊娠中のどの時期に風疹ウィルスに感染したかによって違ってきます。白内障は妊娠3ヶ月以内に風疹ウィルスに感染した場合、先天性心疾患は妊娠4ヶ月以内に風疹ウィルスに感染した場合に発症する確率が高いと言われています。難聴に至っては、妊娠4ヶ月以降でも発症する可能性があります。
その他の疾患について
三大疾患以外にも、赤ちゃんが先天的に障害を患うことがあります。その疾患として、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球症、低体重などがあります。
中には風疹は関係なく発症するものもあるため、一概に先天性風疹症候群によるものだと断定することはできませんが、いずれにせよ赤ちゃんにはさまざまな障害が残される可能性があるということです。
妊娠中に風疹に感染してしまった時は
万が一、先天性風疹症候群を発症する危険がある妊娠初期に、風疹に感染してしまった場合はどうしたら良いでしょうか。まずは風疹に特徴的な赤い発疹やリンパ腺の腫れを認めたら、すぐにかかりつけの産婦人科に「風疹の可能性がある」と連絡しましょう。
ここで注意すべきは病院への入り方で、いつもの定期健診のように妊婦さんがたくさんいる受付を通ってはいけません。
他の妊婦さんへの感染を考慮して病院側では受付の仕方を指示されますから、それに従ってください。もし風疹だと判断された時は、感染病の治療先に認定されている大学病院などに転院し、詳しく調べていく必要があります。
妊娠初期が特に注意を
妊婦が風疹にかかると、赤ちゃんに感染して先天性風疹症候群が引き起こされる可能性がありますが、特に気を付けておきたいのが妊娠初期の感染です。
妊娠初期の頃は、赤ちゃんの内臓や神経系統が作られているため、この時期に風疹に感染することにより先天性の疾患が発生しやすくなるからです。調査機関により先天性風疹症候群が発症される確率は異なりますが、参考までに比較的高めの確率の検査結果をご紹介しておきましょう。
妊娠1ヶ月(妊娠0週~3週)の風疹感染
妊娠超初期の妊娠1ヶ月までに風疹ウィルスに感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群が起こる確率は約60%と言われています。白内障、先天性心疾患、難聴などの三大疾患を発症する確率も高いでしょう。
妊娠2ヶ月(妊娠4週~7週)の風疹感染
妊娠初期の妊娠2ヶ月までに感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群が起こる確率は約80%と言われています。この時期に活発に臓器や神経系統が作られるため、確率が上がっていると考えられます。白内障、先天性心疾患、難聴などの三大疾患を発症する確率も高いでしょう。
妊娠3ヶ月(妊娠8週~11週の風疹感染
妊娠超初期の妊娠3ヶ月までに風疹ウィルスに感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群が起こる確率は約50%と言われています。白内障、先天性心疾患、難聴などの三大疾患を発症する確率も高いでしょう。
妊娠4ヶ月(妊娠12週~15週)の風疹感染
妊娠超初期の妊娠4ヶ月までに風疹ウィルスに感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群が起こる確率は約20%と言われています。先天性心疾患、難聴などの三大疾患を発症する確率も高いでしょう。
妊娠5ヶ月(妊娠16週~19週)の風疹感染
妊娠超初期の妊娠5ヶ月までに風疹ウィルスに感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群が起こる確率は約15%とかなり低くなりますが、難聴などの三大疾患を発症する確率は高いでしょう。
ワクチン接種不明場合は検査でチェック
妊娠中は風疹にかからないようにすることが大切ですが、自分が過去にワクチンを接種していたり、風疹にかかった経験があったりしたか、わからないという方もいらっしゃるでしょう。
実は、妊娠が判明すると産婦人科で風疹の抗体チェックが義務付けられているため、自分に抗体があるかどうか知ることができます。
検査をすると、HI抗体やIgM抗体など、良くわからない名前が出てくると思いますので、簡単にご紹介しておきましょう。
HI抗体とは
HI抗体は、妊娠初期の妊娠抗体価検査によりチェックされます。数値によって抗体の有無や追加検査の必要性などが異なります。
HI抗体が16倍以下
HI抗体が16倍以下(EIA価8未満)の場合、風疹に対する抗体がないということです。そのため、妊娠中は人混みを避けて感染を防止する必要があります。家族にも風疹ワクチンを接種してもらい、家族全員で防ぐようにしましょう。
HI抗体が32倍~128倍
HI抗体が32倍~128倍(EIA価8~45未満)の場合、風疹に対する抗体が適度にあるので、普通に生活している分には感染の心配はないと言われています。ただ、風疹患者と濃厚に接触をすると感染してしまう可能性もゼロではないため、追加検査する必要が出てきます。
HI抗体が256倍以上
HI抗体が256倍以上(EIA価45以上)の場合、風疹に対する抗体はありますが、数値が非常に高いため最近感染している可能性があります。そのため、追加検査する必要があります。
IgM抗体とは
IgM抗体とは、追加検査によりチェックされてはじき出されます。
IgM抗体は、風疹ウィルスに感染して、発疹が発生してから48時間以内に上昇する数値です。1週間でピークを迎え、発疹から4週~5週間で低下し、陰性になります。
そのため、IgM抗体を調べることで、最近の感染かどうかがわかります。ただ、最近の感染でなくても風疹から何年も経過しているのにIgM抗体が陽性のまま出るケースもあるため、一概に最近感染したと断定できない部分もあります。妊婦の1%~2%くらいは、過去の風疹によりIgM抗体が陽性反応になることもあるので、心配しすぎないようにしましょう。
また、過去に風疹にかかったことのある方は、基本的に一生風疹には感染しないと言われています。ただ、風疹だと思っていた症状が、別の病気だった可能性もあるので、きちんと検査は受けるようにしましょう。
産婦人科・自治体の風疹抗体検査を
風疹抗体検査をしたいと思っても、産婦人科は行きづらいと感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。そんな方には、自治体が行っている風疹抗体検査をおススメします。
自治体の風疹抗体検査は、保健所で行うケースと委託された病院で行うケースがありますが、どちらも検査費用が無料なのがメリットです。
また風疹ワクチンを接種する場合、費用は実費で1万円ほどかかりますが、自治体で行った場合は約半分を補助してくれる制度がありますので、お金をセーブしたい方はぜひ自治体の風疹抗体検査を試してみましょう。もちろん自治体によって補助額が様々ですから、検査にいく前に確認すると安心です。
抗体がない?予防接種について
妊娠中に風疹にかかると赤ちゃんへの感染が心配になります。そのため、妊娠初期に風疹検査を行いますが、過去に予防接種を受けているのに抗体がないと診断されることもあるでしょう。
実は、過去に風疹ワクチンを接種していても、抗体が充分に作られなかったり、抗体が減少したりすることで風疹に対して無防備になっていることがあるのです。
そのため、過去に風疹ワクチンを接種していても安心だとは言い切れないでしょう。
昭和37年~平成2年生まれの方は要注意
風疹ワクチンは、現在では赤ちゃんや小学校入学前に受けるのが一般的です。しかし、過去の例からみると風疹ワクチンを接種していない世代があるので該当する方は注意しておきましょう。
昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性
この時期に生まれた人たちは、女子だけ中学生の時に風疹のワクチンを接種していました。男子は対象外となっていたため、風疹ワクチンを一度も摂取していない可能性が高いと言えます。
昭和54年4月2日~昭和62年10月1日生まれの男女
この時期に生まれた人たちは、中学生の時に風疹ワクチンの接種を行うように言われていましたが、学校で集団接種する方法ではなく、個別に医療機関に訪れて風疹ワクチンを接種する必要があったため、男女ともに接種率は低くなっています。
昭和62年10月2日~平成2年4月1日生まれの男女
この時期に生まれた人たちは、幼児期に風疹ワクチンを接種する機会がありましたが、ワクチン接種を受けていない人や、1回の接種で充分に抗体が作られていない人もいます。また、ワクチン接種から何年も経過しているため、抗体が低下してきている可能性もあるでしょう。
妊娠中の予防接種はできる?できない?
妊娠中は風疹にかからないようにするべきですが、抗体がないと判明したらすぐにでも風疹ワクチンを接種したいと思いますよね。しかし、風疹ワクチンを接種するということは、少なくとも風疹ウィルスを体内に入れるため、赤ちゃんへの影響がゼロとは言い切れません。
そのため、多くの医療機関で出産後に風疹ワクチンを接種するよう推奨されています。これから妊娠を考えている方は、妊活前に風疹ワクチンを接種しておくようにしましょう。風疹ワクチンを接種してから2ヶ月~3ヶ月は赤ちゃんへの影響を考え、できれば避妊して妊活は行わないようにするのが安心です。
妊娠中の風疹の予防方法
妊娠初期の検査で風疹の抗体がないと判明した場合、予防接種は受けることができないためできるだけ感染を防ぐ必要が出てきます。
風疹は飛沫により感染することが多いため、人混みに行かないようにしたり、満員電車に乗ったりしないようにしましょう。また、風疹ウィルスに感染していても、潜伏期間により症状が現れていない人もいますので注意が必要です。どうしても外出する必要がある時はマスクをつけるようにし、外出先から戻った時は、手洗いうがいを徹底して行うようにしましょう。
また、家族が風疹ウィルスを持って帰ってきてしまう可能性もあるため、家族も風疹の抗体をチェックしておき、低い場合は予防接種を受けて感染しないように家族全員で対策するようにしてください。
妊娠初期は赤ちゃんにとっても大切な時期ですが、つわりも生じやすく心身ともに疲弊しやすい時期です。外出はできるだけ避け、自宅で安静に過ごすようにしましょう。
また、妊娠周期が進むにつれて赤ちゃんの先天性風疹症候群の確率も下がってきます。安定期に入るくらいまではできるだけ外出を控えるようにするとなお安心です。
近年の風疹流行について
妊娠初期の風疹に対してニュースなどで注意喚起が行われるのは、近年風疹が流行しやすい状況にあるからです。ワクチンを接種していない世代の男性を中心に、風疹が毎年のように流行するようになってしまいました。
患者数においては、女性の4倍もの多さで男性に感染していると言われています。そのため、夫が風疹に感染する可能性があるので、風疹ワクチンを摂取してもらい感染しないように気をつけましょう。
また、ニュースなどで風疹が流行していると知った時は、不要な外出は避けるようにしてください。
まとめ
妊婦の風疹について詳しくご紹介しました。妊娠中に風疹にかかると、赤ちゃんに感染しさまざまな疾患を引き起こす可能性があるため、きちんと検査を受けて抗体があるかどうか調べておきましょう。
また、抗体がない方は家族ぐるみで風疹予防することで感染を未然に防ぐことができます。妊娠中に風疹にかかると、必ずしも100%赤ちゃんに感染するわけではありませんが、高い確率で発症するため、さまざまな情報を知りきちんと対策していくようにしましょう。子作りの予定がある場合は、にパートナーと二人で予防接種をしておくと安心です。
参考:厚生労働省
参考:生まれてくる赤ちゃんのために~「風しん」拡大を食い止める!(政府インターネットテレビ)こちらは日本政府の重要政策としての動画です。非常わかりやすく参考になります。