妊娠中に足や手などのむくみが気になるときに知っておきたいこと

妊娠中

妊娠すると、身体にはさまざまな変化が訪れるようになります。妊娠前には現れなかった症状が身体に起きるため、戸惑う方も多いのではないでしょうか。

妊娠すると、身体にむくみが起きやすくなります。妊婦健診では、むくみの検査が必ず行われますが、妊娠中のむくみは健康状態を表す大切なバロメーターでもあるのです。

妊娠してから、ひどいむくみに悩んでいる方、何が原因なのか、どうすれば改善できるのかなど、妊婦のむくみに関するさまざまな情報を詳しくご紹介していきましょう。

むくみ(浮腫み)とは?

むくみ(浮腫み)とは?

多くの妊婦を悩ますむくみですが、簡単に説明すると血液中の水分が、血管やリンパ管の外に染み出し、皮下に溜まってしまう状態のことを言います。医学的に説明すると、細胞間にある間質液と呼ばれる水分が過剰にたまった状態です。

間質液とはなに

間質液とは、酸素や栄養を細胞に伝えたり、細胞から出た二酸化炭素や老廃物を受け取ったりする役割を担っています。行きは心臓から動脈を通って毛細血管にたどり着いて細胞に染み出していき、帰りは毛細血管の静脈やリンパ管から再吸収され心臓へ戻っていきます。

ヒトの身体はたくさんの水分でできていると聞いたことがある方もいらっしゃるでしょうが、体重のうち約60%が水分の重さとなっています。

その約60%の水分のうち、3分の2は細胞内に存在し、残りの3分の1が細胞の外に存在しており、通常は割合が決まっています。そしてこの細胞の外にある水分のうち、約80%が間質液、約20%がリンパ液などの血漿です。

バランスの変化がむくみを引き起こす

バランスの変化がむくみを引き起こす

間質液は、動脈の血管から染み出していく量と静脈やリンパ管に再吸収される量は同じになっているため、通常は間質液の量は一定に保たれています。

しかし、何らかの原因で染み出す水分量が多く出すぎてしまったり、再吸収が進まなかったりすると、間質液の量が増えて行き場はなくなり、皮膚の下に溜まるようになってしまいます。皮膚は薄いため、過剰にたまった間質液の状態が伝わり、むくみとして感じやすくなります。

妊婦のむくみはなぜ起きるのか?原因は

むくみは、誰にでも起こりうる症状ですが、特に妊婦の身体には生じやすくなります。なぜ妊婦の身体にむくみが起きやすいのか、詳しくご説明していきましょう。

妊婦は血液量が増える

妊婦は血液量が増える

妊娠すると、赤ちゃんのためにどんどん身体の構造が変わっていきます。胎盤を作ったり、赤ちゃんを成長させるために栄養や酸素を送り続けたりしなければなりません。

そのため、普段よりも血液の量が増加してきます。血液の水分バランスが崩れやすくなり、むくみが生じやすくなってしまうのです。

妊娠による子宮による圧迫

妊娠による子宮による圧迫

妊娠すると、子宮の大きさは赤ちゃんの成長に合わせてどんどん大きくなります。最初はニワトリの卵くらいの大きさだった子宮も、妊娠後期にはみぞおちに達するほど大きく重くなっているでしょう。

子宮が大きくなるということは、周囲の臓器や筋肉、血管が圧迫されるということです。子宮が大きく成長した状態で、妊婦があお向けで寝てしまうと、下大静脈が子宮により圧迫されて心臓に戻るはずの血液が停滞してしまいます。

すると、下半身にむくみが生じやすくなってしまうのです。そのため、お腹が大きくなってきたら、仰向けではなく横向き寝る必要があるでしょう。

妊婦のつわりの影響

妊婦のつわりの影響

妊娠すると、初期の頃はつわりに悩まされることが多くなります。今まで食べることができたものが急に受け付けなくなってしまったり、特定の食べ物ばかり好んで食べたりすることが多くなるでしょう。

つわりにより食べるものが偏ると、塩分や糖分過多になって水分バランスが崩れやすくなり、むくみを引き起こしやすくなってしまいます。

運動不足の影響

運動不足の影響

妊娠すると、身体を安静にするよう指導されるため、普段よりも運動量が減ってしまうことが多くなります。妊娠初期につわりに苦しめられた方は、寝たままの状態が長くなるため、筋力も低下しやすくなるでしょう。

運動不足が慢性化すると、血液の流れが滞りやすくなるため、水分バランスが崩れてむくみが引き起こされやすくなってしまいます。

妊婦の冷えの影響

妊婦の冷えの影響

妊娠すると、身体を動かす機会が減っていきますし、お腹が大きくなると身動きが取れなくなるため、同じ姿勢で過ごすことが多くなります。同じ姿勢が続くと、血液の流れが滞り身体が冷えやすくなってしまうでしょう。

冷えは血液の流れをさらに滞らせてしまいますし、代謝も落としてしまいます。その結果むくみをさらに悪化させてしまうことになってしまうでしょう。

ストレスの影響

ストレスの影響

 

妊娠すると、身体の変化が大きく思うようにコントロールできなくなることが増えてくるため、ストレスが溜まりやすくなります。また、マタニティブルーなど気持ちが不安定になりやすくなるでしょう。気持ちが不安定になったりストレスが溜まりやすくなってしまったりすると、自律神経のコントロールを乱してしまうようになります。

自律神経は血流や体温をコントロールしているため、これが不安定になることで血液の流れが変わり水分バランスが崩れてむくみやすくなってしまうのです。

妊娠高血圧症候群とむくみ

妊娠高血圧症候群と浮腫み

妊娠すると、妊婦健診で必ずむくみをチェックされるようになります。これは、むくみを見ることで体調の状態を把握し、妊娠高血圧症候群を未然に防ぐことができるからです。

むくみの他に血圧が高くなっていたり、尿たんぱくが検出されたりしていると、妊娠高血圧症候群だと診断されるようになるでしょう。

血圧をこれ以上高くしないためには、塩分や糖分をコントロールして食事管理していく必要があります。高血圧や尿たんぱくが検出されていなくても、普段から塩分や糖分を摂取しすぎているとむくみがひどくなり、今後妊娠高血圧症候群を発症する可能性があるため、むくみをチェックすることで未然に防ぐ対策が取れるようになります。

むくみが現れる場所は

妊娠すると、身体のあちこちにむくみが現れやすくなります。妊婦の約30%が妊娠してから身体のむくみを経験していますが、その多くが下半身で、次に顔や腕などが続きます。下半身にむくみが生じやすいのは、さまざまな条件が重なっているからです。簡単にご説明しておきましょう。

重力の影響で下半身がむくみやすい

重力の影響で下半身がむくみやすい

下半身にむくみが生じやすいのは、心臓よりも下に血管が伸びているからです。血液は心臓ポンプから送られ、血管を通じて細胞に行きわたり、再び血管に吸収されて心臓へと戻っていきます。下半身に届けられた血液が心臓に戻るためには、重力に抵抗する必要がありますが、重力に逆らいながら心臓へと血液を戻すには、筋肉のポンプの力が必要です。

そのため、筋力が足りなかったり筋肉が充分に動いたりしていないと、血液が心臓に戻りにくくなって下半身に溜まり、むくみが生じやすくなってしまうのです。

運動不足が影響で下半身がむくみやすい

運動不足が影響で下半身がむくみやすい

下半身にむくみが生じやすいのは、妊娠して運動不足が慢性化するからです。身体を動かす機会が減り、筋肉を使うことがなくなると下半身に溜まった血液は心臓へと戻りにくくなってしまいます。

下半身の血液が心臓に戻るためには、筋肉をしっかり動かしてポンプの作用を起こさなければならないため、運動不足になりやすい妊娠中は、下半身にむくみが生じやすくなるのです。

妊婦のむくみの改善方法

妊娠中は、むくみが現れやすくなります。そこで、どのように対策するとむくみを改善することができるのか、詳しくご説明していきましょう。

脚を高い位置にあげて血流をよくする

脚を高い位置にあげて血流をよくする

手軽に行えるのが脚を高い位置にあげるという方法です。あおむけの状態で寝たらクッションや敷布団などを重ねた上に脚を乗せます。心臓より高い位置に足先が上がることで、筋肉のポンプを使わなくても自然に血液が心臓に戻りやすくなるでしょう。

妊娠後期になると、特に足がむくみやすくなるため、足元に必ずクッションなどを敷いて脚を高く上げて寝るようにするとラクになります。

着圧ソックスを履いて血流をよくする

着圧ソックスを履いて血流をよくする

着圧ソックスもオススメです。靴下を履くことで脚に程よい圧力が加わるため、少しの動きでも筋ポンプが作用し血液が心臓に戻りやすくなります。履くだけでケアすることができるので、同じ姿勢が続く場合や、寝ている時にも対策したい時などに重宝するでしょう。

ストレッチで改善する

ストレッチする

ストレッチも効果的です。足の指をグーパーに開き、足首を上下左右にグルグル回して筋肉をストレッチさせてほぐし、脚を高い位置にあげてブラブラ振るだけで、むくみが改善しやすくなります。ストレッチをするときは、足の先から順番に行うと良いでしょう。

マッサージで改善する

マッサージする

マッサージもオススメです。むくみが起きやすい人ほど冷えていることも多いので、筋肉をほぐしながらマッサージすることで血流を改善させて、冷えを取り除いていきましょう。手でマッサージするのも良いですが、疲れてしまう場合はローラーやツボ押しグッズを活用すると楽にマッサージすることができます。

お風呂で身体を温めるて改善

お風呂で身体を温める

湯船にしっかり浸かって身体を温めるのもオススメです。お風呂で身体を温めることで血液の流れが良くなり、むくみを取り除きやすくなります。また、湯船に浸かっている状態だと水圧がかかるため、足の指や足首をグルグルストレッチすることで、より効果的にむくみを改善することができます。

さらに、お風呂にゆっくりつかることで気持ちがリラックスし自律神経の乱れを改善することもできるでしょう。いつもシャワーで簡単に済ませてしまう方は、お風呂に浸かってしっかり身体を温めるようにしてください。

塩分を控える

塩分を控える

塩分の摂り過ぎにも注意しましょう。塩分を摂り過ぎると間質液の水分バランスが崩れやすくなるため、むくみが生じやすくなるからです。妊娠中は味覚が変化し、濃い味つけのものが食べたくなることが多くなるため、塩分過多にならないよう気をつけるようにしましょう。

塩分を摂り過ぎてしまったと感じたときは、野菜や果物をしっかり食べるようにしてください。野菜や果物にはカリウムが豊富に含まれているため、体内の余分な塩分と結びついて尿量を増やし、バランスを整えてくれます。

糖分を控える

糖分を控える

糖分の摂り過ぎにも注意しましょう。糖分を摂り過ぎると間質液の水分バランスが崩れやすくなるため、むくみが生じやすくなるからです。妊娠すると、赤ちゃんに多くの栄養を摂られてしまうため、甘いものを欲するようになります。妊娠前は甘いものを食べなかったという方も、妊娠をきっかけに甘いものが日常化してしまうこともよくあることです。特に妊娠後期は甘いものを食べすぎる傾向があるため、より注意するようにしましょう。

適度に運動する

適度に運動する

ウォーキングなど軽い運動もオススメです。運動することによって筋肉のポンプを使うことができますし、カロリーを消費して余分な脂肪が溜め込まれることもなくなります。また、身体を適度に動かすことで気分もリフレッシュし、暴飲暴食などを防ぐことができるようになるでしょう。

妊娠中のウォーキングは、長距離になると身体の負担になってしまうので、10分~15分程度で充分です。また、体調が優れない時や、お腹の張りが強いときは安静にし、無理をしないようにしましょう。心配な場合は医師に相談し、どれくらいの運動量が適切か指導してもらうのもオススメです。

むくみによる体重増加には要注意

むくみによる体重増加は要注意

妊婦さんのむくみが赤ちゃんに直接悪影響を与えることはありませんが、むくみによって体重が増えるとその限りではなくなってしまいます。短期間に急激に体重が増えると妊娠高血圧症候群を発症する可能性が高くなり、常位胎盤早期剥離やHELLP症候群など母子に危険な状態が発生してしまいます。

また同様に妊娠糖尿病にもかかりやすくなり、その場合は巨大児や低体重出生児など赤ちゃんに重篤な症状が現れやすくなり、お母さんの糖尿病発症率も高くなります。

食事に十分気をつけて体重コントロールをしているのに「どんどん体重が増えていく」場合はむくみによる体重増加が考えられますので、1週間に300~500g以上体重が増えている・尿量が減った等の症状が現れた時は病院を受診してください。※参照:厚生労働省 妊娠中の体重増加はお母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に

まとめ

妊娠中のむくみについてさまざまな情報を詳しくご紹介しました。妊娠中は血液量が増えたり、運動量が減ったり、食事のバランスが変わったりするなど、いろんな変化が生じるため、身体にむくみが生じやすくなります。むくみが起きると身体がだるくなってしまいますし、見た目も良くないため気持ちも落ち込んでしまうこともあるでしょう。

しかし、むくみ対策をしっかり取ることで改善することができますし、妊娠高血圧症候群などをの予防にも繋がります。むくみは身体の調子を現してくれる大切なバロメーターですから、妊婦健診だけでなく日頃からチェックし、食生活や運動量などを見直して健やかに妊婦生活を送れるようにしてください。

妊娠中
シェアする