過産期・過期産の過ごし方や出産で知っておきたいこと

過産期・過期産の過ごし方や出産で知っておきたいこと 妊娠後期

出産予定日ぴったりに出産する方は非常に少なく、出産予定日に前後して生まれるのが当たり前です。ですから、出産予定日から数日過ぎても「もうそろそろかな?」とのんびり構えている方も多いと思われますが、それが1週間過ぎ10日過ぎると「何で陣痛が来ないの?」「私はちゃんと赤ちゃんを産めるの?」と不安になってしまうでしょう。

出産予定日から一定期間を過ぎると過産期と呼ばれる時期に入りますが、お母さんが思っているよりも赤ちゃんに深刻なリスクを与える可能性が出てきます。

もちろん過産期に入る前に生まれるのが一番なのですが、もし過産期に入ってしまった場合の過ごし方や病院の対応方法・気をつけるべきことなどをご紹介します。

過産期はいつから?確率は?

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正産期は妊娠37週0日~41週6日の期間ですが、過産期はそれ以降の妊娠42週0日からの期間を指します。出産予定日が妊娠40週0日ですから、出産予定日から2週間以内に生まれれば正期産の範囲に収まります。

出産予定日過ぎても生まれる気配が全くないと心配になるかもしれませんが、2週間以内なら問題ないと分かればストレスを感じずにすみます。日本では過期産にならないように対応するため、「妊娠42週以降に出産する方の確率は全体の約2%でアメリカでは約9%」※1と少なくなっています。

出産が遅れて過産期・過期産になる原因は?

出産が遅れて過産期・過期産になる原因は?

出産が遅れて、過産期に突入してしまう原因は一体なんでしょうか?最も大きな原因として出産予定日の間違えが挙げられます。産婦人科の初診では必ず最終生理開始日を聞かれますが、それはその日を元にして出産予定日を決定するためです。

ですから生理周期が一定でなかったり、お腹が目立つようになってから病院を受診し始めた場合は、最初に出した出産予定日が確実でないことがあります。よって病院では再度頭殿長や大腿骨長を測り、出産予定日が間違っていないかどうかを確認します。

ストレスも大きな原因

ストレスも大きな原因

妊娠中のストレスは大敵ですが、過期産もストレスの影響を大きく受けています。ストレスが溜まれば自律神経の交感神経が優位になって筋肉の緊張を引き起こします。

その結果筋肉で出来ている子宮は柔軟性が失われて、子宮口が開くべき時期に開かず時間がかかり、出産予定日から大幅に遅れてしまうことが考えられるのです。

子宮内の居心地が良い?

子宮内の居心地が良い

子宮内の居心地が良いと、外に出る準備が出来たとしても赤ちゃんは中々外に出ようとしないために出産が遅れるという説があります。ですから、赤ちゃんの肺機能が完成すると少しずつ胎盤機能が低下していき、赤ちゃんに居心地が悪いと思わせるようにお母さんの体が動いていきます。

お母さんのお腹の中は居心地が良いと言われると嬉しいですが、だからと言ってそのままでは赤ちゃんに様々なリスクが生じていきますので、担当医と相談しながら運動などで子宮の居心地を悪くする必要が出てきます。

過期産のリスク

出産予定日が前後するのは当たり前ですが、あまりにも早すぎたり遅すぎたりする場合はお母さんや赤ちゃんにとって悪影響となります。

出産が遅れている場合は、早産と同じように赤ちゃんに後遺症が出る可能性もあるため、病院側でも注意して経過を観察します。そこで、過産期や過期産のリスクを見ていきましょう。

胎盤機能低下のリスク

胎盤機能低下

赤ちゃんが十分に発達して生まれてくるのが正期産ですが、これは出産ぎりぎりまで胎盤がきちんと機能して赤ちゃんに酸素や栄養を与えているからだと考えてよいでしょう。

しかし、正産期を過ぎて過産期に入ると胎盤の役目は終わって機能が低下し始めます。胎盤は赤ちゃんに酸素や栄養を与える大事な働きがありますから、それらの働きも低下して赤ちゃんが低酸素症や低血糖症になる可能性が日を追うごとにつれて高くなります。

羊水減少、羊水トラブルのリスク

羊水減少、羊水トラブル

妊娠後期の子宮内胎児発育不全の大きな原因の一つとして羊水量低下が挙げられますが、正常の妊娠過程の場合は臨月前に羊水が最大量となり、臨月に入れば段々減少していきます。

しかし過産期に入ると更に減少量が進み、妊娠42週を過ぎた場合の羊水量は200mlと羊水過少の状態になってしまいます。

また羊水も濁った状態になり赤ちゃんにとって良い環境ではなくなってしまいますし、またクッションの役目をする羊水が減れば、子宮収縮の影響をもろに受けて呼吸困難になるなどのリスクが出てきます。

胎便吸引症候群のリスク

胎便吸引症候群

胎盤機能が低下して酸素が赤ちゃんに届かなくなると、赤ちゃんは苦しくなって便を羊水内にします。その便を赤ちゃんが吸ってしまうと呼吸器官に悪影響を与えて、出生後に呼吸障害や肺炎・仮死状態などを引き起こす胎便吸引症候群を発症しやすくなります。

症状が重ければ後遺症が残る可能性もありますが出生後でないと判明できず、赤ちゃんが排便をする確率は25~35%※1という無視できない数字です。

巨大児のリスク

巨大児の可能性

お母さんのお腹の中に赤ちゃんがいる時間が長ければ、それだけ酸素や栄養が届くので成長が続きます。出生時体重が4000gを超えると巨大児と呼ばれますが、過産期で生まれる赤ちゃんは巨大児になる傾向があると言われています。

赤ちゃんが大きくなれば、分娩時に肩が産道に引っかかって中々出てこない肩甲難産になる可能性がアップするので、自然分娩が出来なくなるケースも少なくありません。

過熟児のリスク

過熟児の可能性

胎盤機能が低下すると赤ちゃんに酸素や栄養が届かなくなって、赤ちゃんに様々な症状が現れます。まずは栄養が届かないために皮膚は乾燥してひび割れやしわが目立ち、痩せている赤ちゃんも多いです。

また、体内で生成するエネルギーが不足するので、低血糖症に陥りやすいのも特徴でしょう。栄養だけでなく酸素も不足すれば呼吸障害を引き起こす可能性が高くなりますので、出生後保育器で適切なケアを受ける必要が出てきます。

難産、遷延分娩のリスク

難産、遷延分娩のリスク

いわゆる難産のことで、初産婦で30時間以上・経産婦で15時間以上経過しても赤ちゃんを分娩できない状態を指します。

原因は様々ですが、巨大児となって産道を通り抜けるのに時間がかかったり、出産予定日を大幅に過ぎたことによる妊婦さんのストレスやプレッシャーが主に挙げられるでしょう。

時間がかかって微弱陣痛となってしまった場合は誘発剤を用いたり、赤ちゃんの状態が急変した場合などには急遽帝王切開や吸引分娩に切り替えることもあります。

お母さんのリスク

お母さんのリスク

過産期に入ると、赤ちゃんだけでなくお母さんにもリスクが及ぶ可能性があることを知っておきましょう。最も考えられるのが、赤ちゃんが大きくなりすぎて分娩時に膣に傷がついてしまったり、会陰切開を大きくしなければならない可能性です。

また、過産期に入っても子宮口の開く兆候が無ければ陣痛誘発剤を用いた出産となりますが、陣痛誘発剤を用いると急にお産が進み、膣や会陰が十分に広がらないうちに赤ちゃんが移動してしまうことがあり、この場合もまた膣や会陰が傷ついてしまう原因となります。

傷ついてしまった箇所は状態によって縫合しますが、産後免疫力が低下するため、感染症のリスクや治りが遅くなるなど、しばらく影響が残ることもあります。

病院の対応は

出産予定日に間違いがないと判明したら、検診を1週間に2回に増やしてNSTや羊水量を常にチェックします。

その後1週間前後経っても陣痛が起こらないような場合は、自然に陣痛が来るのを待つよりもお母さんと赤ちゃんの安全を考慮して、妊婦さんの体調を確認し家族とよく話し合った上で妊娠41週の間に分娩誘発を行うことが多いです。

出産はどうなる?

出産はどうなる?帝王切開

妊娠42週になる前に陣痛が始まり分娩につながるのがベストですが、もしこのタイムリミットに近づいても陣痛の気配が見えないような場合は、誘発分娩を行うことになります。

誘発分娩にはいくつか種類があり、陣痛促進剤を使う方法やバルーンを入れて子宮口を広げる方法などがありますが、妊婦さんの体調や子宮口の開き・赤ちゃんの様子を見て用いる方法が決定されます。

過産期でも自然分娩はもちろん出来ますが、巨大児で中々産道を降りてこられなかったり、へその緒が赤ちゃんに絡まってしまうなどのトラブルが起きやすいので、赤ちゃんの状態が悪くなるようであれば途中から帝王切開に切り替えて分娩することも少なくありません。

誘発分娩は高額医療費の対象になる?

誘発分娩は高額医療費の対象になる?

妊娠・出産にかかるお金は申請すればお金が戻ってきますが、先に実費で支払う必要があります。これは保険が適用されるのは病気や怪我の治療のみで、妊娠・出産は病気ではないという考えによるものです。

しかし、妊娠中・出産中に治療を受けた場合は病気・怪我とみなされて保険適用対象になります。誘発分娩の場合は帝王切開・陣痛促進剤・吸引などが保険適用され、また1ヶ月にかかった費用が一定金額を超えた場合は高額医療費を請求できます。

分娩時にこれらの治療を受けた場合は、自治体の機関で確認してみましょう。

過期産を避けるためには

過産期は赤ちゃんにとって悪影響が発生するばかりでなく、お母さんもいつ出産できるのかという不安を抱えて余計なストレスとなってしまいます。

しかし、実はちょっとした毎日の意識で過期産を防ぐことが出来ます。妊娠中の最後の最後で不安に悩まされないためにも、以下にあげた方法を試してみてはいかがでしょうか。

体重管理はしっかりと

体重管理はしっかりと

妊娠中の体調管理はどの妊婦さんも必須なのですが、出産予定日以降も生まれる気配がなく過産期に突入しようとする妊婦さんにとって体重管理が出来ないことは、リスク以外の何者でもありません。

まず体重がどんどん増えれば産道にも脂肪がつきますから、通常よりも大きな赤ちゃんを産むのが更に大変になります。

また、最後になって妊娠糖尿病や妊娠高血圧症行群を発症する可能性も出てきます。自分では体重管理が出来ない方は、出産予定日後から入院を検討しても良いかもしれません。

出来る範囲の運動

出来る範囲の運動

妊娠中は病気ではないので、運動にドクターストップがかかっている妊婦さん以外はどんどん運動を習慣にすべきです。臨月に入ってから歩けば、重力がかかるので子宮口が開き陣痛が始まるケースも多いですし、体重増加を少しでもコントロールするには良い手段です。

ただ、無理に動いて気持ちが悪くなったりすることもあるので、自分の体と相談しながら、外出時に陣痛や破水が起きても大丈夫なように必要最低限のものは持ち歩くようにしましょう。

「まだなの?」の言葉は気にしない

「まだなの?」の言葉は気にしない

出産予定日が過ぎるほど、周りの心配する声は大きくなります。もちろん心配からの言葉なのですが、「まだ生まれないの?ずいぶん遅いのね?大丈夫?」と言われると、陣痛が来ないことを不安に思っている妊婦さんにとっては非常に辛い言葉となるでしょう。

のんびりやの赤ちゃんなのかもしれませんし、お母さんのお腹の中が居心地良くてまだ出たくないと思っているのかもしれません。いずれにせよ赤ちゃんは生まれてくるのですから、周りの言葉は気にしないようにして赤ちゃんが問題なく生まれてくることだけを考えて過ごしましょう。

あせらない 考えすぎない

あせらない

いつ生まれるか赤ちゃんが決めるという説があるように、お母さんがいくら思い悩んでも生まれない時は生まれません。現在は最新医療機器で赤ちゃんの状態や異常を観察できますし、過期産に対する対応策も病院ではしっかり用意していますから、考えすぎず担当医にお任せしましょう。

誘発分娩や帝王切開を提案されると経膣分娩を望む方にとってはショックかも知れませんが、赤ちゃんにとって最善の方法を選んでください。悩めば悩むほどプレッシャーとなりお腹の張りにつながります。悪化すれば赤ちゃんの呼吸障害の原因ともなりかねませんので、まず自分が出来ることをしていきましょう。

まとめ

過産期に入ると赤ちゃんの健康を維持していた胎盤機能や羊水量が低下し、その結果出生後に呼吸障害や低血糖症など様々なリスクが現れるようになります。現在では病院側が母子の健康と安全を考えて、過産期に入る前に誘発分娩で出産させることが多いです。

誘発分娩を提案された時は良く話し合って、気になることは納得できるまでどんどん質問していきましょう。また、軽い運動を続けたり体重増加を抑えることで過産期に突入する確率を減らせます。出産予定日後は妊娠週数が増えるほど赤ちゃんにとって負担となりますので、今からお母さんも頑張りましょう。
参照:※1 過期妊娠 山陽新聞デジタル
参照:※2 日本医科大学多摩永山病院

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