今すでに妊娠している方も妊娠を希望している方も、早産の原因や兆候、治療法などについての様々な情報を備えておくと、いざというときに必ず役に立ちます。
妊娠中に気になるのは流産や早産のこと。待ちに待って授かった待望の赤ちゃん、出来るだけ出産予定日に近い日までお腹の中で育ててあげたいものですが、さまざまな事情により早産に至る場合もあります。
早産の原因には避けられないものと、少し注意をしたら避けられるものがあります。妊娠初期を乗り越え、安定期に入ったからといって油断していると、切迫早産に見舞われてしまうこともあります。早産を防ぐための方法など知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。
早産の定義いつからいつまで?
早産とは妊娠22週0日目から妊娠36週6日目までに出産に至ってしまうものを指します。妊娠22週目以前のものは流産と呼ばれ、早産とは区別されています。
早産によって生まれた赤ちゃんの生存率は、当然のことながら週数が少なければ少ないほど低くなります。22週目で生まれた赤ちゃんの生存率は約三割から四割ほど、23週目ではこれが約五割から六割程度に上昇します。以降一週間伸びるごとに生存率は約一割から一割半ほど上昇します。
流産と早産の違い
流産と早産の違いは妊娠週にあります。流産とは妊娠後22週目以前に胎児が死亡してしまう状態を指します。22週以前の胎児はお母さんの子宮の中以外では生存していくことが出来ません。
早産の場合、22週あるいは23週目に赤ちゃんが産まれると生存率は低いかもしれませんが、それでも胎児の状態やその他の条件さえ揃っていれば、胎児が生存していく可能性はあります。これが流産と早産の違いになります。
流産の原因と早産の原因の違いとは?
妊娠22週以前に起こる流産のうち、妊娠12週までに起こるものの原因は、そのほとんどが胎児側にあるといわれています。
胎児の染色体に異常がある場合や、受精卵になんらかの先天的な異常があり、生命を維持していくことが出来ない場合、流産という形で自然に淘汰されてしまいます。早産の場合、その原因は胎児よりも母体側にあるほうが多く、原因となる要素はさまざまです。
早産の原因を知る
早産の原因はさまざまで、一人一人の妊婦さんによって事情は異なります。
主な早産の原因は、妊娠高血圧症候群、前置胎盤、低置胎盤、子宮頸管炎、絨毛膜羊膜炎、細菌性膣症、子宮頸管無力症、子宮筋腫、子宮奇形、羊水過多症、羊水過小症、多胎妊娠、早産経験者、高齢出産、若年出産、体重増加、疲労、ストレス、喫煙、飲酒、性交渉、ストレス、生活習慣、原因不明などがあります。
何かひとつが原因ではなく様々な要因で早産になるケースが多いです。原因の中でいくつか紹介いたします。
早産になりやすいタイプとは
みな同じ妊婦さんでも、早産になりやすい方がいらっしゃいます。まず最初に挙げられるのが高齢妊娠の方で、35歳を超えると妊娠を維持するホルモン分泌が上手くコントロールできなくなるため、最後は持ちこたえられずに早産してしまう割合が多いです。
また妊娠前から子宮筋腫があったり子宮奇形で妊娠された方は、お腹の中で赤ちゃんが十分成長していないのにスペースがなくなってしまうため、子宮収縮が起こって早産につながる傾向にあります。
それから、妊娠中に前置胎盤と診断された方は、いつ出血や胎盤剥離が起きてもおかしくない状態ですから、ちょっと無理をしただけで早産になってしまうケースも。こういったリスクのある妊婦さんには主治医が適切な処置を行いますから、不安になり過ぎないようにしましょう。
子宮や感性症など
まず挙げられるのが子宮頸管無力症や子宮筋腫など子宮自体に問題がある場合です。子宮筋腫は大きさや場所により、妊娠の継続に支障をきたさすものもそうでないものもあります。
感染症もまた早産を引き起こします。早産の原因となる感染症はたくさんありますが、その中でも典型的なのが絨毛羊膜炎と呼ばれる感染症です。膣内で繁殖した細菌は子宮を収縮させ、卵膜を破壊し、破水を起こすことがあり、これにより早産が引き起こされます。
多胎による切迫早産
お腹の赤ちゃんが双子や三つ子の場合、単胎の場合に比べて切迫早産~早産になる可能性が高くなります。双子の赤ちゃんを妊娠している方は、赤ちゃんが大きくなってくる妊娠中期からは、とくに注意を払うようにしなければなりません。
多胎の場合、出産予定日よりも早い時期に出産を迎えてしまうことがほとんどですが、その場合も赤ちゃんの肺の機能が整う34週まで、出来るだけ子宮の中で育てるように頑張りましょう。
ストレスや過労による早産
ストレスや過労もまた早産や切迫早産~早産の理由の一つになります。まだ妊娠中期だからといって、体調に配慮することなく、長時間立ちっぱなしで家事や仕事をしていると切迫早産に至ることがあります。
他にも過度な喫煙やアルコールの摂取は母体に悪影響を及ぼすだけでなく、お腹の赤ちゃんの正常な発達を損ねることがありますので、妊娠中はアルコールやたばこは出来るだけ控えるようにしましょう。
妊娠高血圧症候群による早産
妊娠高血圧症候群とは、妊娠前は正常だった血圧が妊娠をきっかけに高血圧になる症状を指します。妊娠高血圧症候群にかかった妊婦さんには高いリスクが伴います。出産準備が出来ていないうちに胎盤が剥がれ落ちてしまう「常位胎盤早期剥離」や、胎児発育不全、胎児機能不全などの症状にかかりやすく、これにより早産に至ってしまう場合があります。
現在では妊娠初期の段階から血圧検査を行いますので、もし万が一妊娠高血圧症候群と診断されたら、医師の指示に従い、安静と食事制限などにより出来るだけ症状を軽症に留めるようにします。
妊娠前から高血圧の方に関しては、妊娠高血圧症候群とは呼びませんが、普段から高血圧気味の方は妊娠すると妊娠高血圧症候群になりやすいといわれていますので注意が必要です。
早産せざるを得ないケースとは
早産は色々リスクがあるため、なるべくなら正産期に入るまでお母さんに頑張ってもらえるよう、病院では様々な策をとります。
しかし、母体や赤ちゃんの状態を見てこのままだと双方に命の危険があると判断した場合に、早産を選ぶケースもあります。そういった例として常位早期胎盤剥離や破水が挙げられますが、どちらも緊急帝王切開を行わなければお母さんも赤ちゃんも命を落としてしまいます。
また、胎動が弱くなったり赤ちゃんが成長しない胎児機能不全などで、保育器で過ごした方が適切な成長が見込めると主治医が判断した場合も、帝王切開での早産となります。
早産を避けるための心得
胎児に先天的な異常がありきわめて初期の段階で流産してしまった、、このように誰にも食い止めることの出来ない不可避的な流産は別ですが、妊婦さんの配慮が足りなかったばかりに切迫早産に至ってしまうのはとても残念なことです。
妊娠していることが分かったら、その時点から自覚を持つことが必要です。重い荷物は持たないようにする、お腹を冷やさないようにする、エアコンは控えめにかける、立ったままの作業を出来るだけ避ける、家事や仕事の最中にこまめに休憩を取る習慣を付ける、など、自分の体と赤ちゃんの両方を労わる努力が必要とされています。
切迫早産とは?
切迫早産とは切迫流産同様、早産を起こしかけている状態を指します。切迫早産はまだ早産には至らないけれども、あともう少しで早産しそうになっている危険な状態。切迫早産と診断されたら、そのまま医師の指示に従い、子宮収縮抑制剤などの処方を受けることになります。
薬の服用とともに必要なのは絶対安静です。切迫早産が起こる週数にもよりますが、お腹の赤ちゃんの出生後の健康状態は一日でも長く子宮の中にいればいるほど良好になります。切迫早産と診断されたら慌てず医師の指示に従い、絶対安静を厳守するようにしましょう。
早産の兆候について
切迫早産の兆候とはどのようなものでしょうか。切迫早産のサインを見逃さないようにし、いざというときに即座に対処できるようにしておきましょう。
切迫早産の兆候とは出血、お腹の張りや痛み、おりもの色や量の変化など。この他にも足の付け根が痛んだり、下腹部に重い生理痛のような鈍痛があることもあります。
出血の量は多いときも少ないときもあり、またおりものに少量の血が混じっていることもあります。お腹の痛みや張りに加えてわずかでも出血がある場合には、必ず病院に連絡するようにしましょう。
家事は休み休み行う
母体に問題がないにも関わらず、体を十分に労わらなかったために切迫早産に至ってしまう妊婦さんもいます。妊娠も中期に入ったら、十二分に体を休め、重い荷物を持ったり、お腹に力を入れるような動きは極力避けるようにしましょう。
お腹に張りや痛みを感じることがないように、家事や休憩をはさみつつ少しずつ行うようにします。長時間立ったままで作業をすることは絶対にやめましょう。不注意に体を前屈みにすることも控えたいものです。料理や洗濯、買い物は決して無理をしないよう、料理は調子の良いときに作り置きをしておくと便利です。
切迫早産で入院する場合
切迫早産は症状により、そのまま自宅安静になる場合と即入院しなければならない場合に分かれます。自宅安静になるか、入院が必要かはどの程度症状が進んでいるかによりますが、医師から入院を勧められた場合には出来るだけ早く入院の手続きを取るようにしましょう。
自宅での安静には限界があります。とくに以前にも流産や早産を経験したことのある方や、自宅で一人でいることの多い方は、入院して治療を受けたほうが良い結果につながりやすくなります。
早産になった場合
切迫早産で治療を受けていたにも関わらず、やむを得ず早産になってしまうこともあります。切迫早産の場合、そのまま妊娠を継続すると母体やお腹の赤ちゃんに支障があると判断されると、帝王切開で赤ちゃんを取り出すこともあります。
早産で生まれた赤ちゃんの健康状態は、妊娠週や赤ちゃんの体重、その他体の機能の発達状態により異なります。妊娠週が正産期に近い場合、たとえ早産であっても正産期に生まれた赤ちゃんとほぼ変わりないこともあります。
反対に妊娠週が少なく、体重も少ない場合には、まだ完全に体の機能がはたらいていないため、出生後の経過を注意深く見守らなければなりません。
早産の赤ちゃん後遺症について
医学と医療技術の発達した日本では、22週目や23週目で生まれた赤ちゃんであっても生存できる可能性は十分あります。しかしこの段階で生まれた赤ちゃんはまだ体の機能が完全ではなく、合併症や感染症にかかりやすく、生後数日間の間に深刻な状態に陥ることがあります。
重大な危機を脱したとしても、なんらかの後遺症が残る可能性は高く、2割から3割程度の赤ちゃんには後遺症が残るという統計があります。
週数が進むほど後遺症の残る確立は減少していきます。肺の機能が整うと、早産のリスクは大きく減少します。一応の目安としては34週目以降であれば、早産に付き物のリスクから免れる可能性が拡大します。
早産赤ちゃんの体重について
早産で生まれた赤ちゃんのことを以前は「未熟児」と総称していましたが、現在では出生時の体重をもとにした基準が定められています。
低出生児は体重によって3つに区分されています。①体重が1000グラムに満たない「超低出生体重児」、②1500グラムに満たない「極低出生体重児」、③2500グラムに満たない「低出生体重児」です。この基準は出生時の体重をもとにしたもので、早産かどうかは関係ありません。
「未熟児」という名前は正式な呼び名ではなく、早産で生まれた赤ちゃんは現在では「早産児」と呼ばれています。
早産で生まれた赤ちゃんの保育・リスク
早産で生まれた赤ちゃんは通常、NICU(新生児集中治療室)で医師や看護師による24時間の監視体制のもと保育されることになります。NICU(新生児集中治療室)には、発達が未熟なまま生まれた新生児を保育していくために必要なすべての設備が整えられています。
NICU(新生児集中治療室)
早産の場合、ほとんどの場合赤ちゃんは低体重で生まれますので、そのままNICUの保育器の中で育てられることになります。自分で呼吸の出来ない赤ちゃんには呼吸器が付けられ、点滴で栄養が与えられます。
NICUから退院できるのは、赤ちゃんが自分の力で口からミルクを飲めるようになり、体重が順調に増加し、自宅で過ごしても支障がない状態になったとき。早産で生まれた赤ちゃんの他にも、低出生体児や体の機能が完全ではない赤ちゃんもNICUで育てられます。
早産で生まれた赤ちゃんのケア
早産で生まれた赤ちゃんには特別なケアが求められます。とくに30週目よりも前に生まれた赤ちゃんや、体重が2000グラムに満たなかった赤ちゃんは、免疫力が弱く、感染症にかかりやすくなりますので、ウイルスなどに感染させないよう注意する必要があります。
早産で生まれた赤ちゃんの成長
早産で生まれた赤ちゃんは出生後の数年間は、身長や体重の面で他の赤ちゃんに比べると成長の速度が遅く、お母さんにとっては悩みの種になるかもしれません。
しかし他の赤ちゃんと比べると小さいことを気に病んでいても仕方ありません。早産で生まれたにも関わらず、無事に成長しているのは生命力が強いためと考え、赤ちゃんの身体的な発育だけに一喜一憂するのはやめましょう。
未熟児養育医療制度とは
妊娠・出産にまつわる出費は、自治体の補助券以外は全て実費です。未熟児で入院した場合も、大人と同じようにベッド代やおむつ代などがかかります。
お母さんが帝王切開をした場合は高額医療費や民間保険会社の特約給付金などが受けられますが、赤ちゃんの場合には未熟児養育医療制度というものがあります。
適応するのは出生時体重が2000g以下である事や生活力が非常に弱く医師が入院養育を認めた場合に限りますが、未熟児養育医療制度を使えば入院費・治療費が一部または全額公費負担となります。出生時に低体重児と分かったら、すぐに自治体に問い合わせて申し込むとよいでしょう。
早産を経験したお母さんの心のケア
早産で赤ちゃんを産んだ、ということが心の負担になり、気持ちが不安定になったり、憂鬱な気持ちに襲われる方も少なくありません。早産で赤ちゃんを産んだことを自分の非と捉え、赤ちゃんに対して申し訳ない気持ちになるお母さんも大勢いるようです。
こんな早産を経験したお母さんたちをサポートする会やサークルが、全国にはたくさん存在します。同じ経験を持つお母さん方の経験談を聞いたり、アドバイスを受けることにより、悩んでいるのは自分一人ではないことを実感できるようになります。
まとめ
早産について知っておきたいさまざまな情報をご紹介しました。安定期に入り、お腹の赤ちゃんも順調に成長している方であっても、早産の原因や兆候についての正しい知識を備えておくことは決して無駄にはなりません。
妊娠初期を乗り越えたからといって油断せず、安定期以降も無理せず、出来るだけ正産期内の出産を目指しましょう。