陣痛促進剤について知っておきたいこと

陣痛促進剤について知っておきたいこと 出産

出産予定日が近くなると気になるのが陣痛促進剤のこと。陣痛促進剤には副作用もあると聞き、不安な思いに駆られる妊婦さんも多いはずです。

陣痛促進剤が用いられる理由は主に二つ、一つはまだ起きていない陣痛を人工的に誘発すること、もう一つはすでに起きている陣痛の強さを強めることです。

陣痛促進剤のリスクについて考えると、出来れば使わないほうがいいような気がしますが、妊婦さんや赤ちゃんの容態によっては、陣痛促進剤を使わないと、母子ともに危険な状態になることもあります。

出産に至るまでのプロセスは、一人一人の妊婦さんによって異なります。出産の前兆からすべてが順調にいき、陣痛促進剤を使用することなく分娩が終了するケースもあります。これとは反対に陣痛が起こる前に破水が起こってしまい、そのままにしておくと感染症のリスクが高まることから、陣痛促進剤を使用しなければならない状態に陥る妊婦さんもいます。陣痛促進剤に関して知っておきたいさまざまな情報をご紹介します。

陣痛促進剤とは?

陣痛促進剤とは?

陣痛促進剤とは人工的に陣痛を起こすため、あるいは陣痛の強さを高めるために用いられるホルモンを指します。このホルモンは自然分娩の際に母体から分泌されるもので、オキシトシンやプロスタグランジンという名称で呼ばれています。

陣痛促進剤の種類

陣痛促進剤の種類

陣痛促進剤は点滴あるいは内服薬として用いられます。経口薬の効き目は緩やかで、陣痛を促す際に用いられます。すでに陣痛が始まっている場合には、効き目の強い点滴が用いられます。

点滴薬は効果もすばやくあらわれ、量の調節も簡単に行うことが出来ます。分娩中も陣痛の加減や分娩の進行具合を確認しながら点滴を投入することになります。

陣痛促進剤が使われる場合

陣痛促進剤が使われる場合

陣痛促進剤が使われるのは必要があってのこと、以下に陣痛促進剤が用いられる状況についてまとめてみましょう。陣痛促進剤を使う際には、まず医師から陣痛促進剤を用いたほうがいいと思われる状況についての説明や、陣痛促進剤を用いる場合のリスクなどについての説明があります。

医学的な判断に基づいての判断ですので、きちんと説明を聞き、理解した上で同意書にサインするようにしましょう。妊婦さんが自分ではサインできないほどの状況にある場合には、妊婦さんに替わり、配偶者の方の同意が必要になります。

正産期を過ぎた場合

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正産期と呼ばれるのが、妊娠37週目から妊娠41週目までの間。この期間内の出産がもっとも安全だといわれています。この時期以降を過産期と呼びますが、過産期に入るとおなかの赤ちゃんの体重が増えすぎてしまい、分娩の際にリスクが高まる恐れがあります。

通常41週目を迎えても陣痛が起こらない場合には、陣痛促進剤の使用が検討されます。

母体に負担がかかりすぎている場合

母体に負担がかかりすぎている場合

妊娠高血圧症候群の症状がひどい場合、妊婦さんの体力が著しく落ちている場合など、これ以上妊娠状態を長引かせていると、母体が危険な状態になるときには、陣痛促進剤で陣痛のはじまりを誘発します。

胎児の容態が思わしくないとき

胎児の容態が思わしくないとき

出産予定日前でも胎児の心拍数が弱まったり、胎動が弱弱しくなるなど、胎児の容態が思わしくない場合にも陣痛促進剤が使われます。陣痛が自然に起きるのを待っていると手遅れになることもあるからです。

陣痛が起こる前に破水があった場合

陣痛が起こる前に破水があった場合

出産までの流れは一人一人の妊婦さんにより異なります。出産の兆候であるおしるし、陣痛、破水が起こる順序はまちまちで、妊婦さんによっては陣痛が始まる前に突然破水が起こることもあります。

通常は陣痛が始まり、その後陣痛の痛みが強くなり、間隔が短くなってから破水が起こります。しかし稀に陣痛が来る前に破水が起こることがあり、破水が起きたということは、子宮口が開いたということを意味しますので、そのままにしておくと感染症にかかる危険があります。

また羊水がどんどん流れ出てしまうと、胎児の命にも危険が及ぶ恐れがありますので、この場合は陣痛促進剤で陣痛を起こし、分娩を促すことになります。

分娩が長引いている場合や陣痛が微弱な場合

分娩が長引いている場合や陣痛が微弱な場合

陣痛の強さが十分でなく、陣痛は起きているにもかかわらず、赤ちゃんがなかなかおりてこない場合があります。また分娩が長引き、妊婦さんの体力がひどく消耗されているときも陣痛促進剤の使用が検討されます。

陣痛促進剤の費用

陣痛促進剤の費用

陣痛促進剤の費用は病院ごとに差があり、標準的にいうと1万円から5万円程度になります。妊婦さん本人の希望により陣痛促進剤を使用した場合、健康保険は適用になりませんが、医療的な必要性に迫られて使用した場合には、保険が適用されます。

民間の保険に関しても陣痛促進剤の扱いはまちまちなので、どうしても気になる方はあらかじめ保険会社に問い合わせを行い、確認しておくようにしましょう。

陣痛促進剤による陣痛の痛み

陣痛促進剤による陣痛の痛み

陣痛促進剤を使用することにより人工的に陣痛を起こすと、陣痛の痛みがより激しくなるのでは?と不安に思う方もいるようです。

陣痛を人工的に起こす、というイメージが先行しているせいかもしれませんが、実際には痛みの感じ方には個人差があり、陣痛促進剤を使用したからといって必ずしも痛みが激しくなるわけではありません。

陣痛促進剤を使うと痛みが激しくなると言われるのは、陣痛促進剤によって人工的に陣痛を起こすため、短時間に陣痛の波が襲ってくるためと考えられます。

自然な陣痛の場合、最初は弱かった陣痛が次第に強まってきますが、陣痛促進剤を使うと陣痛の開始から出産までの時間が短くなるため、痛みが一気に襲ってくるような気がする妊婦さんもいるようです。

陣痛促進剤を使った出産までの時間

陣痛促進剤が使用されるケースについては上の項で述べたとおりですが、ここではもう少しその流れについて詳しく見ていくことにしましょう。

陣痛促進剤には錠剤と点滴がありますが、どちらか片方だけを使用する場合もあれば、状況に応じて両方利用される場合もあります。

陣痛促進剤 錠剤の場合

錠剤の場合

錠剤が利用されるのはおもに、陣痛を誘発する誘発(計画)分娩の場合です。また陣痛は始まったけれども、弱い陣痛が間隔をあけて続くときにも使用されます。

錠剤は効き目が緩やかで、いきなり陣痛が襲ってくるということはありません。一定の間隔をあけ、一錠ずつ服用していきます。

通常、三錠から四錠飲んだところで、おなかに痛みを感じるようになりますが、飲み始めてからどのくらいで陣痛が始まるかは、妊婦さんの体質や子宮の開き方などにもよります。

錠剤による誘発分娩の場合、朝飲み始めてもその日のうちには出産に至らないこともあります。六錠飲んだ時点でもまだ陣痛が始まらなければ、点滴に切り替えられることが多いようです。

錠剤の場合いったん服用してしまうと、その錠剤分の効き目をなしにすることは出来ません。効き目のゆるい錠剤であっても、飲む前に必ずおなかのはりや痛みかげんを確認するようにします。

陣痛促進剤 点滴の場合

点滴の場合

点滴が使用されるのは陣痛が始まる前に破水が起こった場合や、微弱陣痛が長引いているとき場合は、点滴として妊婦さんに注入します。錠剤に比べると効き目が強く、妊婦さんによっては注入後数時間以内に分娩が終了することもあります。

点滴のメリットは少量ずつ様子を見ながら注入できることで、母体と胎児の様子を注意深く観察しながら、徐々に量を増やしていきます。陣痛促進剤に対する反応は妊婦さんごとに異なっていて、わずか数滴の注入で陣痛の激しさが増す方もいれば、一日近く点滴を行ってもあまり反応のない方もいます。

錠剤の効き目がない場合

錠剤を服用しているにもかかわらず、陣痛の強さが強まらず、妊婦さんの疲労が高まる場合、点滴に切り替えられることになります。強さは弱いままでも陣痛自体は始まっているので、そのまま放置しておくと、羊水の量が減ってきて胎児に悪影響がある恐れがあるからです。

また微弱な陣痛が長引いてしまうと、妊婦さんの体力も消耗され、分娩まで持ちこたえられなくなる恐れがあります。このような場合は途中から点滴の陣痛促進剤に切り替えられます。

陣痛促進剤のリスク

陣痛促進剤のリスク

陣痛促進剤は妊婦さんの容態を注意深く観察しながら、適量を少しずつ用いる分には危険性はほとんどありません。

ただし稀ではありますが、注入する量を誤るなどすると、母体と胎児に重大な事態を招く恐れもごくわずかながらあります。

陣痛促進剤による過強陣痛

陣痛促進剤の効き目のあらわれ方には個人差があり、少量であっても過剰に反応してしまい、微弱陣痛とは反対に過強陣痛という状況に陥ることがあります。

陣痛が激しすぎるとそれに伴ない、子宮の収縮も激しくなり、胎児への酸素の供給が滞る恐れがあります。

子宮破裂

陣痛促進剤の量を誤り過剰に投与してしまうと、子宮が強直収縮してしまい、最悪の場合子宮破裂や頸管裂傷といった出産事故につながる可能性があります。

とくに注意が必要なのは、以前に帝王切開を受けたことのある場合や子宮の手術を受けたことがある場合、通常よりもリスクが高いと判断される場合には、陣痛促進剤の使用は必要最低限に控えられます。

胎児に対する影響

母体へのリスクだけでなく、陣痛促進剤の過剰投与は胎児に対しても悪影響を及ぼす可能性があります。胎児が仮死状態に陥る、あるいは脳性まひなどの後遺症が残るなどのケースも散見します。

陣痛促進剤を控えるケース

以前子宮の手術をしたことがある

以前子宮の手術をしたことがある

妊婦の状態によっては、実は陣痛促進剤を使えないケースがあります。その中でも最も多いのが子宮の手術を以前行った場合で、帝王切開で出産された方以外にも、子宮筋腫や子宮内膜症の手術をされた方などが当てはまります。

子宮の傷は回復してもほかの部分より薄いままなので、お腹の張りや陣痛で子宮破裂を起こす可能性が少なからずあります。ましてや陣痛促進剤は急激に陣痛が進みやすく、通常以上に負担をかけて更に子宮破裂の恐れが高くなるため、陣痛促進剤の使用を止めています。

このケースに当てはまる方は、体重コントロールや運動など担当医の指導に従い、出産に向かってしっかり体調を整えておく必要があります。

陣痛促進剤を使用する前に考えたいこと

陣痛促進剤を使用する前に考えたいこと

陣痛促進剤を使用する前には医師から陣痛促進剤による副作用やリスクに関する説明がありますので、よく注意して聞き、メリットとリスクを把握した上で同意するようにしましょう。

陣痛促進剤は適切に使われる限り、母体にも胎児にもメリットのある薬ですが、使用に関しては必要最低限に控えたほうが安全な場合もあります。

陣痛促進剤を使った計画出産

自然に陣痛が起こるのを待つことが出来ればベストですが、妊婦さんの中には諸般の事情により、計画的に出産を行う必要に迫られる方もいます。

臨月でも仕事をしている方や出産後すぐに仕事に復帰しなければならない方、上のお子さんや家庭の都合により、あらかじめ入院から退院までの日取りを計画したい方は、まずご自分の置かれている状況と希望を医師に伝えるようにしましょう。その上で母体と赤ちゃんに支障のない範囲で、分娩計画を立ててもらうようにする必要があります。

陣痛促進剤が効かない場合

陣痛促進剤が効かない場合

最初は錠剤からはじめ、一日で6錠を服用したにも関わらず、陣痛の強さに変化がない。こんな場合は点滴の促進剤に切り替えられることが多いといえるでしょう。

通常は点滴に切り替えた段階で薬の効果があらわれますが、点滴を使っているにも関わらず、赤ちゃんが降りてこないことがあります。この場合はなにかしら問題が起こっていることが疑われます。たとえば子宮底が未熟である、あるいは赤ちゃんの首にへその緒が絡まっているなど、何かしらの原因で分娩の進行が妨げられていることが考えられます。

このような場合が続き、母体にも赤ちゃんにも危険が及ぶ可能性があると判断されると、急遽帝王切開での出産が選択されます。初産の方は出来れば帝王切開は避けたいものですが、そのままにしておくと母体だけでなく赤ちゃんの命まで危険に晒されてしまうこともあります。

陣痛促進剤を使っているにも関わらず分娩の進行が進まないということはなんらかの問題が生じているしるしともいえるでしょう。もっとも重要なのは母体と赤ちゃんの安全の確保、医師の説明をよく聞き、適切な決断を行うようにしましょう。

まとめ

臨月に入ると気になってくるのが陣痛や分娩のこと。とくに初産婦さんは陣痛や分娩時の痛みのことを考えて、不安な気持ちになることもあるでしょう。

出産に至るまでの段階は人それぞれ、陣痛が始まってから出産が終了するまで数時間しかかからない方もいれば、微弱な陣痛が二日間以上続く方もいます。

陣痛促進剤が使われるのは、このように微弱な陣痛が続いて、妊婦さんの体に負担がかかりすぎるとき。そのまま放置しておくと、おなかの赤ちゃんへの悪影響も心配されます。陣痛促進剤を使用する目的は、人工的に陣痛を誘発・促進することにより、母体への負担をできるだけ軽くし、おなかの赤ちゃんの安全を確保することにあります。

陣痛促進剤に関する知識をあらかじめ備えておくと、いざというときに必ず役に立ちます。メリットもデメリットもある陣痛促進剤ですので、これらについてしっかり把握しておくようにしましょう。

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