後産と後陣痛について知っておきたいこと

後産について知っておきたいこと とは? 後産と後陣痛 いつ頃 症状 原因 対処方法 など 出産

臨月に入ると陣痛や分娩のことが気になります。陣痛や分娩の痛み、分娩にかかる時間やおなかの赤ちゃんの様子など、いろいろと不安なことが出てきます。出産予定日が近づいた妊婦さんは、前駆陣痛、おしるし、破水、そして本陣痛という流れをきちんと把握することが大切。入院してから分娩終了までのすべての過程について、すでにたくさん学んでいるはずです。

陣痛や分娩の形については分かっていても、意外によく知らないのが後産や後陣痛のこと。赤ちゃんが取り出されても出産はまだ終わっていません。後産として胎盤や卵膜、臍帯が排出されてはじめて出産の過程が終了します。

後産期陣痛と後陣痛の違いとは?後産・後陣痛はいつ頃起きる?後産・後陣痛のトラブルとは?など、後産・後陣痛についての知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。

後産とは?

後産とは?

後産とは赤ちゃんの娩出が終了したあとに、胎盤、臍帯、卵膜などの子宮の内容物が排出されることを指します。これらは医学用語では胎児付属物と呼ばれ、これが子宮内から排出されるまでは分娩は終了しません。

後産が起こるのは分娩第三期(後産期)に当たります。陣痛が規則的になってからすべての分娩の過程が終了するまでは、四つの区切られています。後産について把握するためには、まず分娩の経過について知っておく必要があります。

分娩の経過について

分娩の過程は分娩第一期(開口期)、分娩第二期(娩出期)、分娩第三期(後産期)、分娩第四期の四つに区切られています。

分娩第一期(開口期)とは?

分娩第一期(開口期)とは?

分娩第一期は陣痛が規則的になり、10分間隔あるいは1時間に6回以上になったときから、子宮口の開きが全開大(10センチ)になるまでを指します。妊婦さんは陣痛が始まったら、陣痛の強さや間隔、持続時間を観察しなければなりません。

陣痛の間隔を見計らい、初産婦さんの場合は陣痛の間隔が10分間隔になったら、経産婦さんの場合は15分間隔になったら病院に向かうようにします。このタイミングは妊婦さんの状態や陣痛の進行具合によっても異なりますので、出産前の最終妊婦健診の日に必ず医師に確認しておくようにしましょう。

分娩第一期に要する時間はひとりひとりの妊婦さんによって個人差がありますが、一般的には初産婦さんで10時間から12時間、経産婦さんで5、6時間とされています。

分娩第二期(娩出期)とは?

分娩第二期(娩出期)とは?

子宮口が全開になってから赤ちゃんが生まれてくるまでの間は分娩第二期と呼ばれています。赤ちゃんを娩出するためのいきみは子宮口が全開してから、助産婦さんや医師の監督下で行います。

分娩第二期に要する時間は第一期に比べると短く、初産婦さんで1、2時間程度、経産婦さんの場合はそれよりも短くすむ傾向にあります。分娩の痛みを和らげるための呼吸法やいきみのやり方について、十分に学び、練習しておくことが大切です。

分娩第三期(後産期)とは?

分娩第三期(後産期)とは?

後産は、この分娩第三期(後産期)に当たります。赤ちゃんの娩出は終わったあと、再び子宮が収縮し、胎盤とともに卵膜や残存臍帯が排出される、これが後産の意味するところになります。赤ちゃんが取り出されると、これまでママと赤ちゃんをつないでいた胎盤は不要になります。

胎盤とともに卵膜、子宮内部に残っている臍帯は、胎児付属物と呼ばれ、これが後産として娩出されます。

分娩第四期とは?

分娩第四期とは?

分娩第四期とは胎盤が排出されてから約2時間程度を時間を指します。赤ちゃんと胎盤が娩出されたあと、子宮はさらに収縮していきますが、このとき子宮や外陰部に異常が起こっていないかどうか、経過観察を行います。

まだ出血が続いている場合もあり、医師や看護士さんは、産婦さんの出血量や子宮、膣の状態を観察し、異常なトラブルが発生していないか注意を怠らないようにしています。

後産について

後産について

分娩の経過の段階についてみてきましたが、後産はこのうち第三期に当たります。

後産はいわば分娩の最終段階といえるでしょう。赤ちゃんが娩出され、臍の緒が切れたあとも、残りの臍帯はまだ子宮内に残っています。また胎盤に関しても同様で、赤ちゃんが娩出された後、不要になった胎盤は剥がれ落ち、子宮下部におりてきています。

妊娠中赤ちゃんを保護していた卵膜は、分娩の始まりが近づくと、子宮の壁から剥がれ落ち、粘液と混じった出血があります。これがおしるしといわれるもので、破水・陣痛とともに分娩の兆候のひとつになります。子宮の壁から剥がれ落ちた卵膜も、胎盤や臍帯の残りと一緒に後産として娩出されます。

後産と後産期陣痛について

後産と後産期陣痛について

分娩第二期で赤ちゃんが娩出されたあと数分後には子宮が再び収縮し、胎盤が子宮から剥がれ落ちてきます。これは後産期陣痛と呼ばれるもので、数分から15分程度、長くても30分間程度で後産は終了します。30分以上経過しても胎盤の排出が見られない場合には、胎盤癒着などのトラブルも疑われます。

後産があるときには若干の出血が起こりますが、このときなんらかの形で大出血に至ることもあり、後産が終わるまでは予断は許されません。胎盤を子宮壁から剥がし、そして膣内から排出させるため、子宮は強く収縮しますが、このときの痛みは分娩の痛みの余韻でほとんど感じなかった、という妊婦さんもいるようです。

後産のトラブル胎盤癒着について

後産のトラブル胎盤癒着について

後産はほとんどの場合数分間で終了しますが、中には30分経過してもまだ排出されないというケースもあります。先述したように胎盤の排出に時間がかかり過ぎる場合、胎盤癒着が疑われます。

通常、胎盤は子宮の収縮にあわせて臍の緒を軽く引っ張るだけで簡単に排出されますが、胎盤癒着の場合、医師が臍の緒を引っ張ってもまったく動かず自然に排出されることはありません。ここで無理やり排出させようとすると、大出血を起こし、産婦さんの命にも関わる重大な結果に。大量失血死という悲劇を招かないよう、医師や看護士さんは後産期を慎重に見守ります。

胎盤癒着の対処法とは?

胎盤癒着とは胎盤が子宮筋層表面や深部、さらにはその奥にまで癒着した状態を指します。胎盤癒着はその症状により、医師が手で取り出す胎盤用手剥離で取り出せる場合もあれば、子宮を全摘出しなければならない状況まで、いろいろな状況があります。

後産のトラブル胎盤遺残・卵膜遺残

後産のトラブル2

分娩後第三期になって異常出血が起こる原因のひとつは、胎盤の全部または一部が排出されず子宮に残ってしまう胎盤遺残にあります。

通常、赤ちゃんの娩出後数分以内で、子宮の中にある胎児付属物はすべて排出されますが、娩出力が弱い、あるいは癒着が起こっている場合など、胎盤が後産としてなかなか排出されないことがあります。

胎盤が子宮内に残ったままだと、出血が止まらず、感染症にかかるリスクも増えます。またそのまま放置しておくと、次の妊娠に備えることができません。後産がきちんと起こらないときは、医師の判断により適切な処置を施すことになります。

胎盤遺残の処置について

後産で胎盤の一部だけが排出され、残りが子宮内に残ってしまった場合は、子宮収縮剤を用いて排出を促すこともあります。どうしても排出されない場合には、子宮内掻爬手術で子宮の中をきれいにする必要が出てきます。

卵膜に関しても同じで、後産として排出されず、子宮内に残ってしまった場合、分娩後に自然に生理と一緒に排出されることもあるようです。卵膜遺残は経過を観察しながら、必要であれば胎盤遺残と同じように掻爬手術で取り出すことになります。

後産のトラブル弛緩出血とは?

後産のトラブル

弛緩出血とは分娩後に出血が止まらない状態を指します。後産で胎盤が排出されるときには、多少の出血が見られますが、子宮が収縮し胎盤が剥離した部分の血管が閉まってくると出血は自然に止まります。しかしなんらかの理由により、子宮の収縮力が弱いと出血が止まらず、大失血に至るケースもあります。

弛緩出血は予防することが難しいため、赤ちゃんの娩出が終わったあとも後産の経過を慎重に見守る必要がありす。分娩中および分娩後2時間以内に500ml以上の出血がある場合には要注意。分娩第四期が終了するまでは、とくに問題が見られなくても専門医と看護士の監督下で過ごします。

弛緩出血の原因について

弛緩出血の原因について挙げてみましょう。まずはすでに述べたとおり、胎盤が子宮内にまだ残っていること。胎盤が残っていることにより、子宮の収縮が十分でなく、このため出血が止まりにくくなります。

もうひとつの原因は子宮の筋肉が弱まっていること。他にも血液が凝固しにくい状態や内子宮口(子宮峡部)に裂傷があることなども、弛緩出血の原因と考えられます。

弛緩出血が起こっている場合には子宮収縮剤を用いたり、子宮底を手やガーゼで圧迫することにより出血を止める処置が行われます。バルーンを子宮内に挿入し圧迫する方法もありますが、これらの方法を用いても出血が止まらないときは、子宮摘出手術も考慮に入れられます。

後陣痛とは?

後陣痛とは?

分娩第三期に起こる子宮の収縮は後産期陣痛と呼ばれていますが、これとよく似た言葉に後陣痛があります。後産期陣痛と後陣痛、この二つの陣痛の違いは何でしょうか?

後産期陣痛と後陣痛の違いとは?

後産期陣痛とは、分娩第三期に起こる子宮の収縮に伴う痛み。不要になった胎盤や残った臍帯、卵膜を排出させるため、子宮は再び収縮し、胎児付属物の排出を促します。

これに対して後陣痛とは、分娩終了後子宮がもとの大きさに戻ろうとする際に起きる痛みで、後腹とも呼ばれています。出産後数日間でおさまることがほとんどですが、一週間程度続くこともあるようです。

後陣痛の原因とは?

後陣痛は子宮復古に伴って起こる痛みで、子宮が正常にもとの形に戻ろうとしている兆候になります。妊娠中に大きくなった子宮は後陣痛や授乳の刺激により、どんどん小さくなっていきます。

子宮復古の起こる時期は出産後6週間から8週間で、この間に子宮は妊娠前の大きさに戻ります。この期間は産褥期と呼ばれ、悪露が見られることもあります。悪露の量が多い、においがある、だらだらといつまでも続く、腹痛を伴う場合には病院で診察を受けたほうが安心です。

後陣痛の痛みはどんな感じ?

後陣痛の痛みはどんな感じ?

後陣痛の痛みの感じ方には個人差があり、生理痛のような痛みと表現する方もいれば、激痛が走り痛み止めを服用しなければ耐えられないという方もいます。

後陣痛は子宮が順調に元の状態に戻っていることを意味しますので、痛みがあっても不安に思う必要はありません。ただし激痛がする場合や出血や高熱を伴う場合には感染症にかかっている可能性もあります。気にかかることがあれば産婦人科で相談するようにしましょう。

帝王切開に後陣痛はあるの?

後陣痛とは、分娩後に急速に子宮が元の大きさに戻る際に起こる痛みです。ですから、個人差はあっても出産方法による後陣痛の差に違いはありません。

自然分娩では、陣痛に比べたら後陣痛はそれほど痛みを感じなかったという方も多いですが、無痛分娩を選んだ方は、陣痛を抑えられた分痛みを強く感じる事があるかも知れません。

また予定帝王切開で出産された方は、陣痛が無かったとしても後陣痛に加えて切開傷もある事から痛みをダブルに感じ、産後辛い数日を過ごした方もいるようです。ただ痛みの感じ方は人それぞれ。あまり不安にならないようにするのが一番です。

後陣痛の痛みを和らげる方法とは?

後陣痛の辛い 痛みを和らげる方法についていくつか挙げてみましょう。後陣痛の痛みは陣痛の痛みに比べると弱いといわれていますが、それでも出産後はまだ体力が完全に回復していませんので、わずかな痛みにも体が過敏に反応することがあります。

後陣痛は何もそのまま自然になくなっていきますが、産褥期の過ごし方に注意することは次の妊娠に備える上でも大切です。

おなかや下半身を冷やさないようにする

おなかや下半身を冷やさないようにする

おなかや下半身を温め、冷やさないようにしましょう。おなかや下半身の血行が悪いと痛みを強く感じてしまいます。カイロや腹巻でおなかを温めると同時に、体を内側から温めてくれる食べ物や飲み物を毎日の生活に取り入れましょう。

つぶせで横になる 抱き枕を抱えて横向き

つぶせで横になる 抱き枕を抱えて横向き

子宮を少し圧迫すると痛みの感じ方が和らぐといわれています。おなかの下に柔らかいクッションや枕を置き、その上にうつ伏せで横になります。このとき子宮を無理に強く圧迫しないよう注意してください。うつぶせ寝をしても楽にならない場合は、抱き枕を抱えて横向きに寝るのも効果的です。

リラックスできる時間をもうける

リラックスできる時間をもうける

授乳に沐浴と赤ちゃんのお世話に大変な時期ではありますが、ほんの少しの時間でも気持ちをゆったりさせ、リラックスできる時間を作るようにしましょう。

出産後すぐの時期は授乳回数も多く、妊婦さんは体力を消耗します。その上後陣痛が起こると精神的にも体力的にも辛い思いをしますが、後陣痛は必ず少しずつおさまってきます。自分で自分を追い詰めないよう、できるだけリラックスして過ごすよう努力しましょう。

まとめ

後産と後陣痛について出産に臨む妊婦さんが知っておきたいさまざまな情報をご紹介しました。赤ちゃんが生まれるのは分娩第二期。陣痛の痛みに耐えながら、この時期さえ乗り越えれば出産は終了と考える方もいるかもしれせんが、後産のある分娩第三期や産褥期に対しても十分な注意を払う必要があります。

後産も後陣痛も子宮が元の状態に戻るための大切な過程です。おしるしや陣痛だけでなく、後産や後陣痛に関する情報も備えておくようにしましょう。

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ニンアカ