妊娠が分かって喜んだものつかの間。ひどいつわりに悩まされて辛いと悩んでいる妊婦の方はいないでしょうか。つわりは、妊娠悪阻という病名でもあるのです。ひどい場合は入院が必要になるケースもあります。
「つわりは我慢するもの」と耐え忍んでいては、自分の身体だけでなく赤ちゃんにも取り返しのつかない影響が出る恐れがあります。妊娠悪阻の怖さ、また病院へ行く目安など、幅広くご紹介していきましょう。
妊娠悪阻とは
妊娠悪阻とは、つわり症状がひどく、重症化し治療が必要な状態です。妊娠は病気ではありませんが、今までとは身体が違ってくるため、コントロールできなくなる人はたくさんいらっしゃいます。
妊娠悪阻で入院した妊婦の方には、徹底したケアが必要になります。しかし、妊娠悪阻は一体何が原因で引き起こされるのでしょうか。それには、さまざまな原因が隠されているのでご紹介していきましょう。
妊娠悪阻の原因は?
胎盤と妊娠悪阻の関係
つわりがひどく、妊娠悪阻で入院するほど悪化するのは、何故なのでしょうか。実は、妊娠悪阻の原因は特定されていないのが現状です。しかし、さまざまな有力説はあります。そのひとつが、胎盤をつくる上で生じる身体のさまざまな変化が、妊娠悪阻を引き起こしているという説です。
妊娠すると、女性の身体は急スピードで変化していきます。赤ちゃんの細胞分裂も活発な時期ですし、栄養と酸素を送るための胎盤が作られるのもこの頃です。女性の体内では、女性ホルモンが活発に分泌されます。
そのホルモンが、つわりを引き起こしていると考えられているのです。身体の栄養やエネルギーを全て赤ちゃんと胎盤作りに向けるため、今までのバランスが崩れ、妊娠悪阻を引き起こすと言われています。
過剰な防衛反応
妊娠悪阻を引き起こす説として、もうひとつご紹介しておきましょう。それが、DNAの違いという説です。妊娠は、女性の卵子に男性の精子が飛び込み、受精することで成立します。
この時、男性のDNAが入り込むため、自分とは違うDNAが体内に存在することになるのです。身体は違うDNAを持つ胎児を「異物」であると判断し、積極的に体外へと排出しようとします。それが、妊娠悪阻に結びついているというのです。
過剰な母性の強化
妊娠悪阻を引き起こすのは、母性が過剰に反応しているという説もあります。食べたものをはいてしまうのは、異物を体内に入れないことで、赤ちゃんへ悪影響が出ないようにとする反応です。また、ニオイがダメになるつわりでは、周囲の有害物質から遠ざけようという作用が働いていると言われています。赤ちゃんを守ろうという作用が暴走し、自分ではコントロールできなくなってしまうのです。
大きなストレス
妊娠悪阻を引き起こす原因として、ストレスもよく挙げられます。妊娠したことへの不安。うまく自分の身体をコントロールできない苛立ち。義理母からのプレッシャー。妊娠を理解してくれない会社の対応などが重くのしかかり、自分自身をコントロールできなくなっていくのです。
ストレスは自律神経に影響を及ぼすものですから、妊娠悪阻を引き起こす要因としては納得できます。実際に、胎盤が完成してもつわりが継続する妊婦も多い為、密かに有力説と言われているのです。
妊娠悪阻の症状の段階
産婦人科では妊娠悪阻の症状を3期に渡って区別しています。大まかに分けると、まず1期は強い嘔吐や脱水症状・体重減少が認められます。
更に症状が進行すると、脱水症状の進行による尿量の低下や軽い黄疸・発熱・著しい体重減少が認められる2期になります。
3期は肝機能障害や意識障害が起き、生命の危険が問われる非常に危ない状態へと進行してしまいますが、ここまで酷くなってしまう方はまれです。
病院に入院したとしても点滴でカロリーと水分を補充して安静にし、妊婦の体調が改善するのを待つのみなので、妊娠悪阻に効果のある確実な治療法というのは残念ながら現状では存在しません。
つわりと妊娠悪阻の違い
妊娠悪阻の現認について、さまざまな説をご紹介しましたが、ふだん私たちが良く効く「つわり」と、「妊娠悪阻」の違いはどこにあるのでしょうか。ひとつ目安にしていただきたいのが、重症度です。つわりは、全ての妊婦に平等に与えられるものではなく、全くつわりを感じない妊婦もいれば、動けなくなるほど辛いつわりを経験する妊婦もいます。
しかし、妊娠悪阻は自分ではどうしようもないほどつわりがひどく、サポートが必要なほど重症化している状態のことを言います。最悪の場合、妊婦にとっても赤ちゃんにとっても取り返しのつかない状況を招いてしまう恐れがあるため、入院して治療する必要があるのです。
つわりで病院を受診する目安
ひどいつわりの状態を妊娠悪阻と言いますが、どのような状態になった場合、病院を受診すべきなのでしょうか。まず、食べたものを全て吐いてしまう状態の場合、妊娠悪阻を疑った方が良いでしょう。
口に入れた途端、飲み込んだ途端吐き気がきて履いてしまう場合、身体には栄養は一切入っていないことになります。このような状況が2~3日続くようなら、一度病院で診てもらい、妊娠悪阻かどうか判断してもらうようにしましょう。
つわりのひどい状態(妊娠悪阻)
水が飲めない状態
つわりの状態がひどくても、スープやジュースなら飲めるという方もいらっしゃいます。固形物にのみ反応し、履いてしまうため、流動食で栄養を補給するのです。しかし、妊娠悪阻の方には、水分ですら受け付けなくなってしまう方がいらっしゃいます。
水であっても口に入れることができなくなってしまうため、非常に危険です。脱水症状を引き起こし、赤ちゃんだけでなく妊婦の生命にも影響してくるでしょう。たとえ1日でも水分が全く受け付けられなくなったら、すぐに病院で診てもらうようにしてください。
自己判断で体重の激減
つわりがひどくても、なかなか自分では気づけないという方もいらっしゃいます。夫婦で暮らしている家庭の場合、日中は旦那さんが外で働いているため、そのつわりのひどさに気づけないことが多いからです。また、本人も1人で過ごす時間が多い為、つわりはこれくらいひどいものなのだろうと、自己判断してしまいます。
しかし、体重が急に減少するようなことがあれば、すぐに病院へ行きましょう。もともと痩せている人なら、3kg減ったら病院へ行くべきです。普通体重の方でも、5kg減ったら受診するようにしましょう。自分では気づかないうちに、どんどんやつれている可能性があります。
見た目がゲッソリに
妊娠悪阻は、周囲の人たちが気づいてあげることも大切です。数日のうちに急にゲッソリしてきた。明らかにやつれている。トイレの回数が極端に減り、水もほとんど飲まなくなったなど、このような状況が見られたら、一度一緒に病院へ行き、診察してもらうようにしましょう。
妊婦は自分の身体を完全に把握できていない部分も多い為、周囲が気づいてあげることが大切なのです。妊娠悪阻に限らず、妊婦の小さな変化を見落とさないようにしましょう。
日常生活が困難なる
少し食べることはできるし、何とか水分も飲めているから大丈夫。でも、日常生活はまともに送ることができているでしょうか。ひとりでは立ち上がることができない。トイレに行くのも這っていくほど日常生活が困難な状況になっていたら、病院へ行くべきです。
特に、出張や家族の不在が多い妊婦の場合、一人では動けないことから最悪の事態を招いてしまう可能性もあります。安全に健康に過ごすことが妊婦の仕事ですから、日常生活に不安が生じた場合は速やかに病院を受診しましょう。
妊娠悪阻の赤ちゃんへの影響は
妊娠悪阻で体重が激減する・吐いてばかりいる、こんな状態が続けば赤ちゃんにも悪影響が出るのではないかと心配される方も多いです。
赤ちゃんのためにはなるべくバランスの良い食事をとはよく言われる事ですが、吐いてばかりでは到底無理ですから、不安になってしまうでしょう。
しかし、お母さんが摂取する栄養が重要になってくるのはお母さんと赤ちゃんが胎盤でつながる妊娠15週前後で、それ以前赤ちゃんは栄養の袋のようなものを身体につけていて、そこから栄養を摂っています。
ですからつわりの時期、お母さんが食べられなくても赤ちゃんに悪影響は出ないのです。不安になるよりも、赤ちゃんが本格的に大きくなる時期に向けて頑張って妊娠悪阻を改善したいですね。
妊娠悪阻に入院 治療方法は
妊娠悪阻で入院したら、基本的には絶食し、点滴で栄養を補給していきます。口に食べ物を入れる必要がないので、気持ち悪くなることも防げますし、栄養を補給できるので赤ちゃんも安心です。妊娠悪阻で入院した場合、低体重の赤ちゃんになる傾向はあるものの、その他のリスクは特にないと言われています。
妊娠悪阻で入院した場合の費用は
妊娠は病気ではないため、検診や検査費用は実費で出産後に手当て金や還付金が受け取れます。しかし妊娠悪阻は病気とみなされるため、治療には社会保険が適用されます。
しかし妊娠悪阻が酷く入院してしまうと、いくら自己負担が少ないとしてもかなりお金がかかってしまいます。
思ったよりもお金がかかってしまったという時は、高額医療費制度を活用してください。また、妊娠前から民間の入院保険に加入していた方は、給付金を受け取れる場合があります。ただし保険会社によっては受け取れない事もあるので、一度確認した方が良いでしょう。
妊娠悪阻になってしまう前に対策を
最初から妊娠悪阻になってしまう妊婦さんは少なく、ほとんどはつわりの症状が悪化してしまったというパターンです。そうすると、妊娠悪阻になってしまう前にきちんとつわり対策を行う事が大事になってきます。
まずは食事や家事に対しては絶対に無理をしないのが大事です。この時期無理に栄養を摂る必要はないので、好きな物・食べられる物を少しずつ口にしましょう。
またホルモン分泌量増加のため心身が敏感になりやすいので、身体を締め付ける服や下着は避けて静かな落ち着いた環境で休める時にはゆっくり休むのも大切です。
まとめ
妊娠悪阻についてご紹介しました。辛いときは我慢せずに周囲や病院へ訴えることが何よりも大切です。母子ともに健康な状態ですごし、出産するためにも、少しおかしいと思ったらすぐに病院で診てもらうようにしましょう。