妊娠すると気になるのが飲み物のこと。普段私たちが何気なく口にしている飲み物の中には、おなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすものもあります。妊娠中にアルコールを飲んではいけないのは当たり前ですが、アルコール以外にも注意すべき飲み物がいくつかあります。
おなかの赤ちゃんと妊婦さんの安全のため、どんなことに注意して飲み物を選ぶべきか、どんな飲み物は避けたほうがいいのか?どんな飲み物がおすすめなのか?妊娠中の飲み物について、妊婦さんにおすすめな飲み物と注意すべき飲み物について知っておきたい様々な情報をご紹介します。
妊娠中の水分摂取について
妊婦さんにおすすめの飲み物について詳しくみていく前に、まずは妊娠中の水分摂取について把握しておきましょう。一日に摂取しなければならない水分の量は1.5ℓ程度といわれています。妊娠中の水分摂取量は妊娠前と同程度でかまいません。妊娠中の水分を摂りすぎはむくみにつながるような気がしますが、水分不足は脱水症状をはじめ、いろいろな悪影響を及ぼします。
妊娠中はプロゲステロンの影響もあり、体が水分や養分を溜め込みやすくなっています。摂取する水分量が少ないと、体はさらに水分や養分を逃がさないようにしますので、かえってむくみやすくなります。妊娠中はたっぷり水分を摂取することを心がけましょう。参照1
妊娠中の喉の渇き
妊娠中は妊娠前にくらべると喉が渇きやすいといわれています。妊娠中に喉が渇きやすい原因は様々。妊娠に伴うホルモン分泌による影響、疲れ、体型の変化、つわりによる唾液量の変化など、妊娠中に喉の渇きをもたらす原因はたくさんあります。
妊婦さんにおすすめの飲み物とは?
妊婦さんにおすすめの飲み物は口当たりが爽やかで、すっきりリフレッシュできるもの。妊娠初期はまだ基礎体温が高く、プロゲステロンのはたきらにより体が熱っぽく感じられます。つわりの症状もあり、食欲がなく、酸っぱいもの以外は口にできない方もいるでしょう。つわりや食欲が減退しているときにも飲みやすいものがおすすめです。
さっぱりと口当たりのよい飲み
妊娠初期のつわりがひどい時期におすすめの飲み物は、レモンやオレンジなどの柑橘系の果汁に炭酸を加えたドリンク。つわりの時期は温かい飲み物よりも、冷たい飲み物のほうが飲みやすく感じられます。
むかむかと吐き気がするときは果物・野菜ジュースのような濃厚な味ではなく、柑橘系や炭酸の入ったさっぱりした飲み物を用意してみましょう。市販の炭酸飲料は糖分を多く含みますので、妊婦さんには無糖の炭酸水がおすすめ。お好みの果物の果汁に合わせると、つわりで辛いときもさっぱりといただけます。
おすすめなノンカフェインの飲み物
妊娠中にカフェイン入りの飲み物を飲む場合は、摂取量に注意しなければなりません。コーヒーなら2杯程度まで、と飲む量に制限がありますので、カフェイン入りの飲み物はあまりおすすめできません。
妊婦さんの水分補給にはノンカフェインの飲み物がおすすめです。ノンカフェインの飲み物の中でもとくに妊婦さんにおすすめなものをいくつか挙げていきましょう。
麦茶
ほんのりとした苦味とさっぱりした口当たりの麦茶は、妊婦さんにおすすめの飲み物です。他のお茶にはカフェインが含まれているのに対し、麦茶にはカフェインが一切含まれていません。妊婦さんでも安心して飲めるおすすめの飲み物です。
麦茶はアイスでもホットでも美味しく飲めることもメリット。食後に、おやつと一緒に、喉が渇いたときにと、どんな場合にも合いますので常備しておくと便利です。
たんぽぽ茶
たんぽぽ茶はたんぽぽコーヒーとも呼ばれ、乾燥させたたんぽぽの根を焙煎したお茶で、カフェインを含みません。コーヒーに似た味わいのするお茶で、ノンカフェインなので妊婦さんにもおすすめです。
たんぽぽの根は中国では昔から漢方薬の生薬として用いられてきました。ビタミンC、ビタミンB2をはじめ、カルシウムや鉄分も成分として含まれており、妊婦さんだけでなく、授乳中の女性にもおすすめ。ティーバッグなら茶葉から煎れる必要がなく便利です。
ルイボスティー
ルイボスティーは南アフリカが産地のマメ科の植物の葉からできたお茶で、たんぽぽ茶同様カフェインレス。ハーブティーの一種ですが、子宮収縮作用はありませんので、妊婦さんにも安心して飲んでいただけます。
たんぽぽ茶の味はコーヒーに近いのに対し、ルイボスティーは紅茶のような優しくマイルドな味わい。紅茶のカフェインが気になる妊婦さんは、ルイボスティーを紅茶代わりに飲んでみてもいいでしょう。
果物を使った飲み物
市販の果物ジュースはカロリーも糖分も高くなりがちで、体重管理を厳密に行わなければならない妊婦さんにはあまりすすめられません。しかし栄養価の高い果物は少量でも満腹感が得られますので、妊娠中の食生活に上手に取り入れるようにしましょう。
手作りジュースは少し手間がかかりますが、旬の果物の効能を存分に味わうことができます。好みの果物に牛乳やヨーグルトを加えたドリンクなら、栄養価も高く、妊婦さんにもおすすめです。
ただし飲みすぎは体重増加につながるおそれがあります。果物ジュースやスムージーを飲む際には飲みすぎに注意しましょう。
牛乳・牛乳入りのホットドリンク
牛乳はたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの五大栄養素をバランスよく含む理想的な食材です。妊娠中のカルシウムやミネラル補給に牛乳は最適。
就寝前やちょっとおなかがすいたときなど、はちみつやココア入りのホットミルクなら、栄養的にもまたカロリー的にも申し分ありません。ただし牛乳には脂質が多く含まれていますので、飲みすぎは禁物。一日に飲む量はコップ1、2杯にとどめましょう。
ヨーグルトドリンク
乳酸菌の力で便秘予防・改善に効果的なヨーグルトも妊婦さんにおすすめです。牛乳同様ヨーグルトにもカルシウムがたっぷり含まれていますので、妊婦さんの栄養補給に最適。ヨーグルトに好みの果物を合わせたヨーグルトドリンクなら、口当たりもさっぱり。食欲のないときでも手軽にカルシウムやビタミンなどの栄養を補給できます。
妊娠中に摂取してはいけない飲み物とは?
妊娠中のアルコールの摂取は妊婦さんの健康だけでなく、おなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすリスクがあります。妊婦さんの飲酒によりおなかの赤ちゃんに生じる悪影響は、胎児性アルコール症候群と呼ばれています。生じるリスクとしては出生時低体重や脳障害、顔の奇形などの障害があります。参照2
胎児性アルコール症候群のリスクは、アルコールの摂取量が増えれば増えるほど増していくと考えられます。毎日のように大量にアルコールを飲むことにリスクがあるのはわかりますが、ではたまに少し飲むことも許されないのでしょうか?
ごく少量であればアルコールを飲んでもかまわないのでは?と考える方もいるようですが、妊娠したとわかったら、飲酒は絶対にやめるべき。アルコール摂取が及ぼすリスクに関しては、摂取量や時期を問わずに生じる可能性があります。妊娠中のアルコール摂取に関しては許容範囲は一切ないと考え、妊娠中はアルコールを控えることが重要です。
妊娠中に注意すべき飲み物とは?
アルコールの摂取は全面的に控えるべきですが、アルコール以外にも妊婦さんが注意すべき飲み物があります。カフェイン入りの飲み物がそれで、妊娠中はカフェインを飲み過ぎないよう注意しなければなりません。
妊婦さんはカフェインは控えめに
カフェインがおなかの赤ちゃんや母体にもたらすリスクや悪影響については、現在も調査研究が行われています。カフェインの過剰摂取と胎児の異常との因果関係をはっきりと断定することはできませんが、慎重に対応したほうが安心です。
妊娠しているか否かに関わらず、カフェインの過剰摂取に一定の健康上のリスクがあることは確か。カフェインの過剰摂取により生じる症状とは、めまい、不眠症、下痢、興奮、吐き気、心拍数の増加など。
カフェインには覚醒効果や倦怠感の改善、リフレッシュ効果などのメリットもありますが、同時にデメリットもあります。妊婦さんや授乳中の女性については、カフェインのデメリットを考慮し、カフェイン入りの飲み物はできるだけ控えめにしたほうが安心です。
妊婦さんがカフェインを飲む場合の目安とは?
妊婦さんのカフェインの摂取量の目安ですが、世界保健機構(WHO)ではコーヒーなら一日3、4杯程度に留めるよう勧告しています。世界保健機構よりもさらに厳しい目安を設けているのが、英国食品基準庁(FSA)。英国食品基準庁では、生まれてくる赤ちゃんに悪影響をもたらす懸念があるとの理由により、妊婦さんの一日のカフェインの許容範囲をコーヒー2杯程度と設定しています。参照3
上記二つの機関の設定からも分かるように、妊婦さんのカフェインの摂取量の目安には幅があり、どれに従うかによって摂取量が変わってきます。どの目安に従うかは妊婦さんの考え方次第ですが、おなかの赤ちゃんの安全を最優先させるならば、一日の摂取量を200mgから300mg(コーヒーマグカップ2、3杯)程度におさめたほうがいいでしょう。
カフェインを含む飲み物について
カフェインは紅茶、緑茶、コーヒーをはじめ、コカコーラなどの清涼飲料水やエナジードリンクなどに含まれています。コーヒーや紅茶、そして緑茶に関しては、カフェインが含まれているという認識をもてますが、注意すべきは清涼飲料水やエナジードリンク。これらの飲料にもカフェインが含まれていますが、その事実に気がついていない方もいるので注意が必要です。
市販のエナジードリンクの中にはコーヒー2杯に相当するカフェインが含まれているものもあります。妊婦さんはどんな飲み物であれ、飲む前に表示欄をよく読み、含まれている成分を確認することが必要です。
また医薬品の中にもカフェインを含んでいるものがあります。妊婦さんは自己判断で市販薬を服用することがないように注意してください。
糖分を多く含む飲み物
清涼飲料水や果物ジュースには糖分がたっぷり含まれています。妊婦さんは体重管理をしっかり行わなければなりませんので、糖分を多く含む飲み物には注意が必要です。清涼飲料水は糖分が多いだけでなく、人工甘味料や保存料などの添加物やカフェインを含んでいる場合が多く、この点も不安です。
果物ジュースに関しては、天然果汁を使用しているかどうかや添加物を含むかどうかなど、いろいろな要素を考慮しなければなりません。天然の果汁自体が直接体に害を与えるわけではありませんが、たくさん飲みすぎるのは問題です。体重管理の面から考えても、糖分を多く含む飲み物を好きなだけ飲んでしまうのは望ましくありません。
妊婦さんが市販のジュースやドリンクを飲む際には、まず表示欄で成分やカロリー、添加物の有無などをきちんと確認するようにしましょう。
一部のハーブティー
ハーブティーの中には子宮収縮作用があるものがあります。妊婦さんがハーブティーを飲む際には、成分表示欄やパッケージを確認し、妊娠中に飲んでもさしつかえないものかどうか、きちんと確認しなければなりません。
妊娠中に禁忌とされるハーブティーをいくつか挙げると、カモミールティー、セントジョーンズワートティー、ローズマリー、アロエティー、ハトムギ、サフランなど。
ハーブティーはノンカフェインで、爽やかな香りとさっぱりとした味が特徴。基本的には妊婦さんでも飲みやすいお茶ですが、妊婦さんには不向きなものもたくさんありますので注意が必要です。どのハーブティーを選んでいいか迷ったら、妊婦さん用にブレンドされたハーブティーを選ぶと間違いありません。
まとめ
妊婦さんにおすすめの飲み物と注意すべき飲み物について知っておきたいさまざまな情報をご紹介します。妊婦さんが口にする食べ物や飲み物は直接的に、また間接的におなかの赤ちゃんに影響を与えます。
妊娠したと分かったら、どんな飲み物を避けるべきか、また反対にどんな飲み物がおすすめなのか、飲み物の選び方をしっかり把握することが大切。マタニティライフを快適に送るため、妊婦さんに合った飲み物を選ぶコツを覚えておきましょう。
※参照1 厚生労働省 健康のため水を飲もう講座
※参照2 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト 胎児性アルコール症候群
※参照3 厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A
※参照 食品安全委員会ファクトシート 食品中のカフェイン