臨月に入りいよいよ出産予定日が近づいてくると、初産、経産婦も気になるのが臨月の内診。臨月の内診では子宮口の開き方や柔らかさなど、出産に向けてどのくらい準備が整っているかがチェックされます。
臨月の内診では医師による触診(ぐりぐり)が行われることもあり、痛いのでは?出血もあるの?といろいろな疑問や不安を抱いてしまいます。
臨月のぐりぐりって何?臨月の内診でチェックされることとは?など、出産予定日を間近に控えた妊婦さんが臨月の内診について知っておきたいさまざまな情報をご紹介します。
妊婦の定期健診について
臨月に入るとそれまでとは違い、産婦人科での健診は毎週行われるようになります。厚生労働省による標準的な妊婦定期健診の回数は、妊娠期間中をとおして全14回。妊婦定期健診の目的は、妊婦とおなかの赤ちゃんの健康状態を定期的に確認し、必要に応じて処置や治療を行うこと。妊娠中に安全に健康に過ごしてもらうことが、すなわち安産につながります。
妊婦定期健診は妊娠初期は4週間に一回ですが、妊娠24週目から35週目までは2週間に一回、そして妊娠36週目以降出産までは毎週健診が行われます。
臨月の健診で行われることとは?
妊婦定期健診で行われる検査項目について挙げてみましょう。定期健診での検査項目には毎回必ずチェックされるものと、必要に応じて行われるものがあります。
毎回必ず行われる検査は、妊婦への問診、体重検査、尿検査(糖・蛋白)、血圧検査、浮腫、子宮底長、腹囲など。これらに加えて血液検査、超音波検査などは初期、中期、後期にそれぞれ必ず一回以上行うことになっています。
このような検査以外には、妊婦のおなかを触って診察する外診も行われます。外診とは妊婦のおなかを触り診察することで、おなかの張り、赤ちゃんの向きや位置を確かめます。また内診も妊婦健診の重要な項目です。内診を行う目的や確認事項は妊娠時期によって異なります。※参照1
妊婦健診での内診について
内診とは膣内の触診を指します。妊娠初期の内診では、子宮の形、硬さ、大きさに加えて、子宮頸管無力症、膣炎などの感染症、子宮外妊娠、子宮筋腫の有無などがチェックされます。妊娠初期にこのような基礎的なことを確認したら、その後は通常妊娠20週目くらいまで内診は行われません。これは膣内の感染症を避けるためおよび子宮に刺激を与えないため。
妊娠中期以降は流産や早産の兆候が出ていないかどうかが、内診によって判断されます。臨月の内診でまずチェックされるのは、子宮頸管の様子。子宮頸管の柔らかさ、開き方、長さ、位置に加えて、赤ちゃんの頭の位置などをチェックし、分娩の状態がどの段階にあるかを確認します。以下に臨月の内診の内容についてもっと詳しく見ていきましょう。
臨月の内診の内容について
臨月かどうかに関わらず、産婦人科での内診は妊婦にとって最大の難関です。内診のことを考えただけで神経質になってしまう方も大勢いることでしょう。
内診台にあがるのは非常に緊張するものですが、内診の目的や方法を理解していなければ、不安な思いは増大します。どうして内診を行うのか、どのようなことを確認するのか、どのような方法で行うのか、痛みや出血はあるのか、といった点を把握しておくことが大切です。
臨月の内診の方法について
上述したように内診とは膣内を触って診察することをあらわします。内診の際には医師は片側の手の指を一本あるいは2本膣に挿入します。そしてもう片方の手をおなかに当てた状態で、子宮頸管の状態を確認します。
内診は指で行われることもありますが、場合によっては膣鏡とよばれる器具が用いられます。これはへらに似た形状の器具で、膣を開いた状態にしますので、膣内の状態がより確認しやすくなります。膣鏡を使う場合の内診は膣鏡診と呼ばれ、目で状態を確認します。
臨月の内診で確認されることとは?
臨月の内診は通常妊娠37週目頃に行われます。この内診でチェックされるのは赤ちゃんの頭がどの程度下がってきているかや子宮頸管の状態。外診と内診の両方によって、分娩の準備がどの程度総合的に判断が下されます。
この後出産予定日を過ぎてても分娩が始まらない場合、再び内診を行い、子宮頸管の熟化度が確認されます。子宮頸管の長さ、柔らかさ、位置、開き方、そして赤ちゃんの頭の位置の5つの項目が内診や膣鏡診によって確認され、分娩が起こりそうかどうか再度判断が下されます。
出産予定日と正期産
出産予定日は妊娠40週0日目に当たります。出産予定日はあくまでも予定日に過ぎず、実際には出産予定日よりも早く分娩が起こることも、遅く起こることもあります。分娩にずれがあるのはごく普通のことですが、分娩は正期産内に行われるのがもっとも安全とされています。
正期産とは妊娠37週目から41週目までの間で、この期間を過ぎてからの分娩にはリスクが伴います。出産予定日を過ぎても子宮頸管が熟していない場合、おなかの赤ちゃんが大きくなりすぎている場合など、分娩を促したほうがいいと判断されたら分娩誘発の手段がとられます。
臨月の内診のぐりぐりとは?
臨月の内診のぐりぐりとは、医師が指で膣内をぐりぐりすることを指します。もちろんこれは医学用語ではありません。子宮の出口あたりをぐりぐりと指で刺激するので、このような呼ばれ方をされています。
卵膜用手剥離について
臨月の内診のぐりぐりは医学的には卵膜用手剥離と呼ばれるもので、陣痛を誘発/強くする目的で行われます。内診ぐりぐりにより、卵膜の一部分が子宮壁からはがれると同時に、子宮頸管および子宮下壁が刺激されます。
これがきっかけになり、プロスタグランジンの分泌が多くなり、陣痛が起こりやすくなる、というのが内診ぐりぐりの効果です。分娩が始まる前に行われることもあれば、分娩開始後に微弱陣痛が続いた場合に行われることもあります。
内診ぐりぐりの効果や時期について
内診ぐりぐりに期待されるのは、陣痛の誘発および微弱陣痛の陣痛を強くすること。特別な器具も要らず、簡単にできることから分娩前に行われることが多い処置で、通常出産予定日が近づいた頃に行われます。
内診ぐりぐりを行うかどうかは医師の判断次第。必ずしもすべての方に行うわけではありません。卵膜剥離は通常、子宮頸管が出産に向けて十分に開き、子宮頸部の柔らかさが十分になったときに行われます。
内診ぐりぐりの効果はあくまでも陣痛誘発で、即効的に陣痛を促すわけではありませんが、陣痛が起こるきっかけを与えてくれます。陣痛促進の薬剤を用いる前に行われることもあります。
内診ぐりぐりを行うメリット
出産予定日前後に卵膜剥離を行うことにより、過期産になることを避けることが可能になります。過期産とは妊娠42週以降に出産が起こることで、母体やおなかの赤ちゃんにリスクが生じるおそれがあります。
出産予定日を超過しても陣痛の気配が見られない場合、おなかの赤ちゃんと母体の様子を慎重に観察しながら、器具や薬剤を用いた陣痛誘発を行うかどうか検討されます。卵膜剥離がうまくいった場合には、器具も薬剤もなしに陣痛を誘発できるので、陣痛誘発の一手段として用いられます。
内診ぐりぐりを行うデメリット
器具も薬剤も用いることなく陣痛を誘発できるというメリットのある臨月の内診ぐりぐりですが、デメリットやリスクもあります。
内診ぐりぐりのいちばんのデメリットは、妊婦の精神的な負担が大きいこと。出産を間近に控えた妊婦にとって、内診でのぐりぐりは陣痛の痛みに対する不安感を増長させます。また稀なケースですが、子宮頸管が傷つくなどのトラブルが生じることもあります。
内診ぐりぐりは痛いの?
内診ぐりぐりは非常に痛い、という話をよく耳にしますが、これは本当でしょうか?内診ぐりぐりは非常にデリケートで狭い膣内に刺激を加える処置ですので、痛みを感じるのはやむを得ないと言えるでしょう。
痛みの度合いに関しては個人差が大きく、多少の痛みを感じたという方もいれば、陣痛に匹敵する痛みを感じたという方もいます。内診ぐりぐりの痛みが気になる方は、出産予定日前の健診の際に医師や看護師に相談し、不安や疑問点を解消しておくことが大切です。
内診ぐりぐりを行うと出血する?
内診ぐりぐりを行ったあとに出血が見られる場合があります。分娩の兆候としてのおしるしと区別がつかないこともありますので、出血が見られた場合には念のため病院に連絡したほうが安心です。
出産の兆候とはおしるし、陣痛、破水の三つですが、卵膜剥離を行ったあとにこれらの症状があらわれた場合は必ず病院に連絡しましょう。
内診出血?おしるし?
内診出血とは妊娠中の内診後に生じる出血のことを指します。内診の際に膣内に傷がつき、ここから少量の出血が起こることがありますが、内診出血の場合量がごく少量ですぐに止まります。出血の量が多く、だらだらと止まらない場合には即刻病院に連絡しなければなりません。
出血に関しては内診出血の可能性もあれば、おしるしの可能性もあります。どちらなのか自分でもはっきり分からない場合には、病院に連絡して指示を仰いだほうが安心です。出血に加えて痛みもある場合には陣痛が始まった可能性もあります。
痛みの間隔と持続時間を計り、病院に向かうタイミングを見逃さないようにしましょう。出血に加えて破水があった場合にはすぐに病院に連絡し、医師の指示に従うようにします。※参照2
臨月の内診ぐりぐりはどの病院でも行われているの?
内診ぐりぐりには陣痛を誘発するというメリットはありますが、痛みのことや出血のことを考えると不安に感じてしまう方も当然いるでしょう。
臨月の内診ぐりぐりはすべての妊婦に対して行われるわけではありません。内診ぐりぐりを行うかどうかは医師の判断や妊婦の体の状態にもよりますので、どうしても不安を拭えない方は、事前に医師とよく相談しておくことが大切です。
内診ぐりぐりだけでなく、出産予定日を過ぎても分娩の兆候が見られない場合、そのまま自然に陣痛が来るまで待つのか、それとも陣痛促進剤を用いて陣痛を誘発するのか、いずれかの方法を選ぶ必要に迫られます。いざという時に迷いを残さないよう、分娩に関する疑問や不安な点は早めに医師に尋ねて解決しておきましょう。
臨月の内診ぐりぐり後で気を付けたいこと
臨月に内診ぐりぐりがあったら、いつ出産が起こってもおかしくありません。これが初産の方にとってはすべてが初めての体験で緊張したり、不安に感じることも多いのが当然ですが、精神的なプレッシャーや過度の緊張は分娩の円滑な進行に悪影響を及ぼします。
臨月に入ったら出産のための入院準備を整え、それと同時に気持ちをゆったりとリラックスさせ、分娩に備えるよう努めましょう。臨月の内診の内容について不安に感じる方は、母親教室などで助産婦や看護師、そして先輩ママからアドバイスをもらっておくのもいいでしょう。
安産を目指すために行いたいこと
出産予定日はあくまでも目安ですが、母体と赤ちゃんの安全のためには、妊娠37週0日目から妊娠41週6日目の間に分娩を行うことが理想的です。妊娠37週以前の出産は早産、他方妊娠42週目以降の出産は過期産と呼ばれ、母体にも赤ちゃんにもリスクが生じます。
正期産内の出産を目指すには、体重管理を厳重に行い、適度に体を動かしておくことが大切。体調を整え、陣痛に備えて体力を温存することはもちろん、分娩の兆候や進行に関する正しい知識を養い、不安や疑問を解消しておきましょう。
まとめ
臨月の内診の内容についてぜひ知っておきたい情報をご紹介しました。産婦人科での内診に対しては心理的なプレッシャーを感じるのはやむを得ないことですが、臨月の内診は安全に出産を終えるために絶対必要なこと。内診を行うことで、子宮口の開き具合や硬さを確認し、分娩までにどのくらい時間がかかりそうか判断します。
臨月の内診は必要があるからこそ行われるもの。内診をすることにより、子宮頸管の成熟度が分かり、分娩の進行が把握できます。臨月の内診に対して不安に思う気持ちは分かりますが、必要以上に怖がらず、気持ちをリラックスして安産を目指しましょう。
※参照1 厚生労働省 妊婦健診Q&A
※参照 日本産婦人科学会 妊婦健診
※参照2 大学病院医療情報ネットワーク研究センター 予定日超過における陣痛誘発方針について