妊娠前は元気いっぱい、心身ともに活気溢れる状態だったのに、妊娠した途端に体が疲れやすくなった。これは妊娠初期の典型的な症状のひとつ。妊娠初期はまだおなかは大きくなっていませんが、妊娠を機にホルモン分泌に変化が起こり、その影響もあって、体や心にさまざまな変化を感じます。疲れやすくなるのもそんな変化のひとつで、程度に差こそあれ、ほとんどの妊婦さんが妊娠初期に体に疲れを感じるようです。
妊娠初期はつわりの症状もあり、体調を崩しやすい時期。まだ妊娠初期なのにどうしてこんなに疲れやすいの?妊娠初期の疲れについて、その原因や症状、対処方法など知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。
妊娠初期に疲れる原因とは?
妊娠をした途端に体にはさまざまな変化が起こります。妊娠初期の症状として挙げられるのは、だるさ、熱っぽさ、眠気、めまい、ほてり、疲れ、胸の張りや痛み、腰痛、むくみなど。
妊娠初期にどのような症状があらわれるかは、一人一人の妊婦さんによって違います。体質や体格などによって、妊娠初期の症状の度合いには違いがありますが、症状の種類や度合いに差こそあれ、妊娠すると何かしら体に変化を感じるもの。
妊娠前は体調も精神状態もきわめて良好だったのに、妊娠したとたんにだるさや疲れを感じてしまう、その原因のひとつは女性ホルモンの分泌の変化にあります。
妊娠と女性ホルモン分泌の変化
女性の生理周期を司るのがエストロゲンとプロゲステロンの二つの女性ホルモン。ホルモン分泌が正常に行われている場合、それぞれの分泌量の増減は月経周期にしたがって規則的に起こります。
排卵期に入ると卵胞が成熟し、それにともないエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が増加。子宮内膜は妊娠に備えて厚みを増していきます。卵胞が十分に成熟したら排卵が起こり、以降は黄体期に入ります。
黄体期になるとプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増加します。子宮内膜は受精卵を受けいれるために、その厚みが十分になり、子宮全体が妊娠の成立に適した状態に整えられていきます。
妊娠成立に欠かせない女性ホルモンのはたらき
妊娠の成立と維持のためには、エストロゲンとプロゲステロンの両方のはたらきが欠かせません。黄体期になると、プロゲステロンの分泌はぐっと増え、子宮内膜に血液を集め、受精卵が着床しやすい環境を整えます。
受精が行われず、次の生理が始まった場合には黄体ホルモンの分泌は減っていきますが、妊娠が成立した場合には分泌量は増えたまま。妊娠初期の疲れの原因の一端は、プロゲステロンによる影響のせいといえそうです。
プロゲステロンによる影響とは?
プロゲステロンは妊娠の成立と継続に重要な役割を果たします。プロゲステロンのはたらきのひとつは体温を上げること。体温が上昇すると、体全体の血流が促進され、ホルモン分泌も安定して行われます。またこれにより子宮周りの血流が増加し、子宮内膜が厚みを増し、受精卵が着床しやすい状況が出来上がります。
妊娠が成立したあともプロゲステロンの分泌量は増えたまま。当然基礎体温も高い状態が続きます。体温が高く、血流も増加しているため、体がなんとなくだるく、熱っぽい。
また妊娠初期から一回の拍出量や心拍数も増加しますので、動悸や息切れを感じる妊婦さんも大勢います。妊娠初期の疲れの原因のひとつは、妊娠に伴うホルモン変化の作用にあります。※参考 日本産科婦人科学会 産科疾患の診断・治療・管理
妊娠初期のつわりによる体調不良
つわりの症状がひどく、一日中吐き気に悩まさせれることが多いのも、妊娠初期の特徴のひとつ。食べ物の匂いをかいだだけで吐き気がし、妊娠前に大好きだった食べ物を口にするのも辛い。無理して食べると吐いてしまい、さらに体力を消耗してぐったりしてしまう。
食事の内容が偏ってしまい、妊婦さんに必要な栄養が取れていないなど、つわりの症状は妊娠初期の体力を消耗させます。つわりがひどいことも妊娠初期の疲れの一因。つわりの症状がおさまってくる安定期まで、疲れやすい状況が続きます。
貧血による疲れやすさ
つわりにより満足に食事が摂れず、栄養の偏りや必須栄養素の摂取不足に陥る妊婦さんも少なくありません。
また妊娠中は循環血液量は増えますが、血液自体が薄まった状態になり、貧血の症状も出やすくなっています。必要な栄養が摂取できているかどうか心配な方は、産婦人科医や助産婦さんに尋ねて確認するようにしましょう。
本当に妊娠なのか?
妊娠超初期とは、まだ妊娠していると確実に確定できない時期のことで、妊娠週でいうと妊娠4週目から5週目を指します。ちょうど生理予定日頃に当たりますが、体の変化に敏感な方やホルモン分泌に対する感受性の高い方は、この時期から妊娠の兆候を感じるといわれています。
妊娠超初期の妊娠の兆候とは、だるさ、熱っぽさ、胸の張りや痛み、疲れ、眠気、下腹部の違和感など。これらの症状は月経前の症状にも非常に似通っています。妊娠することを心待ちにしている方は、妊娠超初期にこのような症状を感じると、もしかして妊娠したので?と期待してしまいます。
ただしこの時点ではまだ確実に妊娠していると断定できません。妊娠超初期・妊娠初期は薬の影響をもっとも強く受ける絶対過敏期。産婦人科で検査と診察を受け、確実に妊娠していると診断を下されるまでは、市販薬を軽率に服用しないよう注意しましょう。
妊娠初期の疲れはいつまで続く?
妊娠初期の疲れの症状がいつまで続くかは、妊婦さんの体質や体調によります。一般的には安定期に入ると、つわりもおさまり、体もホルモン分泌の変化に慣れてくることから、体調や気分が良くなったと感じる妊婦さんが多くなります。
プロゲステロンの影響により、体温は妊娠初期から高温期に推移し、そのまま高い状態をキープしていきます。妊娠の成立後、高温期に移行した体温はそのまま妊娠12週目から16週目まで続きますが、この時期を過ぎると体温は再び下がってきます。早い方では妊娠12週目、大多数の方は妊娠16週目に入ると体温も下がってきますので、妊娠初期の疲れもそれにともない徐々に軽減されていきます。
赤ちゃんとママを結ぶ胎盤も安定期に入ったころには完成されますので、妊娠初期の気分の悪さやつわりの症状も妊娠中期に入ると大部分はおさまります。
ただし体質や持病の有無によっては、妊娠中期以降も引き続き疲れやすい状態が続く妊婦さんもいますので、何かしら異常な点や疲労感が強い場合には、遠慮せずに医師や助産婦さんに相談しましょう。
妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などにかかっている場合にも、疲労感を覚えることがあります。少しでもおかしいな、と感じることがあれば、定期健診の際に必ず医師に状態を伝えるようにしましょう。
妊娠初期の疲れはこんなところにも 目の疲れ
妊娠初期の疲れは全身だけでなく、ピンポイントに発生することがあります。特にわかりやすいのが、目の奥がジーンとしたり乾いた痛みを感じる眼精疲労。妊娠すると血液中の水分が増え、血流が増えます。
血流が増えるにつれて血管も広がるのですが、広がる前に血流が血管を圧迫すると眼圧があがりやすくなり、それが目に影響を与えて疲れを感じるようになるのです。また、つわりで家にいて横になる時間が増え、暇つぶしでついスマホやテレビを長時間見てしまう生活が続くと、それもまた目の疲れにつながります。
それだけでなく、目の疲れは目とつながっている脳にも影響して、頭痛の一因ともなりえます。目薬の中には妊娠中使用できない成分を含むものもありますので、安易に目薬に頼るべきではありません。
妊娠初期の疲れの対処方法とは?
妊娠初期の疲れは妊娠の状態にともなうもので、これを完全に予防・治療することはできません。しかし妊婦さんの心がけやちょっとした工夫次第では、妊娠初期の疲れを効果的に改善することも可能です。妊娠初期に疲れを感じたときの対処法について挙げていきましょう。
家事はできる範囲で行う
安定期に入り、体調が落ち着くまでは家事は無理せず、できる範囲でゆっくり行うようにしましょう。妊娠初期のつわりの症状のひとつに匂いに敏感になることがあります。妊娠前であれば美味しく感じられたものも、妊娠初期には匂いを嗅ぐだけでも吐き気がすることもあるでしょう。
料理中に湯気の立つ食べ物の匂いが辛い場合は、無理せず調理を簡単に済ませるか、出来合いのものを買ってすませることも考えてみましょう。ご主人やご家族に理解を求め、家事への協力をあらかじめ伝えておきましょう。
ゆっくり休息する
妊娠初期は流産のことも気にかかります。妊娠初期はまだ子宮も大きくなっていませんので、妊婦としての自覚が十分にもてないこともあるかもしれせんが、妊娠初期はおなかの赤ちゃんの体の器官が形成される大事な時期。疲れたと感じたら、無理せずゆっくり休むようにしましょう。
プロゲステロンのはたらきにより、妊娠中は体がだるく、眠気を感じやすくなっています。昼間に疲れと眠気を感じたら、昼寝や仮眠で体を休める時間を作りましょう。
バランスの取れた食事を心がける
妊娠初期はつわりの影響で嗜好や食欲に変化が起こります。妊娠前は普通に食べられていたものが食べられなくなったり、食欲が極端に減退することも珍しくありません。食べられるものが多くなり、食事メニューが限られてしまうと、知らず知らずのうちに栄養不足に陥るおそれがあります。
妊娠中は初期から臨月まで、満遍なく栄養素を摂ることが重要です。妊娠初期のつわりの時期はやむを得ませんが、つわりが落ち着いたら食習慣を見直し、カロリーに配慮した上ですべての栄養素を満遍なく摂取するようにしましょう。
鉄分やビタミン・ミネラルなど、妊婦さんに不足しやすい栄養素にはとくに注意が必要です。サプリを摂る場合には注意書きを熟読し、用量を厳密に守って服用しましょう。
ストレス解消に努める
あれほど妊娠したかったのに、妊娠したとたんに体調も精神状態も悪く、憂鬱な気分に襲われることがあります。マタニティブルーという言葉があるように、妊娠中や出産後は気分の浮き沈みを感じやすい時期。
とくに妊娠初期はホルモン分泌のバランスに大きな変化があり、身体的な変化に加えて、精神的なプレッシャーを感じやすく傾向にあります。ただ座っているだけなのに疲れを感じてしまい、外出する気にもならない。つわりで食べたいものがなく、イライラする。妊娠前に比べると日常生活に制約が多くなり、したいことができないなど、妊娠初期はとかくイライラが募りやすい時期。
おなかの赤ちゃんのために、自分がとにかく頑張らないとだめ、と自分で自分を追い込む方もいますが、これではかえって逆効果。産婦人科医や助産婦さんからの指示は守る必要がありますが、リラックスして過ごすことも大切。自分が楽しめるの時間を大切にし、心から楽しめることを生活に取り入れようにしましょう。毎日好きなことだけをする時間を作り、ストレスを解消することに努めましょう。
外に出てリフレッシュ 戸外で散歩する
一日中家の中にこもっていると体を動かす必要がなく、疲れは取ることをできません。一日一回必ず戸外に出て、日光を浴びる習慣をつけましょう。日光に当たるとセロトニンの分泌が活性化され、自律神経のバランスを整えてくれます。
妊娠初期は疲れやだるさのために、運動どころか体を動かすことすら億劫に感じられます。息が切れるような激しい運動はNGですが、気分転換を兼ねた散歩や軽い体操はストレスや疲労感の解消にも役立ちます。
体調が悪いときや医師からストップがかかっているときは別ですが、軽い散歩や体操は妊娠初期にお勧めです。以前の妊娠で切迫流産や早産になったことがある方や、どの程度の運動なら行っても大丈夫なのか自分で判断できない方は、必ず前もって医師に相談するようにしましょう。
仕事をしている方の場合は
仕事をしている方の場合で、疲れがひどい場合は職場に報告するようにしましょう。安定期に入るまでは知られたくないと考える妊婦さんもいるようですが、職場に妊娠について知ってもらうことにより、出社・退社時間をずらしてもらうことや就業時間の短縮をお願いすることも可能になります。
まとめ
妊娠超初期・妊娠初期の疲れについて、その症状や原因、そして対処方法などの情報をご紹介しました。妊娠初期はつわりの症状も辛く、妊娠に伴うホルモン分泌の変化に体がなかなかついていきません。
待ちに待った妊娠で喜びに溢れた気分も束の間、妊娠初期の体調の悪さやつわりの症状に悩まされ、ストレスを溜めてしまう方も多い時期。安定期に入るまでの辛抱と分かってはいても、吐き気や疲れ、だるさに眠気が続き、体力的・精神的にダウンしてしまう方もいるようです。
妊娠初期の疲れを緩和し、可能な限り快適に過ごすためには、その対処法を心得ておく必要があります。辛いつわりは妊娠週が進むにつれ、必ず落ち着いてきますので、気持ちをできるだけゆったり持ち、マタニティライフを楽しむつもりで頑張りましょう。