仕事をしている女性の場合、妊娠が分かるといろいろな悩みが出てきます。職場へはいつ妊娠の報告をすべきなの?立ち仕事や力仕事はしないほうがいいの?つわりで気持ち悪いときは欠勤すべき?出勤時間や勤務時間は変更してもらえるの?など、妊娠超初期から妊娠初期の仕事の仕方や職場に対する要望に関して、いろいろな悩みや不安を感じる妊婦さんは少なくありません。
妊娠初期はつわりがひどく、また流産の確率もいちばん高い時期。せっかく授かった命を大切に育んでいくために、妊娠超初期・妊娠初期の仕事の仕方のポイントをしっかり把握しておきましょう。妊娠超初期・妊娠初期の仕事の仕方や職場での注意点について知っておきたい情報をご紹介します。
妊娠超初期・妊娠初期の妊婦の体の状態について
妊娠初期の仕事の仕方について考えていく前に、まずは妊娠超初期から妊娠初期の体の状態について見ていきましょう。
妊娠初期とは妊娠が判明してから妊娠15週目までの時期を指します。妊娠超初期とは正式な医学用語ではありませんが、受精・着床が起こってから、妊娠が病院で医学的に確定される前までの時期を指します。妊娠の兆候は早い方では妊娠超初期からあらわれます。
妊娠の兆候をいくつか挙げてみると、だるさ、熱っぽさ、眠気、腰痛、頭痛、胸の張り、味覚の変化、においに敏感になること、肌荒れなど。これらの症状は、妊娠に伴うホルモン分泌の変化により生じると考えられています。
妊娠初期のつわり
妊娠初期でもっとも気になるのがつわりのこと。妊娠の兆候同様、つわりが始まる時期に関しても個人差がありますが、妊娠5、6週目から始まり、妊娠中期に入るとおさまることが一般的です。
妊娠初期に仕事をする場合は、必要に応じて勤務時間の短縮や休憩時間が取れるよう、職場への報告を早めに済ませておく必要があります。
妊娠超初期・妊娠初期の流産の可能性
妊娠初期はもっとも流産の確率が高い時期で、妊娠した女性の約8%から15%が流産を経験するといわれています。さらに妊娠12週までに起こる流産は、流産の全件数の約8割にのぼります。初期の流産の原因は、そのほとんどが胎児の先天的な異常にあるといわれています。
しかしだからといって妊娠初期に体に不必要に負担をかけることは望ましくありません。職場や直属の上司への妊娠の報告の時期について考える際には、この点にも十分留意しましょう。
妊娠したら仕事は辞めるべき?続けるべき?
仕事をしている女性の多くは妊娠が判明すると、このまま仕事を続けるべきか、それとも辞めたほうがいいか、ジレンマに陥ります。妊娠中に仕事を続けるかどうかに関してはさまざまな意見があり、そのまま仕事を続けられるか、あるいは退職・休職したほうがいいかは、妊婦さんの体の状態や職務内容にもよります。
妊娠初期のいちばんの難関はつわり。つわりが始まると、体もだるく、吐き気が止まらない上に、いろいろなもののにおいが気になります。満員電車での通勤を余儀なくされる方は、このまま辛い思いをして仕事を続けるよりは、いっそ退職あるいは休職したほうが心穏やかにマタニティライフを過ごせるのでは?と迷うこともあるようでしょう。
妊娠しても仕事を続けるかどうかは、上述したように業務内容や職場の体制、マタニティ制度の充実度、休職・退職制度などとの絡みで考える必要があります。妊娠初期はつわりやストレスで体も精神状態も辛いものの、安定期に入ると体調も落ち着いてきますので、一時的な状況だけで判断せずに、いろいろな角度から検討してから決めるようにしましょう。
仕事をしている妊婦さんが安心して出産を迎えられるよう、さまざまな規定や決まりが労働基準法や男女雇用機会均等法によって定められています。妊娠が判明したら、まずはどのような仕組みや決まりが法律で規定されるているかを知るようにしましょう。
いつ職場に妊娠の報告をすべきか?
妊娠が判明したら職場への報告をすべきですが、その時期はいつ頃が適当でしょうか?妊娠初期は流産する可能性もあることから、安定期に入るまで待ってそれから職場への連絡をしたいと考える妊婦さんが多いようです。
妊娠というきわめてデリケートで、ある意味プライベートなことを、妊娠初期早々職場に伝えることに対して躊躇いを感じるのは無理もありませんが、職場への妊娠の報告はできるだけ早く済ませたほうが安心です。
職場への妊娠の報告はできるだけ早めに行う
妊娠初期はとかく体調を崩しがち。職場でつわりの症状がひどくなったために早退を申出ることや、お休みをもらう可能性も出てきますので、妊娠の報告はできるだけ早めに行うようにしましょう。
職場に報告する時期の目安ですが、病院の検査で妊娠が確定し、母子手帳の発行を受けた頃が適当です。しかし、上記でも説明したように報告時期は様々な意見があるようです。
職場の同僚全員に伝えるのは躊躇われる場合でも、直属の上司の方・一部の同僚等には伝えておくようにしましょう。
直属の上司に妊娠の報告をしておかなければ、残業を免除してもらったり、業務の軽減や勤務時間の短縮といった融通をきかせてもらえません。母体とおなかの赤ちゃんの安全のために、職場への妊娠の報告は妊娠初期には行っておくことが大切です。
働く女性の母性をサポートしてくれる制度
妊娠している女性が安心して出産まで働けるように、さまざまな措置や決まりが設けられていることをご存知ですか?
妊娠初期のつわりで辛いとき、妊婦定期健診のために病院に行くときなど、働く妊婦さんのニーズや希望に対して、雇用主は一定の措置を取ることが義務付けられています。働く妊婦さんをサポートしてくれる決まりについて知っておきましょう。
妊婦定期健診のための時間を確保すること
妊婦定期健診やその他の検診のために病院に行くための時間をもらえるように、職場に要請することができます。妊娠23週目までは4週間に一回、病院に行くための時間を確保してもらえます。
母健連絡カードについて
母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)とは、医師による指導内容を職場に的確に伝えるための伝達カードで、必要な事項を医師に記入してもらいます。医師に必要な事柄を記入してもらったら、妊婦さんはこれを職場に提出します。
母健連絡カードにより職場に要請できるのは、たとえば休憩時間の延長や回数の増加、満員電車を避けるための時差通勤や勤務時間の短縮、負担の大きい作業の制限、長時間の立ち仕事や業務の場所を離れることのできない作業の制限など。妊婦さんの体の負担を軽くし、安全に働いてもらうために必要な措置を講じてくれるように、このカードで要請することができます。
切迫流産や流産などにより、自宅や病院での安静が指示されたときも、母健連絡カードで職場に休業を申し入れることが可能です。
妊娠初期のつわりの際にも同様で、症状が著しい場合には勤務時間の短縮も要請できますので、仕事を続ける予定の方は母健連絡カードの利用を考えてみましょう。
労働基準法による母性保護規定について
労働基準法においても働く女性の母性保護が定められています。深夜業務、時間外業務、休日業務など、所定の業務時間以外の勤務から除外するもらえるよう、職場に要請することができます。※参照1
超妊娠初期の仕事の仕方・気を付けること
妊娠超初期とはちょうど受精・着床が起こる時期に相当します。この時期はまだ病院で妊娠検査を受けられません。生理予定日を過ぎても高温期が続き、なんとなくだるさや熱っぽさを感じる場合は、妊娠している可能性がありますので、体の変化を注意深く観察しましょう。
妊娠超初期に仕事をすると流産してしまうのでは?と不安に感じる方もいるようですが、上述したように妊娠初期の流産のほとんどは胎児側に問題があると考えられます。
しかしだからといって無理をすることは進められません。妊娠の兆候が見られる場合には、念のため体に負担のかかることは控え、病院で妊娠検査を受けるまでの期間を安静に過ごしましょう。
妊娠初期の仕事の仕方・気を付けること
母健連絡カードの使い方や、労働基準法および男女雇用機会均等法による規定について見てきました。妊婦さんが安全に働けるように、さまざまな規定が法律で定められているとはいえ、職場の環境はそれぞれ異なりますので、妊婦さん自身がまず自分の体調をしっかり管理することが重要です。
母健管理カードを使ってお願いするほどではなくても、妊娠初期はつわりで体調が悪化しやすい時期ですので、体調を悪化させないよう、妊婦さん自身もいろいろな点に注意を払わなければなりません。今度は妊娠初期に仕事をする際の注意点について細かく詳しくみていきましょう。
通勤時に注意したいこと
妊娠初期はまだおなかが目立っていませんので、妊婦さんであることは周囲の人には分かりません。妊婦さんであることが明らかな場合は、電車やバスで席を譲ってもらえますが、妊娠初期にはこれは期待できません。
満員電車に乗るのは体に負担がかかるだけでなく、人ごみやにおいが気になり、吐き気がこみ上げてしまうことも。満員電車はなるべく避けるよう注意しましょう。
少し早く自宅を出る、職場までの経路を見直す、職場に時差通勤を申出るなど、通勤に伴うリスクをできるだけ軽減するよう努めましょう。ハイヒールなどの転倒しやすい靴はやめ、歩きやすく疲れにくい靴を選ぶようにすることも大切です。
体を冷やさない服装を心がける
とくにデスクワークの方は一日中エアコンのきいた職場で仕事をしていると、知らず知らずのうちに体を冷やしてしまいます。体を露出する服装はできるだけ避け、足元や腰周りを冷やさないように十分注意しましょう。
ちょっと寒いな、と感じたときにさっと羽織れるよう、薄手のカーディガンを用意しておくと便利です。またひざ掛けやストールなどもいざというときに役立ちます。
妊娠初期の体の冷えは、つわりの症状の悪化、足のむくみ、腰痛、おなかの張りを悪化させる原因になります。妊娠初期だからといって油断せず、体を冷やさないよう注意しましょう。
欠勤、遅刻はきちんと事前に連絡すること
妊娠初期に体の具合が悪く、欠勤や遅刻をする場合は必ず事前にきちんと連絡するようにしましょう。妊娠の報告を直属の上司には済ませていても、職場全体に知らせるのは安定期に入ってから、という方もいるでしょう。
妊娠によるやむを得ない欠勤や遅刻であっても、職場に一言の断りもないとひんしゅくを買ってしまいます。直属の上司の方にも迷惑をかけてしまいますので、職場への連絡は絶対に怠らないようにしましょう。
同じ姿勢を長時間続けないこと
立ち仕事にしろデスクワークにしろ、同じ姿勢を長時間取ることは体に負担をかけてしまいます。同じ姿勢を取ることはむくみの原因のひとつでもあります。
妊娠初期はプロゲステロンの分泌も盛んで、体が水分を溜め込みやすくなっています。同じ姿勢を取っていると、筋肉が強張ってしまい、血行不良が生じやすい状態に。職場でも簡単にできる足のストレッチや体操を行うと、足のむくみや筋肉の強張りを効果的に改善できます。
仕事は無理せず行うこと
どんなに楽な業務であっても、妊娠中に仕事を続けると体に多少の無理がかかってしまいます。妊娠初期の見た目は妊娠前とかわりませんが、体は急激な変化を遂げています。妊娠初期のつわりは妊婦さん自身ではコントロールすることができません。職場で体調が悪化した場合は無理せず休ませてもらうようにしましょう。
直属の上司の方はもちろん、一緒に働いている同僚の方の協力が得られるよう、職場での人間関係を良好に保つことが大切。定期健診などでお休みをもらう際には、自分が担当する業務をきちんと同僚に説明し、問題が生じないように手配しておくようにしまょう。
マタニティハラスメントを受けたら
妊娠や出産を理由に解雇を言い渡された、定期健診のためのお休みをもらえない、正社員だったのにパート扱いになった。このような待遇を受けることはマタニティハラスメントと呼ばれます。
妊娠初期に職場に妊娠の報告をしたら退職を促された。このような扱いを受けた場合には最寄の市町村の労働局に相談することができますので覚えておきましょう。※参照2
まとめ
妊娠超初期から妊娠初期の仕事の仕方について、知っておきたい情報ををご紹介しました。妊娠初期はつわりがあるため、仕事を続けられるかどうか悩んでしまう妊婦さんも多いようですが、現在では働く妊婦さんが安心して出産を迎えられるよう、さまざまな制度が用意されています。
妊娠初期も仕事を続けたい方は職場の上司の方とよく相談した上で、体になるべく負担のかからない働き方を目指しましょう。
※参照1 母性健康管理指導事項連絡カード書式
※参照2 厚生労働省 職場で辛い思いしてませんか?
※参照 厚生労働省 働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について
※参照 妊娠中の通勤や職場での過ごし方