健康で発育十分な赤ちゃんを産むためには、妊娠中の体調管理を万全にしておかなければなりません。しかしどんなに気をつけていても、妊娠中の時期は免疫力が低下しているため、ちょっとしたことで体力を消耗しやすい時期といえるでしょう。よほど気をつけていなければ、すぐに体調を崩したり、風邪を引きやすくなってしまいます。
妊婦さんにとっては、妊娠初期から出産予定日ぎりぎりまで気を抜けない毎日が続きますが、中でも安定期に入る前の妊娠初期は、とくに注意して過ごさなければならない重要な時期。
妊娠超初期、妊娠初期に風邪を引いたらどうすればよいのか?風邪薬は飲んでいいのか、それともいけないのか?妊娠中の風邪は胎児に影響するのか?など、妊娠初期の風邪対策について知っておきたい必須の情報をご紹介します。
妊娠の兆候?それとも風邪の症状?
妊娠超初期、妊娠初期に見られる妊娠の兆候と風邪の症状は非常によく似ています。頭痛、だるさ、熱っぽさ、ほてり、腰痛、吐き気など、両者に共通する症状はさまざまです。
妊娠の兆候なのか、それとも風邪の症状なのか、自分で見極められるよう、ある程度の知識を養っておくようにしましょう。
妊娠初期の兆候とは?
妊娠超初期、妊娠初期の風邪対策を考える上で重要なのは、妊娠の兆候と風邪の症状の違いをきちんと把握することです。まずは妊娠の兆候について、妊娠3~4週目以降に感じるものに関して詳しく見ていきましょう。
熱っぽく感じる
排卵日以降は基礎体温が高温期に移ります。排卵後受精・着床が行われなかった場合には、基礎体温は再び低温期に戻りますが、妊娠している場合には基礎体温は上がったまま。このため妊娠超初期でも、妊娠初期でも、体は普段よりも若干ほてり、熱っぽく感じられます。
眠さ・だるさを感じる
妊娠に伴うホルモン分泌の変化により、眠さやだるさを感じます。妊娠とともに分泌量が増える黄体ホルモン。黄体ホルモンのはたらきは女性の体をリラックスさせ、筋肉の緊張をほぐすことにより、子宮内膜の状態を整え、受精卵が着床しやすい環境を作ることです。
排卵日前は体が覚醒し、昼間眠気を覚えることはまずありませんが、生理前になると昼間でも猛烈な眠気に襲われることがあります。生理前はもちろんですが、妊娠すると黄体ホルモンの分泌はさらに活発になりますので、眠気やだるさを感じやすくなります。
頭痛や腰痛
黄体ホルモンには血管を拡張させるはたらきがあります。血管が拡張されることにより、その周りに炎症が起こり、その結果頭痛が起こるというのが、生理前や妊娠初期の頭痛の一般的なパターン。
他には妊娠初期で体調が悪いために、血流が悪くなり、逆に血管が収縮することにより頭痛が起こるというパターンもあります。どちらにしても血管の拡張・収縮のバランスが崩れることにより、頭痛や腰痛が起こるとされています。
吐き気やめまい
妊娠初期の吐き気はつわりの典型的な症状の一つ、吐き気が起こるのもやはりホルモンバランスの崩れのせいといわれています。つわりで思うように食事の取れない妊娠初期には、消化機能も低下しますので、ほとんどの妊婦さんは多かれ少なかれ吐き気や嘔吐といった症状に悩まされます。
妊娠初期の風邪の症状とは?
先ほども書いたように、妊娠初期の兆候と風邪の症状に非常に似通っていますが、異なる点ももちろんあります。妊娠の兆候は主にホルモンバランスの崩れにより起こりますが、風邪の症状は風邪のウイルスにより引き起こされるものです。
咳やのどの腫れや痛みは風邪
咳やのどの腫れや痛みなどは、風邪に特有の症状になりますので、咳やのどに痛みがある場合は、つわりではなく風邪を引いた可能性が高いといえるでしょう。
くしゃみや鼻水は風邪を引いた
くしゃみや鼻水といった症状もまた風邪に典型的な症状ですが、妊娠初期の鼻水やくしゃみは妊婦さんに特有の「妊娠性鼻炎」にかかっているのかもしれません。
妊娠する前から鼻炎の症状を抱えている人は、妊娠性鼻炎にかかりやすいといわれていますが、そうでない方でも、妊娠による自律神経のバランスの崩れやホルモン分泌量の急激な変化などから、鼻炎の症状を発症してしまうことがあります。
妊娠初期に風邪を引いた場合
妊娠超初期と呼ばれる生理予定日前や、生理予定日を少し過ぎたころに、風邪の症状があった場合は要注意。妊娠していることに気がついていないため、服用の注意書きを読まずに市販薬を服用することがないよう、十分注意しましょう。
妊娠をしている可能性がある方は、生理予定日前後に風邪に似た症状が起きたら、まずは妊娠していないかどうか様子を見ることが大切です。
妊娠初期に風邪薬は飲んでいいの?
市販の風邪薬の多くは、妊娠中の女性が服用しても差し支えないものもありますが、それでも服用の注意書きも読まずに不用意に服用するのは絶対に勧められません。
風邪の症状が辛く、風邪薬を服用したい場合は、必ず服用の但し書きを読んで、妊娠中の女性や胎児に対する影響がないかどうか、きちんと確認するようにしましょう。心配な場合は医師の指導のもと服用するようにしましょう。
漢方薬を飲む時の注意
天然成分で作られ副作用も少ないことから、薬の作用が赤ちゃんに影響しやすいこの時期、漢方薬に手が伸びる妊婦さんもいらっしゃるでしょう。しかし、妊娠中は避けたほうがよい漢方薬もありますので注意が必要です。
たとえば寒気がする・咳が出始めたという風邪の初期症状には葛根湯を飲む方も多いですが、実は妊婦さんにはあまり勧められない漢方薬と言われています。妊娠中に服用できる漢方薬がありますので、必ず薬剤師や漢方を処方してくれる病院などで相談してから購入してください。
胎児に対する薬の影響度
妊娠初期は胎児に対する薬の影響度がもっとも高い時期で、絶対過敏期と呼ばれています。妊娠初期は胎児の体の器官が形成されるもっとも重要な時期。妊娠初期の三ヶ月間の中でもっとも薬の影響度が高いのが、妊娠2ヶ月目、つまり妊娠4週目から妊娠7週目までになります。
この時期は自分の妊娠にまだ気がついていない方もいるはずですので、ごくわずかでも妊娠の可能性がある方は、薬の服用に関してはくれぐれも慎重に、まずは安静にして症状が悪化しないよう努めましょう。
妊娠初期に風邪を引いたら何科で診察してもらう?
すでに妊娠していることが分かっている場合、風邪の診察には何科に行くのがベストでしょうか。
妊婦さん以外ではあれば、風邪ならば当然内科ということになりますが、妊娠初期の妊婦さんの場合はいかなる症状であっても産婦人科にかかるほうがいい、という意見もあります。
産婦人科で診察してもらうメリット
かかりつけの産婦人科で診察してもらういちばんのメリットは、すでに妊娠の状態について医師が把握してくれていること。風邪の症状に応じて、妊娠中でも服用できる薬を処方してもらえます。
風邪を引いて産婦人科にかかる場合には、待合室に他の妊婦さんもいることをお忘れなく。マスクを着用し、風邪のウイルスを撒き散らさないよう注意しましょう。
風邪ではなく、インフルエンザにかかっている場合には、産婦人科を訪れる前に必ず電話連絡を行うようにしましょう。これは他の妊婦さんへの感染リスクを無くすために必要な心掛け。まずは電話で自分の症状を説明し、その後医師の指示に従うようにしましょう。
内科で診察してもらう場合
風邪の症状であれば、もちろん内科で診察してもらうことも可能です。内科で診察してもらう場合には必ず妊娠している旨を伝えなければなりません。
内科にはさまざまな症状を抱える方が訪れますので、風邪やつわりですでに体調が悪く、出来るだけ人ごみの中に出たくないようであれば、やはりかかりつけの産婦人科にまず相談するようにしたほうが安心です。
妊娠初期の風邪は胎児に影響を及ぼす?
妊娠初期に風邪を引いた場合、おなかの赤ちゃんに対する悪影響はあるのでしょうか。風邪のウイルス自体が胎児に直接影響を与えることはないとされています。
しかし妊娠初期は妊婦さんの免疫力が低下している時期ですので、しばらく様子を見ても風邪の症状が改善されない場合には、迷わず診察を受けるようにしましょう。
激しい咳や下痢が続く場合
激しく咳こんでしまうと下腹部に力が入り、流産のリスクが生じてしまうのではないか?と不安に思う方もいるようですが、妊娠初期の流産の原因はほとんどの場合胎児側にあるとされていますので、風邪を引いたからといって、流産のリスクが高まるということはありません。
ただし免疫力が低下している時期ですので、そのまま放置しておくと風邪の症状が悪化してしまい、体力を消耗してしまいますので気をつけましょう。風邪気味かな?と感じたら、休養・睡眠をたっぷり取り、症状の緩和に努めましょう。
妊娠初期の風邪予防
妊娠初期はホルモンバランス・自律神経のバランスがともに崩れるせいで、体調を崩す妊婦さんが多い時期。
いったん風邪を引いてしまうと辛い症状が続いてしまいがち。妊娠初期の不安定な時期を快適に乗り切るには、風邪の予防に努めることが大切です。風邪を予防するための方法について知っておくようにしましょう。
外出先から帰宅したら必ずうがい・手洗いをする
風邪のウイルスにかからないよう、外出先から帰宅したら必ずよく手を洗い、うがいをしましょう。着ていた服もきちんと着替えるようにします。
インフルエンザが流行する季節であれば、マスクも必需品になります。それ以外の季節であっても、油断は禁物。妊娠初期には妊娠性鼻炎にかかる方も大勢います。のどのうがいだけでなく、鼻うがいも行うようにしましょう。
睡眠・休養をたっぷり取る
妊娠初期はホルモン分泌が盛んになるため、普段よりも強い眠気に襲われることが多くなります。昼間眠くなり昼寝をしたせいで、夜なかなか寝付かれず結局寝不足になり、そのせいでまた昼寝してしまう、という悪循環に陥る方もいますので注意しましょう。
どうしても眠くなったら横になり休息して構いませんが、良質の睡眠を取るにはやはり夜間の睡眠の質を高めることが必要です。昼寝をする際には寝すぎないよう、時間を決めて横になるようにしてください。
夜なかなか眠れない場合の工夫も大切、就寝前は部屋を暗くする、寝る前に暖かい飲み物を飲む、心穏やかになる音楽を聴くなど、良質の睡眠をいざなう方法を考えましょう。
バランスの取れた食事メニューを心掛ける
妊娠初期はつわりがひどい時期で、食欲の減退や、嗜好の変化、吐き気などの症状があらわれ、食事内容が不規則になります。すでに述べたように免疫力も低下している上、食事内容も理想とはほど遠い状態にあると、ちょっとしたことから風邪を引いたり、炎症を起こしたりしやすくなります。
つわりの症状で辛い時期ではありますが、体調を少しでも良くするには滋養のある食べ物を摂ることが絶対に必要です。無理して食べる必要はありませんが、出来るだけ栄養のある食べ物をバランスよく食べるようにしましょう。
妊娠初期の風邪対策
予防に努めていたにもかかわらず、風邪を引いてしまったときの対策法についてもよく把握しておくようにしましょう。
風邪気味だな、と気がついたらまず安静にすること。2、3日様子を見て、症状が悪化するようであれば、出来るだけ早めに病院で診察を受けるようにしましょう。
室内の湿度に注意
室内の湿度に注意し、乾燥しすぎないように配慮してください。部屋が乾燥していると、ウイルスがどんどん繁殖してしまい、咳や鼻水などの症状が悪化する恐れがあります。
加湿器を利用して、室内の湿度を適当なものに保ちましょう。それと同時に定期的に窓の開け閉めを行い、部屋の空気の入れ換えを行いましょう。
体を温める食材を摂る
出来れば薬を飲まずに風邪を治したいと思う方も多いはず。生姜やはちみつなど、風邪の症状に効果があるとされている食材を積極的に利用し、風邪の諸症状の緩和に努めましょう。
体力を消耗させないようにする
高熱が出ている場合や疲労感が著しい場合、体力を消耗させないよう、早めに横になり休息を取るようにしましょう。発熱しているときに熱いお風呂に長時間浸かると、体力を激しく消耗してしまい、免疫力がさらに低下します。風邪気味かな?と思ったら、まずは免疫力アップに努めましょう。
まとめ
妊娠超初期・妊娠初期に風邪を引いた場合の情報をご紹介しました。妊娠初期に風邪を引いてしまったらどうすべきか?風邪の症状と妊娠の兆候の違い、風邪予防の方法や病院で診察してもらうタイミングなど、妊娠初期の風邪に関して知っておくことはたくさんあります。
いざというときに慌てずに済むよう、妊娠初期の風邪の対処法についてきちんとした知識を備えておくようにしましょう。妊娠初期はつわりの症状もあり、体力的にも精神的にも万全とはいい難い時期。免疫力が落ちているところに風邪を引いてしまうと、症状が長引いてしまいます。
妊娠初期の風邪対策の基本はまずは予防。妊娠超初期から妊娠初期の終わりまで、体調を整え、出来るだけ風邪を引かないよう努力しましょう。