妊娠中は、今までの生活とは違い、あらゆることに気をつけて過ごしていくことが必要になります。健康管理はもちろん、風邪などの流行病などにも注意することが大切です。
春~夏ごろになると気になるのが「手足口病」の流行です。妊婦の方は、手足口病が自分にうつらないか心配になったり、お腹の赤ちゃんに影響があるのではと不安になったりする方もいらっしゃるでしょう。そこで、妊婦が気をつけるべき手足口病について、さまざまな情報を詳しくご紹介します。
手足口病とは?
手足口病とは、ウイルスに感染することで発症する病気のことです。名前の通り、手足や口の中に水ぶくれ状の発疹が出るのが特徴です。また、発熱も伴います。
手足口病の原因となるウイルスには、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどさまざまな種類があるため、一度手足口病にかかったとしても、別のウイルスに感染したら再び発症してしまいます。そのため、同じ時期に二回、三回と繰り返し手足口病を発症してしまうこともあります。
上の子がいる場合には感染に注意が必要
手足口病のもうひとつの特徴として、子供を中心に感染が拡大するということがあります。手足口病にかかる患者の9割近くが、5歳以下の乳幼児となっているため、家庭内にこれくらいの年齢の子供がいる場合、手足口病に感染する可能性が高いと言えるでしょう。
大人が感染する確率は、少ないですが免疫力が低下している妊婦は、子供を通じて感染する可能性があるため、注意が必要です。
手足口病の感染ルートは?
手足口病は、子供を中心に感染が広まる病気です。では、どのような感染ルートにより広がってしまうのでしょうか。手足口病の感染ルートは、飛沫感染、接触感染、糞口感染がほとんどです。
飛沫感染
飛沫感染は、手足口病に感染した患者が、くしゃみをしたり咳をしたりすることで、ウイルスが混じった体液が拡散し、それが口に入ることで感染します。
接触感染
接触感染は、手足口病の患者に接触した手で口や目を触ったりすることで感染します。水ぶくれが起きている発疹部分を触ると感染率が高いので注意が必要です。また、タオルや食器などを共有することでも感染してしまいます。
糞口感染
糞口感染は、手足口病の患者の糞便を触った手で、口元を触ったり食べ物を触ったりすることで感染します。乳幼児のトイレのサポートをしている時に、手を充分に洗わないと感染しやすくなるので、注意が必要です。
手足口病の流行する季節は?
手足口病は、春ごろから出始め、夏ごろ(6月~9月)に流行します。夏場は暑く薄着になるため、手足口病の水ぶくれ部分に接触しやすくなります。
また、プールなどで大流行してしまうこともあります。保育園や幼稚園に預けている子供がいる場合、1人手足口病患者が出るとあっという間に感染拡大してしまうことがあるでしょう。
手足口病は夏以外にも注意を
手足口病は夏にかかるというイメージがありますが、夏よりは割合は少ないものの秋から冬にかけても発症することがあります。特に手足口病は何年かおきに大流行し、その場合はピークの時期が過ぎても発症する患者が多くなっています。
手足口病は夏だけ注意すれば良いと思いがちですが、秋は夏の疲れが出て普段でも病気にかかりやすい時期ですから、免疫力が落ちている妊婦さんは特に油断せずに過ごすようにしましょう。
また、病院などで手足口病の流行などの情報が入ることもあるので、そういった情報を常にチェックしておくのもおススメです。
手足口病の症状の現れ方は?
手足口病は、感染してすぐに水ぶくれ状の発疹が現れるわけではありません。手足口病のウイルスに感染すると、まず風邪のような症状が現れます。喉に痛みを感じたり、食欲が低下したり、微熱が出たり、40度近くの高熱が出たりするため、風邪と間違えてしまう方もたくさんいらっしゃるでしょう。
このような症状が3日~5日ほど続いた後、口の中、手のひら、足の裏や口などに、水ぶくれ状の発疹が出てくるようになります。発疹の大きさはお米より少し大きいくらいのサイズですが、痒みを伴います。痒いのをガマンできずに掻きむしり、水ぶくれを潰してしまうと、体液により二次感染してしまうので、できるだけ我慢するようにしましょう。
手足口病により引き起こされた水ぶくれ状の発疹は、1週間もすれば自然と消えていきます。
手足口病の感染期間は?
手足口病は、感染して3日~5日は風邪のような症状が現れ、その後1週間ほど水ぶくれの発疹が続きます。熱も治まり、発疹も消えれば手足口病が治ったと思いやすいですが、実は症状が消えてもまだ体内にウイルスが残されているため、感染してしまう可能性があります。特に、体内のウイルスは糞便に含まれやすいので、おむつを替える時には注意が必要です。
手足口病のウイルスが、感染者の身体の中から完全に消えるまでには、2週間~1ヶ月ほど時間がかかると言われています。そのため、最低でも1ヶ月は感染しないよう気をつけるようにしましょう。
妊婦が手足口病に感染したら?症状は
手足口病は、子供を中心に広がる病気で、大人がかかる可能性は非常に少ないです。しかし、妊婦は免疫力が下がっていますし、上の子が5歳以下の乳幼児の場合、感染する可能性が高くなります。
手足口病のお腹の赤ちゃんへの影響は?
そこで気になるのが、妊婦が手足口病に感染した場合の影響です。結論から言えば、手足口病がお腹の赤ちゃんに影響するという確証は得られていません。
しかし、妊婦の手足口病において稀に流産や死産、胎児水腫の報告はありますが、病院にて医師に相談し適切な治療しすれば問題ありません。
それよりも、手足口病に感染することで妊婦の日常生活に大きな支障が起きてしまいますので、感染はできるだけ防ぐことが必要になります。参考:手足口病の流行に関して 日本産婦人科医会
手足口病で大人(妊婦)は高熱になりやすい
妊婦をはじめ、大人が手足口病に感染すると高熱になることが多々あります。大人の約3割が手足口病により40度近い高熱を出しているので注意が必要です。
もし高熱になったとしても、妊婦は解熱剤など薬を服用することができませんし、手足口病には特効薬もないため、高熱になっても治まるのを待つしかありません。
妊娠中は、ただでさえ身体が思うように動かないことも多いですし、つわり症状などで苦しむ方も多いため、手足口病にかかることで心身ともにダメージを受けてしまうでしょう。
日々の生活やその他感染症が心配に
妊婦が手足口病にかかると、日常生活が思うように過ごせなくなる可能性があります。上の子の幼稚園の送り迎えや、簡単な家事もできなくなるため、家族のサポートが必要不可欠です。
しかし、家族が家にいることが少なく充分にサポートしてもらえない状況にいる場合、無理をして最低限のことをこなさなくてはなりません。お腹の赤ちゃんのことを考えれば、しっかりと栄養を摂らなければなりませんし、上の子がまだ小さい場合は1人では何もできないので、お世話もしなければなりません。
結果的に、手足口病の症状が長引いたり、免疫力が下がって風邪など別の病気に感染したりする可能性がでてきしまうので、地域のファミリーサポートなどを活用して、安静に過ごせるようにしておきましょう。
妊婦が手足口病の感染を防ぐために
手足口病に妊婦が感染しても、赤ちゃんに影響は出ませんが高熱になる可能性がありますし、薬を服用することができないため、予防することが大切です。そこで、手足口病の予防方法についてご説明しておきましょう。
マスクの着用で飛沫感染を防ぐ
手足口病の予防方法として、マスクを着用するようにしましょう。感染源となっている患者だけでなく、妊婦の方もマスクを着用することでより感染を防ぐことができます。マスクをつけていることで、くしゃみや咳などの飛沫感染を防ぐことができますし、無意識に口元を触ってしまう心配もなくなります。
タオルは別々に使用する
手足口病の予防方法として、タオルは別々に使用するようにしましょう。患者が使用したタオルを兼用することで、タオルについたウイルスに感染してしまう可能性があるからです。
タオルで拭いた時に、手のひらにある水ぶくれ状の発疹がつぶれてしまう可能性もあるため、トイレ、洗面所、バスルーム、台所などのタオルは、必ず別々にしておくようにしましょう。
食器やスプーンも別々に
手足口病の予防方法として、食器やスプーンも別々にするようにしましょう。手足口病にかかると口の中にも水ぶくれ状の発疹ができるため、食器やスプーンなどを共有することで簡単に感染してしまうからです。大皿料理で出す時は、必ず専用の箸やスプーンを使うようにし、コップなども使いまわししないように気をつけましょう。
また、ペットボトルを一緒に飲んだり、ポテトチップスなどのお菓子の袋を共有したりするのも感染しやすくなるので注意が必要です。
こまめに換気をするように
手足口病の予防方法として、こまめに換気するようにしましょう。手足口病は飛沫感染でうつるため、同じ部屋に長時間一緒にいることで感染しやすくなるからです。
こまめに窓を開けて空気を入れ替えることで、空気中に漂うウイルスを減らすことができるでしょう。
濃密な接触を避ける
手足口病の予防方法として、濃密な接触は避けるようにしましょう。ディープキスや、ハグなどは感染率をあげてしまうからです。
上の子が小さい場合、熱を出していると甘えて抱っこしてほしがると思いますが、そのような時は時間を決めて抱っこし、抱っこが終わった後は手洗いうがいをして顔も洗うようにしておきましょう。
こまめに手洗いうがいをする
手足口病の予防方法として、こまめに手洗いうがいをすることも大切です。特に、手足口病にかかった子供のおむつを処理したり、トイレをサポートしたりした後は、入念に石鹸で手を洗うようにしましょう。手足口病のウイルスは、感染してから1ヶ月近く体内に残るため、症状が治まっても糞便に混じって出てくるからです。
何かものを食べる時や、お化粧をする前には、手洗いうがいをしっかり行い、清潔な状態にしておくようにしましょう。
妊娠中は免疫力を高めるように
手足口病に感染しないためには、予防対策が必要不可欠です。また、その他の対策として免疫力を高めることもとても大切です。妊婦は通常の状態よりも免疫力が下がりやすいため、意識して免疫力を高めることが必要になります。
睡眠はしっかりととる
免疫力を高めるためには、睡眠をしっかりとることが大切です。睡眠不足になると、自律神経の働きが乱れ、体温を保てなくなったり、血流を滞らせたりして免疫力を低下させてしまうからです。
また、睡眠時間が短いことで身体の機能回復が不十分になり、疲れが残りやすくなってしまいます。身体の回復は、寝ている間に分泌される成長ホルモンにより行われているため、睡眠時間はしっかりとって身体を元気な状態に保てるようにしましょう。
食事をしっかりとり、栄養はバランスよく
免疫力を高めるためには、栄養をしっかり摂ることも大切です。食物繊維、ビタミン、ミネラル、炭水化物、タンパク質など、バランスよく食べることで身体の免疫力だけでなく赤ちゃんにも良質の栄養を送ることができます。
ただ、つわり時期は食べ物を受け付けないことも多いため、免疫力が下がりやすいので注意が必要です。食べられるものは食べ、サプリメントや野菜ジュースなどで栄養を補給するようにしましょう。
ストレスをためない 自律神経を乱れさせない
免疫力を高めるためには、ストレスをためないことも大切です。ストレスを感じると、自律神経の働きが乱れ、免疫力が下がってしまうからです。妊娠中は、些細なことでイライラしやすく、パートナーや周囲に攻撃的になる部分もありますが、ストレスを溜め続けると悪循環になりますので、適度に発散させるようにしましょう。
イライラする時は、その場を離れて外の空気を吸いに行ったり、好きなテレビや映画を観て過ごしたりするようにしましょう。また、家の中にばかりいることが増えるため、友達と約束して外出するのもオススメです。友達となかなか予定が合わない時は、落ち着くカフェでゆっくりお茶を飲むのも良いでしょう。
妊娠中は思うようにいかないことも多くなるため、いろんなことでストレスが溜まりやすいですが、ずっと続くわけではないので、一時的なものと受け入れるのがオススメです。
まとめ
妊婦と手足口病について詳しくご紹介しました。上の子が乳幼児の場合、幼稚園や保育園で手足口病に感染してくる可能性があるので、十分に対策を取って感染しないように気をつけましょう。
妊娠中は、免疫力が下がりやすいため、手足口病だけでなくさまざまな病気にかかりやすくなります。体調を崩してしまっても、妊娠前と同じように薬を服用することはできないので、できるだけ感染しない用心掛けるようにしましょう。
手洗いうがいなど予防対策をしっかり行い、免疫力をあげてさまざまなウイルスや細菌をブロックし、妊娠中も健やかに過ごせるようにしてください。