妊娠中の咳はトラブルのもと、流産や早産につながるという話があります。妊娠中に咳が出た場合、どのような対応を取ればいいのでしょうか。
たとえ流産や早産につながらないとしても、胎児への影響がないかどうか、不安な思いに駆られる妊婦さんも多いはずです。
妊娠中の咳の症状とは?咳止め薬は飲んでいいの?喉の痛みを伴う咳への対処法とは?喘息の症状を伴う場合は?など、妊娠中の咳に関する知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
妊娠中の咳は流産・早産につながるのか?
妊娠中の咳は流産や早産につながる、こんな話をよく耳にしますが、これは果たして本当でしょうか。
咳をするとおなかに大きな力が加わってしまい、これが原因で流産が起このでは?と考える方もいますが、妊娠初期の流産は、ほとんどの場合胎児側の先天的な問題により起こりますので、咳によって直接的に流産が起こることはまず考えられない、というのが通説です。
妊娠初期の流産はなぜ起きる
流産は大きく分けて早期流産と後期流産に大別できますが、このうち早期流産に関しては、胎児側に先天的な染色体異常などがある場合に起こるもので、時期としては妊娠3ヶ月目、すなわち12週目以前に起こるものを指します。
流産は妊娠全体の約1割から1割半程度の確立で起こるもので、とくに珍しいことではありません。胎児側に問題があるせいで起こる早期流産に関しては、これを予防する手段もなく、妊婦さんには責任はありません。咳に関しても同様で、咳をしたくらいで流産が起こるということはありえない、とされています。
後期流産の流産はなぜ起きる
早期流産に関しては、妊婦さんの側に問題があることはほとんどありませんが、妊娠12週目から22週目依然に起こる後期流産に関しては、妊婦さん側に問題があって起こる確率が増加します。
妊婦さん側の問題とは、たとえば子宮筋腫や子宮の形状に問題がある場合、黄体機能不全などにより妊娠が継続できなくなる場合、子宮頸管無力症など。また他にも激しい過労や精神的ストレスが引き金になる可能性も皆無ではありません。
安定期と流産
妊娠15週目以降は安定期と呼ばれていますが、これは胎盤の形成が完成することを意味しています。お母さんと赤ちゃんをつなぐ胎盤がしっかりと確立されることに加えて、この頃になるとつわりの症状もおさまってきます。妊婦さんの体調が安定してくることもあり、妊娠初期の不安定な状態からは解放される時期になりますが、流産がまったく起こらないわけではありません。
流産の起こる確率ですが、早期流産が全体の約8割、残りの2割が後期流産であるといわれていますので、安定期に入ったからといって油断せずに、体に負担をかけることは出来るだけ避けるようにしましょう。
妊娠中の咳の症状について
妊娠中に咳が出るといっても、その症状はさまざま。時折咳が出る程度であれば、さほど心配する必要はありませんが、夜間に咳が止まらず、十分な睡眠も取れないような状態になると、妊婦さんの体力を損ねる原因にもなりかねません。
咳が出始めたら、まずは原因が何かを特定することが大切。もっとも多いのは風邪による諸症状のひとつとしての咳。風邪による咳であれば、まずは安静にして、十分な休養を取ることがいちばんの対処法です。
風邪以外の症状とは?
風邪以外にも咳の原因となるものは考えられます。咳の症状がひどく、一度咳き込むとなかなか止まらない場合には、風邪ではなく、他の病気の可能性も考慮に入れるようにしましょう。
単なる風邪による咳かどうか、それとも他に原因があるのか、的確に見極めることが必要です。
風邪かどうかの判断とは?
風邪のように感染性・急性の咳であれば、しばらくすると咳の症状は静まってきますが、他に原因がある場合には、咳の症状はずっと続きます。このように咳の原因を特定するポイントのひとつは、どのくらいの期間咳が続いているかにあります。
咳が続いている期間が3週間以上続いている場合には、必ず病院で診察してもらうようにしましょう。もう一つのポイントは痰を伴うかどうか。このように咳の症状により、風邪かどうか、見極めることが可能です。
空咳が8週間以上続く場合はとくに注意が必要、綿密な検査と適切な治療を受けることが絶対に必要です。
咳の原因がアレルギー性鼻炎にある場合
咳とアレルギーとはあまり関係ないように思われますが、アレルギー性鼻炎にかかると、咳やくしゃみが出て止まらないことがあります。アレルギー体質の方や花粉症気味の方は、風邪ではなく、アレルギーによる咳が出ているのかもしれません。花粉以外にもハウスダストや冷気によるアレルギーもありえます。
妊娠前からアレルギー性の症状が出ていた方は、妊娠中はとくにアレルギーの症状が悪化しないよう、注意を払いましょう。
喘息やアトピー性による咳
喘息やアトピー性による咳の場合、乾性の咳が慢性的に8週間以上続きます。すでに喘息と診断されている方に関しては、妊娠前からきちんと対策を取っているかと思われますが、症状がまだ軽く自分で自覚していない方は、咳が長引いても単なる風邪と思い込んでしまうこともあります。
流産や早産の原因になることは考えられないもの、咳が出るのをそのままにしておくと体力を激しく消耗してしまい、その結果母体とおなかの赤ちゃんに負担をかけてしまうこともあるでしょう。喘息やアトピー症を持病に持つ方は、妊娠中は細心の注意を払い、持病を悪化させないように努力しましょう。
その他の原因
これ以外にも妊娠中に咳が出る原因はたくさんあります。気管支炎や副鼻腔炎、百日咳、肺炎など、いつもの風邪の症状とはちょっと違うと感じたら、まずはかかりつけの産婦人科で診察を受けるようにしたほうが安心です。
妊娠中に咳が出たときの対処法とは?
妊娠中に咳が止まらないときにぜひ行いたい対処法についてまとめてみました。咳がそれほどひどくない場合は、自宅で安静にしているだけで、ほとんどの場合数日で症状は改善されます。咳止めに効果的な対処法について学んでおきましょう!
部屋の中を加湿する
空気が乾燥すると、空気中に細菌やウイルスが繁殖しやすくなります。また喉の乾燥にもつながりますので、空気の乾燥自体が咳の出る原因ともいえるでしょう。
日中過ごす部屋はもちろんのこと、寝室の湿度にも注意し、部屋の湿度が乾燥しすぎないように十分注意しましょう。加湿器がある場合にはこれを利用すると便利ですが、ない場合には濡れたタオルなどをハンガーにかけて干しておくだけでも効果的です。
咳止め効果のある食べ物や飲み物
咳止めの効果のある食べ物や飲み物を毎日少しずつ摂るようにしましょう。喉によいといわれる食べ物の代表がはちみつやパイナップルなど。
生姜や大根、金柑などにも咳止め効果があるといわれていますので、毎日の食事メニューにこれらの食材をぜひ取り入れるようにしましょう。
首回りや肩回りを冷やさないようにする
風邪の引き始めに肩や首回りを冷やしてしまうと、喉の痛みや咳といった症状となってあらわれます。肩や首回りは出来るだけ冷やさないようにしましょう。
喉や扁桃腺が腫れやすい方はとくに注意し、エアコンの効いた室内や室温の低い場所では、マフラーやスカーフで首回りを覆うようにすると、喉を痛めません。
のど飴やキャンディなどの活用
喉に痛みや乾きを感じたら、のど飴やキャンディーを口にすると、喉の渇きを感じずにすみます。喉がからからに渇いてしまうと、普段よりも出やすくなります。人ごみの中に出かけるときや交通機関に乗るときなども、キャンディーや飴を用意しておくと便利です。
たっぷり体を休ませる
妊娠中は普段よりも免疫力が低下しがち。妊娠初期のつわりがひどい方は食事も喉に通らず、また睡眠のリズムも崩れることが多いため、妊婦さんの多くは妊娠を機に体調不調に陥ります。
免疫力・体力ともに落ちていると、風邪を引きやすくなります。つわりやホルモンバランスの乱れもあり、精神的なストレスも大きくなりますので、体調管理は厳重に行わないようにしなければ、体調はどんどん悪化してしまいます。つわりで辛いときには決して無理せず、ゆっくり体を休めるようにしましょう!
咳止めの薬は飲んで大丈夫?
咳がひどいので、咳止めの薬を飲みたいけれども、妊娠中に咳止め薬を飲むとおなかの赤ちゃんに影響があるのでは?このように、妊婦さんは薬の服用に際してはいやでも慎重にならざるを得ません。
妊娠中に咳止め薬を飲むと胎児に対して影響が及ぶのでしょうか。胎児に対する薬の影響がもっとも大きい妊娠初期には、どんな薬であれ、まずは産婦人科で医師に相談してからにしたほうが無難です。
市販の薬について
市販されている風邪薬などは、病院で処方されるものよりも、有効成分の含有量は少なめで、効き目も弱いものがほとんどですので、妊娠中期以降であれば、成分次第で問題ないといえます。しかしながら、妊娠中の女性がむやみに市販薬を服用するのはやはり望ましいことではありません。
服用前には必ず使用の説明書きをきちんと読んだ上で、妊娠中でも確実に服用できると判明した薬を飲むようにしましょう。又医師、薬剤師に相談の上服用するようにしましょう。
病院で処方してもらう
妊娠中の時期を問わず、妊婦さんが薬を飲む際には、まずはかかりつけの産婦人科に症状を説明し、その上で必要であれば診察を受けてから、その症状にもっとも適した薬を処方してもらうことが基本になります。
病院で診察を受けた上で医師から処方された薬に関しては、用法・用量を適切に守り服用するようにしましょう。薬による副作用やリスクが不安な方は、医師からよく説明を受けるようにすると、精神的な負担を軽減できるでしょう。
周りにうつさない配慮を忘れずに
病院にかかる時は、必ずマスクをしていきましょう。もちろん外の雑菌などを吸い込まないようにして咳の悪化を避けるという意味もありますが、自分の咳で誰かに感染させないようにする意味もあります。
特に産婦人科は自分と同じく免疫力の低下した妊婦さんが多くいらっしゃいますから、自分が感染源とならない配慮が非常に大事です。自分の咳があまりにも酷い時は、かかりつけの産婦人科であっても前もって電話で相談してみましょう。
症状によっては待合室でなく別室で待つなど、来院方法や受診方法を変えてくれますので、その指導に従ってください。
妊娠中に咳が出て困ることとは?
流産や早産には至らないとしても、妊娠中に咳をすると、おなかに余計な腹圧がかかり、おなかや腰にまで痛みを感じる方もいるようです。激しく咳き込むおなかに力が入ってしまいますので、おなかをかばおうとして、ついつい下半身や腰に余分な負担をかけてしまいます。
妊婦さんの尿漏れ
咳やくしゃみによる起こる不都合はおなかの痛みだけではありません。不意の咳やくしゃみにより、尿漏れが起きることもよくあります。
尿漏れ、というと高齢者の方をイメージしやすいのですが、実は妊婦さんもまた尿漏れを起こしやすいといわれています。
尿漏れの原因とは?
とくに妊娠中期以降の妊婦さんは、どんどん大きくなっていく子宮に膀胱を圧迫されるせいで、ちょっとしたことで尿漏れが起こりやすくなります。
くしゃみや咳をしただけで、尿漏れがするというのはよくある症状で、その原因は子宮による膀胱の圧迫の他に、分娩に向けて子宮口付近の筋肉が緩まり、そのため膀胱の筋肉も全体的に緩んでしまうことにあります。
妊娠前の状態であれば、くしゃみや咳による振動が起こっても、膀胱の筋肉が引き締まり、尿漏れが起きることはありませんが、妊娠後期になると膀胱の筋肉も次第に緩んでいますので、くしゃみや咳といった振動に耐えられず、尿漏れが起こります。
尿漏れ対策
妊娠後期になると、不意の尿漏れも決して珍しくなくなります。出産予定日が近づき、あまりにも頻繁に尿漏れが起きるようであれば、尿漏れナプキンの使用も考えてみましょう。
おりものシートや生理用ナプキンで対応できる量と回数であれば問題ありませんが、尿漏れの度合いによっては尿漏れナプキンを使用したほうが、安心です。
尿漏れ?それとも破水?
いよいよ出産予定日が近づいてきたら、いつ破水が起こってもおかしくありません。尿漏れだとばかり思っていたら、実は破水だった、ということがないよう、出産予定日が近づいたら、自分の体の様子にはことさら注意を払うようにしましょう。
破水の特徴について詳しく把握しておくことも重要です。おりもの、尿、そして羊水との違いにすぐに気がつけるように、それぞれの違いについてよく学んでおきましょう!
ここまでのまとめ
妊娠中に咳が出た場合の対処法などについて、ポイントごとに詳しくまとめてみました。妊娠中の咳は流産や早産につながる、という話をよく聞きますが、これは必ずしも本当ではありません。
ただし妊娠中の咳をそのまま放置しておくと、症状がどんどん悪化してしまい、激しく咳き込むことによりおなかや腰に痛みを感じたり、体力を消耗させてしまったりと、母体と胎児に対して間接的な悪影響を及ぼすことは間違いありません。
妊娠中に咳が出たときの対処法に加えて、風邪予防や咳予防に有効な方法についても知識を備えるようにしましょう。