妊娠すると生活習慣や食生活にさまざまな制限を受けるようになります。安産を目指すためにも妊娠中は体重管理が重要であり、また妊娠高血圧症候群やむくみを予防する上でもカロリーや塩分摂取に十分に注意する必要があります。
妊娠中はホルモン分泌の変化のせいで、食べ物の嗜好に変化が起こりやすくなります。ヘルシーで低カロリーな食べ物が欲しくなるのであれば問題はありませんが、ラーメンのように高カロリー・高塩分のものは食べる量や回数に注意しなければ、体重管理に失敗してしまいます。
妊婦はラーメンを食べてもいいの?悪いの?と悩んでいる方にに参考にしてもらいたいさまざまな情報をご紹介していきます。
妊娠中の食事はルールが多い
妊娠中は母体とおなかの赤ちゃんの健康のために、食べ物や飲み物に関する制限が多くなります。妊娠中に避けたほうがいい食べ物の代表は、生ものやビタミンAを過剰に含む食べ物、水銀を多量に含む食べ物など。他にも、禁止ではないけれど摂取量や食べ方にとくに配慮すべきものもあります。
また妊娠中は食べてはいけない・飲んではいけないものに焦点が当てられがちで、妊婦の中にはおなかの赤ちゃんへの悪影響を心配するあまり、食べても差し支えない食材まで自己判断で避ける方もいます。
妊娠中はカロリーや塩分に注意しなければなりませんが、必要な栄養素まで不足するのは問題です。妊娠中の食事について疑問なことや不安なことがあれば自己判断せず、医師や助産師、栄養士や保健師に積極的に質問し、解決するようにしましょう。
妊娠中の食べ物の嗜好の変化
妊娠中は大多数の妊婦に、味覚の変化が起こるといわれています。妊娠前はあまり好きでなかったものが急に毎日食べたくなったり、反対に好きだったものが嫌いになるなど、食べ物の好みが変わります。
妊娠初期のつわりの時期には酸っぱいものが食べたくなりますが、酸っぱいものだけでなく、ラーメンのように塩分の多いものや焼肉のようにカロリーの高いもの、そしてケーキのように甘いものが無性に食べたくなるという妊婦もいます。
また反対に塩分や甘味が食べられなくなる妊婦もいますので、食べ物の嗜好の変化はまさに百人百様。一人一人の妊婦によって異なります。
妊娠中の食べ物の嗜好の変化の原因とは?
妊娠中の食べ物の嗜好の変化の原因ですが、これは妊娠を機に起こるホルモン分泌の変化になんらかの関わりがあるのでは?と考えられています。つわり同様、いまだにはっきりと原因やメカニズムが解明されていません。
妊婦はラーメンを食べてもいいの?悪いの?
妊娠中にラーメンを食べることに関しては、医師からはっきりと禁止されている場合を除き、妊婦が食べても差し支えありません。
ただし食べ方やカロリーには要注意。ラーメン一食分に含まれる塩分の量は多く、食べたいからといって毎日食べていると塩分摂りすぎになってしまいます。またラーメンはカロリーも高く、間食や夜食に食べているとカロリーの摂りすぎになります。妊娠中にラーメンを食べる際のポイントは、塩分やカロリーに十分注意すること。
まずは妊娠中の理想的なカロリー摂取量や塩分摂取量、そしてラーメン一杯に含まれる塩分やカロリーについて押さえておきましょう。
妊娠中の理想摂取カロリーについて
妊娠中の摂取カロリーについて、厚生労働省の指針を参考に挙げていきましょう。妊娠中の理想摂取量は妊娠初期(妊娠13週まで)、中期(14週から27週まで)、後期(28週以降)の三つの区分に分けて考えます。
非妊娠時よりどの程度カロリー摂取を増やすかですが、まず妊娠初期は非妊娠時よりも50kcal増、中期は250kcal、そして後期が450kcalになります。
カロリー増加分の目安
妊娠中は妊娠前よりも少し多めに摂取して構いませんが、妊娠初期の増加分はわずか50kcal.白米一膳のカロリーは約140kcalですので、50kcalというとご飯約3分の1程度になります。
妊娠中期の増加目安は250kcal。妊娠初期のつわりが終わった頃には自然に食欲も沸き、 つい食べ過ぎてしまう妊婦も多くなります。250kcal分は余計に食べられると思っても、一日三食の中で考えるとそれほど余計に食べられるわけではありません。
妊娠後期にしても同様で、体重増加を適切に範囲に抑えるためには、毎食の食事メニューのカロリーをできる範囲で把握することが大切です。※参考1
妊娠中の塩分摂取量について
厚生労働省が発表している食塩摂取量の基準によると、18歳以上の男性は一日8グラム、同じく18歳以上の女性は一日7グラムが目標として挙げられています。日本人の一日の食塩摂取量は平均11グラム、これは世界保健機関(WHO)の指針である一日5グラムの倍以上、一般的に日本人は塩分を摂りすぎといわれる理由はここにあります。
世界保健機関(WHO)の指針を守ることはなかなか困難ですが、厚生労働省の基準である一日7グラムに沿うよう努力することが求められています。
妊娠中の塩分摂取量ですが、上記の厚生労働省の基準によると、妊娠中の食塩摂取量に増減はありません。よって妊娠中の食塩摂取量も、この数値を理想の摂取量と定めます。
妊娠中の塩分の摂りすぎによる影響とは?
妊娠している・していないに関わらず、塩分の摂りすぎは健康によくありませんが、妊娠中の塩分の摂りすぎは、妊娠高血圧症候群や浮腫につながるおそれがあります。
極端に塩分を減らすことは望ましくありませんが、摂り過ぎもまたいろいろなリスクを増大させます。妊娠前から高血圧気味の方や肥満体型の方はとくに注意するようにしましょう。※参考2
ラーメンのカロリーや塩分について
ラーメンに含まれる塩分やカロリーは、ラーメンの種類によって異なります。妊婦がラーメンを食べる際には、どんなラーメンを食べるかが重要。ラーメンのカロリーおよび塩分について知っておくべき情報をまとめてみました。
ラーメンの塩分について
ラーメンに含まれる塩分ですが、まずはご自分が普段から食べているラーメンの栄養成分量を見てしっかり確認するようにしましょう。
即席ラーメンのパッケージに書かれている栄養成分量は、麺、かやく、スープに分けて書かれています。含まれている塩分量を確認し、塩分量が多ければスープを残すようにすれば、塩分摂取量を簡単に減らすことができます。
ラーメンのタイプ別塩分量
ラーメンには塩味、醤油味、味噌味、豚骨味など、いろいろなタイプがあります。このうちもっとも塩分が高いのは塩味タイプのような気がしますが、製品によっては塩味よりも醤油味のほうが塩分量が多いこともあります。
また生タイプや具やかやく付き・無し、ベースやエキス、一杯分の量、麺のタイプなどによっても、含まれる塩分量は異なります。袋ものの即席ラーメンなら麺とスープであわせて2グラム程度のものから、具入りのカップ麺なら8、9グラムを超えるものまでさまざま。
一食2グラムの即席ラーメンでも具を入れて食べる場合は、塩分量はさらに多くなります。この場合でもスープを残すようにすれば、塩分摂取量はずっと少なくなります。
塩分量をあらかじめ確認することが大切
ラーメンの塩分量は食べる方の心がけ次第。含まれる塩分量を気にせずに食べていると、一日の摂取量をラーメン一食ですべて摂りきってしまうことになります。妊婦がラーメンを食べる際には、調理する前にまず麺とスープの塩分量をしっかり確認することが重要です。
外食でラーメンを食べる際にも栄養成分表であらかじめ塩分量を確認するようにしましょう。袋ものの即席ラーメンに比べると、外食でのラーメンは一食分の量も多く、具材も豊富に入っているため、塩分量は多く、カロリーも高めですので注意が必要です。
最近では大手のレストランやラーメン専門店では、ほとんどのお店がメニューの栄養成分表やアレルギー成分の表示を行っています。ラーメンに限らず、行きつけのお店のお気に入りメニューについては、カロリーや塩分について確認を怠らないようにしましょう。
ラーメンのカロリーについて
ラーメンに含まれる塩分の量に関する注意点を挙げてみましたが、今度はラーメンのカロリーについて見ていきしょう。塩分同様、ラーメンのカロリーは麺やスープの種類、具材、一食分の量などにより違ってきます。
ちなみの袋ものの即席ラーメン一食分のカロリーは、400kcal弱から500kcal強。外食でのラーメンはこれよりもカロリーが高く、低いものでも650kcal前後から高いものでは1300kcalを軽く超えてしまうものまでさまざま。具の種類によってもカロリーは異なりますので、お気に入りメニューやよく食べるラーメンがあれば、まずはカロリーを確かめることが大切です。
妊婦の一日のカロリー摂取基準について
妊娠中にどの程度摂取カロリーを増やすかについては、妊娠初期・中期・後期に分けてすでに挙げたとおりですが、増加分を考える前にまずは基本的なカロリー摂取量を知っておかなければなりません。
成人の摂取カロリーの目安は、身体活動レベルとの兼ね合いで導きだされます。活動レベルは通常三つに分けられ、摂取カロリーもそれに応じて違ってきます。
厚生労働省の推定エネルギー必要量によると、18歳から29歳の女性が一日に必要とするカロリーは、活動レベルのもっとも低いグループで1650 kcal、次に中間のグループが1950 kcal、もっとも活動レベルの高いグループは2200kcalになります。
活動レベルの低いグループとは、一日のうち座っている時間がほとんどの方、活動レベルがふつうとは、散歩や軽い運動を行う習慣のある方、活動レベルが高いとは、立ち仕事や移動を多く行う方や運動を活発に行う習慣のある方を指します。
ラーメンのカロリーと一日の摂取量
このように一日に必要なカロリーは、一人一人の妊婦の生活習慣や活動レベルによって異なってきます。たとえば子供のいない専業主婦の方で、ほとんど運動する習慣のない方の場合、一日の必要な摂取量は1650kcal。妊娠初期のカロリー増加分の目安は 50kcalですので、合計1700kcalになります。
外食のラーメンで一食分が1000kcalのものを食べると、これだけで一日の摂取量の約三分の二を消費したことに。ラーメンを一食分に当てるのであれば、他の二食のカロリーを調節することで範囲内におさめることができます。
しかしラーメンを間食やおやつに食べる方は要注意。間食やおやつ分のカロリーもきちんと計算に入れなければ、カロリー摂取量が大幅に超過してしまいます。
カップラーメンは大丈夫なの?
カップラーメンは普通のラーメンよりも添加物が多い、昔は容器に問題があるなど指摘され、手軽だけど赤ちゃんのことを考えると食べられないと悩む妊婦もいるかもしれません。ただ、メーカーでは容器を紙製などヘと変更したり、添加物を抑えるなど様々な製品改良を行っています。
妊娠中でも極端に食べ過ぎなければカップラーメンを楽しむことが出来ます。
ただ1点気を付けたいのがナトリウムの成分表示です。ナトリウムと書いてあった場合、食塩相当量はその数字に2.5を掛けた量となり、表示値とは異なります。書いてあるナトリウム量が少ないからと安易に選ぶのはやめた方が良いでしょう。※参照 日本高血圧学会 さあ、減塩!
妊婦がラーメンを食べるときの注意点とは?
ラーメンに含まれる塩分やカロリーについて見てきましたが、これからも分かるように、ラーメンに含まれる塩分の量は多く、妊娠中に食べる場合、食べ方や回数に十分注意しなければなりません。
カロリーや塩分に気をつけなければ、塩分・カロリー過多に陥ってしまいます。妊婦がラーメンを食べる際のポイントについて見ていきましょう。
1日の塩分量に注意
ラーメン一食で一日の塩分摂取量のすべてを消費することがないよう、十分注意してください。まずは食べるラーメンを選ぶ際に、できるだけ塩分の少ないものを選ぶことがポイント。またスープの塩分量を取り除くと、塩分量は半分以下になることもあります。
どうしてもスープも飲みたい場合には、他の二食の塩分量を控えるようにしましょう。味噌汁は塩分が多いメニューですので、ラーメンを食べる日はお味噌汁を食べないようにするなどの工夫が必要です。
栄養バランスに注意する
ラーメンの栄養成分は、入れる具材を工夫することで上手にバランスを取ることができます。野菜や海藻類などのトッピングをたっぷり入れることで、一食分の栄養バランスが偏らず、カロリーも抑えることができます。
お肉類を具に入れる場合には、カロリーが高めになりますので、他の食事内容を工夫して、一日の摂取量を目安の範囲内におさめるようにしましょう。ラーメンを一食として食べる際には、具材だけでなく、サラダを付け合せる、ヘルシーなドリンクをつけるなど、全体の栄養バランスに配慮してください。
食べる回数に注意
塩分やカロリーに十分配慮しているからといって、毎日のようにラーメンを食べていると、栄養が偏ってしまいます。ラーメンを食べる回数にも注意し、食べすぎないようにすることが大切です。
また間食やおやつとして食べる際には、小さめの器に盛り、量を少なくすると食べすぎを防ぐことができます。
まとめ
妊婦がラーメンを食べるときに知っておきたいさまざまな情報ををご紹介しました。妊婦がラーメンを食べるのは差し支えありませんが、塩分やカロリーを摂りすぎないよう十分に注意する必要があります。
塩分やカロリーを控えめにするには、まず一日にどの程度のカロリーや塩分を摂取していいか、きちんと把握しておく必要があります。その上で普段よく食べるラーメンのカロリーおよび塩分(麺・スープ)を調べ、塩分・カロリーの過剰摂取にならないように工夫することが求められます。
※参考1 厚生労働省 妊婦・授乳婦
※参考2 厚生労働省 日本人の食事摂取基準
※参考 公益社団法人日本WHO協会 塩分摂取の新ガイドライン
※参考 日本産婦人科学会 妊娠高血圧症候群Q&A