妊娠中の尿漏れについて知っておきたいこと

妊婦の尿漏れで知っておきたいこと 妊娠初期 中期 後期 臨月 原因 対処方法 など 妊娠中

妊婦の多くが経験する尿漏れ。妊娠前にはまったくそんなことはなかったのに、妊娠初期・中期・後期・臨月・産後の妊娠時期に応じて、尿漏れが起こる原因は何でしょうか。妊婦さんが尿漏れしやすい原因は、大きくなった子宮が膀胱を圧迫することにあります。そのため、尿漏れのほとんどは子宮が大きくなる妊娠中期から始まります。

尿漏れの主原因は大きくなった子宮の重み、妊娠中の尿漏れはある意味避けられないことですので、これに対する情報を心得ておくことが重要です。

妊婦さんが尿漏れしやすい原因や対処方法や尿漏れはまた妊娠中だけでなく、出産後も起こることがあります。妊娠中や産後の尿漏れについて知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。

妊婦さんの尿漏れの原因について

妊婦さんの尿漏れの原因について

妊娠中の尿漏れは、おなかの赤ちゃんの成長に応じて大きくなる子宮の重みによって生じます。子宮はちょうど膀胱の上に位置していますので、子宮が大きくなるにつれて、その重みがそのまま膀胱にかかり、そのせいで尿漏れが起こりやすくなります。

妊娠中の尿漏れは一過性のもので、出産が終わると尿漏れをすることはなくなりますが、妊娠・出産を機に骨盤底筋が弱まってしまうと、出産後も尿漏れが続いてしまいます。尿漏れの対処法を考える前に、まず尿漏れが起こる仕組みについて把握しておきましょう。

尿漏れの起こる仕組みとは?

尿漏れの起こる仕組みとは?

女性の場合、尿漏れの主原因は骨盤底のゆるみにあります。骨盤底とは膀胱、子宮、尿道、膣などを支えているもので、内骨盤筋膜、骨盤隔膜、会陰の三層から成ります。内骨盤筋膜とは子宮や膀胱を上方向から吊るように支えている筋組織、骨盤隔膜とはこれらの内臓を下から支える筋肉、会陰とは肛門や膣の先端部分の表層を指します。

膀胱はちょうど子宮と恥骨の間にはさまった状態になっていますので、子宮が大きく、重くなってくると、そのせいで膀胱は圧迫されるようになります。そもそも膀胱というのは、尿を溜めておく器官ですので、くしゃみや咳などの軽い刺激に対しては、骨盤底の筋肉がはたらくことにより、尿が漏れ出すことはありません。

また骨盤底の筋肉がしっかりと機能している場合、内臓が下に下がってきませんので、膀胱や尿道が圧迫されることはありません。しかし骨盤底筋が弱まると、筋肉が内臓を支えきれずに下に下がってきますので、咳やしゃっくりなどのちょっとした刺激により、尿漏れが起きてしまいます。

妊娠初期の尿漏れ

妊娠初期の尿漏れ

妊娠初期とは妊娠0週から妊娠15週目までを指します。この時期は子宮はまだそれほど大きくなっていませんので、膀胱にかかる子宮の重みはそれほどありません。

ちなみに妊娠4ヶ月(妊娠12週~15週)の胎児の大きさは身長16cmほど、子宮の大きさはレモン程度になっています。

妊娠初期の尿漏れの原因は骨盤のゆるみ?

妊娠初期の尿漏れの原因は骨盤のゆるみ?

排卵・妊娠を機に分泌の増える黄体ホルモン。黄体ホルモンには妊娠を継続させていく機能がありますが、同時に骨盤底筋をゆるめるはたらきもあります。

子宮の大きさはまださほど大きくなっていないとはいえ、妊娠前と比較すると、大きさも重さもかなり増えていますので、その変化に骨盤底筋がうまく対応できないこともあります。

二度目の妊娠のほうが尿漏れが起こりやすい?

二度目の妊娠のほうが尿漏れが起こりやすい?

初産婦さんよりも経産婦さんのほうが尿漏れが起きやすいといわれています。これは最初の妊娠・分娩でゆるんだ骨盤底筋が再度の妊娠でゆるみやすくなるから。二度目以降の妊娠の場合は、妊娠初期の段階から尿漏れが起きやすいといわれています。

尿漏れ防止には骨盤のストレッチなどが有効ですが、妊娠初期はまだ体調が不安定な時期ですので、体操やストレッチを行う際には慎重に、決して無理をしないようにしましょう。

妊娠中期の尿漏れ

妊娠中期の尿漏れ

妊娠中期とは妊娠16週目から妊娠27週目までの期間で、一般的には安定期と呼ばれています。安定期と呼ばれるのは、おなかの赤ちゃんとママを結ぶ胎盤がしっかりと確立されるようになるから。また妊娠初期には激しかったつわりも次第におさまってきますので、妊婦さんの体調は妊娠初期に比べるとずっと良くなってきます。

妊娠中期の子宮の大きさ

妊娠中期の後半にもなると、子宮の大きさは約23cmから26cm程度まで大きくなり、赤ちゃんの体重は1000g、身長は約35cmに達することもあります。おなかが重くなってきて膀胱への圧迫感はさらに強まっています。

妊娠中期の尿漏れ対策

妊娠中期の尿漏れ対策

妊娠初期には尿漏れの症状のなかった方も、妊娠中期になりおなかが大きくなるにつれて、尿漏れの頻度が増える傾向にあります。妊娠中の尿漏れを予防することはまず無理なので、漏れる尿の量が多い場合には、尿漏れ専用パッドの利用も考えてみましょう。

尿漏れの量や回数が少ない場合には、おりものシートや生理用ナプキンで事足りるかもしれませんが、もともとおりものシートや生理用ナプキンは、尿を受け止めるようには作られていませんので、むれてしまい、かゆみやかぶれが生じるおそれがあります。

尿漏れによるかぶれやかゆみを防ぐために必要なこと

尿漏れによるかぶれやかゆみを防ぐために必要なこと

尿漏れやおりものにより、すでにデリケートゾーンにかぶれやかゆみがある方は、おりものシートや使い捨ての生理用ナプキンの使用は避けるようにしましょう。これに加えて尿漏れの頻度や量が多い場合には、専用パッドを利用したほうが安心です。仕事をしている方や外出する場合にも、尿漏れパッドが便利です。

尿漏れパッド以外には布ナプキンの使用もお勧めです。尿漏れやおりものによるかぶれやかゆみがある場合には、肌に優しい天然コットンで出来た布ナプキンを利用すると、かぶれやかゆみの改善が見込まれます。

どんなパッドを利用するともっとも快適かについては、それぞれの妊婦さんの状態により違ってきますので、自分に最も合ったものを利用するようにしましょう。

妊娠後期の尿漏れ

妊娠後期の尿漏れ

妊娠後期とは妊娠29週から40週目(妊娠8ヶ月から10ヶ月)までを指します。妊娠9ヶ月目になると赤ちゃんの身長は45cm、体重は2500g程度に成長します。赤ちゃんの成長につれて当然子宮も大きくなります。

この頃の子宮の大きさは30cm~32cm程度、これまでにも増して大きくなっていますので、妊娠中期までに尿漏れを感じなかった方でも、この頃になるとほとんどの方が尿漏れを感じるようになります。

尿漏れの程度や頻度はさまざまで、ほぼ毎日複数回尿漏れがあるという妊婦さんもいれば、週に2、3回程度という方もいるようです。

妊娠後期の尿漏れで注意したいこと

妊娠後期の尿漏れで注意したいこと

妊娠後期はもっとも子宮が大きくなっている時期。尿漏れの頻度ももっとも増える時期なので、尿漏れパッドは必需品になってきます。

妊娠後期の尿漏れの原因はもちろん子宮が膀胱を圧迫するせいですが、稀にカンジダ菌などによる膣炎やその他の感染症にかかっているために、尿漏れやおりものの異常が生じることがあります。

尿漏れに加えて、デリケートゾーンのかゆみや腫れ、痛みや不正出血がある場合には、必ず産婦人科で診察を受けるようにしましょう。

臨月の尿漏れ

臨月の尿漏れ

臨月の尿漏れでもっとも注意したいのが、尿漏れと破水の違いを見極めることです。出産予定日はあくまでも目安。臨月に入ったらいつ破水が起こってもおかしくないと考え、破水や陣痛に関する知識も備えておくようにしましょう。

臨月とは妊娠36週から39週目までを指します。出産予定日まであとわずか、尿漏れへの対処法だけでなく、出産準備を万端に整えておきましょう。

臨月の子宮の大きさ

臨月の子宮の大きさは33cmから35cm程度、赤ちゃんの身長は50cm、体重は3000gを越える場合もあります。

出産予定日が近づいてくるにつれて、おなかの位置はだんだんと下に下がってくるようになります。膀胱への圧迫はますます大きくなりますので、妊婦さんのほとんどが頻尿や残尿感を感じるといわれています。

尿漏れと破水の違いとは?

尿漏れと破水の違いとは?

尿漏れだとばかり思っていたら、実は破水が始まっていた。臨月になると、こんな経験をする妊婦さんも珍しくありません。

破水の際に出てくる羊水の特徴を把握しておかなければ、いざというときに尿漏れなのか、破水なのか判断できずに、適切な対応を取るのが遅れてしまいます。

破水の特徴

破水の特徴

羊水はおりものや生理の経血とは違い、さらさらとしています。色は基本的には無色透明ですが、やや黄色や白色がかっている場合もあります。匂いはやや生臭いことが多いようですが、甘酸っぱい匂いがすることもあれば、妊婦さんによってはほとんど匂いを感じないこともあるようです。

流れ出る量ですが、一気にどっと出る場合もあれば、少量ずつだらだらと流れ出ることもあります。これは卵膜のどの部分が破れたかによって違ってきますので、少しずつ出ているからといって破水ではないと言い切ることは出来ません。

尿漏れと破水の見分け方のポイントとは?

尿漏れと破水の見分け方のポイントとは?

尿漏れと破水の見分け方のポイントについて覚えておくと便利です。見分け方のポイントになるのは、色・匂い・量と思いがちですが、この三つだけでははっきりと断定できないことがあります。

尿漏れの場合、基本的に色は黄色から薄黄色、匂いに関しては尿独特のアンモニア臭、量に関してはそのときどきによって違ってきます。羊水の色は基本的には無色透明ですが、たまに白や黄色がかっていることもありますので、色だけでは判断できません。

匂いに関してですが、羊水独特の生臭い匂いが感じられる場合には見極めやすいのですが、流れる量が少ないとほとんど匂いを感じないこともあります。量に関しても同様で、これだけでは見極められないことが多いようです。

尿漏れと破水を見極める際のポイントは、自分の意思で止められるかどうかにあります。尿漏れの場合は止めようと思えば止められるのに対して、破水の場合、いったん卵膜が破れて破水が始まると、これを止めることは出来ません。

破水が始まったらすぐに病院に向かう

破水が始まったらすぐに病院に向かう

破水が始まったら早急に病院に向かう必要があります。シャワーや入浴をすることは厳禁。そのままにしておくと感染症のリスクがありますので、即刻病院に連絡し、その上で医師の指示に従うようにしましょう。

破水かどうか、自分で確信が持てない場合には自己判断で対応せずに、必ず病院に連絡するようにしましょう。

出産後の尿漏れ

出産後の尿漏れ

妊婦さんの中には、妊娠中ではなく出産後に尿漏れを感じる方もいます。妊娠中および出産後に尿漏れを感じた方のうち、約3割の方は出産後に尿漏れが起きるともいわれています。

妊娠中の尿漏れの原因は大きくなった子宮に膀胱が圧迫されるためですが、出産後に起きる尿漏れの原因はこれとは異なります。

出産後の尿漏れの原因とは?

出産後の尿漏れの原因とは?

妊娠中には尿漏れの症状がなかったのに、出産後になってから始めて尿漏れの症状に悩まされる女性もいます。これは分娩が難産だった方によく見られる症状で、分娩の際に骨盤底の筋肉や靭帯が無理に引き伸ばされてしまうことにより起こります。

膀胱や尿道の機能にも問題が生じることがあり、尿道の締りが悪くなることもあります。膀胱や尿道の神経組織がダメージを受けると、膀胱に尿が溜まっているにも関わらず、それを知覚することが出来なくなり、そのために尿漏れが起きることもあります。

出産後の尿漏れを防ぐためには

出産後の尿漏れを防ぐためには

出産後すくなくとも2、3ヶ月は重い荷物をもたないようにしましょう。分娩でダメージを受けた骨盤底は時間の経過とともに自然に回復していきますが、この時期にこの部分に不必要な力を入れてしまうと、自然治癒の妨げになります。

骨盤を締め付けるガードルは分娩後1ヵ月間ほどはつけないようにしましょう。腹筋運動などおなかまわりに負担のかかる運動も控えるようにしてください。

骨盤底の機能の回復には、骨盤底の引き締めを行う体操が効果的ですので、妊娠中から尿漏れの症状のあった方や、分娩に時間がかかり難産だった方は、出産後体力が回復したころを見計らい、骨盤底のトレーニングを行うようにしましょう。

ここまでのまとめ

妊婦の尿漏れについて知っておきたいポイントをご紹介しました。妊娠中の尿漏れは決して珍しいことではなく、妊婦さん全体の約7割が経験するといわれています。

妊娠中の尿漏れの原因は大きくなる子宮。赤ちゃんの成長につれて大きくなった子宮が膀胱を圧迫することにより、尿漏れが起きる一過性のものです。

これに対して出産後に起きる尿漏れは、妊娠・出産により骨盤底がゆるんでしまい、尿道の締りが悪くなることにあります。妊娠・出産のせいで、骨盤底の筋力が弱まるのはいわば不可抗力。尿漏れ対策をしっかり取り、かぶれ・かゆみやデリケートゾーンの炎症といった症状を起こさないよう、十分注意しましょう。

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