妊娠すると食べ物や飲み物にいろいろな制限がでます。妊娠前は食べても差し障りがないものでも、妊婦が食べると、おなかの赤ちゃんに悪影響を与える食べ物もありますので、妊婦は食べるものに細心の注意を払わなければなりません。
たとえば魚介類の中には水銀を多く含むものもあり、妊娠中にこれらの魚介類を食べる際には注意が必要です。妊娠中にイカを食べていいの?悪いの?など、魚介類のひとつイカについて、妊婦が食べるときに知っておきたい情報を幅広くご紹介します。
妊婦はイカを食べていいの?悪いの?
妊娠中には食べ物にいろいろな制約が出ますが、イカを食べること自体は問題ありません。ただし食べ方には注意する必要があります。
妊娠初期から臨月まで妊娠中の全期間をとおして、生ものを食べるときは注意が必要です。イカをお刺身やお鮨で生で食べるときは鮮度などの注意が必要です。
またもうひとつ注意したいのは、生のイカを使った加工食品。イカの塩辛は、生のイカの肝を食塩で漬けた発酵食品ですので、妊娠中はできれば避けたほうが安心です。
このように生や生もの加工品に関しては十分注意する必要がありますが、しっかりと加熱調理したイカを食べることには、いろいろなメリットがあります。
【噂 言い伝え】妊娠中はイカやタコを食べないほうがいいの?
昔から伝わる言い伝えとして、妊婦はイカやタコを食べないほうがいい、という話があります。これは単なる言い伝えで、医学的な根拠はありません。
イカやタコを食べないほうがいい、といわれる原因についてははっきり分かりませんが、イカやタコのぐにゃぐにゃとした姿かたちに赤ちゃんが似ないように、との気持ちが込められているようです。
他にもイカ=するめ、固い=消化がよくない、という連想から、妊婦にはふさわしくない、と考えられていたようです。
妊娠中のジンクスや言い伝えは、イカやタコだけに留まらず、地域によって、さまざまな食べ物がNG・OKがあります。食べ物によっては食べる量や食べ方に注意すべきものもありますが、絶対に禁止という食べ物は少ないので、気になる方は医師や助産師、保健師に相談することをおすすめします。
妊婦がイカを食べるときに気をつけたいこと
下記に記しましたが、イカに含まれる栄養素は妊婦の健康維持にも役に立つものばかり。その上カロリーも低く、妊婦におすすめの食材です。ただし食べ方や食べる量には注意が必要。妊婦がイカを食べるときに注意しなければならないポイントを挙げてみましょう。
生で食べることは控える
妊娠中は食中毒のリスクを避けるために、生ものを口にしないように注意しなければなりません。妊婦は妊娠前に比べると免疫力が少し落ちていますので、食中毒に感染しやすくなっています。
お刺身やお鮨が好きな妊婦にとって、妊娠期間中生ものを我慢することは大変ですが、大事なおなかの赤ちゃんと自分の安全のため。妊娠中はできる限り生ものを避けたほうが安心です。
イカの腸炎ビブリオ食中毒
魚、イカ、貝、うになどの魚介類には腸炎ビブリオという菌が付着していることがあります。腸炎ビブリオは海水や海底に生息している菌が、魚介類に付着し、これを生のまま食べることで発症します。
腸炎ビブリオについて
腸炎ビブリオは加熱調理に弱いため、しっかり火をとおして加熱調理することにより、食中毒を予防することができます。また真水の中では生息できないため、イカを調理する前にまずは水道水でしっかり水洗いし、その上で加熱調理すると安心です。
腸炎ビブリオは非常に早いスピードで増殖することが特徴。夏場の気温が高い時期にはとくに注意が必要です。腸炎ビブリオの症状は激しい腹痛、下痢、嘔吐、発熱、吐き気など。感染の原因となるのは、魚介類のお刺身やおすしがほとんどですが、生の魚介類を調理するときに使った調理器具や手指に菌が付着し、それに触れた食材が原因となることもあります。生のイカを調理する際には、この点にも十分に注意しなければなりません。
アニサキスにも注意
アニサキスとは寄生虫の一種で、白く細い糸のような形状をしています。アニサキスの幼虫はサバ、アジ、秋刀魚、カツオ、イワシ、イカなどの魚介類に寄生します。アニサキスによる食中毒は、アニサキスの幼虫が付着した魚介類を生、あるいは加熱が不十分な状態で食べたことにより生じます。アニサキス食中毒の症状はみぞおちや下腹部の激しい痛みや嘔吐になります。
アニサキスの幼虫はまず内臓に寄生することから、生の内臓を食べることは絶対に禁止。イカを食べる際にアニサキスが付着していないかどうか、ていねいに目視で確認することが必要です。アニサキスは冷凍、あるいは加熱することで死滅しますが、妊婦の場合は生で食べることは避け、加熱調理(70℃以上、60℃の場合は一分以上)をした上でいただきましょう。
イカを調理する際の注意点
イカなどの魚介類を調理する際には、二次感染を防ぐため、他の食品と触れないように注意します。調理を始める前には、必ず両手をきれいに洗い、生のイカを扱ったあとは、他の食品に触れる前に再度手をしっかり洗っておきます。
生のイカを洗ったり、切ったりしたときに使用したまな板や包丁は必ずそのつど水道水で十分に洗います。イカを切ったまな板の上で他の食材を扱わないように注意しましょう。購入時にイカがはいっていた容器やビニール袋にも注意し、他の食材や調理器具に触れないように、不要になった時点で処分します。
冷蔵庫での保管にも注意すること
冷蔵庫や冷凍庫に入れてあるから大丈夫、と冷蔵庫を過信するのも問題です。イカを購入したらできるだけ早く自宅に戻り、すぐ調理しない場合はそのまま冷蔵庫あるいは冷凍庫に保管しましょう。保管したイカはなるべく早く調理するよう心がけます。※参照2
食べる量や回数に注意
イカはカロリーが低く、少々食べすぎても問題ないような気がしますが、やはり食べすぎは禁物。同じ食材ばかり繰り返し食べるよりも、いろいろな種類の食材を満遍なく、バランスよく摂ることが理想です。また量に関しても注意が必要で、水銀を多く含む魚介類は食べる量を配慮する必要があります。
魚介類に含まれる水銀について
水銀を多く含むのは深海魚や大型魚で、妊婦が食べる量と回数を制限する必要があるとされるのは、キンメダイ、メカジキ、本マグロ、マッコウクジラなどになります。水銀を多く含む魚類を大量に摂取すると、おなかの胎児に悪影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。
ちなみにイカに関しては、含まれる水銀量がごくわずかなため、量や回数に注意する必要はないとされていますので、妊婦がイカを食べることに制約はありません。しかしながら妊娠中に食べるのはイカ一種類ではありません。イカに加えて他の魚も食べているはずですので、この点も考え合わせた上で、節度ある量を間隔をあけながら食べるようにしましょう。
イカの栄養と効能とは?
イカは日本人が昔から好んで食べてきた海の幸で、カロリーは低いにもかかわらず、体に良いいろいろな栄養素が含まれています。イカに含まれる栄養素やその効能について、ひとつずつ挙げていきましょう。
タウリン
タウリンとはアミノ酸の一種で、イカのほか、タコ、貝類、甲殻類、魚類に多く含まれています。タウリンにはいろいろな効能があり、妊婦の健康維持にも重要な役割を果たします。
タウリンは肝臓の機能を強化するため、アルコール障害にも効果的です。また他にも血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす健康効果が備わっています。血圧を正常に保つはたらきもあり、糖尿病予防にも効果的です。※参照1
タンパク質
イカに含まれるタンパク質は必須アミノ酸を多く含む良質なもの。タンパク質には基礎代謝をあげ、筋肉量を維持するはたらきがあります。タンパク質の量は多いにもかかわらず、カロリーは低いことも、イカのメリットのひとつです。体重増加をコントロールしなければならない妊婦におすすめです。
ビタミン類
ちょっと意外ですが、イカにはビタミン類も豊富に含まれています。ビタミンDを除き、主要なビタミンを多く含むイカは妊婦におすすめの食材。ビタミン類の中でもとくに多く含まれているのが、ナイアシンやビタミンEになります。
ナイアシンのはたらき
ナイアシンはビタミンB群のひとつで、三大栄養素を体内でエネルギーに変換する際に使われる酵素をサポートするはたらきがあります。ナイアシンが不足すると、食欲の減退や倦怠感を感じます。また皮膚や粘膜を正常に保つはたらきがありますので、女性にとっては必須の栄養素です。
ビタミンEのはたらき
若返りのビタミンとも呼ばれるビタミンE。若返り、といわれるのは強い抗酸化作用があるため。細胞の酸化を防ぐはたらきがあり、生活習慣病の予防にも効果的とされています。
免疫力を高め、血管の拡張を促す作用もありますので、血流が良くなる効果もあります。冷えやむくみで血行不良になりがちな方が摂ると、血行促進効果も期待できます。
まとめ
妊婦がイカを食べるときに知っておくべきポイントをご紹介しました。イカは妊婦にうれしい栄養成分を豊富に含む食材ですが、生で食べることはNG。胃腸のはたらきが弱まっている妊婦は、魚介類にしろ、肉や卵にしろ、生ものを食べることはおすすめできません。
生で食べるのは控えるべきですが、しっかり加熱調理しさえすればイカを食べても大丈夫。カロリーが低く、良質のタンパク質を含むイカは、妊婦のマタニティライフをサポートしてくれる頼もしい食材。イカを毎日の食事メニューに取り入れ、栄養バランスの取れた食事をぜひ心がけましょう。
※参照1 農林水産省 タウリンとはどのような栄養素ですか
※参照1 農林水産省 これからママになる方のための食中毒予防
※参照 厚生労働省妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて
※参照 愛知県衛生研究所魚介類中の水銀濃度から魚の食べ方を考える