辛かった妊娠初期のつわりを乗り越えたら、いよいよ安定期です。妊娠も五ヵ月目に入ると体調はまず安定してくることから、妊娠安定期と呼ばれています。妊娠初期にしたくても出来なかった軽い運動なども安定期に入ったら出来るようになります。
妊娠初期に比べると流産などのリスクはかなり減りますが、安定期に流産がまったく起こらないわけではありません。妊娠初期とは反対に、この時期に起こる流産の原因はおもに妊婦さんの側にあるともされています。
安定期に入ったからといって油断せず、体調管理を万全にし、自分と赤ちゃんの両方に悪影響の及ばないよう、十分に注意する必要があります。
ここでは妊娠安定期の過ごし方のポイントややっていいこと悪いことなど知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
安定期とは
妊娠安定期とは妊娠16週から28週までの期間、つまり妊娠中期と呼ばれる時期を指します。安定期に入るまでは安静にするように、といわれてきた妊婦さんは、安定期に入るのを心待ちにしているものです。
安定期と呼ばれるのは、この時期になるとお母さんの体と赤ちゃんをつなぐ胎盤がしっかりと形成されるようになり、流産のリスクが減少するため。妊娠初期の不安定な状態はとりあえずおさまり、ほとんどの妊婦さんにとっては一息付ける時期の到来といえます。
妊娠安定期 母体と赤ちゃんつながる
妊娠安定期とはすなわち、母体と赤ちゃんをつなぐ胎盤がしっかりと確立される時期を意味します。これにより赤ちゃんの成長に欠かせない栄養と酸素が、お母さんの体からしっかり供給されることになります。胎盤がしっかりと定着しなければ、赤ちゃんの正常な発達は期待できません。
胎盤の役割は酸素と栄養の供給だけに尽きません。胎盤はおなかの赤ちゃんを望ましくない細菌やウイルスから保護する役割も兼ねています。このように胎盤はお母さんと赤ちゃんをつなぐ大切な命綱、この胎盤がしっかりとお母さんと赤ちゃんを結ぶことにより、胎児の健常な成長が保障されることになります。
安定期はいつから いつまで
妊娠安定期は通常妊娠16週から28週までの時期を指します。これは妊娠中期に相当する時期ですが、この時期の特徴として挙げられるのは、食欲が増加することや赤ちゃんの胎動を感じるようになることです。
体にはしだいに皮下脂肪がついてきて、全体的に丸みを帯びた体型に変化していきます。また乳房も初期に比べると大きくなり、おなかのふくらみも目立つようになります。
安定期は性別がわかる時期
安定期の妊娠5ヶ月~6ヶ月に性別がわかるようになり、胎動を感じ、性別がわかるとやっと実感がわいてくる妊婦さんも多いです。洋服選びや、産後の生活イメージもつきやすいで時期でもあります。
安定期は胎動を感じる時期に
お腹の赤ちゃんは妊娠8週目ごろから子宮内を動き回っていますが、手足が子宮内壁に触れるくらい大きくなる今の時期に胎動となって現れます。
早い方では妊娠5ヶ月ごろには分かるようですが、妊娠7ヶ月にはいれば胎動が分からない妊婦さんはいなくなります。仕事をしていたり、毎日あれこれ動いていると胎動に気づきにくいので、そんな時は一度横になってお腹の動きに集中する時間を持つようにしましょう。
胎動が分かるようになれば、母親になる実感が更に増すことでしょう。しばらくすると胎動リズムが一定になりますが、その時期を目安に赤ちゃんとキックゲームなどでコミュニケーションをとってみてはいかがでしょう。
安定期の流産、早産
22週以前の胎児で死亡してしまった場合は流産になり、22週以降は早産となり、その後生存できない状態を死産となります。
ですから、できるだけ長くお腹の中で過ごすことがよいですが、何かトラブルがあり出産した場合でもNICU(新生児集中治療室)で生存の可能性があります。
しかし安定期の後半22週~28週で早産で生まれた場合は、何かしら後遺症が残る可能性があります。
安定期に入るまでの過ごし方
妊娠安定期に入るまではなるべく控えるように、といわれていることはたくさんあります。たとえば旅行や運動、不必要な外出や遠出などは、妊娠初期には出来るだけ控えたほうがいいとされています。
流産のリスクのもっとも高い妊娠初期には、不用意におなかに力を入れるような仕事も禁物です。妊娠初期に起こる流産の原因は、そのほとんどが胎児側に問題があるといわれていますが、それでも妊娠初期はほんのちょっとしたことでトラブルが起きやすい時期。妊娠安定期に入るまでは、何事も慎重に行うようにしましょう。
安定期に注意したいポイント
妊娠初期の辛かったときに比べると、体調も気分も格段に楽になっているので、つい油断をしてしまう妊婦さんも多いようです。 しかし安定期に入ったといっても、やはりそれなりに注意すべきポイントはたくさんあります。
油断で無理をしない
妊娠初期に比べると流産などのリスクは大幅に減りますが、初期とは異なり、この時期の流産の原因は胎児ではなく、妊婦さんの側に問題がある場合が多いことを心得ておきましょう。
長時間立ちっぱなしで作業を行う、アルコールやタバコを過剰に摂取する、ストレスや疲れを溜めてしまうなどの行為は、妊娠中を通じて出来るだけ控えるべきといえるでしょう。ここではとくに妊娠安定期に注意したいポイントをまとめてみました。
食べ過ぎに注意
初期のつわりから解放され、気分も良くなるので自然と食欲の沸いてくる時期です。つわりで食べ物が喉を通らず体重が減少していた方もいるかと思われますが、安定期に入ったからといって、好きなものを好きなだけ食べていると、体重の増加に歯止めがきかなくなります。
中期の体重の増加は一ヶ月に1キロ程度が目安になります。くれぐれも食べ過ぎることのないよう、注意しましょう。
体を締め付ける服は控える
妊娠初期に比べると全体的に体調も回復し、快調な毎日を送ることのできる時期ではありますが、妊娠前と同じような行動を取るのは問題があります。
おなかのふくらみはまだそれほど目立たないため、おしゃれも存分に楽しみたいと考えるのは間違ってはいませんが、たとえばハイヒールを履く、おなかをぎゅっと締め付けるような服装は控えるようにしましょう。
妊娠しているという意識を持つ
おなかは妊娠後期ほど大きくせり出しているわけではありませんが、妊娠前と同じような考えでいると、誤って転倒したり、歩行中におもわずバランスを崩したりします。妊娠中であることを常に意識した行動を取るようにしましょう。
アルコールやたばこの摂取は胎児に悪影響を及ぼすという報告が多数なされています。妊娠中は出来るだけアルコールとたばこを控えるようにしましょう。
風邪やインフルエンザにかからないように
妊婦さんがインフルエンザにかかると、おなかの胎児への影響も心配されます。妊娠中は出来るだけ風邪やインフルエンザにかからないよう注意しましょう。外出先から帰宅したら必ずうがいと手洗いをする習慣をつけましょう。
妊娠中は免疫力が低下しているので、普段よりも感染症にかかりやすい時期といえます。風邪やインフルエンザにかからないよう気をつけるだけでなく、睡眠不足や不規則な食事時間など、日常生活全般の行動に注意を払う必要があります。
妊娠安定期の旅行
安定期に入るとそろそろ赤ちゃんの胎動も感じられるようになります。はじめて感じる赤ちゃんの胎動に感動する妊婦さんも多いこの時期、初期と違い安定期は気分も体調も安定していることが多く、この時期にしか出来ないこともたくさんあります。
妊娠後期に入ると再び行動に制約がかかることもありますので、安定期にしか出来ない小旅行に出かけたいと思うのは当然ですが、安易な考えで体に負担のかかることを行うのはやはり厳禁です。
妊娠安定期の旅行は可能?
安定期に旅行をする妊婦さんが年々増加しているといわれています。妊娠初期は旅行を控えていたので、安定期に入り体調も落ち着いたら、国内旅行にでも出かけたい!と望まれる妊婦さんも多いようです。
妊娠期間中は出来るだけ安静にしているのが基本ですが、最近では安定期に入っての旅行は体に差し障りのない範囲であれば、妊婦さんの気持ちをリフレッシュさせる効果もあり、行っても構わないとの意見も多く聞かれるようになりました。
旅行する場合の注意事項
旅行が必ずしもいけないというわけではありませんが、出かける際には体調に十分に気をつけ、絶対に無理をしないようにしましょう。出来れば事前に医師や助産婦さんに相談するようにし、アドバイスを求めると安心です。
出かけるなら出来るだけ近場にし、体力を消耗しないよう、あちこち歩き回らなければならない場所は避けましょう。気分の落ち着く場所で、ゆっくり休養できるような旅行先が理想的です。
妊娠週が進むにつれておなかも大きくなってきますので、旅行に出かけるのであればあまりおなかが大きくならないうちにしましょう。くれぐれも無理はしないよう、人ごみは避け、のんびりゆっくり出来るところを選ぶようにしてください。
海外旅行は避ける
二泊三日程度で行ける海外なら大丈夫、と思う方もいるようですが、海外の国や地域では日本の健康保険は適用されません。何事もなく帰国できれば問題ないのですが、なんらかのトラブルが発生し、病院で診察を受ける必要が出た場合のことを考えると、出来るだけ控えたほうがよさそうです。
医療水準の高い国や地域であれば、高度且つ適切な治療を受けることは出来ますが、医療費に関しては高額にのぽることがあります。救急車での搬送一つをとっても、すべて患者の自己負担という国も多いのが現実です。海外旅行任意保険に加入していても、妊娠や出産にかかわる治療や処置は免責になりますので、旅行先を海外にしたい場合には、これらの点について十分留意するようにしましょう。
安産祈願 戌の日とは
犬は多産でお産も軽いということにあやかって、妊娠5ヶ月に入って最初の戌の日に、妊婦さんは神社で安産祈願を行う風習があります。
正式には戌の日に前もって神社で祈祷がすんでいる腹帯をつける「帯祝い」なのですが、現在は家庭によって様々で、妊婦さんの体調に合わせて行うケースが多いです。お母さんが命がけで出産していた昔とは異なり、医療技術が発展している現在ですから神頼みはしなくても大丈夫と考えている方も多いかもしれません。
しかし、神社で祈祷してもらったり腹帯をつけることで、赤ちゃんがお腹の中にいるという自覚をもう一度確認することができる良い区切りという考えもありますので、戌の日についてご両親に意見を聞いてみて計画を立てるのも良いかもしれません。
妊娠安定期の運動
妊娠初期は出来るだけ安静に、体を激しく動かすような運動は控えていたかと思われます。とくに以前にも流産を経験した方や切迫流産に見舞われた方は、妊娠が発覚してから絶対安静を言い渡されていたにちがいありません。
妊娠安定期に入り、体調がある程度安定したら、体に負担のかからない範囲で簡単な運動や体操を行うことが出来ます。妊娠初期に医師から安静を言い渡されていた方は、運動に関してはまず医師と相談するようにしましょう。
また妊婦さんの体の状態には個人差があります。ほとんどの妊婦さんにとっては、安定期は比較的楽に過ごせる時期だといえますが、人によっては安定期に入っても気分や体調が優れないこともあります。
運動を行う前には必ずかかりつけの医師に相談し、やってもいいことと悪いことを確認してから行うようにしましょう。
妊婦体操やストレッチ
息が切れるような激しい運動は行うべきではありませんが、妊婦体操やストレッチなど、妊婦さんにも出来るように考案されたエクササイズであれば、安定期の運動としては最適です。
運動を行う際には決して無理をしないよう、おなかに力を入れないようにしましょう。少しでもおなかに張りや痛みを感じた場合にはすぐさま運動をやめ、休むようにします。
ヨガで呼吸法を学ぶ
体を激しく動かす必要がないので、ヨガもまたこの時期の妊婦さんにお勧めの運動です。ヨガの呼吸法を覚えることには運動効果だけでなく、分娩の際に役立つ呼吸法も学べるというメリットがあります。
マタニティヨガは体を健康に保つだけでなく、良い気分転換にもなり、妊娠生活を送る上でのストレスの解消にもつながります。自宅で一人で行っても構いませんが、仲間がいたほうがより楽しいようであれば、マタニティヨガ教室に通うのもいいでしょう。同じ妊婦さん同士で、役に立つ情報や知識を得るチャンスにもなり、妊娠や出産、育児に関する悩みごとを相談できる場所にもなります。
散歩やウォーキング
長時間歩きまわるのは避けたほうが無難ですが、気分転換も兼ねて、買い物ついでに近所を散歩したり、景色のよい場所での散策などを楽しみましょう。
妊娠生活も中盤に入ってきたこの時期、妊娠前とは違い、いろいろな点で制約があり、ストレスを溜めてしまうことがあります。体型が変化してくることへの戸惑いや行動に自由のきかないイライラを募らせていると、気持ちはどんどん塞いでしまいます。
毎日少しの時間でも構いませんので、戸外に出て日光に当たるようにしましょう。日光に当たることにはさまざまな健康効果があります。一日中屋内に閉じこもり、日光に当たらない生活を続けているとうつ病にかかりやすいといわれています。日光に当たることにより、自律神経のバランスが整えられ、ストレスが緩和されます。
安定期でも妊娠中と同じ
安定期に入ったとしても妊娠中であることは変わりはありません。妊娠期間中を通して避けるべきことは当然安定期に入っても守らなければなりません。
体を冷やすこと、激しい運動、アルコールやたばこの摂取、不規則な食事や睡眠不足、重いものを持つこと、長時間の立ち仕事などは、妊娠期間中を通して出来るだけ行わないようにすることが重要です。
まとめ
妊娠安定期の過ごし方のポイントやお勧めの運動などの情報をご紹介しました。妊娠初期や後期に比べると、体調が比較的安定しているため、妊婦さんにとってはもっとも過ごしやすい時期といえるでしょう。
安定期に入るまでは我慢、と控えてきた旅行なども、体に差し障りのない範囲であり、且つ医師からの許可があれば出かけることも可能になります。旅行は無理でも、景色のよいスポットを散策するだけで気分も晴れてくるでしょう。安定期の快適な過ごし方のポイントを知り、後期に入るまでのマタニティライフを存分に楽しみましょう。