妊娠後期~臨月の息苦しいときに知っておきたいこと

妊娠後期~臨月の息苦しいときに知っておきたいこと 妊娠月別症状

妊娠中にあらわれる典型的な症状のひとつが、息苦しさ。息苦しさは妊娠期間中を通じて起こりますが、とくに妊娠後期に入るとその傾向が顕著にあらわれます。妊娠中期まではそれほど息苦しさを感じなかった方でも、妊娠後期に入ると息苦しさを感じることが多くなり、立っているのも辛く感じられることも。息苦しさに加えて、動悸、めまい、立ちくらみの症状も頻繁にあらわれ、妊婦を悩ませます。

妊娠後期から臨月にかけて、息苦しさを頻繁に感じるのはなぜでしょうか?息苦しさを少しでも解消する方法はあるのでしょうか?妊娠後期~臨月に息苦しさを感じるときに知っておきたい情報を幅広くご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

妊娠中に息苦しさを感じる原因とは?

妊娠中に息苦しさを感じる原因とは?

妊娠後期や臨月だけでなく、初期・中期からも息苦しさを感じやすい状態にあります。息苦しさだけでなく、動悸、めまい、立ちくらみなどの症状も多く見られます。

妊娠中に息苦しさを感じる原因は、循環血液量の増加による貧血、妊娠に伴うホルモン分泌の影響、大きくなった子宮に横隔膜を圧迫されることなどにあると考えられます。

妊娠後期になると息苦しさがひどくなるの?

妊娠初期や中期でも息苦しさや動悸といった症状がでる妊婦もいますが、妊娠後期になると、息苦しさを感じる妊婦の数はさらに増大し、その度合いも強まります。

妊娠後期の息苦しさに拍車をかけるのは、大きくなった子宮による圧迫。貧血や自律神経のバランスの乱れといった原因に加えて、大きくなった子宮が横隔膜を上に押し上げるため、息苦しさがひどくなります。出産予定日が近くなり、赤ちゃんが下に下りてくるまで、この状態が続きます。

妊娠後期~臨月の息苦しさの症状

妊娠後期~臨月の息苦しさの症状

妊娠後期の息苦しさですが、その度合いや感じ方は妊婦ひとりひとり異なります。窒息しそうな感じ、うまく呼吸ができない、酸素が足りない感じ、はあはあと浅い息しかできない、立っていても、座っていても苦しいなど、息苦しさの症状はいろいろあります。

座って休息していても苦しく、立ったり、座ったりを繰り返すことで、さらに息苦しさが増します。妊娠初期・中期の息苦しさは、横になり休息を取るだけである程度おさまりますが、妊娠後期の場合は横になっても息苦しさがおさまりません。その理由は大きくなったおなかにあります。横になってもおなかが大きくせり出しているせいで、息苦しさは一向に緩和されず、夜も寝付かれず辛い毎日が続きます。

妊娠後期の息苦しさはいつまで続くの?

妊娠後期の息苦しさはいつまで続くの?

妊娠後期の息苦しさが一段落するのは、臨月に入りおなかが下に下がったとき。出産が近づくとおなかの赤ちゃんは徐々に下に下がっていきます。

赤ちゃんが下りてくると、それまで胃や横隔膜を押し上げていた圧迫感がなくなり、息苦しさが弱まり楽になります。それとともに子宮に圧迫されていた胃も楽になり、胃酸の逆流やげっぷなどの症状も緩和されます。

おなかの赤ちゃんが下がってくる時期について

赤ちゃんの位置が下がってくる時期には個人差があります。臨月に入った途端に少しずつゆっくり下がってくることもあれば、出産予定日の数日前に急に下がることも。

経産婦の場合、産道が柔らかくなりやすいため、おなかの赤ちゃんが下に下がり始めてから、実際に分娩が始まるまでの時間が、初産婦よりも短い傾向があります。したがって経産婦の場合、おなかが下がってくるのは出産予定日が近づいた頃が多く、初産婦の場合は時間をかけてゆっくりと下がってくる傾向がみられます。

妊娠後期~臨月の息苦しさの原因について

妊娠後期~臨月の息苦しさの原因について

妊娠後期~臨月の息苦しさの原因について、ひとつずつ詳しくみていきましょう。息苦しさを少しでも緩和するためには、まずどうして息苦しく感じるのか、その原因について理解しておく必要があります。

循環血液量の増加による影響

循環血液量の増加による影響

妊娠中はおなかの赤ちゃんに栄養を届けるため、妊婦の体の循環血液量が増加します。循環血液量の増加は妊娠初期から始まり、妊娠32週から34週目頃にピークを迎えます。ピーク時の循環血液量は妊娠前の約40%まで増加し、分娩が終了するまでそのままの値を維持します。

妊娠貧血とは?

妊婦は貧血になりやすい状態にあります。循環血液量が増加するのであれば、貧血にはならないような気がしますが、どうして妊娠中は貧血になりやすいのでしょうか?

これは増加する血しょうと赤血球の割合に原因があります。妊娠中に増加する血液のうち、血しょうの割合は約半分程度なのに対し、赤血球の増加分は約30%程度。血液の量は増加するにもかかわらず、赤血球や血色素の数が少ない、血液がいわば薄まった状態になります。

妊娠貧血の原因について

妊娠貧血は鉄分や葉酸の摂取不足により引き起こされます。女性はもともと貧血になりやすい上、妊娠中はおなかの赤ちゃんにも鉄分が供給されるため、妊娠前よりもたくさんの鉄分を摂取する必要があります。

食事からの鉄分や葉酸の摂取が不足すると、息苦しさ、めまい、立ちくらみなどの症状が生じます。妊娠貧血は、循環血液量が急激に増加する妊娠中期にもっとも多くみられますが、妊婦の食事の内容や食習慣などによっては、時期にかかわりなく、初期であっても後期であっても生じます。※参照1

精神的な要因によるもの

精神的な要因によるもの

妊娠後期に入りいよいよ出産予定日が近づくと、陣痛や分娩に対する不安や悩みを抱えてしまう妊婦もいます。精神的なプレッシャーを感じることも、妊娠後期・臨月に息苦しさを感じる原因のひとつです。

陣痛の痛み、分娩方法、分娩時にトラブルがおきないかどうかなど、いろいろな不安やストレスを抱えていると、自律神経のバランスが崩れ、息苦しさをはじめ、動悸、口の渇き、動悸、めまいなどの不快な症状が発生します。妊娠後期の息苦しさの一因は、妊婦が知らず知らずに抱えるストレスや不安感にあります。

子宮の圧迫がもたらす影響

子宮の圧迫がもたらす影響

妊娠後期になるとおなかの赤ちゃんはさらに大きく成長し、それにつれて子宮も大きくなります。大きくなった子宮は周囲にある臓器すべてを圧迫します。子宮の下にある膀胱、恥骨、大腸は下方向に圧迫され、痛みだけでなく、便秘や頻尿といったマイナートラブルが発生します。

子宮の圧迫感は下方向だけでなく、上方向にも感じます。子宮の重みはみぞおちまでせりあがってきて、胃や横隔膜も押し上げられ、息苦しさや動悸といった症状があらわれます。

妊娠9ヶ月目の胎児は身長40cmから45cm程度。体重は1.5kgから2kg程度にまで成長しています。子宮も赤ちゃんに成長に合わせて大きさと重みを増しており、肺や心臓にまで影響を及ぼします。妊娠後期および臨月の息苦しさは、この大きくなった子宮の重みに原因があります。

妊娠後期~臨月に息苦しさを感じた際の対処法とは?

妊娠後期~臨月に息苦しさを感じた際の対処法とは?

妊娠後期・臨月に息苦しさを感じたときの対処法について知っておきましょう。妊娠後期・臨月の息苦しさは昼間だけでなく、夜間睡眠中にも感じられます。息苦しさや動悸がいつまでも続くと、妊婦は体力を消耗させてしまいます。産までの時間をできるだけ快適に過ごすためにも、息苦しさを少しでも緩和する方法を知っておきましょう。

無理せず休息を取る

無理せず休息を取る

家事や仕事中に息苦しさを感じたら、無理せずすぐに体を休めましょう。息苦しいにもかかわらず、そのまま家事や仕事を続けると息苦しさは増大します。とりあえずやっていることをストップし、座るか、横になるかして休息を取りましょう。

このときのポイントは、できるだけ楽に感じられる姿勢を取ること。座っても、横になっても、大きくなったおなかがじゃまをして、なかなか息苦しさがなおらない場合は、ちょっとした工夫が必要。クッションを背中側に置き、上半身を高くしたり、抱き枕を抱えると楽な姿勢が取れます。

寝る体勢を整える

寝る体勢を整える

 

妊婦にお勧めの姿勢はシムスの体位と呼ばれています。夜間に息苦しさを感じ、何度も目を覚ましてしまう方は、寝る体勢を見直してみましょう。

シムスの体位とよばれる姿勢は、体の片側を下にして横たわる姿勢で、体の左側を下にする方法が一般的です。左手は体の後ろに伸ばし、左足は楽に伸ばします。おなかが圧迫されないように、おなかにクッションや枕をはさんでもいいでしょう。

動作はゆっくり行うこと

動作はゆっくり行うこと

息苦しく感じたら、動作をできるだけゆっくり行いましょう。急に立ち上がったり、歩きだしたりすることは息苦しさの引き金になります。

前かがみになることも息苦しさを誘発しますので、前かがみの姿勢もなるべく避けましょう。ゆっくりと呼吸することを心がけ、酸素を体内に十分に取り込むようにします。

正しい姿勢を取ること

正しい姿勢を取ること

おなかが前に大きくせり出している妊娠後期の妊婦は、姿勢が悪くなりがち。姿勢が悪いとうまく呼吸ができずに息苦しさを感じてしまいます。無理のない範囲でかまいませんので、姿勢をただし、猫背にならないように注意しましょう。

不安感やストレスを解消する

不安感やストレスを解消する

陣痛がきたときの対処法や病院に行くタイミング、分娩に関することなど、不安なことや疑問なことがあれば、前もって医師や助産婦に相談し、きちんと解決しておきましょう。

出産予定日を間近に控えてのストレスや不安感は、息苦しさや動悸といった症状としてあらわれます。出産に関して分からないことを一人で抱えても解決にはなりません。医師に相談するだけでなく、パパや親しい友人の方に話を聞いてもらうことも、ストレス解消に有効です。

まとめ

妊娠後期~臨月に息苦しさを感じるときに知っておきたい情報を幅広くご紹介しました。妊娠中はいろいろな理由が重なり、妊婦は息苦しさを感じやすくなっています。妊娠後期や臨月に入ると、おなかの赤ちゃんはいよいよ大きく成長し、妊婦の息苦しさもますます強くなります。

妊娠後期・臨月の息苦しさの対処法を把握し、残り少ないマタニティライフをできるだけ快適に過ごしましょう。

※参照1 日本産婦人科学会 妊娠貧血とは