経産婦(出産を経験者)の妊娠・出産について知っておきたいこと

経産婦の妊娠、出産について知っておきたいこと 妊娠中

経産婦と初産婦では妊娠と出産に関して注意すべきポイントが異なります。妊娠・出産の流れは、基本的には初産婦でも経産婦でも同じですが、細かい点に関してはいろいろと異なることも多く、知っておきたいポイントも多々あります。

初めての出産のときには、とにかくすべてがはじめての経験ですが、二人目以降の妊娠でははじめての妊娠との違いも把握しやすいはずです。

妊娠初期から分娩まで、経産婦に特有の特徴、経産婦の妊娠について知っておきたい情報をご紹介します。初産婦の妊娠との違いを知り、快適なマタニティライフを送りましょう。

経産婦とは?

経産婦とは?

経産婦とは以前にも出産を経験したこともある妊婦を指します。初産婦と経産婦では、妊娠から出産に至るまでの過程において、いくつか異なる点があります。

産婦人科で診察を受ける際、これがはじめての妊娠がどうか尋ねられるのはこのためです。初産か、あるいは経産かにより、妊娠の経過や分娩の進行に違いが出てきます。

ちなみに読み方ですが、経産婦(けいさんぷ)と初産婦(しょさんぷ、しょざんぷ、ういざんぷ、はつざんぷ)4つの読み方がありどれも間違いではありません。

近年では初産だけの場合は(しょざん、ういざん)と読み、婦がつくと初産婦(しょさんぷ)と読むことのが多いようです。年配の方は初産婦(ういざんぷ)と読むようです。

経産婦の方の妊娠の特徴は

経産婦の方にはすでに一度妊娠・出産を経験したという強みがあります。基本的にいうと、初産婦よりも経産婦の方が気持ちにゆとりをもって、妊娠および出産に臨めるというメリットがあります。

初産のときには分からないことばかりで、不安な気持ちで妊娠期間を過ごしたという方も、二回目以降の妊娠からは、妊娠から出産、そして育児に至るまで、一つ一つのプロセスを余裕をもって経験することが出来るでしょう。

経産婦の方のつわり

経産婦の方のつわり

つわりは経産婦よりも初産婦のほうがひどいといわれていますが、これは本当でしょうか。初産婦や多胎の方のつわりがひどい、というのは単なる印象的なことで、残念ながら経産婦のつわりは楽、というのは本当ではありません。

つわりに関しては個人差が大きく、また同じ女性でも妊娠のたびにつわりの程度や症状は異なります。たとえばはじめての妊娠の際にはつわりは軽かったのに、二回目の妊娠ではつわりが非常にひどかったという人もいれば、これとはまったく逆の方もいます。また体質的につわりをほとんど感じない人もいれば、妊娠のたびにひどいつわりに襲われる方もいます。

つわりの症状や程度に関しては初産、経産という違いではなく、個人的な体質や体調によるところが大きいといえるでしょう。

経産婦の胎動の感じ方

経産婦の胎動の感じ方

妊娠中期になると赤ちゃんの胎動を感じるようになりますが、胎動の感じ方に関して、経産婦と初産婦の間に違いはあるのでしょうか。

経産婦は初産婦に比べると、胎動を感じるのが早いといわれています。これはしかし赤ちゃんの成長が早く、胎動が大きいことを意味しているのではありません。経産婦の胎動が早いといわれるのは、前回の妊娠の経験から、胎動があったときに気がつきやすいせいだと思われます。

経産婦は前回の妊娠の経験から、胎動とはこんな感じという経験値があり、胎動を見逃しやすい初産婦と違い、胎動を見逃しにくいというメリットがあります。

経産婦のおなかは早く大きくなる?

経産婦のおなかは早く大きくなる?

初産婦に比べると、経産婦のおなかは早い時期から目立ちはじめる傾向にあります。これは前回の妊娠により子宮がいちど大きくなっているため、赤ちゃんの成長につれて子宮もすぐに大きくなりやすいからと考えられます。

初産の経験が生かされる二人目以降

初産の経験が生かされる二人目以降

初産のときになにもかもがはじめてで余裕がなかったのに対し、二度目からの妊娠では多少なりとも心にゆとりがうまれ、妊娠生活をリラックスして楽しむことが可能になります。

前回の経験をもとに、自分の体の状態をある程度自分で判断できますので、初産のときのようにちょっとしたことで不安な気持ちになったり、慌てたりすることがありません。これは経産婦の妊娠の大きなメリットといえます。

ただし経産婦だからといって、妊娠のトラブルに決して見舞われないわけではありません。体調の変化や何か異常なことがあった場合には軽視せず、必要があれば病院に連絡して判断を仰ぐようにしましょう。

上の子供のケア

上の子供のケア

上のお子さんに対するケアを怠らないようにするのも経産婦の大切な仕事になります。妊娠中で気分が秀れずに、上のお子さんに対するケアが十分にできない方もいるかと思われますが、小さなお子さんにはお母さんの気分の波は到底理解できないことを心得ておきましょう。

小さなお子さんにでも出来ることばでおなかの赤ちゃんのことを説明し、お母さんの味方になってもらいましょう。また妊娠中のお母さんの注意は、おなかの赤ちゃんに集中しがちです。お母さんの注目が自分に向いていないと、情緒不安定になるお子さんもいます。おなかの赤ちゃん同様、上のお子さんのことも大切に思っていることを極力伝えるようにしましょう。

帝王切開で出産した経産婦が気をつけたいこと

帝王切開後の妊娠するまでの期間

帝王切開後の妊娠するまでの期間

帝王切開で出産された方は、1ヶ月健診などで普通の生活に戻ってよいと言われた際に「次の妊娠は1年以上経ってから」と注意を受けたのではないでしょうか。

分娩時には子宮や膣に細かな傷がつくものですが、帝王切開の場合はそれ以上に子宮を切開した大きな傷が残ります。子宮の傷が回復するまでには時間がかかるので、1年未満に妊娠してしまうと傷が回復しないまま子宮が大きくなっていき、最悪の場合妊娠中に前回の傷口から切れてしまう可能性も出てきます。

ですから、避妊をしながらゆっくり次の妊娠に向けて体調を整えていくのがベストの対策と言えます。もちろん帝王切開でも年子を希望する方もいらっしゃいますが、子宮破裂や長期入院などリスクが高いことを重々理解し担当医やご主人としっかり話し合うべきでしょう。

経産婦の出産の兆候

経産婦の出産の兆候

出産の三大兆候と呼ばれるのは、おしるし、陣痛、破水ですが、これ以外にも出産が近くなると見られる症状がいくつかあります。

食欲が増す、足の付け根が痛い、眠気を覚える、下痢の症状がある、など、赤ちゃんが出産に向けて徐々に下に下りてくることや、ホルモン分泌の変化により、さまざまな体調の変化が表れますが、これらに関しては、初産婦、経産婦の間にあまり差はありません。

経産婦もまた、出産予定日が近くなったら、自分の体調の変化によく注意を払うことが必要です。

経産婦の子宮口の開き方

経産婦の子宮口の開き方

経産婦の分娩時間が短いのは、子宮口の開き方が初産婦とは異なるため。初産婦は分娩の初期には内子宮口および外子宮口は閉じていますが、経産婦の場合はこの時期から外子宮口は開いている状態です。

その後分娩初期の末期まで分娩が進行してようやく、初産婦さの子宮頸管と外子宮口が開いてきます。経産婦の場合は分娩初期から外子宮口が開いた状態で、その後外子宮口の辺縁部分を残して、子宮頸管およぴ内子宮口も開ききる形になります。

経産婦の分娩と初産婦の分娩に違いがあるのは、このように子宮口の開き方からも分かります。一度出産を経験していることにより、子宮口が開大しやすいことが、経産婦の出産のいちばんの特徴になります。

経産婦の陣痛やおしるし

経産婦の陣痛は初産婦よりも軽いといわれていますが、これは本当でしょうか。経産婦は一度出産を経験しているので、子宮口や産道が初産婦に比べると早く開いてきます。

これが、経産婦は陣痛から出産にかかる時間が少ないといわれる理由になります。経産婦の陣痛やおしるしについて詳しく見ていきましょう。

経産婦のおしるし

経産婦のおしるし

おしるしとは出産の兆候の一つで、おりもの状の少量の出血を指します。経産婦の場合、おしるしはないという話も聞きますが、これは本当ではありません。おしるしがあるのは、妊婦全体の二割程度という統計もありますので、おしるしがないからといって分娩に問題が生じるわけではありません。

おしるしの有無やおしるしのある時期はそれぞれのケースにより異なります。またおしるしと陣痛の起こる順序や間隔についても個人差があり、おしるしがあってからしばらくして陣痛の来る方もいれば、おしるしと陣痛がほぼ同時に起こる方もいます。

経産婦の陣痛

陣痛の強さに関しては、初産婦と経産婦の間に違いはありません。陣痛の痛みの感じ方には個人差があり、初産婦でも経産婦でも痛みに対する耐性のない方もいれば、痛みをあまり感じないという方もいます。

経産婦の陣痛が軽く感じられるのは、初産婦に比べると陣痛から分娩に至る時間が短いため。陣痛が起きている時間が短いので、総じて痛みも少なく感じられるようです。

経産婦の分娩時間

経産婦の分娩時間

初産婦の場合、陣痛が始まってから分娩が終わるまで、目安として15時間前後かかります。

反対に経産婦の場合はこれよりも短く、目安として7時間前後で終わることが多いので、初産婦に比べると約半分程度の時間しかかかりません。

ただしこれはあくまでも傾向に過ぎません。初産にもかかわらずあまり時間がかからずに分娩が終了する方もいれば、陣痛が微弱で難産になる経産婦の方もいます。

妊産婦だから陣痛も分娩も楽に違いないと油断するのは禁物です。臨月に入ったら体調管理をいままでよりもさらに厳密に行い、思わぬトラブルが起きないよう注意しましょう。

病院に向かうタイミング

病院に向かうタイミング

妊婦が病院に向かうタイミングは陣痛の間隔によって見計らいます。初産婦の場合、一つの目安として陣痛の間隔が10分間になったら病院に向かうよう指示されますが、経産婦の場合は陣痛から分娩までの時間が短いため、陣痛の間隔が15分間になったら病院に向かうようにします。

経産婦の出産予定日について

経産婦の出産予定日について

初産婦の出産は出産予定日よりも遅れがちという印象があります。では反対に経産婦は出産予定日どおりに分娩があるのでしょうか。この点に関しては初産婦、経産婦の違いはあまりないようです。

確かに経産婦は陣痛から分娩にかかる時間が少ないことが特徴ですが、陣痛が早く始まるかというとそういうわけではありません。経産婦であっても、出産予定日を超過しても陣痛が来ないことがあり、この場合はしばらく様子を見て、それでもどうしても陣痛が来ないようであれば、医師の判断と妊婦の希望により帝王切開での出産になることもあります。

陣痛出産予定日を超過しても正産期の範囲内であれば問題ありませんが、妊娠42週を過ぎての出産は過期産と呼ばれ、母体と赤ちゃん両方に対するリスクが高まります。経産婦の場合でも、出産予定日を大幅に超過した場合には、陣痛促進剤の使用や帝王切開での出産が選択されます。

経産婦の産後の後陣痛について

後陣痛とは分娩の後に起こる腹部の痛みで、これは分娩後の子宮がもとの大きさに戻ろうとして収縮する際に起こる痛みを指します。この痛みを指して後陣痛と呼びますが、後陣痛は初産婦よりも経産婦のほうが強いといわれています。

子宮復古とは

子宮復古とは妊娠および出産のために大きくなっていた子宮が、妊娠前の状態に戻ることを指します。

子宮復古は分娩後6週間から8週間続き、この間に子宮の大きさや長さは前の状態に戻り、子宮の内容物などもすべて排出されます。この期間を産褥期と呼びます。

子宮復古は二つの方法により促進されます。一つは後陣痛、もう一つは母乳を与えることで、この二つにより子宮が収縮し、元の状態に戻っていきます。子宮の収縮は分娩のときの赤ちゃんを押し出そうとする動きになりますので、後陣痛は分娩陣痛に似た痛みを伴うことがあります。

経産婦の後陣痛

経産婦の後陣痛

後陣痛とは分娩後の数日間に起こる子宮収縮に伴う痛みを指します。子宮が急激に収縮することにより、おなかに痛みを感じますが、この痛みは初産婦よりも経産婦のほうが強い傾向にあります。

その理由は経産婦の場合、以前にも出産を経験しているため、子宮の収縮する力が強く、短い時間のうちに急激に子宮が小さくなることにあります。子宮回復力が強いため、腹部の痛みが強く感じられます。

後陣痛の痛み

後陣痛の痛み

後陣痛が起きているということは、子宮復古が順調に行われているということを意味します。経産婦は子宮の回復が素早く行われますので、産褥期自体は初産婦よりも短くなることがほとんどです。

後陣痛が起きるのは分娩後数日間で、痛みは強いといっても分娩のときのような痛みではありません。ただし経産婦の場合は、後陣痛の痛みが思いのほか強いことがありますので、痛みを少しでも和らげるよう、おなかを冷やさない、血行を良くする、体に無理な負担をかけない、など体調管理をきちんと行うようにしましょう。

まとめ

初産婦に比べると、妊娠中も分娩も楽といわれることの多い経産婦ですが、上のお子さんを抱えての妊娠・出産が大変であることに変わりはありません。ただし経産婦には以前の妊娠・出産で得た貴重な経験がありますので、つわりや陣痛に対してうまく対応できるというメリットがあります。

何もかもはじめての経験で戸惑うことの多い初産婦と比較すると、経産婦は妊娠期間を通して何事に対しても余裕をもって臨むことができます。初産婦と経産婦の違いをしっかり把握し、経産婦としてのメリットを活かしたマタニティライフを送りましょう。

妊娠中
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