妊娠中に体かゆいときに知っておきたいこと

妊娠中に体かゆいときに知っておきたいこと 妊娠中

妊娠中はホルモンバランスに変化が起きるせいで、体にいろいろなマイナートラブルが生じます。体のかゆみもそんなマイナートラブルのひとつ。妊娠中に体のかゆみに悩まされる女性は少なくありません。

妊娠中に体がかゆくなる原因・症状から対処方法・注意点まで、妊娠中の体のかゆみについて知っておきたい情報をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

妊娠中に増える体のかゆみ

妊娠中に増える体のかゆみ

妊娠してからというものの、体がかゆくてついかきむしってしまう。かゆいところに市販薬をぬっていいかどうか分からない。チクチクとしたかゆみがあり不快。かゆみがひどく、かきむしってしまったところに炎症ができた。このように妊娠中の体のかゆみに関する悩みはさまざま。

なんとなくかゆみを感じる程度であれば我慢できますが、かきむしってしまうほどのかゆみはストレスの原因に。かゆみを我慢できずにかきむしるとその部分に傷あとができ、色素沈着がおこり黒ずんだ体に。

妊娠中はホルモン分泌の影響で、皮膚トラブルがおきやすい状態におかれています。体のかゆみだけでなく、乾燥肌、肌の黒ずみ、多毛化などのトラブルも多く、どれもマイナートラブルとはいえ、妊婦さんにとってはストレスのもと。かゆみなどの皮膚トラブルを防ぐためにはまず、皮膚トラブルが生じる原因について知ることが必要です。

妊娠中の体のかゆみの原因とは?

妊娠中の体のかゆみの原因とは?

妊娠中に体がかゆくなる主原因は、ホルモンバランスの変化にあります。女性の生理機能を司るのは、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンですが、これら女性ホルモンの分泌量は、妊娠を機に大幅に増加します。

プロゲステロン(黄体ホルモン)による影響

プロゲステロン(黄体ホルモン)による影響

プロゲステロンには、皮脂の分泌を活性化するはたらきがあり、このため肌荒れがおこりやすくなります。また体温を上昇させる作用もあるため、のぼせやほてりを感じることも。体温が上昇することで、代謝がアップし、汗の分泌も増えます。

ホルモンバランスの変化は、自律神経のバランスを崩し、ほてり、のぼせ、多汗といった不快な症状もあらわれます。自律神経の崩れは皮膚環境の悪化にもつながり、肌荒れ、敏感肌、かゆみ、かぶれ、乾燥、赤み、湿疹といった皮膚トラブルを引き起こします。

アレルギー性皮膚炎・蕁麻疹の悪化

妊娠前からアレルギー性皮膚炎や蕁麻疹の症状がある方は、妊娠すると症状が悪化しやすくなります。その原因は免疫力の低下。妊娠中は免疫力が少し落ちるため、皮膚炎だけでなく、高血圧などの既往症も悪化するおそれがあります。妊娠初期の段階から疲れやストレスを溜めないよう、十分注意しましょう。

皮膚疾患を持病に抱える方は、妊娠中のスキンケアについて早めに医師に相談しておくといいでしょう。

かゆみの症状について

かゆみの症状について

妊娠中のかゆみの症状や度合いはさまざま。なんとなくかゆい程度の軽症の妊婦さんもいれば、血がでるまでかきむしってしまうほど重症の方も。またかゆみが生じる時期についてもまちまちで、妊娠初期から始まることもあれば、臨月に入って突然始まることもあります。

かゆみを感じる場所についてもさまざまで、手足、胸、おなかといった一部分だけにかゆみが出ることもあれば、かゆみが体全体に広がることも。おなかの場合、妊娠線ができた場所がかゆくなることもあります。

妊娠線のかゆみ

妊娠線のかゆみ

おなかの妊娠線のかゆみは、妊娠中期・後期に特有の症状。妊娠線ができると、おなかの皮膚がひっぱられるように感じられます。皮膚が薄く伸びるため、乾燥しやすいことが、かゆみを感じる原因です。

かゆみを我慢できず妊娠線の部分をかいてしまうと、皮膚表面に傷がつき、色素が沈着して見た目が悪くなります。また皮膚に傷がつくと、バリア機能自体が低下し、乾燥・かゆみがさらに加速するという事態に。

また妊娠線の皮膚が黒ずむと、出産後も妊娠線が消えず目立ってしまう、という困った問題も生じます。妊娠線の乾燥・かゆみ対策には保湿が重要です。

妊娠中のかゆみの予防・対処法について

妊娠中のかゆみの予防・対処法について

妊婦さんの多くが経験する体のかゆみ。おなかの赤ちゃんに深刻な影響を与えるわけではありませんが、しつこいかゆみを我慢するのはつらいもの。かゆいのをひたすら我慢していると、ストレスも溜まる一方です。

ただのかゆみだからといって、そのまま放置しておくと、症状は悪化するばかりなので、妊娠中のかゆみは早めに対処することが大切。それと同時にかゆみがなるべく出ないような対策を取ることも必要になります。ここでは妊娠中のかゆみの予防・対処法について、自宅で手軽にできる方法をいくつか挙げてみましょう。

皮膚に優しい肌着を選ぶ

皮膚に優しい肌着を選ぶ

妊娠中の敏感な皮膚には化学繊維の肌着は刺激が強すぎます。直接肌に触れる部分は、皮膚に優しく刺激の少ないコットン100%素材を選びましょう。肌触りがよく、やわらかな素材で、通気性・吸水性に優れたものが理想的。レースなどのごわごわした固い素材や化学繊維は避けたほうが安心です。最近では敏感肌やアレルギーをお持ちの方向けに、サイズ表示タグがついていない肌着も市販されていますので、こちらを使用するのもいいでしょう。

体を締め付けない工夫を

体を締め付けない工夫を

体を締め付ける服装はかゆみやかぶれを誘発します。衣類による摩擦は、皮膚のバリア機能が損なわれ、かゆみ、乾燥、黒ずみといったトラブルの発生原因に。かゆみを避けるには、体の締め付けのない衣服を選ぶことがポイントです。

妊娠中期・後期になれば、おなかを締め付けないマタニティウェアが便利ですが、アウターウェアだけでなく、インナーの締め付けにも注意が必要です。見た目はそれほど変わっていなくても、子宮は妊娠初期から確実に大きさを増しています。締め付けのきついインナーは避け、ゆったりしたデザインのものを選びましょう。

乾燥させないために保湿を念入りに

乾燥させないために保湿を念入りに

皮膚の乾燥はかゆみの直接の原因。お風呂上りには保湿を念入りに行いましょう。お風呂上りだけでなく、起床時、外出前後、就寝前など、乾燥しやすいタイミングを見計らって保湿をこまめに行うことにより、皮膚の乾燥を防げます。

低刺激の石鹸・シャンプーを使う

低刺激の石鹸・シャンプーを使う

妊娠中の皮膚は敏感。石鹸やシャンプーに含まれている化学物質に対しても、ピリピリ、チクチク、ヒリヒリと敏感に反応します。妊娠中の入浴には皮膚に優しいマイルドな石鹸やシャンプーを選びましょう。オーガニック成分が配合されたものや、敏感肌用のものがおすすめです。

入浴に関してもうひとつ注意したいポイントは、すすぎ。せっかく丁寧に体を洗っても、すすぎが十分にされないと、石鹸やシャンプーの残りが皮膚に付着したままに。入浴の際には石鹸やシャンプーが残らないよう、丁寧に洗い流しましょう。

ストレスを溜めない工夫をする

ストレスを溜めない工夫をする

ストレスとかゆみには密接な関係があります。強いストレスを感じると、かくことでストレスを紛らわそうとするメカニズムがはたらき、かゆい部分をどうしてもかきたくなります。かきむしると一時的にかゆさは薄れますが、皮膚の状態はさらに悪化し、かゆみは増すという結果に。

かゆいという状態に加えて、ストレスを抱えていると、かいてもかいてもかゆみが治らない、という悪循環におちいります。ストレスを抱えこまないようにすることも、かゆみを軽減する方法のひとつです。※参照1

かゆい部分を冷やす

妊娠中の体のかゆみは暑さを感じると、かゆみがさらにひどくなる傾向がみられます。かゆい部分を冷却シートや冷やしたおしぼりで冷やすこともかゆみの軽減に効果的です。

医師に相談する

医師に相談する

夜も眠れないほどかゆみが強い、湿疹ができて水疱状になっている、かきむしったあとの傷跡がひどい。このようにかゆみの症状が深刻な場合は、早めに医師に相談したほうがいいでしょう。受診するのは産婦人科でも皮膚科でもかまいませんが、皮膚科を受診する際には妊娠している旨を必ず伝えましょう。

市販の塗り薬の中には妊婦さんは使用できないものもあります。使用の注意書きをよく読まずに、自己判断で置き薬を使うのは控えましょう。

妊娠中の皮膚疾患について

妊娠中の皮膚疾患について

妊娠中におこりやすい皮膚炎の種類・特徴、治療方法などについて詳しくみていきましょう。かゆみや発疹の症状だけでは、どの疾患にかかっているか判断することは難しく、間違った薬を使うと症状が悪化するおそれがあります。症状がひどく、改善の兆しがみられない場合は、早めに専門医の診察を受けましょう。

妊娠性掻痒(そうよう)症

妊娠性掻痒症とは妊娠後期におこることが多い症状で、激しいかゆみがあるものの、発疹はみられません。妊娠中期以降に胆汁の流れが悪くなり、妊娠性肝内胆汁うっ滞にともなって生じることもあります。

かゆみが激しく日常生活に支障がでる場合は、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。治療方針はかゆみの度合いや皮膚の状態により決められます。保湿剤で皮膚の乾燥を防ぎ、かきむしった部位に湿疹ができている場合はステロイド剤を使用することもあります。

妊娠性掻痒症はほとんどの場合、出産後しばらくすると症状が自然に改善されます。

妊娠性痒疹

妊娠性痒疹は妊娠初期からみられる症状で、かゆみに加えて、ポツポツとした発疹があらわれます。かゆみが強く、かきむしると赤茶色の固い痒疹ができ、さらに症状が悪化するとイボ状になることも。

妊娠性痒疹の治療は、妊娠性掻痒症同様、症状の度合いや広がり方によって、ステロイド外用薬が用いられますが、症状や妊娠時期によっては抗アレルギー薬などの内用薬を使用することもあります。

多形妊娠疹(PUPPP)

多形妊娠疹は妊娠後期にできることの多い症状で、妊娠線のあたりや手足に、蕁麻疹のような赤いもりあがった発疹ができます。かゆみも強く、症状が悪化すると広い部分に蕁麻疹状の発疹が広がります。

症状が似通っているため、多形妊娠疹は妊娠性痒疹と区別がつかないときがあります。かゆみのある発疹がでたら、自己判断で市販薬を使うことは控え、専門医の診察を受けるようにしましょう。

まとめ

妊娠中の体にかゆみについて、その原因から対処法まで、妊婦さんならぜひ知っておきたい情報を幅広くご紹介しました。妊娠中の皮膚はとってもデリケート。ホルモン分泌に急激な変化が生じることにより、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみや乾燥といったスキントラブルが生じやすくなります。

妊娠中のかゆみはおなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすわけではありませんが、かゆみが激しく、夜ゆっくり休むこともできないと体力が消耗されます。妊娠中のかゆみの原因や対処方法を知り、かゆみを軽減するよう努めましょう。

※参照1 日本臨床皮膚科医会 痒みとストレス

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