妊婦の貧血について知っておきたいこと

妊婦と貧血について知っておきたいこと 妊娠中

妊娠すると、いつも以上に体調管理や栄養管理を意識する必要があります。特に、妊婦が食べるものによって、赤ちゃんに供給される栄養は大きく変わるため、発達や体重にも影響してきますので、しっかりバランスよく摂ることが大切になります。

しかし、いつも以上にしっかり管理しているつもりでも、どうしても不足しやすいのが「鉄分」です。妊婦の多くが鉄分不足による貧血に悩まされています。

この「貧血」は、多くの女性が持つ悩みのひとつでもありますが、妊婦にとっては特に重要な症状のひとつです。貧血が続くことにより、単なるふらつきだけでなく赤ちゃんの発育にも影響してきますので、妊婦の貧血はきちんと解決していく必要があります。そこで、妊婦と貧血について詳しい情報を幅広くご紹介していきましょう。

目次

貧血とは

貧血とは

貧血と聞くと、多くの女性がなるもので何となくフラフラしたり疲れたりしやすくなるくらいの意識の方が多いと思います。しかし、貧血は身体の健康を損なう症状のひとつであるため、妊娠中でなくてもきちんと治す必要があるものです。

貧血は、簡単に説明すると血液が薄くなった状態のことを言います。薄くなった血液だと、酸素や栄養がきちんと届けられなくなるため、ふらついたり動悸が起きたりしやすくなるのです。

妊婦に貧血症状が多い理由

妊婦に貧血症状が多い理由

貧血は、女性に多くみられる症状のひとつですが、今まで貧血気味ではなかった女性も妊婦になると貧血気味になることが良くあります。実際に妊婦のうち約30%~40%の割合で貧血になる方は多いのです。

妊婦が貧血になるのには、さまざまな理由があります。主に血液に関する原因が多いので見ていきましょう。

妊婦になると血液が薄まる

妊婦になると血液が薄まる

妊娠すると、赤ちゃんに十分な栄養や酸素を送って育てるために、妊婦の血液量が増えるようになります。妊娠中は血液量が増えると言われていますが、濃度が同じままで増えるのではありません。

血液中の血漿は、最大で約47%増加するのに対し、赤血球の量は最大でも約17%しか増えません。赤血球の増加率が低く、血漿の増加率が高いため、どうしても血液そのものが薄くなってしまうのです。

薄くなった血液には十分な栄養が含まれていないため、どうしても貧血を発症しやすくなってしまいます。

鉄分不足による貧血

鉄分不足による貧血

妊娠すると、赤ちゃんへ優先的に栄養が送られるため、妊娠前よりも鉄分が不足しやすい状態になります。

つわりで思うように食事がとれなかったり、妊娠中期以降さらに活発に栄養が赤ちゃんに送られるようになったりすると、鉄欠乏性による貧血が慢性的になってしまうでしょう。

血流の変化による貧血

血流の変化による貧血

妊娠すると、赤ちゃんに優先的に血液が運ばれるようになるため、子宮周辺に血液が集中するようになります。そのため、脳への血液量が減り、貧血気味になりやすくなってしまうでしょう。

特に、食べ物を食べた後は消化のためにさらに胃に血液が集中してしまうため、食後に急に動いたり無理な運動をしたりすると、貧血を感じやすくなります。

体調に問題が無くても、いつもとは血液の流れが違うため、不意に貧血気味になることがあるので注意しましょう。

妊娠時の貧血による症状

妊婦が貧血気味になると、具体的にどのような症状が身体に現れてくるのでしょうか。さまざまな症状があり、それにより貧血だと判明することもあるので、チェックしておきましょう。

ふらつきやめまい

ふらつきやめまい

妊婦が貧血になると、ふらついたりめまいを感じたりしやすくなります。これは、脳への血液量が減ることにより引き起こされる症状です。

また、妊婦の身体への血液量が不安定になることで、自律神経が乱れそれによりめまいやふらつきが引き起こされることもあります。

息切れが起きやすくなる

息切れが起きやすくなる

妊婦が貧血になると、少し動いただけで息切れするようになります。息切れが起きるのは、血液が薄まり十分な酸素が行きわたっていないからです。

少し階段を上っただけなのに息切れをしたり、少し歩いただけで息切れしたりするときは、貧血の可能性を考えるべきでしょう。

動悸が頻繁に起こる

動悸が頻繁に起こる

妊婦が貧血になると、動悸が起きるようになります。少し動いただけで胸がドキドキしたり、安静にしているのに急に心拍数が上がったりします。このような動機が起きるのは、心臓ができるだけ多くの血液を全身に送ろうとしているからです。

血液が薄まった状態になると、酸素や栄養が薄くなるため、その分心臓はがんばってたくさんの血液を身体に送り出さなければなりません。そのため、妊娠前よりも活発に働かなければならないようになるのです。

貧血気味で鉄分が不足していると、さらに多くの血液を送り出さなければならないため、少し動いただけでも心臓に負担がかかり動悸が起きやすくなってしまうのです。

疲れやすい

疲れやすい

妊婦が貧血になると、身体が疲れやすくなります。しっかり睡眠を取っているのに元気が出なかったり、家事をしなければならないのにやる気が出なかったりします。

疲れやすさが出てしまうのは、血液が薄まり身体に十分な栄養や酸素が届けられていないからです。特に、筋肉への酸素量が減ると身体にだるさを感じやすくなります。最近どうも身体がだるいなと感じたら、貧血の可能性を疑ってみましょう。

寒気を感じる

寒気を感じる

妊婦が貧血になると、寒気を感じたり冷え性が悪化したりするようになります。これは、血液の流れが滞ったり、栄養不足になったりするためです。血行不良になると、温かい新鮮な血液が末端まで届けられなくなるため、寒気を感じやすくなります。

風邪を引いたわけでもないのに、人よりも寒気を強く感じるという場合は、貧血の可能性を疑ってみましょう。

舌が炎症する

舌が炎症する

妊婦の貧血が重度になると、舌が炎症を起こすこともあります。食べるときに舌がしみたり、舌をベーッと出して炎症が起きたりしているようなら、貧血の可能性が高いと言えるでしょう。また、口内炎などが頻繁に起こる場合も要注意と言えます。

むくみが出る場合も

むくみが出る場合も

妊娠中に悩まされるトラブルの1つがむくみですが、実はそのむくみは間接的に貧血が関係していることがあります。妊娠中期からは体は水分を溜め込んで血液を薄めて血流を促進させますが、急に増えた水分に腎臓が対応できずむくみにつながります。

また、増えた血液は全身を回りますが、体内の水分量が多いと足元に溜まったまま心臓に戻りにくくなってしまうため、むくんでしまうのです。

貧血でない方なら産後すぐに戻りますが、貧血の方は産後太りが解消されないなんてことにもなりかねません。貧血対策と共に塩分を控えるなどのむくみ対策も同時に行っていきましょう。

貧血による赤ちゃんへの影響

貧血による赤ちゃんへの影響

妊婦が貧血になると、赤ちゃんにはどのような影響が出てしまうのでしょうか。基本的に妊婦が貧血になるのは赤ちゃんへ優先的に栄養が運ばれることにより引き起こされますから、赤ちゃん自身が貧血になることは滅多にありません。

しかし、妊娠悪阻のようにつわり症状がひどく食べ物を一切受け付けることができなかった場合、重度の貧血になることがあります。重度の貧血になると、赤ちゃんが低体重で生まれる確率が上がるため、出産のリスクが上がる可能性があるでしょう。

また、陣痛が微弱になってお産が長引いたり、赤ちゃんの発達のスピードが遅くなったりすることもあります。

貧血が産後の母乳や生活にも影響

貧血が産後の母乳や生活にも影響

鉄分不足は妊娠中だけでなく、母乳不足といった点で産後にも影響します。母乳は血液を基にして出来ていますが、妊娠中貧血だった方は血液量が少ないので母乳量も少なくなると言われています。

母乳育児を目指す方にとっては、妊娠中から鉄分が不足しないように注意すべき問題でしょう。また、分娩中の出血量が基準値を超えると出血多量となりますが、元々貧血の方はそれ以下の出血量であってもだるさや体力の消耗が著しくなります。

そのような状態では産後の回復も遅れてしまい、赤ちゃんの世話もままならなくなってしまいます。これらのトラブルを避けるためにも、妊娠中に鉄分不足を解消しておくべきでしょう。

妊娠中に貧血が起きたときの対処方法

妊娠中は貧血が起きやすくなります。では、貧血が実際に起きたときはどのように対処するのが良いのでしょうか。

安静にする

安静にする

貧血が起きたときは、とにかく安静にするようにしましょう。近くに座れる場所があればすぐに座り、横になれる環境があればすぐに横になりましょう。

そのような場所がない場合は、その場にしゃがみ込んで回復するまでじっと待つようにしてください。深呼吸をして身体を安静にすることで、血液の流れが回復し貧血状態も落ち着きやすくなります。

衣服を緩めて締め付けない

衣服を緩める

貧血が起きたときは、ベルトやボタンをはずしてできるだけ身体を締め付けないようにしましょう。身体を締め付ける衣服を着ていると、血行不良が起きて貧血を引き起こしやすくなります。

妊婦になると、多くの方がゆったりとした服装へと変わっていきますが、これは貧血予防でもあるのです。オシャレも大切ですが、貧血を引き起こさないためにもゆったりとした服を選ぶようにしましょう。

身体を温める

身体を温める

貧血が起きたときは、身体を温めると回復しやすくなります。身体を温めることにより血行が促進され早く栄養や酸素が届けられやすくなるからです。外出先なら、暖房のきいた暖かい部屋で安静にし、ホッカイロなどをあてて対処するようにしましょう。

自宅にいるときは、足湯をしたり半身浴をしたりして身体を芯から温めるようにしてください。ただ、入浴する場合あまり長湯しすぎるとのぼせてふらついてしまう可能性があるため、長時間入り続けないようにしましょう。

妊娠中の貧血を回復させる食べ物

妊婦は貧血になりやすいため、意識して食べ物から鉄分を摂取するようにしましょう。鉄分としてイメージされる食べ物には、レバーやほうれん草などがありますが、実は含まれている鉄分の種類が異なります。鉄分の種類により吸収率や食べ方は異なってきますので、ご説明しておきましょう。

ヘム鉄を含む食べ物

ヘム鉄を含む食べ物

鉄分の中でも、ヘム鉄は体内への吸収が良いため、妊婦の方は積極的に食べるようにしましょう。ヘム鉄は肉や魚など動物性タンパク質に豊富に含まれています。

肉類なら、鉄分として代表的なレバーから、牛や豚のモモ肉などがオススメです。魚介類なら、カツオ、マグロ、サンマ、煮干し、などもオススメです。

海藻類にも多く含まれており、特にヒジキが鉄分を多く含んでいるので貧血予防に良いでしょう。

非ヘム鉄

非ヘム鉄

鉄分の中でも、非ヘム鉄は体内への吸収力が悪いため、しっかり食べているはずなのに貧血が治らないことが良くあります。ほうれん草に含まれているのは非ヘム鉄なので、毎日ほうれん草だけを食べていてもあまり貧血は回復していかないのです。

しかし、非ヘム鉄はビタミンCやタンパク質を多く含む食品と一緒に食べることで、ヘム鉄に変化させることができるため、食べ方によっては鉄分の吸収率をアップすることができます。

ほうれん草なら、お浸しにしてかつお節でタンパク質をプラスし、ポン酢をかけてビタミンCをプラスすれば鉄分を吸収しやすくなります。

非ヘム鉄を多く含む食材は、野菜なら小松菜やほうれん草がありますし、豆類なら納豆や木綿豆腐、その他にも果実類ならプルーンやレーズン、いちじくがありますし、ナッツ類ならくるみやカシューナッツがオススメです。

カフェインやタンニン摂取に注意

カフェインやタンニン摂取に注意

妊婦になると貧血になりやすくなります。鉄分などの栄養が不足し、酸素が充分に行きわたらなくなることにより引き起こされますが、鉄分を意識して摂っていても、ある成分を摂取していると鉄分の吸収が妨げられやすくなります。

紅茶や緑茶、コーヒーなど、カフェインやタンニンを多く含む飲み物は鉄分の吸収を妨げてしまうため、できるだけ控えるようにしましょう。飲み物以外にも、チョコレートにカフェインは含まれていますので、過剰摂取には十分注意するようにしてください。

検査で貧血気味?鉄剤の知識

検査で貧血気味?鉄剤の知識

妊婦健診では、定期的に血液を採取して数値を確認するようになっています。検査で貧血気味だと診断されたら、鉄剤を処方されることがあるでしょう。鉄剤は鉄分を補給する上で効率の良いものですが、胃が荒れてしまったり便秘を引き起こしたりすることもあるので、相性が大切になります。

医師から処方された鉄剤を服用してから、便秘がひどくなったり、胃もたれなどが起きやすくなったりした場合は、相談して別の鉄剤に変えてもらうようにしましょう。鉄剤が合わないからといって、勝手に飲むのを中断してしまうと、貧血症状はますますひどくなってしまいます。

鉄剤と一緒に胃薬や便秘薬を服用する場合もありますが、自己判断で勝手に服用せず、必ず医師に相談して妊婦でも服用できるものを処方してもらうようにしてください。

点滴で鉄分補給について

点滴で鉄分補給について

検診で貧血だと診断された場合、臨月に近い妊婦さんだと点滴で鉄分補給する場合があります。鉄剤だと効果が現れるのに時間がかかるため、点滴でスピーディーに補給していくのです。

妊娠中期~後期にかけては活発に鉄分が赤ちゃんに運ばれていきますので、点滴を受けずに済むよう、日頃から貧血にならない食事を心掛けるようにしましょう。

ここまでのまとめ

妊婦の貧血について詳しくご紹介しました。貧血というとあまりたいしたことのない症状だと思いやすいですが、妊婦にとっても赤ちゃんにとっても見過ごすことはできないものです。

妊娠中は、お腹が大きくなると足元が見えにくくなりバランスも取りにくくなるので、転倒などの危険が高まってきます。それに貧血がプラスされるとますます転倒の危険が高まりますので、根本から解決していけるようにしましょう。

出産後に母乳で育てる方の場合、貧血は継続されやすいので、今のうちに貧血にならない食生活に慣れておくようにしてください。

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