妊婦は辛いものや刺激の強いものはなるべく食べないほうがいいといわれています。辛いものが食べられないということは、キムチやカレーもだめなの?とがっかりする妊婦もいるかもしれませんが、妊娠中だからといってキムチやカレーを食べてはいけない、というわけではありません、
妊娠中にキムチを食べる際の注意点、おなかの赤ちゃんへの影響、キムチの栄養成分や食べ方など、妊婦がキムチを食べるときに知っておきたい情報をいろいろとご紹介します。
妊婦がキムチを食べてもいいの?悪いの?
妊婦は基本的には辛すぎるものや刺激物は食べないほうがいいとされています。しかしこれはキムチを絶対に食べてはいけない、という意味ではありません。妊婦でも食べる量や回数に注意すれば、キムチを食べてもまったく差し支えありません。
キムチがお好きな方は妊娠中だからといって食べるのを控える必要はありません。ただし激辛なものを際限なく食べてしまったり、偏った食べ方は控えたほうが安心です。
どんな食べ物でもそればかりを食べていると、栄養バランスが偏ってしまいます。妊婦でもキムチを食べることは構いませんが、一回に食べる量を考え、食べすぎないように注意しましょう。
妊婦はキムチを控える意見が多い理由とは?
キムチやカレーなど、唐辛子を多く含む食べ物は刺激が強そうで、妊娠中は控えたほうがいいような気がします。妊婦はキムチを食べないほうがいい、控えた方がいいといわれる理由について考えてみましょう。
辛いものは胃腸に負担をかけるため
妊娠中だけでなく、病み上がりで体調の悪いときも、辛いものや味付けの濃いものはなるべく食べないようにします。これは唐辛子やスパイスがたくさん入った食べ物は、弱った胃腸に負担をかけるおそれがあるため。体調が悪いときは胃腸に優しく、消化によい食べものを摂るべきといえるでしょう。
妊娠中についても同様で、つわりや妊娠に伴う体の変化により体調を崩しやすく、胃腸に負担のかかる食事は控えたほうが安心です。また妊娠中はプロゲステロンの作用により胃腸のはたらきが弱まっています。胃腸炎や逆流性食道炎にかかる妊婦も多く、つわりで吐き気がすることも多いので、この点からも食べ物やなるべく消化のよいものにしたほうがいいでしょう。
妊娠中期から後期にかけては、おなかがさらに大きくなるため、食事をしたあとに胃がもたれやすくなります。このように妊娠中は初期から臨月まで、胃腸に優しく、消化のよい食べ物を摂ることが大切です。
唐辛子やスパイスを含む食べ物は適度な量であれば問題ありませんが、たくさん食べ過ぎると胃腸のもたれや胃炎の原因になります。妊婦は辛いものや刺激物を食べないほうがいい、といわれるのは、このことに理由があると考えられます。
塩分摂取量に関する配慮
女性の塩分摂取量の目標は一日7g。キムチに含まれる塩分量は製品や製法、材料によって異なりますが、標準的なキムチ40gに含まれる塩分量は約1.4g.これは一日の摂取目安の約20%に相当します。
キムチ40gは小皿にごく軽く盛った程度ですので、たったこれだけの量でも一日分の摂取量の2割に達してしまう、と覚えておきましょう。キムチは一度にたくさん食べてしまうと塩分の摂りすぎになってしまいます。
食事全体の塩分摂取量に配慮すること
キムチは唐辛子やにんにくなどの香味料が入っているせいもあり、塩辛いお漬物に比べると塩分量は少ないほうですが、それでも妊婦が食べる場合にはそれなりの配慮が必要です。
キムチ一皿分の塩分だけを考えるととくに問題はないような気がしますが、塩分摂取量は一食分全体で考える必要があります。ご飯とキムチに加えて、主菜や副菜、スープやサラダといった献立メニュー全体の塩分を考慮した上で、キムチを食べる量や回数に注意しましょう。
妊娠中の塩分摂取について
妊娠中の塩分の摂りすぎは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病につながるおそれがあります。妊娠高血圧症候群とは妊娠20週以降分娩後12週目までに高血圧の症状があらわれることを指します。
高血圧に加えて蛋白尿も出ることがあり、症状が進むと母体やおなかの赤ちゃんに悪影響が出るリスクが生じます。おなかの赤ちゃんへの酸素や血液の供給が滞り、赤ちゃんの正常な発育が妨げられると、胎児発育不全、低出生体重児、胎児機能不全といった深刻な状態に陥ることもあります。
食べすぎや塩分摂取量の多さだけが妊娠高血圧症候群の原因ではありませんが、塩分のとりすぎはむくみや血行不良にもつながります。妊娠中は摂取カロリーおよび塩分摂取量に十分注意することが必要です。※参照1
キムチの匂いが気になる
キムチには独特の匂いがあります。つわりになると匂いに敏感になる妊婦が多く、食べ物の匂いを嗅いだだけでムカムカして吐いてしまう方もいます。
妊娠前には平気だった食べ物も、つわりが始まった途端に我慢できないほどの嫌悪感を感じることも少なくありません。キムチに含まれるにんにくや唐辛子の匂いは強く、匂いつわりが始まった妊婦は強い匂いのする食べ物が食べられなくなるようです。
これとは反対に、つわりによる嗜好の変化により、キムチやカレーといった強い匂いのある食べ物が欲しくなる妊婦もいます。つわりによる食べ物の好みの変化は、ひとりひとりの妊婦により異なりますが、匂いに敏感になる傾向が顕著で、大多数の妊婦は妊娠前に比べると食べ物の匂いに敏感になります。
妊婦がキムチを食べる際の注意点
妊婦がキムチを食べる際に注意したい点について以下に詳しくみていきまょう。キムチは基本的に塩辛い食べ物ですので、辛さと塩分控えめなものを選ぶことがポイントです。どのような点に注意しながら食べるとよいのか、詳しく説明してみましょう。
マイルドな辛さのものを選ぶこと
辛味の強いキムチはなるべく避けるようにしましょう。とくに妊娠前から辛いものに弱い方が急に辛いものを食べると、胃腸がこれに耐えられず下痢や胃痛といったマイナートラブルを引き起こすことがあります。辛いものがお好きな方も妊娠中は激辛なものは避けたほうが無難です。
塩分を摂りすぎないように工夫すること
妊娠中は塩分の摂取量を控えることが大切です。キムチの塩分量はかなり大目ですので、そのまま食べる際には量を控えめにしましょう。
キムチを付け合わせではなく、キムチ鍋やキムチチャーハンとして食べる際には、キムチ以外の調味料の塩分を控えめにすると、簡単に減塩できます。
栄養バランスを取りながら食べること
キムチを食べる際には栄養バランスを考え、献立を考えるようにしましょう。キムチは発酵食品で健康に良い効果をもたらしますが、栄養バランスの整った食事メニューにするには、その他の食材を上手に取り入れる必要があります。
上に挙げたようにキムチ鍋、キムチチャーハン、キムチ雑炊にする場合には野菜をたっぷり入れ、その上で肉や魚介類などお好みの具材を加えるようにすると、栄養バランスの取れたメニューになります。
妊婦と食べ物の制約について
妊娠中は食べ物に若干の制約が出てきます。妊娠前には食べてもとくに問題のない食べ物でも、妊娠中に食べるとおなかの赤ちゃんの悪影響を及ぼすものもあります。
妊娠中に控えたほうがいい食べ物の代表は生卵や生魚など。また生ハムなどの加工食品を食べる際には鮮度や保存状態に、またビタミンAを多く含むレバーやうなぎを食べる際には量や回数に十二分に注意しなければなりません。
他にもアルコールやカフェイン、水銀を多く含む魚、子宮収縮作用のあるハーブなど、妊婦が食べる際に注意が必要な食べものや飲み物はたくさんあります。妊娠したと分かったら食事メニューを見直し、おなかの赤ちゃんに悪影響を与える可能性のあるものはできるだけ控えましょう。
キムチに関するいろいろ
唐辛子の辛味と乳酸菌の酸味の絶妙なバランスで人気のキムチ。キムチとは白菜などの野菜を、唐辛子やにんにくをはじめとする香辛料、魚介の塩辛などで作った調味液で漬けた漬物で、韓国料理の付け合せとしていただきます。
そのまま付け合せとして食べるだけでなく、豚キムチ、キムチチャーハン、キムチ雑炊、キムチ鍋、キムチラーメンなど、キムチを具材や調味料代わりにアレンジしたメニューも人気。辛味と酸味の効いたキムチはいろいろなレシピに応用されています。
キムチとはそもそも野菜の漬物という意味で、本場韓国ではいろいろな野菜を使ったキムチが作られています。日本でキムチといった場合、白菜で作られたキムチを指しますが、白菜以外にも大根、きゅうり、ねぎなどの野菜で作られたキムチもあります。
キムチに含まれる栄養成分
妊婦はキムチを食べないほうがいいといわれる理由について挙げてみましたが、キムチには妊婦に嬉しい栄養素もたくさん含まれています。
今度はキムチを食べることにより得られるメリットについて挙げていきましょう。キムチはたくさん食べると塩分を摂りすぎてしまいますが、適度な量を食べることはむしろ良い効果もたくさんあります。
白菜の栄養成分について
キムチの主材料である白菜は95%までが水分、白菜のしゃきしゃきした食感は水分がたっぷり含まれているため。栄養素としてはビタミンKや葉酸をはじめとするビタミン群およびカリウム、カルシウム、モリブデンなどのミネラルを含んでいます。
白菜に含まれるビタミンやミネラルは、加熱調理することによりその多くが失われてしまいますが、その点キムチなら白菜の栄養成分をそのまま摂ることができます。
白菜はカロリーも低く、一玉分で約140カロリー程度。妊娠中は体重管理を適切に行うことが重要ですが、白菜はこの点からも理想的な食材といえるでしょう。
にんにくの栄養成分とは?
にんにくに含まれるアリシンにはビタミンB1の吸収をたすける作用があり、これにより疲労回復や滋養強壮抗酸化作用といった効能が得られます。さらに血行を促進し、免疫力も高めてくれるはたらきがあり、妊婦にとってメリットのある食材のひとつです。
にんにくの栄養成分として多く含まれるのはビタミン群ではビタミンB6、ビタミンB6には皮膚や粘膜を健康に保つはたらきがあります。
唐辛子の効能と栄養素
唐辛子といえばカプサイシン。カプサイシンに多く含まれる成分はビタミン群ではビタミンEやビタミンB6、カリウムや亜鉛、銅、マグネシウムなどのミネラルも含まれます。
カプサイシンはアドレナリンの分泌を活性化し、発汗をもたらします。他にも疲労回復や食欲増進などの効果も期待できます。カプサイシンの摂取には、感覚神経を通じて胃酸の分泌を抑えるはたらきがあるとされますが、過剰に摂取すると胃の粘膜が荒れてしまいます。※参照2
キムチの効能について
キムチに含まれる食材の栄養成分や効能について挙げてみましたが、このようにキムチには女性にとって嬉しい効能がいろいろあります。
キムチは乳酸菌を含む発酵食品。乳酸菌には整腸作用がありますので、便秘の解消に有効です。胃腸の粘膜を適度に刺激することにより、消化が促進されます。
まとめ
妊婦がキムチを食べる際に知っておきたい情報をご紹介しました。白菜に唐辛子やにんにく、しょうがを加え、塩辛で熟成させたキムチは、ほどよい辛味と酸味で焼肉や韓国料理の付け合わせとして欠かせないマストアイテム。
唐辛子のカプサイシンに加えて、白菜やにんにく、しょうがなどの効能を味わえる発酵食品ですが、妊婦が食べる際にはいくつか注意する点があります。妊婦がキムチを食べる際のポイントは、辛味がマイルドなものを選ぶこと、そして塩分をとりすぎないよう食べる量や回数に注意することです。
※参照1 日本妊娠高血圧症候群学会 妊娠高血圧学会Q&A
※参照2 農林水産省 カプサイシンに関する情報
※ 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015版)策定委員会の報告の取りまとめ