胎嚢と心拍確認の時期と検査内容について知っておきたいこと

胎嚢と心拍確認の時期と検査内容について知っておきたいこと 妊娠初期

生理予定日を越えても生理がなく、1、2週間経過しても基礎体温は高温期を維持したまま。もしかして妊娠したのでは?と思い、市販の妊娠判定薬でチェックしたところ、結果は陽性。産婦人科で診察を受けたところ、胎嚢は見えたものの心拍が確認されず、もう一度再検査になってしまった。これってもしかして流産したの?と不安に駆られてしまう場面です。

心拍があるということは、妊娠が成立し、胎児が順調に成長していることを意味します。心拍確認は一回の検査でできることもあれば、二回目、三回目でようやくできることもあります。

心拍確認に関してはそのタイミングや流産との関係など、ぜひ知っておくべきポイントがたくさんあります。心拍確認の時期や検査について知っておきたいさまざまな情報をご紹介します。

妊娠反応陽性から胎嚢確認までの過程

妊娠反応陽性から胎嚢確認までの過程

心拍確認について詳しく見ていく前に、まずその前段階である胎嚢が確定されるまでの過程についてまとめてみましょう。生理予定日を一週間ほど過ぎても生理が始まらず、基礎体温も高温期が続いている。こんな場合は妊娠が疑われます。

生理予定日後に妊娠判定薬でチェック

生理予定日後に妊娠判定薬でチェック

市販の一般用妊娠判定薬は生理予定日の1週間後から使用できます。妊娠判定薬は尿中のhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)に反応し、陽性・陰性反応があらわれます。hCGは妊娠に伴い分泌されるホルモンで、着床が起こると分泌が始まり、妊娠4週目頃から尿の中に出てきます。

妊娠週の数え方は最終月経が始まった日が基準になりますので、生理予定日は妊娠4週目の始まりに当たります。すなわち市販の妊娠判定薬を使う頃は、妊娠4週の終わりから5週目にかけてということになります。

妊娠判定薬を使うにしろ、使わないにしろ、生理予定日から1週間過ぎても生理が始まらず、基礎体温も高温期が続いている場合、タイミングを見計らい産婦人科で診察を受けなければなりません。

産婦人科受診のタイミングと胎嚢確認

産婦人科受診のタイミングと胎嚢確認

妊娠しているかどうか、一日でも早く知りたいと思うのは当然ですが、あまり早すぎると超音波検査(エコー)で胎嚢を確認することができない場合もあります。胎嚢は妊娠5週目から6週目には確認できますので、婦人科を受診するタイミングはこの時期になります。

早すぎると胎嚢が確認されないこともありますが、あまり遅すぎるのも問題です。妊娠判定薬で陽性が出た、産婦人科での尿検査で妊娠反応が出た、にも関わらず、エコー検査で胎嚢が確認できない場合は、子宮外妊娠の可能性も否定できないからです。

胎嚢が確認できない原因とは?

胎嚢が確認できない原因とは?

胎嚢確認の時期にもタイミングがあり、妊娠4週目では見えないことが多く、妊娠5週になると見える可能性が高くなり、妊娠6週目になるとほとんどの場合見えるようになります。

ただし妊娠5、6週目でもまだ胎嚢が見えないこともあります。胎嚢が出来上がっていない、最終生理の数え違いなどがその主な原因ですが、子宮外妊娠や初期流産の可能性もあることを理解しておく必要があります。子宮外妊娠や流産が起こっているかどうかは、血液検査によるhCG値の高さや低さなども考慮に入れながら、慎重に行われます。

化学的流産(ケミカルアボーション)について

生理が遅れているので市販の妊娠判定薬でチェックしたところ陽性反応が。その後産婦人科で妊娠を確認しようと受診したところ、胎嚢が確認されない。これは化学的流産と呼ばれるもので、受精卵が一時的に子宮内膜に着床したものの、その後育たずに子宮外に流れてしまった状態を指します。

これは市販の妊娠検査薬の感度が飛躍的に向上したために起こる現象で、医学的な意味での流産ではありません。化学的流産の場合、受精卵が育っていませんのでそのまま子宮外に排出されます。自覚症状もなく、妊娠検査薬を使っていなければ、受精・着床が起こったことに気がつかないほどです。

胎嚢が確認できた場合

胎嚢が確認できた場合

妊娠5、6週目で胎嚢が確認できた場合、通常1、2週間後にもう一度検査を行い、心拍があるかどうか確認します。心拍確認の方法や時期、心拍確認後の流産の確率などについて以下に詳しく見ていきましょう。

心拍確認とは?

心拍確認とは?

心拍確認は妊娠を確定するのに必要な検査で、通常妊娠5週目から8週目にかけて行われます。エコー検査で胎嚢や胎芽(胎児)が確認された後、心拍確認を行うことで妊娠が完全に確定されます。

心拍確認ができれば一安心、とよく言われます。妊娠6週、7週になり心拍が確認できた、ということはこの段階まで胎児が無事に成長していることを意味します。

反対に胎嚢は確認できたけれども、心拍が確認できない場合には、一週間ほど時間を置いて二回目の検査を行い、心拍があるかどうか確認します。二回目の心拍確認検査でも心拍が確認できない場合は、再度日数を置いて三回目の検査を行うことになります。

心拍確認の検査と時期について

心拍確認の検査と時期について

心拍確認の検査法には経腹超音波と経膣超音波があります。経腹エコー検査はおなかの上から超音波を当てて胎児の様子を確認する方法で、正常妊娠の場合は早くて妊娠8週目頃から、一般的には妊娠中期に入ってから経腹検査が行われます。

経膣エコー検査のほうは、早い場合には妊娠5週目から確認できるようになります。経膣エコーの場合、胎児の頭臀長(CRL)が2mm以上になると超音波で確認できるといわれています。妊娠6週目になると経膣エコーによって、心拍が確認されることが多くなります。

心拍確認後の流産の確率について

心拍が確認されると一安心、という言葉をよく聞きますが、これは本当でしょうか?一安心という言葉には流産のリスクが減少するという意味がこめられています。

流産の確率について

流産が起こる確率は全妊娠件数の約15%といわれ、妊婦さんの年齢が高くなるとともに流産が起こる確率は高まっていきます。

また流産の大多数は妊娠12週目までに起こる早期流産で、早期流産が流産全体に占める割合は約80%にのぼります。早期流産は胎児側に問題があるケースがほとんど、染色体異常や先天性の問題により自然に流産が起こる、いわば自然淘汰になります。

妊娠8週目以降に行われる経腹エコー検査で心拍が確認された場合、その後の妊娠の経過は95%から99%以上の確率で良好といわれています。

これとは対照的に、経膣エコーで心拍が確認された後の流産の確率は16%から36%と高くなっています。経腹エコーによる心拍確認後は確かに一安心といえますが、経膣エコーによる心拍確認のほうはまだもう少し注意が必要な状況が続きます。※参考1

超音波による心拍確認の検査方法について

超音波による心拍確認の検査方法について

超音波による検査は妊婦定期健診で必ず行われます。エコー検査には経腹と経膣の2種類の方法がありますが、一般的には妊娠初期は経膣エコー、そして妊娠中期以降には経腹エコーが行われます。

妊娠初期に経腹エコーではなく、経膣エコーが行われるのは、赤ちゃんがまだ小さく、おなかの上からでははっきりとその様子が把握できないため。子宮により近い膣から検査することで、赤ちゃんの心拍や位置、大きさを確認することができます。経膣エコー検査のやり方について見ていきましょう。

経膣エコー検査の方法

経膣エコー検査の方法

経膣エコー検査の回数は頻度は病院によって異なりますが、一般的には妊娠5、6週目、および妊娠9週から11週目にかけての計2回行われます。最初の検査で心拍が確認されなかった場合、再度検査が行われます。

検査用の棒状プローブにゼリーを塗り、これに膣内に挿入します。経膣エコーのメリットは子宮の側近くから胎児・胎芽を観察できること。妊娠初期の検査では心拍確認以外にも、単胎か双胎か、妊娠週および分娩予定日、胎嚢の位置などを確認します。

妊婦さんは内診台で検査を受けますのでちょっと緊張される方もいるようですが、超音波検査ですので痛みはありません。上に挙げたもの以外にも、子宮筋腫や卵巣腫瘍の有無なども観察され、今後の妊娠に対して影響を与えるかどうかが確認されます。

経腹エコー検査の方法

経腹エコー検査の方法

経腹エコー検査はおなかにゼリーに塗り、プローブを当てて胎児の様子を確認します。経腹エコー検査はおなかの赤ちゃんが大きくなる妊娠12週以降に行われます。

妊娠初期の場合は経膣エコーのほうが子宮の中に様子が鮮明に見えますが、経膣エコーは狭い範囲しか観察することができません。したがって胎児が大きくなり、それにつれて子宮も大きくなってくる妊娠中期には、広い範囲を検査できる経腹エコーが適しています。

エコー検査で心拍が確認されない原因とは?

妊娠5、6週目のエコー検査で心拍が確認されなかったので、もう一度来週検査を行います、と医師に告げられると、もしかして流産したのでは?と気持ちが動転してしまいます。

通常、妊娠6、7週目にもなると心拍が確認できる場合が多いのですが、妊婦さんの中には妊娠8週目になってようやく心拍が確認された、という場合もあります。心拍がなかなか確認されない理由についてみていきましょう。

最終生理の日にちの思い違い

最終生理の日にちの思い違い

妊娠週は最後に生理が始まった日にちを起点にしていますが、この最後の生理開始日を思い違いしている場合、計算上の妊娠週と実際の妊娠週の間にずれが生じます。

最後の生理開始日の思い違いだけでなく、生理周期が不規則で排卵日が正確に把握できなかった場合にも、妊娠週の計算にずれが生じることがあります。

稽留流産のため

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稽留流産とは子宮の中で胎児が死亡してしまった状態を指します。胎児が死亡しているにも関わらず、おなかの痛みや出血といった症状が出ていないため、自覚症状がありません。

稽留流産は尿検査や血液検査で妊娠反応があったものの、胎嚢確認や心拍確認ができないことにより発覚することが多く、子宮の内容物が残っている場合には、これを除去する手術が必要になります。

また最初のエコー検査で心拍が確認されたにも関わらず、その後心拍がなくなった場合も稽留流産と診断されます。

胎児の心拍について

胎児の心拍について

胎児の心拍数は妊娠週によって変化します。妊娠初期の胎児の心拍数は、妊娠5週目で90-100bpm、その後9週目までどんどん増加し続けます。9週目で170-180bpmとピークを迎えた心拍数は、その後徐々に少なくなり妊娠16週目で150bpmに落ち着きます。

胎児の心拍の正常値は110-160bpmですが、胎動などに伴い多少の変化が起こります。また妊娠初期には心拍数が徐々に増加していきますので、心拍数が一時的に正常値の範囲外になったからといって、心拍に異常があるとは限りません。参照1

心拍確認と母子手帳の交付

心拍確認と母子手帳の交付

妊婦さんの定期健診に欠かせない母子手帳。妊娠したらお住まいの地区の役所から母子手帳の発給を受けることになります。母子手帳をもらうタイミングですが、これは受診している産婦人科のほうから指示がありますので、それに従うようにしましょう。

母子手帳は原則として妊娠している女性全員に交付されるものですが、妊娠初期は流産の可能性もあるため、実際にはエコーによる心拍確認ができてから母子手帳をもらうパターンが一般的です。母子手帳には出産予定日を記入する欄もあることから、超音波検査で妊娠週をしっかり把握した後に母子手帳をもらったほうが便利です。

尿検査・血液検査による妊娠反応、胎嚢確認、そして心拍確認により、妊娠の成立と継続が確定されたら、それ以降の定期健診日等が決められます。母子手帳は医師の指示に従って、早めに交付を受ける手続きを行いましょう。

心拍確認後の体の異常

心拍確認後の体の異常

心拍確認後におなかの痛みや出血があったら、流産の可能性もありますのですぐに病院に連絡するようにしましょう。おなかの痛みや出血を伴う流産は進行流産と呼ばれています。子宮頸管が開き、いったんは確認された心拍がなくなり、胎児が子宮の中に存在しないことが確認されたら、流産を止めることはできません。

妊娠初期であれば胎児はまだそれほど大きくなっていませんので、出血の量も少なく、自然に子宮の内容物がすべて排出されることもあります。子宮の内容物がすべて排出された状態を完全流産、内容物が一部残っている状態を不全流産を呼びます。不全流産の場合は掻爬手術を行い、内容物をすべて排出させることになります。

まとめ

心拍確認の時期や検査について妊婦さんが知っておきたい情報をいろいろと紹介しました。妊娠反応があり、胎嚢も確認されたにもかかわらず、心拍が確認されないと妊婦さんの気持ちは動顛してしまい、流産したのでは?と不安に駆られます。

通常心拍は妊娠5週から7週目頃に確認されますが、妊娠週の計算違いなどにより、もう少し後にならないと心拍が確認されないこともあります。心拍が確認されないので、また来週もう一度検査しましょうと医師にいわれると心配になるのも無理はありませんが、あまり心配せず気持ちをリラックスして、次回の検査日まで待ってみましょう。

※参考1 日本産科婦人科学会 妊娠初期の超音波検査

※参考 日本産科婦人科学会 流産・切迫流産