妊娠がわかり、幸せいっぱいのはずなのに、なぜか気分が落ち込んでしまう。そんな方は妊娠時に発症しやすい「うつ」なのかもしれません。
女性はもともと、うつを発症しやすいこともありますが、妊娠中にうつを発症する女性も多いのです。そこで、妊婦、妊娠、うつについて、詳しくご紹介していきましょう。
妊娠中のうつの原因と症状とは?
妊娠中の女性の多くが程度に限らず、うつを経験すると言われています。これは、妊娠により身体にたくさんの変化が起きてしまうからです。
通常、生理が近づくとイライラしたり、気分が落ち込んだりしますが、これはホルモンの作用による影響なのです。妊娠すると女性ホルモンが活発化して胎盤を作り身体を守ろうとする作用が強くなります。
今まで体験したことのない身体の変化に戸惑い、うまく受け止められない方が、うつになってしまうのです。
妊娠のイメージと現実とのギャップ
妊婦を対象とした妊娠・出産雑誌やサイトは非常に多いですが、そこに書かれているのはほとんどが「妊娠して幸せ」「赤ちゃんを産むのが待ち遠しい」といったポジティブ意識を持った妊婦ばかりです。
もちろん妊娠の大変な部分も書いてありますが、初産婦で出産の経験が無い方はどうしてもポジティブ面ばかりを見て「妊娠=素晴らしい事」というイメージが出来てしまいます。
しかし実際にはつわり・便秘・イライラ・妊娠線などトラブルばかりに見舞われるので、自分がイメージしていた妊娠生活と現実のギャップが大きい人ほど「こんなはずではなかった」「自分が悪いに違いない」と落ち込み、うつ状態になる確率が上がるのです。
裏には病気が隠れている場合も
やる気が出ない・ボーっとしてしまう・急に動くとめまいがする、という症状に悩まされている方は自分でも「もしかしたらうつかも」と思ってしまいがちです。
しかしそんな症状の場合は、実はうつではなく鉄欠乏性貧血の可能性が高いのですが、鉄分不足はセロトニンやドーパミンなどやる気をアップさせるのに欠かせない神経伝達物質の不足につながり、うつ状態をつくり出してしまうからなのです。加えて低血圧や頭痛・腰痛・便秘・氷食などが加われば、更に貧血の可能性が高まります。
妊娠中の血液検査でヘモグロビン量に問題が無くとも血液中に存在するフェリチンという鉄を貯蔵するタンパクが減少すると、鉄欠乏性貧血が進行中という事なので、思い当たる方は医師に相談し適切な処置をしてもらいましょう。
うつ状態は自分だけではない
妊娠中は体調や心理状態が大きく変化するので、妊娠前は普通に出来ていたあれこれが出来なくなるのは当たり前の事です。しかしそんな状態の自分を許せなかったり、今までに無い心身の変化に非常な不安を覚える方がうつになりやすい傾向にあります。
特に妊娠中は出かけたり人と会う機会が減りますから、そんな風になるのは自分だけと気持ちの下降に歯止めが効かなくなってしまう事もあります。
しかし、妊娠中にうつ状態になる妊婦は15%と意外に多く、表面からはあまり見えないだけで多かれ少なかれ妊婦は何かしら不安や悩みを抱えているのです。
妊娠中うつになりやすい人とは?
妊娠中は、今までとは違う体験を数多くすることから、うつ状態になりやすくなります。しかしうつになる妊婦もいれば、うつにならない妊婦もいます。この違いはどこにあるのでしょうか。
比較的、うつになりやすい妊婦の場合、几帳面な性格の方が多いようです。ひとつひとつを丁寧に行っていくからこそ、できないことに自信をなくし、うつになりやすくなってしまいます。
今まで仕事や家事をバリバリこなせていた方こそ、妊娠を機にできなくなったことを受け入れられず、うつになってしまうのです。
うつの進行
妊娠中は几帳面な性格の方ほど、うつを発症しやすくなります。うつは自分自身ですぐにどうにかできるものでもありませんので、周囲のサポートが必要不可欠です。うつの症状がどんどん進行していくと、最悪の事態を引き起こしかねません。
妊娠初期の頃につわりがひどく、うつ状態になってしまった女性が中絶を行ったり、出産を控えた妊婦が、自信がないと自ら命を絶とうとしたりするケースも珍しくありません。このようなことを避けるためにも、辛い時は辛いと言えるようにしておくことが大切です。
妊娠初期のうつ
妊娠初期の頃は、妊娠中の中でも最も変化激しく戸惑う時期でもあります。女性の身体から母親の身体へと急激に変化していくため、つわりや貧血、めまい、眠気、むくみなどの症状を引き起こしてしまいます。
特につわりがひどい妊婦の場合、あまりにも何度も履いてしまうことから徐々に気分が落ち込み、赤ちゃんがいるにもかかわらず食べることができな自分を責め始めてしまうことがあります。そして自分は母親として食べることもできないと、どんどん気持ちが沈み、うつになってしまうのです。
眠気とやる気
妊娠初期にはつわりが出やすく、ひどい方は全く食べられずに点滴を受ける方もいらっしゃいます。ほかにも貧血やむくみなどさまざまな症状が現れますが、眠気もうつを引き起こしやすい症状のひとつです。
妊娠初期はホルモンの影響からとにかく身体を安静にさせようと眠気が出やすくなりますが、眠ってばっかりいると周囲に申し訳ないと感じたり、家事のやる気がないように見られたりしないかと、気分を落ち込ませてしまうのです。眠気は自分自身でコントロールできない部分も多いため、どんどんと自分を責めてしまい、うつを引き起こしてしまいます。
妊娠中期のうつ
妊娠中期は、つわりや眠気も治まり、比較的気分が晴れている時期だとされています。妊娠初期の頃にうつ状態だったという方も、回復することが多いので、妊娠初期のうつ状態が長引かないかと過剰に心配する必要はないと言えます。
ただ、妊娠中期にもうつを発症する方はいらっしゃいます。それが、体重管理の影響です。
体重管理の厳しさ
妊娠中は、できる限り体重管理をして太り過ぎないように注意する必要があります。急激に太ると、赤ちゃんに影響が出やすくなりますし、物理的に身体が重たくなるので腰痛やむくみを発生させてしまいます。
太らないようにと注意すべきなのですが、妊娠中期になると、つわりから解放されるため、必要以上に食べ過ぎてしまうことがあるのです。管理しなければならないのに、また食べ過ぎてしまったと落ち込み、徐々にうつになっていってしまいます。
妊娠後期のうつ
お腹が大きくなってくる妊娠後期もうつが起きやすい時期です。この頃になると出産準備も始まり、徐々に出産予定日が近づいてくることから、緊張感が高まってきます。陣痛はどれくらい痛いのだろうか、うまく出産することができるだろうかと、不安が一気に押し寄せてうつになってしまうのです。
特に初めての出産が控えている場合、情報だけでしか出産を知らないため、より強く不安を感じてうつになりやすくなってしまうのです。
うつを未然に防ぐ
うつが発症すると、周囲のサポートなしでは回復できないケースが多くなります。ただ、うつになり始めているかもと感じた時は、自分で進行を止めることもできます。
気分が落ち込んでいるなと感じたら、積極的に気分転換を図るようにしましょう。外へ散歩に出かけたり、好きな映画を見に行ったりすることでリフレッシュに繋がります。
においに敏感な時期でなければ、好きなお花を飾るのも良いでしょう。花の色や香りには癒し効果があるので、お部屋に1輪飾っておくだけでも気分が明るくなります。
周りの無理解が原因のうつの対処法
妊婦に起きる沢山のトラブルは、周りにはどれだけ言っても理解してくれないものです。妊娠・出産を経験した自分の母親であっても、自分の時はそんな風ではなかったと共感よりも批判されるパターンも多々あります。
また、妊娠初期はまだまだ妊婦の体型ではありませんから、何故そんなに動けないのかと言ってしまうパートナーもいるかもしれません。このような周りからの意見をまともに受け止めてしまうと、お母さんの精神面だけでなくお腹の赤ちゃんの成長にも非常に悪影響を及ぼします。
このような意見にはつい反発してしまいたくなりますが、なるべくスルーして忘れてしまうのが一番です。どうしても気になる場合は検診に一緒に連れて行き、先生から説明してもらうのも良いでしょう。
ひとりで悩まないように
妊娠中のうつは、ひとりで悩みを抱えてしまうことから引き起こされます。辛い時は辛い、不安な時は不安だと周囲に話すことも大切です。完璧主義者の方や、負けず嫌いの方の場合、まわりの人たちに助けを求められないということもあるでしょうが、あなた自身のためだけでなく赤ちゃんのためにも声を上げることは大切です。
パートナーや家族、親しい友人などにSOSを出せるようにしましょう。一度話してみると思った以上に気持ちがすっきりとします。出かけられない体調の時も、電話やメールでコミュニケーションをとることで、気持ちが少しずつ変わってくるでしょう。
お医者さんに相談
妊娠中に気持ちが落ち込むようなことがあれば、お医者さんに相談することも大切です。どうしても気分が落ち込んでしまう、うまくいかないという気持ちを話すことで、よりよい対処法をアドバイスしてくれるからです。
体調により引き起こされるうつなら、お医者さんが的確なアドバイスで症状を緩和させてくれることでしょう。お医者さんは妊娠に関するあらゆることに詳しいので、妊娠中にうつが発症しやすいのもよく理解しています。
専門家に相談する場合は産婦人科医と連携が取れる方がベスト
うつの症状を何とかしたいと思う時は、心療内科など専門家に相談するのも良い方法です。妊婦と心療内科はあまり関連するイメージがありませんが、妊娠前から通院している方も多いため、妊娠中のうつを上手くやり過ごす方法を提案してくれるので、治療ではなく話しをしに行くつもりで受診してみてはいかがでしょうか。
また、心療内科を選ぶ時は産婦人科医と連携が取れる所がベストです。状態が酷い時などは妊娠週数や心身の状態を見て投薬を決定する場合もあり、そんな時には心療内科医と産婦人科医の情報交換が欠かせないからです。出来るならば、まずは産婦人科医に相談して診療内科の紹介状を書いてもらうのがよいでしょう。
妊娠中でも抗うつ薬は使用できる?
妊娠前から抗うつ薬を使用している方が妊娠を望む場合は、薬の服用を止めて数ヶ月体調を見てそれから、という指示をする医師が多いです。それはひとえに、抗うつ薬の影響で胎児の催奇性への影響が考えられるからです。
特に妊娠4週から12週までは器官形成期という胎児にとって最も大事な時期にあたるため、心身への作用が強い抗うつ薬は使用できないとなっています。
よって妊娠中にうつになった場合はゆっくり休むしか対処法は無いのですが、中には安定期の5ヶ月目から様子を見て少量ずつ抗うつ薬を服用し胎児に何の問題もなく出産できた方もいるので、全くダメという訳ではないようです。服用に関しては医師と充分に相談する事が大事です。
情報収集は適量に
初めての妊娠だと、あれこれ情報収集したくなるものです。しかし妊娠に関する情報はポジティブなものばかりではありません。流産などのネガティブな情報もたくさん出てくることでしょう。
情報を集めるたびにネガティブな情報を読んでしまっていると、不安が増幅されてうつになりやすくなってしまいます。
情報収集することは大切ですが、大体の大枠だけにとどめておきましょう。細かな情報を知ってしまうと、その通りに実行しなけえばと几帳面さが出てきてしまいます。曖昧な状態な方が、気持ち的にも楽に過ごせることが多いのです。
まとめ
妊娠とうつの関係などについてご紹介しました。身体の変化が大きく戸惑うことも多い妊娠期間中ですが、周囲のサポートがあれば、うつは必ず克服することができます。
また妊婦自身も完璧にすべてのことをやり遂げようとせず、曖昧さを認められるようになれば、うつも遠のいていくでしょう。可愛い赤ちゃんに出会えることを一番の楽しみにして、今の貴重な時間を目一杯楽しんでください。