妊娠中期は安定期とも呼ばれ、この頃になると大多数の妊婦はつわりが一段落します。しかし第二のつわり、後期つわり、二回目のつわりなどと呼ばれる妊娠中期以降の吐き気。
妊娠初期のつわりが辛いのは一般的には安定期に入るまで。「安定期になるまでの辛抱だから、もう少し我慢して」と周囲の方に励まされて、なんとかつわりを乗り切ったという妊婦も多いでしょう。実際にほとんどの妊婦は妊娠中期に入るとつわりによる吐き気やムカムカはおさまり、気分もよくなってきますが、中には妊娠中期に入ってもなお、吐き気や胃のムカムカに悩まされる方もいます。
妊娠中期の吐き気について、その症状や原因、そして対処方法など、妊娠初期の吐き気との違いや注意点などぜひ知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。
妊娠中期の吐き気について
妊娠中期に入ったのにまだ吐き気を感じる。これってまだつわりなの?と悩んでしまう妊婦は意外に多いようです。妊娠中の吐き気というと妊娠初期のつわりを思い浮かべますが、実際には妊娠中期以降も吐き気を感じる妊婦は大勢います。
妊娠中期以降に感じる吐き気は、第二のつわり、後期つわり、二回目のつわりといった言葉で呼ばれています。これは医学用語ではなく一般的な俗称で、妊娠中期以降につわりに似た症状が再びあらわれることから、このような名称が用いられています。
妊娠初期のつわりと妊娠中期の吐き気の違いとは?
妊娠初期のつわりによる吐き気と、妊娠中期の吐き気の違いはどのようなものでしょうか?妊娠初期のつわりの典型的な症状とは、吐き気、ムカムカ、眠気、倦怠感、唾液量の増加、頭痛、匂いに敏感になること、食べ物の嗜好の変化、食欲不振など。つわりとしてどんな症状があらわれるか、つわりの度合い、始まる時期やおさまる時期などは、一人一人の妊婦によって異なります。
妊娠中期以降にあらわれるつわりに似た症状に関しても同様で、どんな症状が出るかは、妊婦ひとりひとりの体質や妊娠の経過などによって異なります。
第2のつわりとして一般的なのが吐き気、胃痛、胸焼け、げっぷ、めまいなど。吐き気は妊娠初期のつわりと共通していますが、それ以外に関しては妊娠初期のつわりとは明らかに異なる印象を受けます。
妊娠初期のつわりの原因とは?
妊娠初期のつわりの原因に関しては、いまだに医学的に解明されたわけではありませんが、妊娠を機に起こるホルモン分泌の変化になんらかの関係があると考えられています。
妊娠の成立を機に分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピンや、妊娠中に分泌の増加する女性ホルモンの分泌変化、自律神経のバランスの崩れ、流産を避けるための反応など、つわりの原因としていろいろな説が考えられています。
妊娠中期の吐き気の原因と症状
赤ちゃんの成長 子宮が胃腸を圧迫
妊娠中期の吐き気の原因とは何でしょうか?妊娠中期以降に生じる吐き気の主原因は、赤ちゃんの成長とともに大きくなった子宮が胃腸を圧迫するためと考えられます。
妊娠中期に入ると子宮は急激に大きさを増し、これにより子宮の周辺にある胃、膀胱、大腸は圧迫されてしまいます。げっぷ、胃痛、吐き気などは胃が圧迫されることにより起こる症状。
これに対して膀胱が圧迫されることからは頻尿や尿漏れが、また大腸が圧迫されることからは便秘や痔などの症状があらわれます。また横隔膜も圧迫され、少し体を動かしただけで動悸や息切れがすることもあります。
貧血によっても吐き気やめまいが生じる場合があります。貧血は女性に多くみられる症状ですが、妊娠中もまた貧血の症状が出やすくなっています。
妊娠中期の貧血による吐き気
妊娠中は血漿の増加の割合が高く、血液がいわば薄まった状態にあります。妊娠初期のつわりで十分な鉄分が摂取できないまま安定期に入ったため、妊娠中期にも貧血の症状がでる妊婦もいます。
妊娠中は定期健診の際に血液検査が行われますので、貧血が見逃されることはありませんが、妊婦のほうでも毎日の食事の内容に配慮することが必要です。
貧血の症状にはめまいや動悸、息切れ、倦怠感、頭痛などがあります。貧血の症状として吐き気がでるのは、かなり症状が進んでからですが、頭痛やめまいといった症状につられて吐き気やむかつきを覚えることもありますので、吐き気とともにめまい、頭痛、倦怠感、食欲不振、動悸といった症状があれば、貧血を疑ってみましょう。妊娠中は普段にもまして積極的に鉄分を摂ることが大切です。
便秘が原因の吐き気
便秘は妊娠中によくあるトラブルのひとつで、妊娠前は便秘になったことがなかった方でも悩むほどです。よくあるトラブルであるがゆえに便秘は軽く考えられがちですが、程度がひどければお腹の張りや難産の原因にもなりかねない、深刻な事態に発生します。
妊娠中期はますます赤ちゃんが成長してお腹が大きくなりますが、便秘だと普段以上に子宮や内臓を圧迫することになり、そうなると胃液が逆流して胸のむかつきや吐き気につながります。
妊娠中に市販の便秘薬は使えないので、便秘がひどい時は病院の便秘薬を処方してもらう、食事内容を見直す、運動する、など毎日の習慣で緩和していくようにしましょう。
妊娠中期の食べ過ぎのリスク
妊娠中期は安定期とも呼ばれ、妊娠初期に辛かったつわりが一段落し、食欲も沸いてくる時期。妊娠初期に比べると流産のリスクも減少しますので、身体的な負担だけでなく、精神的にもかなり楽になってきます。
妊娠初期はつわりがひどく、食べたいものも満足に喉を通らなかった、という妊婦の中には、安定期に入りつわりがおさまった途端に、これまで我慢してきた分を一気に取り戻そうと暴飲暴食に走る方もいるようです。食欲が沸いてしまい、つい食べ過ぎてしまうのは仕方ありませんが、妊娠中期の食べ過ぎはトラブルのもの。
すでに述べたとおり、妊娠中期は子宮がぐんと大きさを増す時期で、食べ過ぎていなくても胃が圧迫されています。その上好きな食べ物を好きなときに好きなだけ食べていると、胃酸が逆流するのは当たり前。
食べ過ぎによる胃酸の逆流から吐き気や胃痛が起こるだけでなく、一日の摂取目安量をオーバーし、体重管理に失敗してしまうおそれも。妊娠中の体重管理の失敗は、マイナートラブルだけでなく、妊娠高血圧症行群や妊娠糖尿病につながるおそれがあります。安定期に入りつわりがおさまったからといって、暴飲暴食するのは絶対にやめましょう。
吐き気以外の胃腸のマイナートラブル
妊娠中期に吐き気以外に生じるマイナートラブルについていくつか挙げてみましょう。
大きくなった子宮が胃を圧迫し、これにより胃酸や胃の内容物が逆流。ムカムカと気持ちが悪い、常にげっぷが出そうな感じ、酸っぱいものが喉もとにこみ上げてくる、吐き気がする、胃もたれがする、胸焼けがする、みぞおちに違和感がある、胃がきりきりと痛いなどの胃腸のトラブルが多いことが、妊娠中期のトラブルの特徴といえるでしょう。
ムカムカと吐き気がすることから、妊娠中期になって再び食欲不振に陥る妊婦もいます。妊娠中期に起こる胃腸のマイナートラブルは、妊娠の状態が原因で起こる生理的なもので、これらを完全に予防することは難しいといえるでしょう。
ただし食事の仕方や内容を工夫することにより、吐き気や胃痛を多少なりとも緩和することは十分可能です。妊娠中期のマタニティライフをできるだけ快適に過ごすためには、胃腸のトラブルの対処法をしっかり心得ておくことが大切です。
妊娠中期の吐き気の対処法について
妊娠中期の吐き気の防止や緩和に効果的な方法についてみていきましょう。吐き気や胃痛は想像以上に辛いもの。
大きくなった子宮に胃腸が圧迫されるのは仕方ないことではありますが、だからといって何も対処法を考えずにいると吐き気はどんどん増すばかり。吐き気からめまいや頭痛が連鎖的に派生することもありす。吐き気に対する効果的な対処法について詳しく挙げていきましょう。
満腹になるまで食べない
おなかが空いたからといって、満腹になるまで食べ続けることは勧められません。いくらおなかが空いていても、おなかが満腹になるまで飲み食いするのは絶対にNG。妊娠中期以降は腹八分目にとどめておきましょう。
一度に食べる量を制限する
一度にたくさんの量を食べることは、胃酸過多や胃酸・胃の内容物の逆流につながります。食事を取る際には食事の量やカロリーを前もって計算しておくと食べ過ぎを防止できます。
食事の量を減らしたくない場合は、食事の回数を増やすことでバランスを取りましょう。一度に食べる量を減らしながら、同時に食べる回数を増やすことにより、胃腸に対する負荷を少なくすることが可能です。
消化によい食べ物を食べる
胃腸に余分な負担を与えないためにも、食べ物は消化によく、柔らかな食材を選ぶようにしましょう。刺激物や消化に時間のかかるものはできるだけ避けたほうが安心です。
揚げ物やカロリーの高いこってりとした食べ物は、消化・吸収に時間がかかり、胃腸に余計な負担を与えてしいます。妊娠中の食事は、消化のよいあっさりとしたものを選ぶことがポイントです。
極端に辛いものや甘いものはできるだけ避けましょう。冷たいものも同様で、胃腸に負担をかけるだけでなく、体を冷やす原因にもなります。妊娠中期に吐き気を感じたら、まず行うのは胃腸に優しい食べ物を選ぶことです。
ゆっくり噛んで食べる習慣をつける
噛まずに飲み込んでしまうことも胃腸トラブルを招く一因になります。忙しいときもゆっくり噛んで食べる習慣をつけるようにしましょう。
胃酸の分泌を高める食べ物を避ける
食べ物の中には胃酸の分泌を高めるものがあります。どんな食べ物がこれに当たるかというと、甘みのつよいもの、辛いもの、塩味のきいたもの、カフェインの入った飲み物や炭酸飲料、アルコール、酸味の強いものなどは、胃酸の分泌を高めます。
これらの食べ物を完全に避ける必要はありませんが、過度の摂取は胃腸に負担をかけてしまいますので、摂取量や回数に配慮し食べるようにしましょう。
食事時間をできるだけ規則正しく保つ
食事と食事の間の時間が空きすぎる、就寝前にたっぷり食べてしまう、一食抜いてしまう。このように食事時間がまちまちで不規則なのは望ましくありません。食事時間が不規則にならないよう、十分注意しましょう。
吐き気や胃もたれのせいで空腹感を感じにくくなることもありますが、食事の時間やタイミングはできるだけ一定に保つことがポイントです。
食後すぐに横にならない
食べたあとすぐに横になって休むのは控えましょう。胃の中身や胃酸が逆流する原因になります。食後しばらくは座った状態で休息を取り、胃がある程度落ち着いたら横になるようにしましょう。
胃やおなか周りを締め付けない
妊娠中期は子宮が急激に大きさを増す時期。衣服にも気を配り、胃やみぞおち、おなかの部分を締め付ける服装はできるだけ避け、ゆったりと体を覆う服を選ぶようにしましょう。
体を締め付ける服装は胃痛や吐き気を催す一因になるだけでなく、血行不良やむくみにもつながります。
ストレスを溜めないようにする
妊娠中は行動や食事に大きな制約を受けます。また妊娠中には体と心に大きな変化が起こり、それについていけず、知らず知らずのうちにストレスを溜める妊婦もいます。精神的なストレスは自律神経のバランスを崩す原因のひとつ。吐き気やめまい、肩こり、手足のしびれ、倦怠感、頭痛など、さまざまなマイナートラブルが発生します。
ストレスや精神的なプレッシャーをひとりで溜め込まないよう、ストレス発散につとめましょう。ストレスによる自律神経の乱れは、体全体の調子を狂わせます。妊娠中だからといって無理や我慢ばかりせず、自分の好きなことをする時間を積極的に作り、気分転換でストレスをすっきり解消しましょう。
吐き気がひどい場合は病院で診察を受ける
妊娠中期の吐き気がひどく、食事を思うように取れない場合は、迷わず産婦人科で相談しましょう。吐き気や胃痛が辛いからといって、自己判断で市販薬を服用するのは控えてください。軽い吐き気であれば心配いりませんが、吐き気がひどく、どうしても食欲が沸かない場合は問題です。
妊娠初期のつわりのときには食欲不振のため体重が減少してしまうこともありますが、妊娠中期の体重減少は要注意。体力を消耗してしまい、体調をこわしす原因になります。吐き気が強く、繰り返し起こる場合には、早めに病院で診察を受け、必要であれば薬の処方を受けましょう。
まとめ
妊娠中期の吐き気についていろいろな情報をご紹介しました。妊娠中の吐き気は安定期に入るとおさまることが多く、妊娠中期には食欲も出て体調が良くなった、という妊婦がいる一方で、出産前までずっと吐き気が続いた、という妊婦もいます。妊娠と吐き気はムカムカは妊娠初期だけでなく、妊娠中期以降にも起こる可能性があることを覚えておきましょう。
妊娠中期の吐き気の主原因は大きくなった子宮による胃腸の圧迫。胃腸が子宮に圧迫されることにより、胃痛、げっぷ、便秘、下痢、吐き気、めまいといった症状が出やすくなります。妊娠中期をできるだけ快適に過ごすためにも、妊娠中期の吐き気の原因と対処法についてしっかり把握しておきましょう。