妊娠するとつわりになったり体が思うように動かなくなったりと、その変わりようにびっくりされる方も多いのではないでしょうか。妊娠中のトラブルは様々ありますが、その中でも地味に痛いのが口内炎です。口内炎は生活習慣が乱れたり食事が偏った時に起こりますが、妊娠中は関係がないように思えます。
しかし実際は、妊娠中の体の変化が原因で口内炎を発症する妊婦さんが非常に多いです。そこで、口内炎になる原因やその対処法・予防法などを詳しくご紹介していきましょう。妊娠中のトラブルを一つでも減らすために、参考にしていただけたらと思います。
口内炎とは
口内炎とは、簡単に言えば口腔内の粘膜に炎症が起きる病気の総称です。頬の内側や歯茎・舌・唇など様々な場所に発生しますが、一度出来ると体調によっては完治するまで数週間かかることもあります。
よくあることだからと我慢したりつい市販薬を使いたくなりますが、塗り薬の中には妊娠中は避けた方が良い成分が含まれている薬もありますので、使用前に必ずかかりつけの産婦人科で使ってもよいかどうかを確認してからにしましょう。
口内炎の種類
口内炎というと「口の中に出来る白い痛いもの」というイメージがありますが、実際は炎症の原因によって症状の現れ方が異なることがあります。原因が変われば治療も異なりますので、市販薬で中々治らないという口内炎は、病院で検査をしてもらう必要がでてきます。それでは、口内炎の種類とその原因を見ていきましょう。
アフタ性口内炎
最も一般的な口内炎が、このアフタ性口内炎です。頬の内側・歯茎・唇・舌を口腔内の様々な粘膜上に発生する炎症で、中心が白く周囲が赤くなっていてはっきり分かるのが特徴です。
食べ物が触れると強い痛みがあり、それが嫌で食事をしない方も多いでしょう。自然治癒で傷跡も無くきれいになりますが、アフタ性口内炎が出来る原因が改善されないと繰り返し発症することがあります。
カタル性口内炎
熱いものを急いで食べたり飲んだりすると舌や口内をやけどしてしまいますが、その後にやけどの痛みとは違った痛みや腫れを感じた方も多いのではないでしょうか。
やけどの傷から雑菌が入ると炎症を引き起こしますが、その状態をカタル性口内炎と呼びます。それ以外にも、義歯や矯正器具などが口の中の同じ場所に当たって出来る傷も、カタル性口内炎を引き起こす原因です。
アフタ性口内炎のように分かりやすい形状ではなく、傷から炎症や腫れが広がって、広範囲に赤や白のただれが認められるのが特徴です。
ヘルペス性口内炎・カンジダ性口内炎
発症率は低いのですが、ウイルスや真菌が原因の口内炎もあります。ヘルペス口内炎はヘルペスウイルスに感染して発症するもので、乳幼児の発生がほとんどです。しかし一度感染すると体内に存在し続けるので、疲れが溜まった時には成人でも発症しやすくなります。
この口内炎は口内だけでなく喉にも出来ることと、非常に強い痛みが特徴です。それから、口内には常在菌としてカンジダ菌がありますが、疲れが溜まると免疫力が低下して口内で繁殖します。口内で線状・面状に広がった白苔が最も特徴的で、悪化すると炎症を起こし痛みが発生します。どちらも進行を防ぐために、早期発見と病院での早い治療が大事です。
ニコチン性口内炎
日常的にタバコを吸う方や、ヘビースモーカーのみに起こりやすい口内炎です。タバコを吸う回数が多いと口内が乾燥し、菌が増殖しやすい環境を作り出し口内炎が発生します。
最初は上あごの粘膜に赤い炎症が起きますが、その後白くなり異常に硬くなる口蓋ニコチン性白色角化症という状態に進行します。喫煙していても妊娠を期に禁煙する方がほとんどの中、喫煙を続ける方もいますが、より口内炎が出来やすくなる状態であることを認識してください。
妊娠中口内炎になりやすいのはいつ頃?
妊娠中はホルモンバランスが急激に変動し体も変化していく時期ですから、いつ口内炎が出来てもおかしくないのですが、その中でも最もなりやすい時期があります。
それは妊娠3ヶ月ごろのつわりの時期で、つわりによって栄養が十分得られないことや、口腔内の環境が悪化しやすいのが理由に挙げられます。
ただ反対に考えれば、しっかり栄養を摂って疲労が溜まらないように毎日気をつければ、妊娠中に起こりやすい口内炎を防ぐことが可能であるとも言えます。
妊娠中に口内炎になりやすい原因
妊娠中に口内炎になりやすいのは、つわりによる栄養不足だけでなく、妊娠中に発生する体の変化そのものが原因となっているからです。
妊娠の経過は個人差が大きいですから、口内炎が出来ない方もいれば沢山出来て不安になる方もいらっしゃるでしょう。ただ、原因を知れば対策ができますので、闇雲に不安になるのではなくきちんと確認しましょう。
免疫力低下
やはり妊娠中の体の変化で、最も大きいのが免疫力の低下でしょう。妊娠するということは、簡単に言えば赤ちゃんを体の中で育てるということです。
通常異物が体内に入ると免疫機能が働いて体外に排除しようとしますが、それでは胎児が成長しないので、脳は免疫機能を低下させて胎児と異物と判断しないようにしています。
ただ、この環境で胎児は成長できても、お母さんの免疫力は落ちて感染症にかかりやすくなります。特に口内は温かく湿って雑菌が増殖しやすい環境ですから、免疫力の低下で進行し口内炎が起きやすくなるのです。
免疫力低下による感染症
妊娠中にカンジダになった、あるいは再発したという方が多いのですが、それはこの免疫力の低下が原因です。妊娠中は性器付近に常在するカンジダ菌が増殖して強いかゆみや排尿痛などの症状が現れることが多く、治療が遅れれば母子感染する可能性があるものとして、ご存知の方も多いでしょう。
しかし性器付近だけでなく、カンジダ菌は口内にも存在していますから、本来ならば発症率が低いカンジダ性口内炎が妊娠中に起きやすくなるのです。ヘルペスウイルスも疲労が溜まって免疫力が低下した時に増殖しますから、カンジダと同様ヘルペス性口内炎も発症しやすくなります。
唾液の減少
ホルモン分泌と自律神経はお互い強く関係しているため、ホルモン分泌が急激に変化する妊娠中は、自律神経のバランスも崩れやすくなります。
ホルモンバランスが乱れると交感神経が優位になりますが、交感神経は筋肉を収縮させる働き以外にも、唾液の粘度を高める働きがあります。唾液がベタベタすると量が減って口内が乾燥しやすくなり、菌の増殖につながります。このような環境で免疫力が低下していたり口内に傷があると、口内炎に進行しやすくなります。
口内環境の悪化
つわりの時期は気持ち悪くて、食べ物はもちろん口の中に歯ブラシを入れるのさえダメという方も多いです。つわりの時は食べられない時は無理をする必要がありませんが、歯磨きを怠ると口内の細菌が増殖して口内炎につながる可能性が高くなります。
また妊娠中は歯の治療が限られることから、歯磨きを避けて虫歯になってしまうのも、出来れば避けたいところです。
疲労・ストレス
つわりや体力の低下などで、妊娠中は普段と同じように暮らしていても疲れが溜まりやすくなっています。そうなれば代謝機能が低下し、口内粘膜の再生能力までも衰えてしまうので、口内炎が出来やすく治りにくい状態になってしまうのです。
また、妊娠中はホルモン分泌量の変化でストレスも溜まりやすいですね。ストレス対処にもビタミンが消費されるため、疲労とともに口内炎が出来る原因の一つとなっています。
口内炎の対処法
どんなに食事や体調に気をつけていても、口内炎が出来てしまうことがあります。
ウイルスや真菌が原因でない一般的な口内炎ならば、何の治療を行わなくても1~2週間ほどで完治しますが、やはり食事の度に痛くなるのは煩わしいものですね。そこで、口内炎の薬や口内炎に効果的な意外な食材など、対処法をご紹介していきます。
薬は使える?j使えない?
一般的な口内炎の治療として処方される塗り薬にはステロイドが含まれている製品があるため、赤ちゃんへの影響を気にして薬を使わない妊婦さんもいらっしゃるでしょう。
また妊娠中だからと、自然素材から抽出された成分が含まれた保護シートを選ぶ方も多いです。しかし反対に、保護シートは薬の成分を粘膜から直接吸収しますから、薬の添加物などが気になって使えない方も少なくありません。薬を使うべきか使わざるべきかを迷った時は、必ずかかりつけの病院で相談してください。
歯磨きできない時は
妊娠中つわりで歯磨きが出来ないと、口内炎だけでなく虫歯や歯周病になる可能性も高くなります。妊娠中に治療のタイミングを逃せば、出産後も忙しさに治療を受ける機会がだんだん後伸ばしになってしまい、その間に症状が悪化してしまうことも考えられます。
つわりで歯磨きすら気持ち悪い時は、せめてマウスウォッシュやデンタルフロスなどで出来るだけ口内をキレイにしたり、何か食べた後は必ず水でゆすぐなど、可能な限り口内を清潔に保つようにしましょう。
殺菌効果のある食材で民間療法「おばあちゃの知恵」
口内炎は口内の菌による感染・炎症が原因ですから、その原因菌を殺菌するのが最も早い治療法です。しかし、妊娠中に抗生剤は服用できませんから、その代わりに殺菌効果のある食材を用いた民間療法「おばあちゃの知恵」をおススメします。
台所にあるもので口内炎を治した昔のおばあちゃんの知恵は現在でも十分効果がありますから、ぜひその知恵を借りてみてはいかがでしょうか。ただし、カンジダやヘルペスが原因の口内炎は病院での治療が必須です。
塩を使う方法
天然の殺菌作用がある食材として、一番手軽に使えるのが塩です。口内炎の場合は、ぬるま湯に塩を溶かしてうがいする塩うがいなら数日で効果が出ると言われています。
もちろん効果の出方には個人差がありますが、効果を早く出したいからと塩を多く入れると、刺激が強く逆効果となる可能性もあるので注意が必要です。
また、口内炎はビタミン・ミネラル不足から出来ることも多いですから、塩うがいをする時はミネラルを含んだ天然塩を選びましょう。
はちみつを使う方法
はちみつは口内炎に効果があるのをご存知の方も多いでしょう。はちみつに含まれる水分量は非常に少なく、塗った時の浸透圧と、はちみつの比較的強い酸性度といった二つの殺菌効果が口内炎に効果を発揮します。
ただ、はちみつに含まれるボツリヌス菌の胎児への影響を心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、ボツリヌス菌は胎盤を通れないので、お腹の赤ちゃんに影響することはありません。どうしても心配な方は、他の方法を試してみてください。
緑茶を使う方法
インフルエンザ予防に緑茶でのうがいを習慣にされている方もいらっしゃると思われますが、その理由はやはり緑茶に含まれるカテキンの殺菌効果でしょう。
同じようにカテキンの殺菌力は口内炎にも効果的です。1日数回緑茶でうがいするだけで、口内炎を改善できるでしょう。緑茶に含まれるカフェインを心配されるかもしれませんが、飲むのではなくうがいですから、心配しなくて大丈夫です。
積極的に摂りたい栄養は
口内炎は代謝バランスが崩れる時に起こりやすいのですが、その働きをするのがビタミンB群です。特にビタミンB2は皮膚や粘膜を作るのに必要不可欠なビタミンで、また口内炎とは関係がありませんがビタミンB6はつわりを軽減する働きがあります。
ですから、ビタミンB群が多い豚肉や牛乳・納豆・バナナなどを意識して摂るようにしましょう。その他に亜鉛とマグネシウムが不足しても、代謝システムに影響が出て口内炎につながります。マグネシウムを多く含むアーモンドやそば、亜鉛を多く含むゴマや煮干などをおやつや食事に取り入れるようにしましょう。
口内炎の治療はどこで行うのが一番?
口内炎を何回も繰り返したり、治療が必要なカンジダ性・ヘルペス性口内炎になった場合は、どの病院へ行けばよいか迷ってしまいますね。まずは現在の自分の状態を良く知っている、かかりつけの産婦人科を受診しましょう。
軽い口内炎ならば産婦人科でも治療可能ですが、判断が難しい場合は耳鼻咽喉科などの口内炎を治療する専門科へ紹介状を出してくれます。紹介先の病院でも情報が共有されていますから、自分で病院を探して妊娠中であると告げるよりも、確実な治療が出来るのは間違いありません。
ここまでのまとめ
妊娠中のホルモンバランスの変化や免疫力の低下で、普段よりも口内炎が起こりやすくなっています。特につわりの時期は、栄養が不足したり口内に菌が増殖する環境になりやすいため口内炎が出来やすい状態です。
口内炎にも種類があり、自然治癒するものもあれば病院で治療を必要とするものもありますので、痛みが強かったり長引く場合は病院を受診するようにしましょう。つわりで大変な時期に口内炎があると余計辛いですから、出来るだけ栄養を摂って無理をしないようにして、早く口内炎を治していきましょう。