妊娠を機に体に起こる変化はさまざまです。妊娠初期のつわりでは吐き気や眠気、食欲の変化や体のだるさなど、さまざまな体調の変化が起こります。
また妊娠週が進むとともにどんどんおなかが大きくなり、体型も変化していくことから、肩こりやむくみなどの症状も出てくるようになります。
妊娠中の肩こりについて、妊娠初期・中期・後期の原因や対処法など知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。
肩こりの原因について
肩こりは日本人の国民的な症状ともいえるほど。とくに年齢が上がるほど肩こりになる確率は上昇していきます。また男性よりも女性のほうが肩こりの症状がひどくなる傾向にあるといわれています。まずは肩こりが起こる仕組みについてまずは押さえて起きましょう。
肩こりが起きる仕組みとは?
肩こりが起きる仕組みについて説明してみましょう。肩こりとは肩まわりの筋肉が緊張して、凝りがほぐれない状態を指します。肩こりの原因は、毛細血管が圧迫され細くなってしまうことにあります。
毛細血管は筋肉の中に細かく張り巡らされていて、血液とともに酸素が常に毛細血管に運ばれています。毛細血管では酸素を用いて、食事によって供給されたブドウ糖をエネルギーに変換していきます。
このとき筋肉に緊張がなく、血流がスムーズである場合には、ブドウ糖からエネルギーへの変換がうまくいきます。しかし筋肉が弛緩せずに緊張していると、毛細血管が圧迫されてしまい、乳酸に代表されるような、いわゆる疲労物質が血管内に溜まってしまいます。
疲労物質が蓄積されると、肩や首筋に違和感や鈍痛を感じるようになり、その痛み自体によって、さらに肩まわりの筋肉を緊張させてしまい、肩こりが慢性的していきます。
女性は男性よりも肩こりになりやすい?
肩こりは一般的に男性よりも女性のほうがなりやすいといわれています。その理由をいくつか挙げてみましょう。女性のほうが男性よりも筋肉の量が少なく、筋力がやや劣ること、ブラジャーなど下着で常に上半身を締め付けていること、料理や掃除などの家事により細かい手先の作業をたくさん行うことなどが、その主な原因になります。
もうひとつの大きな原因がホルモンバランスの変化。女性の体は生理周期にしたがって、女性ホルモンの分泌量が変化します。卵胞ホルモンと黄体ホルモンの二つの分泌量が変化することにより、自律神経のバランスが崩れやすいことも、肩こりの症状の大きな原因のひとつになります。
妊婦が肩こりになりやすい原因とは?
一般的な肩こりの原因、および女性が男性よりも肩こりになりやすい原因については上に挙げたとおりですが、妊娠中もまた肩こりの症状がひどくなる傾向にあるといわれています。
妊婦がとくに肩こりになりやすい原因とは何でしょうか?妊婦さんの肩こりの原因について、妊娠初期・中期・後期と分けて考えてみましょう!
妊娠初期の肩こりの原因とは?
妊娠初期の肩こりの主な原因は、妊娠を機にホルモンバランスが変化すること。排卵後から分泌量が増えているプロゲステロンはそのまま分泌量が多くなったまま。プロゲステロンの作用には体に水分や養分を溜め込むというものがあり、これによりむくみや血行不良の症状がひどくなる場合があります。
他にも、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのように、妊娠を機に分泌が始まるホルモンもあり、妊娠初期はホルモンバランスの変化に体がなかなか追いつかず、体調を損ねやすい時期といえるでしょう。
妊娠初期のだるさ
妊娠初期はプロゲステロンのはたらきにより、眠気を催すことが多く、体はだるく倦怠感を感じる妊婦さんが多いようです。妊娠初期には子宮に血液が集まってきて、体を動かすことも億劫になります。
また妊娠初期にはつわりの症状も出ますので、むかむかとして気持ちが悪く、精神的にも辛い時期。ホルモンバランスの崩れはそのまま自律神経の乱れにつながり、ストレス、イライラ、気分の落ち込み、憂鬱感など、精神的にも不安定になる方もいます。
とくにこれがはじめての妊娠の場合、すべてがはじめての経験でイライラやストレスを感じやすく、これが肩こりや頭痛をさらに悪化させてしまいます。
妊娠中期の肩こりについて
妊娠中期とは妊娠5ヶ月目から7ヵ月目を指します。この頃になるとそれまでひどわったつわりも徐々におさまってきますので、体調はだんだん良くなってきます。
つわりのために食欲不振だった方も、妊娠中期になるとこれまでよりもずっと食が進むようになり、体を動かすこともそれほど億劫でなくなります。おなかの赤ちゃんはどんどん成長していますので、それにつれておなかが大きくなり、妊娠中期の後半になるとおなかもかなり目立つようになります。
妊娠初期に比べると体調はいいものの、おなかがせり出してくることから、知らず知らずのうちに背中や首、肩に負担のかかる姿勢を取ってしまうことがあります。
出産後に備えて、乳腺はますます発達していきますので、胸が重く感じられることも、肩こりの症状を悪化させる原因のひとつ。さらに大きくなってくる子宮に圧迫されて、ますますむくみや血行不良が悪化してしまい、肩こりに加えて、背中、腰にも痛みを感じることが多くなってきます。
妊娠後期・臨月の肩こりについて
妊娠8ヶ月目以降になると、いよいよおなかが前にせり出してきて、まっすぐに立つことも辛く感じる妊婦さんも出てきます。
おなかの赤ちゃんが母体から栄養をどんどん吸収していきますので、血流はさらに悪化してしまい、ふくらはぎのむくみやこむら返しなども起こりやすくなります。血行不良はさらに悪化してしまい、大きくなったおなかのために、夜寝る際の体勢も取りづらくなり、背中、肩、首の痛みが激しくなりがちです。
妊娠後期・臨月にひどい肩こりがしていた方も、ほとんどの場合、出産が終わると肩こりや頭痛の症状も自然に治っていきます。ただし出産後も赤ちゃんを抱っこしたり、授乳したりするせいで、肩こりが慢性化することもありますので、出産後も油断せずに肩こりの解消に努める必要があります。
妊娠中の肩こりの原因を知る
妊娠中の肩こりの原因について、妊娠初期・中期・後期/臨月とそれぞれ挙げてみました。もともと女性は肩こりの症状が起こりやすいといわれていますが、それに加えて妊娠中はさらに肩こりになりやすい環境が出来上がってしまいます。
ホルモンバランスの乱れ、血行不良、おなかが大きくなることによる姿勢の取り方、妊娠によるストレスや疲労、運動不足など、妊娠中は肩こりにつながる要素の多い時期といえるでしょう。
妊娠初期はつわり、中期から後期にかけては大きくなるおなかのせいで、夜間なかなか安眠できない妊婦さんも多く、疲れが取れにくくなっています。不規則な睡眠や食事内容、運動不足やストレスなどにより、体の機能は万全とはいえません。妊娠中の肩こりの原因はひとつだけでなく、これらすべてが複雑に絡み合っていると覚えておきましょう。
妊娠中の肩こりと頭痛
妊娠中の辛い症状は肩こりだけではありません。血行不良や筋肉の緊張は頭痛につながることも多く、頭痛は肩こりとともに妊婦さんの悩みの種。頭痛や肩こりがひどく、薬を飲みたい場合には妊娠中でも飲めるものと飲めないものがありますので、医師に相談し指示を受けるようにしましょう。
頭痛も肩こりも、肩や首の筋肉をほぐすことで緩和することが出来ますので、肩や首を温めることも効果的です。
妊娠中の肩こりの緩和、解消法とは?
妊娠中のひどい肩こりはどのように緩和すればいいのでしょうか?普段のときであれば、適当な運動を行う、マッサージをする、湿布を貼るなどの手段で、ある程度緩和することが見込めます。
しかしこれらの中には妊娠中は行うことを控えたほうがよいものもあります。妊娠中の肩こりの緩和、解消法についてみていきましょう!
肩や背中のストレッチを行う
妊娠中はおなかが張るような運動をすることは慎まなければなりません。運動をはじめたい場合にはかかりつけの産婦人科医に相談してからにしましょう。
妊婦さん体操や軽いストレッチなどであれば、体調がよければ出来れば行ったほうが、体重増加対策にもなります。肩まわし、肩の上げ下げ、腕を回すなどの簡単な動きを行うようにすると、肩や首筋の筋肉の緊張がほぐれます。
体操や運動を行う際には決して無理をしないことが大切。少しでもおなかに張りや痛みを感じた場合には即座にやめて安静にします。
体を温める
血行不良を解消することにより、体が温まり、肩こりや頭痛を緩和することが出来ます。妊娠中はむくみやすく、手足の末端が冷えてしまうため、血行不良をさらにひどくしてしまう悪循環に陥ることも少なくありません。
妊娠中、とくに妊娠初期はほてりやのぼせといった症状もあらわれ、体がなんとなく熱っぽく感じられるために、つい薄着をしてしまう妊婦さんもいるようです。妊娠をしたら、これまで以上に注意を払い、体を冷やさないようにしましょう。肩や背中だけでなく、手足や腰の冷えにも注意してください。
エアコンがきいた部屋や戸外に出る際には、カーディガンやセーターなどすぐに羽織れるものを用意しておくようにしましょう。靴下や下着は厚めのものにし、足先やおなか・腰を冷やさないようにしましょう。
ツボは押さないほうがいい?
肩こりや頭痛にはツボマッサージも有効ですが、妊娠中は押してはいけない、押さないほうがいいといわれるツボもありますので、妊婦さんが行う場合には注意が必要です。妊婦さんはツボを押してはいけないといわれるのは、ツボの中には子宮の収縮や陣痛を促すものがあるからです。
もちろん一度や二度ツボを強く刺激したからといって、そのまますぐ問題が生じるというわけではありませんが、妊娠中のツボマッサージは慎重に行うべきといえるでしょう。本格的なツボマッサージは医師や専門家に相談し指示を受けるようにしてください。
気休めかもしれませんが、押して気持ちいいと感じる部分を強すぎない力で軽くマッサージしてみましょう。肩をマッサージする前には、まずタオルで肩や首を暖めておいてから行うとさらに効果的です。痛みを感じる場所を軽く指で押し、筋肉の緊張を取るようにしましょう。
妊娠中の湿布について
肩こりがはげしく、マッサージや肩回しではどうにもならない場合、市販の湿布薬を貼ると楽になります。市販の消炎・鎮痛効果のある湿布薬は、妊娠していないときに使うのは問題ありません。しかし市販の湿布薬の中には、妊娠中には差し控えるべきタイプもあります。
妊娠中NGな湿布薬成分とは?
妊娠中に使ってはいけないとされている成分は、インドメタシン、ケトプロフェン、ボルタレンといった成分。これらが含まれている湿布薬は、妊娠中は用いることが出来ません。これらの成分を含む薬剤を用いると、羊水過少症や胎児腎不全、動脈管開存症など、胎児に対する深刻なリスクが生じることが報告されています。※参考:厚生労働省 ケトプロフェン(外皮用剤)の妊娠中における使用について
市販の湿布薬を用いる場合には、必ず使用説明書をよく読み、妊娠中でも使用できるかどうか確認しましょう。妊娠中にどうしても我慢できないほどの肩こりや頭痛がある場合には、自己判断で湿布薬を用いることなく、必ず産婦人科で処方されたものを使うようにしましょう。
整体や鍼灸を受ける場合の注意
肩こりがひどく、自分でマッサージをしてもまったく症状が良くならない場合、整体やマッサージ、鍼灸などを受けてみようと思う妊婦さんもいるようです。
妊婦さんが整体、マッサージ、鍼灸を受ける場合には、必ず妊娠している旨を伝えなければなりません。母体とおなかの赤ちゃんに問題が生じないよう、施術する必要がありますので、専門的な知識と経験および資格を持つ人のいる治療院を選ぶようにしましょう。またかかりつけの産婦人科医に前もって相談し、許可を得るようにしたほうが安心です。
ここまでのまとめ
妊婦さんの肩こりの原因と対処法についてご紹介しました。妊娠中は初期から後期まで、妊娠中はとにかく体調が安定せずにイライラさせられることも多いのが現実です。待望の赤ちゃんを授かったとはいえ、妊娠が分かったときから出産まで、いろいろと心配なことや不安なことも多く、頭痛や肩こりといった症状が慢性化してしまうことも決して少なくありません。
妊婦さんの肩こりはそのままにしておくと、どんどんひどくなってしまいます。おなかの赤ちゃんに差し障りがあるようにな激しい運動は禁物ですが、体をまったく動かさずにパソコンの前に座ってばかりいるのもお勧めできません。
つわりの症状が落ち着き安定期に入ったら、適度に体を動かし、肩や首筋の筋肉の緊張をほぐすようにしましょう。同じ姿勢を長時間取ることはやめ、どんな仕事をしていても、こまめに休憩を取るようにし、緊張した筋肉を弛緩させるようにしましょう。