初めて妊娠すると、身体のさまざまな反応の変化に戸惑うことが多くなります。眠気が強くなったり、つわりになったり、微熱が続いたりすることもあるでしょう。
さまざまな症状が現れる中で、多くの妊婦が戸惑うのが「鼻血」です。普段鼻血がほとんど出なかったという方も、妊婦になってから多発するケースが多くみられます。
鼻血が頻繁に起きるようになると、何かの病気?貧血にならない?赤ちゃんに影響があるのでは?と心配になりますよね。そこで、妊婦の鼻血について、原因や対処方法など幅広い情報を詳しくご紹介していきましょう。
妊婦の鼻血はなぜ出るのか?原因は?
今まで鼻血を出したことがほとんどなかったという方も、妊婦になったことで頻繁に鼻血を出すようになることがあります。妊婦に鼻血が起きやすくなるのは、さまざまな原因がありますので、ご説明していきましょう。
胎盤から栄養?血液量が増えるから
妊婦になると鼻血が頻繁に出やすくなるのは、血液量が増えることが関係しています。妊娠すると、胎盤を作り赤ちゃんに栄養を送ろうとしてたくさんの血液が送られるため、妊婦の身体に巡る血液量が増えるようになるのです。
お腹の赤ちゃんは、お母さんの血液から酸素や栄養を補給しながら成長して行くため、妊娠期間中は血液量がどんどん増えるようになっていきます。
女性ホルモンの影響で鼻血に
妊婦になると鼻血が頻繁に出やすくなるのは、女性ホルモンの影響があるからです。女性ホルモンには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体ホルモン(プロゲステロン)がありますが、妊娠することでこの両方の女性ホルモンの分泌量が急増していきます。
女性ホルモンの分泌量が増えると、血液量が増えるだけでなく鼻の粘膜が柔らかくなるようになります。すると、少しの刺激でも簡単に粘膜に傷がつき、鼻血が出やすくなってしまうのです。
自律神経の乱れの影響
妊婦になると鼻血が頻繁に出やすくなるのは、自律神経の乱れが影響するからです。自律神経は、ストレスで崩れたり女性ホルモンのバランスが崩れたりすることに影響を受け、乱れやすくなります。
自律神経が乱れると、血流に影響して上せた状態になりやすくなります。顔が赤くなって頬が熱くなるため、ふとした刺激で鼻血が出やすくなってしまうでしょう。
妊婦の鼻血は止まりにくい、止まらない?
妊娠すると鼻血が出やすくなるのは、血液量が増えたり女性ホルモンや自律神経の乱れが影響したりしていることが原因です。そのため、少しの刺激でも鼻血が出やすくなってしまいます。
妊婦の鼻血のもうひとつの特徴として、「鼻血が出ると止まりにくい」ということがありますが、何が原因なのでしょうか。
妊娠中の血小板の減少
妊娠中に鼻血が出ると、なかなか血が止まらないことが多々あります。これは、妊娠により身体の血液量が増えたことによって、血液の濃度が薄まり、血小板の数が足りなくなってしまうからです。
血小板には血液を固める作用があるため、これが不足することにより鼻血が止まりにくくなってしまうのです。
妊娠中血圧が高くなるから
妊娠中に出た鼻血がなかなか止まらないのは、血圧が高くなることも関係しています。妊娠すると血液量が増えて血圧も高くなっていくため、鼻血が勢いよく出て止まりにくくなってしまうのです。
妊娠中の鼻血が出る時期は
妊娠すると、鼻血が出やすくなりますがいつぐらいから頻繁に起きるようになるのでしょうか。妊婦の鼻血が出る時期には個人差があり、妊娠初期から鼻血が出やすくなった方もいれば、妊娠中期から、妊娠後期から、臨月だけという場合もあります。また、中には妊娠中に鼻血が出たことがないという方もいらっしゃるでしょう。
妊娠初期からの鼻血
妊婦の鼻血が出る時期については、この時期だから正常、この時期は異常ということはありませんが、妊娠初期から鼻血が出やすくなた方は、出産まで鼻血が出やすい状態が続く可能性があるので、注意するようにしましょう。
妊婦は歯茎からの出血も注意
妊娠すると、鼻血が出やすくなりますが、出血するのは鼻からだけではありません。歯茎からの出血も頻繁に見られるようになります。いつも通りに歯磨きしたつもりなのに出血したり、硬いものを食べたことで出血したりすることもあります。
歯茎から出血するのは、女性ホルモンの作用により粘膜が弱くなっているからです。歯茎もデリケートな部分なので、妊娠によりさらに敏感になってしまうのでしょう。
また、妊娠中は口腔内の環境も変化しやすく、つわりにより歯磨きができない期間も多くなるため、歯周病や虫歯などにかかりやすくなります。
妊娠中は、麻酔をして歯の治療を受けることができないため、妊娠したら早めに歯医者さんを受診し、ケアしてもらうようにしましょう。
妊婦の鼻血の影響は
妊娠すると鼻血が出やすくなりますが、鼻血が出ることは赤ちゃんや身体にどのような影響を与えてしまうのか、心配になります。
鼻血により深刻な状況になることはほとんどありませんが、頻繁に鼻血が出たり、長時間鼻血が出続けたりすることで少し影響が出ることもありますので、ご説明しておきましょう。
鼻血の赤ちゃんへの影響
まず、頻繁に鼻血が起きたとしても赤ちゃんに大きな影響が出ることはありません。なぜなら、血液は赤ちゃん優先に運ばれているからです。そのため、貧血気味になったとしても赤ちゃんに必要な栄養は十分に届けられる仕組みとなっています。
鼻血の母体への影響
妊娠してからあまりに頻繁に鼻血が起きる場合、少し貧血気味になる可能性があります。妊娠中は赤ちゃんにどんどん栄養が送られるため、鼻血が出ていない状態でも貧血を引き起こしやすくなります。
鼻血が頻繁に起こる場合は、鉄分をはじめしっかりと栄養補給するよう心掛けるようにしましょう。
家事や仕事への影響
妊娠して鼻血が頻繁に出るようになると、家事や仕事に影響することも考えられます。鼻血が出ることで服や布団、タオルなどが汚れて洗濯の手間が増えたり、お掃除の頻度が増えたりしてしまいます。
また、会議中や接客中に鼻血が出て、相手に迷惑をかけてしまうこともあります。デスクワークの場合も、鼻血が出る度に一時仕事を中断しなければならないことも出てきてしまうでしょう。
鼻血の止め方について
妊婦になると、頻繁に鼻血が出やすくなりますが、鼻血が出ている時は正しく止血することが大切になります。間違った方法で鼻血を止めようとすると、悪化したり気分が悪くなったりするので注意しましょう。
正しい鼻血の止め方は?
鼻血が出てきたら、まず下を向いて鼻血が出やすいようにしましょう。立っている場合は椅子に座り、寝ている場合は上半身を起こして床に座ります。
次に、親指と人差し指で鼻をギュッとつまみましょう。できるだけ鼻筋の上の方でつまむのがポイントです。指でつまんだら、そのまま鼻血が止まるまで5分~10分ほどキープします。しばらくすると、鼻血の血液によりフタがされ鼻血が止まるようになるでしょう。
ダメな鼻血の止め方は?
鼻血が出てくると、慌てて間違った方法で鼻血を止めてしまう方がいらっしゃいます。そこで、やってはいけない止血方法もご紹介しておきましょう。
真上を向くのはダメ
鼻血が出てくると、慌てて上を向いてしまう方がいらっしゃいますが、上を向くと鼻血が逆流して喉の奥に入り飲み込んでしまうことになります。
妊娠中は味覚が敏感になるため、血液のニオイや味が気持ち悪くなってしまうこともありますので、決して上を向かず下を向くようにしてください。
頭を心臓より低くするのはダメ
鼻血が出ると、とっさに前かがみになって心臓よりも低くする方がいらっしゃいますが、頭に血液が集中して鼻血の量が増え、逆効果となります。鼻血が出てきたら、頭の位置は心臓より高い位置にキープするようにしましょう。
ティッシュや脱脂綿を鼻に詰めるのはダメ
鼻血が出ると、慌ててティッシュや脱脂綿を鼻に詰める方がいらっしゃいますが、鼻血を吸うことはできても止血することはできません。止血するためには圧迫することが必要になるため、ティッシュや脱脂綿を固く細長く整えて鼻の奥まで差し込む必要があります。
ただ、それらを抜くときに再び粘膜を傷つけてしまう恐れもあるため、鼻の上から親指と人差し指でギュッとつまんだ方が止血効果は高いでしょう。
首をトントンはダメ
鼻血が出ると、昔ながらの方法で首の根っこをトントン叩く方がいらっしゃいますが、これも止血効果はありません。首をトントンする行為は、上を向いて行うことが多いですが、どちらも行わないようにしましょう。
妊婦の鼻血の予防方法
妊娠中は、鼻血が出やすくなります。しかし、日々のちょっとした心構えで鼻血を未然に防ぐことができるので、ご紹介しておきましょう。
鼻は優しくかむ
鼻血を予防する方法として、鼻をかむときできるだけ優しくかむようにしましょう。妊娠中は鼻の粘膜が非常にデリケートになるため、鼻を強く噛むだけで粘膜に傷がつき、鼻血が出やすくなってしまいます。勢いよくチーン!と噛むのではなく、呼吸をするようにゆっくりと鼻から空気を出すようにして鼻をかむようにしましょう。
妊娠中は、さまざまなウイルスの侵入を防ぐために鼻水がでやすくなるため、鼻をかむ頻度も多くなります。頻繁に鼻をかむからこそ、優しく行うようにしましょう。
鼻をほじらない
鼻血を予防する方法として、鼻の穴をできるだけいじらないことも大切です。鼻の中が痒かったり詰まったりしていると、つい指先で掻いたり取り出そうとしたりしてしまいますが、それにより簡単に粘膜が傷ついてしまうからです。鼻の中に違和感がある時は、水で鼻の中を洗浄し鼻をかむようにしてスッキリさせるようにしましょう。
鼻を触らない
鼻血を予防する方法として、鼻をできるだけ触らないことも大切です。照れたり緊張したりすると、鼻をつい触ってしまう方がいらっしゃいますが、これが日常化すると常に鼻に刺激を与えていることになります。
妊娠中は、肌もデリケートになるため、頻繁に鼻を触ることにより鼻血だけでなく鼻の皮膚もはがれたり切れたりしやすくなってしまいます。鼻を触る癖のある方は、できるだけ触らないよう意識し、改善していけるようにしましょう。
鼻の乾燥には注意を
冬は暖房、夏は冷房と一年中湿度の低い環境で過ごしている方も多いでしょう。たしかに過ごしやすいのですが、この環境は肌や粘膜が乾燥して毛細血管が切れやすく、普段よりも鼻血が出やすくなります。乾燥が気になる時は手っ取り早いマスクがおススメです。
マスクをすれば自分の呼吸で加湿できますし、ほかの人からの感染も防げます。冬は特に乾燥しやすいので、加湿器は欠かせません。
頻繁に鼻血出る!心配なときは病院へ
妊婦になると、鼻血が出やすくなりますがそれは多くの方が経験していることでもあります。ただ、頻繁に鼻血が起きる方や、10分以上鼻血が止まらない方は、念のため病院で診てもらうようにしましょう。
妊婦の鼻血は、血液量の増加やホルモンバランス、自律神経のバランスが影響していることがほとんどですが、稀に別の病気が隠されている場合もあるからです。
いつもとは違う鼻血だと感じたり、明らかに異常な鼻血だと思ったりしたときは、ひとりで不安にならず医師に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。
貧血にならないように鉄剤を
妊婦になると血液量が増えて薄くなり、赤ちゃんにどんどん栄養が奪われていくようになります。それに加えて鼻血が頻繁に出るようだと、貧血症状が出やすくなってしまうでしょう。
妊婦になると貧血が悪化する方が増えてくるので、鉄剤をうまく活用するようにしてください。食事から充分な鉄分を摂るのは簡単なことではありませんが、サプリメントなら手軽ですし効率よく鉄分を補給することができます。
ただ、鉄剤を飲むと便が硬くなり便秘になりやすくなるので、整腸剤なども処方してもらうと良いでしょう。妊娠初期から鉄剤などで補給して貧血を予防しておくことで、元気に妊婦生活を過ごすことができるでしょう。
まとめ
妊婦の鼻血についてさまざまな情報を詳しくご紹介しました。今まであまり鼻血が出たことがない方にとって、急な鼻血は驚かれることも多いと思います。しかし、妊婦の鼻血は誰にでも起こるもので、赤ちゃんに影響することもありません。
ただ、貧血気味になってしまうことはあるので鉄剤などで充分補給しておくようにしましょう。妊婦の鼻血について原因を知り、正しい鼻血の止め方を習得することで、いつ鼻血が起きても冷静に対処することができるようになります。
妊娠中はちょっとした刺激で鼻血が起きやすくなるので、鼻をつい触ってしまったり、鼻を強く噛んでしまったりするなどの所作をいちから見直し、改善していけるようにしましょう。さまざまな対策を取ることで、妊娠中の鼻血を少しでも減らし、楽しい妊婦生活を送れるようにしてください。