妊娠すると、妊婦健診でさまざまな検査を受けることになります。初めての妊娠の場合、今まで聞いたこともないような言葉をよく耳にすることも増えてくるでしょう。
妊婦健診では、体重や血圧など毎回必ず測定される検査がありますが、その中で気になるのが「子宮底長」の計測です。
母子手帳にも記入する項目がありますが、一体何を計測しているの?と疑問に思うこともあるでしょう。そこで、子宮底長についてさまざまな情報を詳しくご紹介していきます。
子宮底長とは?
子宮底長とは、子宮がどれくらいの大きさかを知るために計測するもので、恥骨結合の上端から子宮の最上部までを計測します。子宮底長を計測することにより、子宮が今どれくらい膨らんでいるかを把握することができるでしょう。
子宮底長でわかること
子宮底長を計測することにより、子宮が今どれくらい膨らんでいるかわかります。子宮の膨らみがわかるということは、赤ちゃんの大きさや羊水の量を知ることができるということです。そのため、お腹の中にいる赤ちゃんが、元気に成長しているかどうかの目安になります。
また、妊婦が太り過ぎていないかどうかの目安にもなるので、体重管理にも役立てることができます。
昔ながらの計測方法
子宮底長を計測する方法は、昔から行われていました。今では当たり前となっている超音波検査も、昔はないため子宮底長を計測することでお腹の中の様子をうかがっていたのです。
現在も子宮底長の計測は行われていますが、ひとつの目安とされており、メインの診断は超音波検査に委ねられています。
子宮底長の計測方法
子宮底長の測り方は、大きく分けて2つありますので、簡単にご紹介しておきましょう。
安藤の方法
仰向けの状態に寝て、膝をまっすぐ伸ばした状態で計測します。計測するのは、恥骨結合の上縁から子宮底の最高点までの距離です。
今井の方法
仰向けの状態に寝て、膝を曲げた状態で計測します。計測するのは、恥骨結合の上縁から子宮体前壁が腹壁に接するまでの最高距離です。
いつから計測する?
子宮底長の計測は、お腹が膨らんできた安定期頃から行われるのが一般的です。ただ、医院によってかなりばらつきがあり、最初の妊婦健診から子宮底長を計測するところもあれば、臨月まで子宮底長を計測しないところもあります。
子宮底長を計測しないのは、超音波検査で赤ちゃんや子宮の大きさを計測しているため、省かれていると考えられるでしょう。子宮底長はあくまで目安として考えられているもので、超音波検査がある今では、子宮底長よりも超音波検査の結果が優先されるようになっています。
時代の変化と医療の発達により、妊婦健診の内容は少しずつ変わってきているのです。
平均的な子宮底長の長さ
子宮底長の計測を行うと、自分は周りに比べて短いのか、長いのか気になるのではないでしょうか。そこで、時期別に子宮底長の適正値をご紹介しておきましょう。
子宮底長の適正値は、妊娠5ヶ月未満(妊娠19週未満)の場合、妊娠月数×3cmで平均値が計測され、妊娠6ヶ月以降(妊娠20週目以降)は、妊娠月数×3cm+3cmで計算されます。
ただ、子宮底長はメジャーで計測されるため、多少の誤差はありますので、適正値にと多少ずれていても心配しすぎる必要はありません。
妊娠1ヶ月(0週~3週)~妊娠3ヶ月(8週~11週)
妊娠初期の頃は、まだ子宮が大きくなっていないため、お腹のふくらみはほとんど変わりません。子宮の大きさは、妊娠1ヶ月でニワトリの卵くらいの大きさになり、妊娠3ヶ月には男性の握りこぶしくらいまで成長します。
妊娠4ヶ月(12週~15週)
妊娠4ヶ月に突入すると、子宮の大きさは子供の頭の大きさくらいまで成長します。お腹にもふくらみが出てくる時期なので、子宮底長を計測し始めることができるでしょう。
この時期の子宮底長の適正値は、7cm~12cmになります。
妊娠5ヶ月(16週~19週)
妊娠5ヶ月になると胎盤が完成し安定期に突入します。つわり症状が治まり始め、お腹のふくらみもしっかり感じられてくるため、精神的にも肉体的にも安定しやすくなります。
この時期の子宮底長の適正値は、10cm~15cmになります。
妊娠6ヶ月(20週~23週)
妊娠6ヶ月になると、胎動を感じ始める妊婦が多くなってきます。最初は腸が動いているのかな?という程度の胎動ですが、週数が進むにつれてハッキリと胎動を感じられるようになるでしょう。
この時期の子宮底長の適正値は、15cm~20cmになります。
妊娠7ヶ月(24週~27週)
妊娠7ヶ月になると、お腹が急速に大きくなり始めるため、妊娠線ができやすい時期なので注意が必要です。ボディクリームなどを塗ってこまめに保湿するようにしましょう。また、お腹が大きくなるため仰向けで寝ることが苦しくなってくる時期です。
この時期の子宮底長の適正値は、20cm~24cmになります。
妊娠8ヶ月(28週~31週)
妊娠8ヶ月になると、子宮が収縮してお腹に張りを感じやすくなります。お腹に張りを感じたときは、楽な姿勢を取り張りが取れるまで安静に過ごすようにしましょう。
この時期の子宮底長の適正値は、24cm~28cmになります。
妊娠9ヶ月(32週~35週)
妊娠9ヶ月になると、子宮が大きくなって膀胱を圧迫するため頻尿になったり残尿感が起きたりしやすくなります。また、トイレの回数も増えてくるでしょう。
この時期の子宮底長の適正値は、28cm~32cmになります。
妊娠10ヶ月(36週~39週)
妊娠10ヶ月になると、いつ赤ちゃんが産まれてもおかしくない状態になります。赤ちゃんは子宮口へと下がってくるため、お腹の膨らみが変化し、子宮底長が以前計測した長さよりも短くなることもあります。
この時期の子宮底長の適正値は、32cm~34cmになります。
双子の場合は子宮底長はどうなる?
双子を妊娠された方は、単胎妊娠よりも全てにおいて上回ることを心しておきましょう。もちろん子宮底長も異なり、計測し始める妊娠20週からすでに単胎妊娠の方よりも5cm程度長くなっていて、臨月には子宮底長が40cmを超える妊婦さんも出てきます。
しかし、この子宮の長さですら赤ちゃん達が収まりきれず、前方に膨らんで腹囲が100cmオーバーしてしまう妊婦さんも少なくありません。こうなってしまうと日常生活を送ることすら大変になってきますから、通常は問題が無ければ妊娠37週ごろに帝王切開手術で分娩を行います。
また、早産を防ぐために管理入院を行うこともありますので、動くのが辛い双子のお母さんは担当医に相談してみてはいかがでしょうか。
子宮底長が短い場合
子宮底長を計測して、同じ週数や月数の適正値と比べると、明らかに短い場合があります。子宮底長が短い場合、どのようなことが考えられるのでしょうか。
赤ちゃんの発育が遅い
子宮底長が適正値よりも明らかに短い場合、赤ちゃんの発育が少し遅れている可能性があります。妊娠初期につわりの影響で充分に栄養を摂取できなかった人の場合、赤ちゃんの発育に影響して平均よりも少しスローペースになることはあります。
ただ、超音波検査などで心音などに問題が無ければ、スローペースでもしっかり育っているので不安になる必要はありません。
羊水が少ない
子宮底長が適正値よりも明らかに短い場合、羊水の量が少ない可能性があります。羊水の量は妊娠初期に決まると言われており、それ以降はあまり増えていかないと言われています。
妊娠初期につわりがひどく、水分も飲めない状態が続くと、羊水が作られる量が極端に少なくなるため、子宮底長も短くなりやすいのです。
羊水が少ないままだと、出産する時に赤ちゃんに影響してしまう可能性があるため、羊水が減る前に陣痛促進剤を投与して早めに出産したりするケースもあります。
子宮底長が長い場合
子宮底長を計測して、同じ週数や月数の適正値と比べると、明らかに長い場合があります。子宮底長が長い場合、どのようなことが考えられるのでしょうか。
赤ちゃんが大きい
子宮底長が適正値よりも明らかに長い場合、赤ちゃんが大きく成長している可能性があります。妊娠中期ならさほど問題ありませんが、妊娠後期に赤ちゃんが大きいと、巨大児のまま出産する可能性が出てきます。
赤ちゃんが大きいと産道を通りづらくなり難産になりやすいだけでなく、帝王切開を余儀なくされるケースもあります。食べつわりや安定期の食べ過ぎで栄養過多になると、赤ちゃんは大きく成長しすぎてしまうことがあるので注意しましょう。
体重増加の影響
子宮底長が適正値よりも明らかに長い場合、体重増加のペースが乱れている可能性があります。通常、妊婦の体重は1ヶ月に1kgの増加が目安と言われていますが、食べ過ぎが続くとそのペースを超えてしまいます。
体重が増加しすぎると、余分な脂肪がついて産道を狭くするだけでなく、妊娠高血圧症などを引き起こす可能性もあります。
食生活を見直し、バランスの良いヘルシーな食事を心掛けるようにしましょう。
羊水過多の可能性
子宮底長が適正値よりも明らかに長い場合、羊水過多の可能性があります。羊水過多は、羊水が何らかの原因で増えすぎている状態のことを言います。羊水は赤ちゃんによりコントロールされています。肺胞液や尿が排出される量と、赤ちゃんが飲み込んで吸収する量のバランスが崩れると、羊水過多が引き起こされてしまうのです。
羊水過多になると、子宮底長が長くなるだけでなく、胃の圧迫感、お腹の張り、むくみ、お腹の張り、体重増加、動悸、呼吸困難などが引き起こされます。
また、羊水が多いことで赤ちゃんが動きやすくなり逆子になってしまう可能性も高くなるでしょう。さらに、子宮収縮により破水を起こす危険性もあります。
羊水過多と診断されたら、塩分と糖分を控えて利尿薬で余分な水分を排出していきますが、それでも症状が改善しない場合は入院して経過を見る必要が出てきます。
前置胎盤の可能性
子宮底長が適正値よりも明らかに長い場合、前置胎盤の可能性があります。前置胎盤とは、本来子宮の天井部分にあるべき胎盤が、子宮の底の方についてしまっている状態のことを言います。
妊娠初期に発見されることも多いですが、自然に回復することも多い症状です。しかし、週数を重ねても前置胎盤が改善せずそのまま臨月を迎えるケースもあります。
前置胎盤のままだと子宮口をふさいでしまう形となってしまうため、自然分娩を行うのは極めて困難です。そのため、帝王切開により赤ちゃんを摘出する必要が出てくるでしょう。
子宮底長はひとつの目安
子宮底長は、昔から行われている計測方法です。しかし、メジャーによる計測ですし、人が行うものですから多少の誤差が発生するのはあたりまえのことです。自分の子宮底長の長さが適正値の範囲にあてはまらないとしても、神経質になる必要はありません。
子宮底長を計測している医院でも、必ず超音波検査は行って確認をしています。超音波検査で赤ちゃんの大きさや羊水の量などに問題が無ければ、子宮底長の長さが適正値の範囲内でなくても心配する必要はないでしょう。
最近は、子宮底長の長さに一喜一憂する妊婦がいるため、子宮底長の計測を行わない医院も出てきています。気になる場合は自分で計測することも可能ですが、あくまで目安のひとつとして捉えるようにしましょう。
子宮底長と子宮頸管
子宮底長には子宮頸管の長さが含まれていると考える妊婦さんも多いですが実際は別で、子宮底長は恥骨の上端から子宮の最上部までを指しますが、子宮頸管は子宮の入り口と膣を結ぶ器官を指します。
ですから、計測も子宮底長と子宮頸管は別々に行いますが、より大事なのは子宮頸管の長さです。通常赤ちゃんが下りて、その重みで子宮側の子宮頸管がだんだん開き分娩につながります。
しかし、感染症や子宮頸管無力症などで正産期よりも早く子宮頸管が短くなってくると、切迫早産や早産の原因となります。子宮底長同様に子宮頸管を計ることも少ないですが、子宮底長よりも重要度は高いと言えるかもしれません。
腹囲測定の検査とは
腹囲測定は超音波検査が無かった頃に子宮底長と共に大事な検査項目の一つで、現在でも多くの病院で行われています。
検査の目的は子宮底長と同じく体重が増えすぎていないか、羊水量が妊娠週数に合ったものであるかどうかで、例えば腹囲が100cmを超えた場合は妊娠高血圧症候群や羊水過多・多胎妊娠の可能性が考えられます。
ただ個人差が大きく、背の高い妊婦さんはお腹が目立たず、背の低い妊婦さんは大きく見える傾向にあるため、腹囲も子宮底長と同じく参考程度に考えておくとよいでしょう。
急激な変化に注意
子宮底長はひとつの目安として参考にするものです。しかし、自分で把握することで急な変化に対応することもできます。妊婦健診は、安定期まで4週間ごとに行い、妊娠後期は2週間ごとに、臨月に入ると1週間ごとになります。
次の妊婦健診までに日数がある時に、急なお腹の張りやふくらみを感じたら、子宮底長を計測してみましょう。前回の検診よりも明らかに変化している場合、お腹の中で何らかの変化が生じている可能性があります。
場合によっては、知らないうちに破水して羊水が減ってしまっているかもしれませんし、短期間で羊水が急増してしまう急性型羊水過多症の可能性も考えられます。
お腹の大きさに違和感があるなら、子宮底長を計測して確認し、念のため医師に報告して指示を仰ぐようにしましょう。
胎動で元気さをチェック
妊婦健診で子宮底長が増えていくと、徐々に胎動もハッキリとわかるようになってきます。最初はモゾモゾと腸が動く程度の胎動も、週数を重ねるごとにハッキリとして、妊娠後期に入ると寝ていても起こされるほどダイナミックになってきます。
胎動は赤ちゃんが元気かどうかを知らせるバロメーターでもあるので、今日は少ないなと感じたり、全く胎動を感じない日が出てきたりしたら、すぐに病院に相談するようにしましょう。
まとめ
子宮底長について詳しくご紹介しました。子宮底長は昔から計測されてきた方法ですが、最近は医療が進化し超音波検査が主流となっているので、ひとつの目安として考えられるようになっています。
子宮底長が適正値の範囲内でなくても、超音波検査に問題が無ければ心配になる必要はありませんので、深刻に考えすぎないようにしましょう。
子宮底長の数値が増えていくと、赤ちゃんが育っているなと実感しやすくなりますので、ひとつの楽しみとして捉えるようにしてください。