妊婦がひじきを食べるときに知っておきたいこと

妊婦がひじきを食べるときに知っておきたいこと いいの 悪いの 注意点は 影響は など

ひじきは日本伝統の食べ物で、食物繊維や必須ミネラルを豊富に含む健康食です。低カロリーなのでダイエット中の女性でも安心して食べられることがメリット。女性に不足しがちな栄養をたくさん含んでいますので、妊娠中に食べると良い影響がありそうに思われます。

ところがひじきに関してはネガティブな話もあり、妊娠中はひじきを食べないほうがいいともいわれています。妊婦はひじきを食べないほうがいいとされる意見は、ひじきに含まれるヒ素にあります。ひじきには高濃度でヒ素が含まれており、妊娠中が過剰に摂取すると、おなかの赤ちゃんに悪影響をもたらすリスクがあるとのこと。

では妊婦はひじきをまったく食べてはいけないのでしょうか?それとも食べる量に注意すれば、少しなら食べてもいいのでしょうか?

妊婦はひじきを食べていいの?悪いの?

妊婦さんはひじきを食べていいの?悪いの?

下記で詳しく説明しますが、ごく一般的な食べ方で、摂取量や食べ方に注意さえすれば、ひじきや海藻は妊婦が食べても差し支えありません。

妊娠中はひじきを食べないほうがいいといわれる根拠は、ひじきに含まれるヒ素にあります。ひじきには人体に有害な無機ヒ素が含まれており、過剰に摂取すると体に害を与えるおそれがあります。

ひじきのヒ素が問題視されるようになったきっかけは、英国食品規格庁による報告。ひじきには発がん性のあるヒ素が過剰に含まれているため、英国民に摂取しないよう呼びかけています。

ひじきは日本伝統の海藻食材で、健康によい食べ物として広く親しまれてきました。しかしこの英国食品規格庁の報告により、ひじきやその他の海藻に含まれるヒ素のもたらす影響が再評価されました。厚生労働省や農林水産省では、ひじきや海藻類に含まれるヒ素に関する基礎知識や摂取の際の注意点を発表しています。

ひじき・食品に含まれるヒ素について

ひじき・食品に含まれるヒ素について

妊娠中に安全にひじきを食べるには、ひじきに含まれるヒ素に関する基礎知識が欠かせません。ここではひじき中のヒ素や食品に含まれるヒ素全般について、妊婦が必ず知っておくべき情報を挙げてみましょう。※参照1

食品に含まれる微量なヒ素

食品に含まれる微量なヒ素

ヒ素は自然界の地殻層にもともと存在している物質で、火山活動や森林火災などにより水や環境に流出します。日本では火山噴火のような自然現象が近年も続いていることから、火山活動などの影響を受けない地域に比べると、土壌に含まれるヒ素の濃度が比較的高いといわれています。

土壌に含まれるヒ素は動植物に取り込まれ、これがやがて水や食べ物の形で人間の体に摂取されます。日本では水道水の成分管理が厳密に行われており、水道水に含まれるヒ素の濃度はごくわずか。食品に含まれるヒ素についてですが、米、大豆、野菜、果実、海藻など多くの食品群に含まれます。

食品に含まれるヒ素について

食品に含まれるヒ素には有機ヒ素と無機ヒ素がありますが、このうち有機ヒ素は無機ヒ素に比べると人体に及ぼす影響が少ないといわれています。大豆、野菜、果実といった食品群に含まれるヒ素はこれに相当します。無機ヒ素を含むのは米や海藻類で、ひじきもその中のひとつになります。

ひじきに含まれるヒ素のうち、問題になるのは濃度の高い無機ヒ素で、無機ヒ素を含むひじきを食べる際には量に気をつけて、過剰に摂取しないよう注意しなければなりません。※参照2

無機ヒ素を過剰摂取した場合の悪影響とは?

無機ヒ素を飲料水や食品の形で過剰に摂取した場合、どのような悪影響があるのでしょうか?無機ヒ素を短期間に大量に摂取した場合の影響は、下痢、嘔吐、発熱、興奮、脱毛など。

国内ではヒ素を長期間摂取したという例がありませんが、ヒ素汚染が見られる海外の国・地域では無機ヒ素によるさまざまな弊害が報告されています。これは限度を超える量の無機ヒ素を長期にわたって継続的に摂取した場合で、がんの発生に加えて、皮膚病、糖尿病、末梢神経の障害などが報告されています。

胎児に対するリスクとは?

胎児に対するリスクとは?

おなかの赤ちゃんに対する影響ですが、これについては流産、早産、死産の確立が上回るとの研究がなされています。

また出生時の体重に関しても、標準的な赤ちゃんよりも体重が少ないとの調査結果が報告されています。妊婦が摂取したヒ素は、胎盤をとおしておなかの赤ちゃんに伝わりますので、この点を念頭に置くようにしましょう。※参照4

ひじきの摂取基準(どれくらい食べていいの?)

ひじきの摂取基準について

JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)による目安であるPTWI(暫定一週間耐容摂取量)は、体重50kgの人で、750μg。この量は水戻しして調理したひじきを、毎週33g以上継続して食べ続けた場合に相当します。

ひじきに含まれる無機ヒ素は水で戻したり、湯でこぼしを行うことにより、その量を大幅に減らすことができます。またひじきを使ったメニューを作る際には、他の食材も取り合わせるようにし、ひじきの摂取量を控えめにするなどの工夫が求められています。※参照3

妊婦がひじきを食べるメリットとは?

妊婦さんがひじきを食べるメリットとは?

ひじきに含まれる無機ヒ素に関していろいろな情報を挙げてきました。ひじきに含まれる無機ヒ素を限度を超えて大量に摂取した場合、妊婦の体にも、またおなかの赤ちゃんにも悪影響が及ぶ可能性があります。

しかしごく一般的な食べ方で、摂取量や食べ方に注意さえすれば、ひじきや海藻は妊婦が食べても差し支えありません。ここでひじきに含まれる栄養や効能について挙げてみましょう。

ひじきの栄養とは?

ひじきの栄養とは?

ひじきは栄養価が高く、低カロリー。妊婦にとってはありがたい食材のひとつです。ひじきに多く含まれる栄養素をいくつか挙げると、カルシウム、食物繊維、カリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB1、B2など。他にもマンガンやヨーソ、葉酸といった栄養素も含まれています。カルシウム、必須ミネラル、鉄、ビタミンB群、食物繊維と、女性にとって必要な栄養をたくさん備えたひじきは、妊娠中の貧血対策にも役立ちます。

ひじきの鉄分について

ひじきは以前は鉄分が極めて豊富な食べ物として知られていましたが、これは当時は鉄製の釜でひじきを煮ていたためといわれています。現在では鉄製の釜ではなく、ステンレス製のものが用いられており、ひじきに含まれる鉄分は以前に比べると少なくなっています。

ひじき100gに含まれる鉄分の量は6.2mgですが、妊婦が一日に必要な鉄分は妊娠初期で8.5mgから9mgですので、ひじきだけから鉄分を摂取することは難しいでしょう。鉄分を多く含む他の食材と組み合わせて、適切な量の鉄分を摂取するようにしましょう。

妊娠中に不足しがちな栄養素とは?

妊婦さんに不足しがちな栄養素とは?

ビタミンやカルシウム、必須ミネラルは妊娠中に不足しがちな栄養素。ひじきにはビタミンB群や必須ミネラルが多く含まれていますので、妊娠中に不足しがちな栄養素の補給にぴったりです。

妊娠中期以降は貧血気味になりやすく、鉄分を適切に補給することも大切です。ひじきには妊婦をサポートしてくれる栄養素がたくさん含まれていますので、毎日の食事にぜひ取り入れるようにしましょう。

妊娠中ひじきを食べるときに注意したいポイントとは?

妊娠中にひじきを食べる際に注意すべきポイントについて挙げてみましょう。妊婦がひじきを食べる際には、まずひじきに含まれる無機ヒ素をできるだけ減らすことが大切です。その他にも食べる量や食べ方など、注意したいポイントを詳しく挙げてみましたのでぜひ参考にしてください。

ひじき中の無機ヒ素を減らすための工夫

ひじき中の無機ヒ素を減らすための工夫

ひじきに含まれる無機ヒ素の量を減らすための工夫についてみてみましょう。ひじき中のヒ素は簡単な手順で減らすことができますので、妊婦が食べる際には必ずこのような下準備を行った上で食べるようにしましょう。参照5

水で戻す

水で戻す

ひじきは通常乾燥した状態で市販されています。ひじきを調理する場合には、まず乾燥ひじきを30分程度水につけて戻します。その後つけておいた水は捨て、ひじきを流水で水洗いします。ひじき中の無機ヒ素はこの方法で約半分ほど減らすことができます。

お湯でゆでる

お湯でゆでる

ひじきを水に入れ、強火で加熱・沸騰させ、さらに弱火で5分間加熱します。その後茹でたお湯をこぼし、水戻し同様にひじきを流水で洗います。この方法でひじきを戻した場合、無機ヒ素は8割程度減ります。

水戻し後ゆでる方法

ひじき中の無機ヒ素をもっとも多く減らす方法は、まず水につけ戻したあと、さらにお湯で5分程度ゆでる方法。水で戻す方法とお湯でゆでる方法を組み合わせると、無機ヒ素を9割ほど減らすことができます。水で戻したあとの水とゆでた後のお湯は捨て、ひじきは流水で水洗いします。この方法は時間と手間がかかりますが、無機ヒ素の摂取をできる限り減らすという点ではもっとも優れています。

下ごしらえ後の栄養

下ごしらえ後の栄養

これら三つの方法はいずれも無機ヒ素の低減に効果的ですが、無機ヒ素と一緒に栄養素も流出してしまうのでしょうか?ひじきはカルシウムや鉄分富む食材で、妊娠中の貧血対策に最適。また妊娠中はどんどん大きくなる子宮に大腸が圧迫されるため、便秘にもなりがち。ひじきには便秘対策に有効な食物繊維が多く含まれていますので、この点でも妊婦にお勧めです。

無機ヒ素を減らすための方法を用いた場合、これらの栄養素も減ってしまうのでしょうか。水戻し、ゆで戻し、ゆでこぼしの三つの方法を比較した場合、カルシウムに関してはいずれの方法でも値は乾燥ひじきとほとんど変わりません。

食物繊維に関しては下準備をした後も約8割が、そしてカルシウムに関しては約7割が残ると報告されています。下準備をすることにより栄養価は若干下がりますが、無機ヒ素を減らすためには絶対に必要です。妊婦がひじきを食べる際には、上記の方法で必ず無機ヒ素を減らしてから食べるようにしましょう。

ひじきを食べる回数と量

妊婦がひじきを食べる際には回数と量にくれぐれも注意しましょう。ひじき中の無機ヒ素の量は、どのような方法で乾燥状態から戻すかによって変わってきますが、妊娠中は母体とおなかの赤ちゃんの安全と健康のため、少し控えめに食べたほうが安心でしょう。

日本人が一日に食べるひじきの量を平均してあらわすと0.9gといわれています。上述したようにひじきは一週間に33g、一日にすると4.7g以上を継続的に食べない限り、とくに支障はないとされていますので、ごく標準的な食べ方をする分には不安はありません。

ひじきに他の食材を取り合わせる

ひじきに他の食材を取り合わせる

日本の伝統的なひじきメニューは、副食の付け合せですが、ひじきを使ったメニューは他にもたくさんあります。他の野菜と合わせて煮物に、ハンバーグなどのおかずに加えて、ごはんにあえて、和風サラダに入れてと、ひじきを食べる際はいろいろなメニューに取り入れてみましょう。ひじきの摂取量をおさえたい妊婦は、ひじきがメインのおかずよりも、他の食材と組み合わせたおかずを選ぶと便利です。

ひじき入りのサプリメントについて

妊娠中にひじきを摂取する場合には、サプリメントでの摂取はお勧めできません。市販のサプリメントの中にはひじきを粉末にしたものもありますが、ひじきをどのような形でサプリにしたのか、厳密に把握することは難しいでしょう。妊娠中の海藻ミネラル補給はサプリメントに頼らず、フレッシュな食材から得るようにしましょう。

妊娠中に海藻を食べる際の注意点とは?

妊婦さんが海藻を食べる際の注意点とは?

妊婦がひじきを食べる際の注意点について挙げてみましたが、ではひじき以外の海藻についてはどうでしょうか?ひじきだけでなく、他の海藻にもヒ素が含まれていますが、これらは妊娠中に摂取しても大丈夫なのでしょうか?

海藻に含まれるヒ素について

昆布やわかめにもヒ素は含まれていますが、これらのヒ素は無機ヒ素ではなく、体への悪影響の少ない有機ヒ素です。ひじき以外の海藻類に関してはヒ素による影響を不安に思う必要はありません。ただし昆布にはヨウ素が多く含まれていますので、過剰摂取は控えるようにしたほうが安心です。

まとめ

妊婦がひじきを食べる際に知っておきたい情報をいろいろと挙げてみました。ひじきには必須ミネラルや食物繊維が豊富に含まれていますので、妊娠中の食生活にはぜひ取り入れたい食材のひとつですが、唯一の問題点がヒ素。ひじきに含まれる無機ヒ素は大量に摂取すると妊婦だけでなく、おなかの赤ちゃんにも悪影響を及ぼしかねません。

妊娠中にひじきを食べる際には食べる量や回数を控えめに、くれぐれも食べすぎないように注意しましょう。またひじきに含まれるヒ素を低減するための下準備や調理法もきちんと知り、体内に摂取するヒ素の量をできる限り抑えることが大切です。心配な場合はかかりつけの医師に相談してみることも大切です。

※参照1 厚生労働省 ヒジキ中のヒ素に関するQ&A
農林水産省 食品中のヒ素に関するQ&A
※参照2 農林水産省 食品に含まれるヒ素の実態調査
※参照3 内閣府 食品安全委員会 ヒジキに含有されている無機ヒ素について
※参照4 株式会社三菱化学安全科学研究所
※参照5 農林水産省 乾燥ひじきのヒ素を減らす調理法の調査結果
東京都福祉保健局 ひじきに含まれるヒ素